納豆が大好きな男子高校生がいたー。
そんな彼は、クラスメイトの女子に
納豆の素晴らしさを伝えようとする…
しかし…?
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「---なんか、臭くない…?」
クラスメイトの女子・夏野 桃子(なつの とうこ)が
表情を歪めるー。
「---臭い??」
男子高校生の羽島 恭太郎(はじま きょうたろう)は
首を傾げたー
「--もしかして、羽島くん、また納豆食べたの…?」
桃子が、嫌そうな表情を浮かべたー
「ははっ!俺の朝ごはんはほぼ毎日納豆だからな~」
恭太郎が笑いながら答えるー
桃子が感じた”臭い”が納豆のにおいだったのだー。
恭太郎は大の納豆好きで、
毎朝ほとんど、納豆を食べている。
もちろん、恭太郎も納豆を食べたあとに
歯を磨いてはいるものの、
日によってはこうしてニオイが残ってしまうこともあるし、
何より、桃子は大の納豆嫌いであるため、
余計に敏感だったー
「納豆は健康にいいんだぜ~?」
恭太郎が笑いながら言うと、桃子は
「あんな臭くて、ネバネバしたもの、人間の食べ物じゃないよ!」と
嫌そうな表情をして言ったー
「--あ~!今、夏野さん、全国の納豆を食べる人を
敵に回したぜ~?」
恭太郎が言うと、桃子は「もう!」と顔を背けたー
恭太郎と桃子は、彼氏彼女の関係でもなく、
幼馴染でもなく、
互いに”クラスでよく話す男子”と
”クラスでよく話す女子”程度の間柄ー。
今日も、適当な雑談をしている最中に
納豆の話題になったのだったー
「夏野さんも、納豆食べてみればその素晴らしさが分かるって。
あんなに美味しくて、身体にもいいものを
食べないなんて、本当にもったいないなぁ~」
恭太郎の言葉に、
桃子は「た~べ~ま~せ~ん!」と大きな声を出した。
桃子は綺麗好きで、
清潔感溢れる美少女、というような雰囲気の少女ー
時々、綺麗好きすぎるところもある気もするが
良い子であることに間違いはない。
「---納豆みたいな名前しちゃってさ~」
恭太郎がいじわるっぽく言うー。
納豆が好き!納豆が嫌い!みたいな言い合いは
ふたりにとって日常茶飯事で、
言い合いが始まってから気づいたことなのだが、
桃子の名前は
「なつの とうこ」で、どことなく納豆に似ているのだー。
「-納豆の化身なんじゃね?」
恭太郎が言うと、
桃子は「あんな腐った豆と一緒にしないで!」と、
震えながら答えたー
「--健康にいいのに~!」
「ただの腐った豆でしょ~!」
いつものような言い合いが続くー。
それはそれでー
ある意味、穏やかな”日常”-。
よくある1日が、今日も終わりー
恭太郎は家に帰ろうとしていたー。
学校帰りにスーパーに立ち寄る。
母親から頼まれたものを
スマホで確認しながら、
それをひとつひとつ、かごへと入れていく。
納豆売り場にやってきた恭太郎は、
色とりどりの納豆を見つめるー。
粒の大きさー
納豆の種類-
色々ある納豆も
ひとつひとつ、その味は異なる。
コクのあるものから、
粒の大きいもの、小さいもの、
タレが美味しいものー
同じ納豆にも、色々とあり、多種多様なのだー。
「----!」
納豆売り場を見つめていた恭太郎は、ふと人の気配を
感じて、横を振り向いたー
すると、そこにはーーー
「--え」
恭太郎は目を疑ったー。
納豆の豆の着ぐるみのようなものを着た
あやしげなおっさんが立っていたのだ。
「--君、納豆は好きか?」
とー。
「--え、、あ、はい」
恭太郎は”って、なんで俺不審者と口きいてるんだ!”と
自分で自分に突っ込みを入れながら
さっさと納豆をかごに入れて、そのままレジへと
向かっていこうとする。
しかしー
納豆おじさんが、恭太郎を呼び止めたー。
「---おじさんは、変態じゃないよ」
とー。
「----」
恭太郎はつい立ち止まってしまったー。
”いやいや、そんな格好でスーパーにいること自体が
変態でしょ”と、言いたくなる気持ちを押さえて
”周囲に客もいるし、まぁ、いざとなったら叫べばいいか”と
思いながら話を聞くー。
するとー
納豆おじさんが、何かを鞄から取り出したー。
「実はおじさん、納豆会社の社員でね。
試作品の納豆の試食をお願いしてたんだ」
納豆おじさんが言う。
”あぁ、納豆の着ぐるみはそれでか”と
恭太郎は何となく納得しながら
話の続きを聞くー。
「--この納豆はね、、食べると幽体離脱することができちゃう納豆なんだ」
ー!?
恭太郎は表情を歪めた
”やっぱ怪しいおっさんだった”
と、そう思いながらー
そう思ったのを見透かされたのかー
㈱納豆総合研究開発所 通称・納研(のうけん)の
企画部長であるという名刺を手渡してきたー
”その納豆を食べると、他人に憑依することができちゃうんだ”
小声で言う納豆おじさんー
「--えぇっ!?」
恭太郎は思わず声をあげながらも、
ちょっとだけ興味を持って、納豆おじさんの話を聞き始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----」
帰宅した恭太郎は、”幽体納豆”と書かれた
パッケージを見つめていたー
”それを食べると、他人に憑依することができるんだー。
どうだい?この納豆食べてみないかい?”
納豆おじさんは、そう言って、恭太郎にその納豆を渡したー
そしてー
”この幽体納豆を食べた人に憑依された人間はー
納豆が大好きになっちゃうんだ”
と、納豆おじさんは、恭太郎に言い放ったー。
食べると幽体離脱できる納豆を恭太郎に渡した理由ー
おじさんの目的が、まるで分らない。
だがー
”おじさんはね、納豆の素晴らしさを世の中に広めたいんだ”と
叫んでいたのを思い出すー
「----」
恭太郎も、納豆の素晴らしさを世に広めたいー
そう、思っていたし、
それにーー
「--納豆好きに、悪人はいねぇ」
恭太郎はそう呟いて、自分の部屋でこっそり”幽体納豆”を
食べ始めたー
”納豆が嫌いなクラスメイト”
夏野桃子の顔を浮かべながらー
・・・・・・・・・・・・・・・・
幽体納豆の味は、甘美な味だったー
今までに経験したことのないような、新しい納豆ー
納研なる会社の納豆は食べたことがなかったし、
ネットで調べた感じ、スーパーなどにはほとんど売られておらず、
納研の公式サイトでだけ、販売されている状態だったー
”うまいのに、なんで普通に売らないんだろうなぁ…”
普通に売れば、売れるんじゃね?と
思いながらも、恭太郎は、幽体となって
桃子の家に向かっていたー
”まぁ、こんな幽体離脱の効果ありじゃ、普通に売ったら
大問題になるだろうから、そういうことかな?”
そんな風に考えていると、
桃子の家が見えてきたー
以前、ちょっとした用で桃子の家の前まで
行ったことがあるために、
場所は知っているー。
「--いたいた」
恭太郎は、そう思いながらーーー
帰宅して制服姿のままスマホをいじっている桃子にーー
憑依したーー
「んあっぁっ!?!?」
変な声を出してビクン!と震えて
スマホを落としてしまう桃子ー
「---は、、はぁっ…はぁっ…すごい衝撃だった…」
桃子はそう呟きながらも、
自分の台詞が桃子の声で出ていることにー
”憑依成功”を確信したー
「---は、、はははっ…す、、すげぇ…夏野さんだ…」
鏡を見つめる桃子ー。
恭太郎は、密かに桃子のことが少し、好きだったー
そんなつもりはなかったのだが
いざ、憑依すると、やっぱりー
「ゴクリ」
桃子が唾を飲み込むー。
今、飲み込んだ唾が桃子のものだと思うだけで
さらに興奮してしまうー
「へへへへ」
ニヤニヤとしながら、桃子が
「ちょっとだけなら…」と胸に手を触れようとしたその時だったー
♪~~~
「--びくぅぅぅぅぅ!?!?」
桃子が慌てて振り返ると、そこには桃子の可愛いスマホが
置かれていたー。
「--は、、、はい…?」
無視しようとも考えたが、
なんとなく電話に出てしまう桃子ー
自分の声が桃子の声ー
自分の手が桃子の手ー
それだけで、はぁはぁ言いたくなってしまう。
そんな気持ちを抑えながら
桃子は平常心を装い、相手の返事を待ったー
”おじさんです”
「---!」
女子高生におじさんが電話をかけてくるなんて
かなりヤバいシチュエーションー
だが、今の桃子には相手のおじさんが誰だか
すぐに分かったー。
「---納豆おじさん!」
”はは、どうだい?幽体納豆は”
「--ははは、最高ですよぉ」
桃子は胸を触りながら
だらしない格好をして、電話を続けるー
”ははははは そうだろう”
納豆おじさんが笑うー
そして、納豆おじさんは続けたー。
”さて、その子を納豆大好きにするためには…
その身体で納豆を食べる必要があるんだ”
納豆おじさんは言う。
スーパーで説明を受けた際にもそんな感じのことを言っていたー
「-分かりました。じゃあ…夏野さんの身体で納豆を
食べればいいんですね」
桃子の声でそう言いながら
桃子に憑依している恭太郎は激しく興奮していたー
自分の口から桃子の声が出るー
この事実だけで、3日間ぐらいは一人エッチできてしまいそうなほど
興奮するー。
いや、1か月間ぐらい興奮が持つかもしれない。
”そう。その通りだ”
少し雑談をしてから電話を終える桃子ー。
「---」
鏡のほうを見つめると、そこには桃子の姿がー。
「--ふふ、わたし…納豆だ~いすき
うふっ♡」
納豆が好きだと桃子に言わせてみる恭太郎ー。
もし、桃子に今、恭太郎が憑依して
こんなことをさせているー
なんてことを知られたら、ただじゃすまないだろうー。
だがー
幽体納豆があれば、桃子は思いのままー
「へへ…お、、俺が夏野さんとして……買い物に…ぐふふふふ」
桃子の家には納豆がないー。
何故、ないかと言うと
桃子だけではなく、桃子の家族も
特に納豆が好きではないからだー
だから、桃子の身体で納豆を食べるには、
納豆を買いにいかなくちゃならないー
「ふふふふふ…」
早速、制服姿のまま家の外に出た桃子ー。
「あぁ…やべぇ…見られてる気がする」
桃子はニヤニヤしながら街中を歩くー
自分が可愛い女子高生になっただけで
じろじろ視線をくぎ付けにしているような気がして
激しく興奮してしまう。
実際にはー
桃子に憑依したことで
自意識過剰になってしまっているだけなのだがー。
「--ーよし」
納豆おじさんと出会ったスーパーに入り、
納豆を手に、レジに向かう桃子ー
「女子が納豆ひとつを買う…なんて
なんかゾクゾクしちゃうなぁ…ふひっ」
桃子はそんな風に思いながら、
「あっ!」と笑みを浮かべるー
スーパーの女子トイレが目に入るー
にたぁ…と、不気味な笑みを浮かべた桃子は、
納豆を一度商品棚に戻し、そのまま”女子トイレ”に入っていくー
桃子の家にもトイレはあるが、
一般家庭のトイレは男子女子に分かれていないー。
せっかく桃子に憑依したんだし、
一度女子トイレにーーー
だがーーー
「ふぁっ!?!?!?」
女子としてのトイレー
はじめての女の子のトイレを経験した恭太郎はーー
失敗して、下着やスカートを汚してしまったー
”こ、こんな風に出るなんて…”
桃子はゾクゾクしながら濡れたスカートを
隠しつつー
レジでの会計を終えるー
”店員さん…気づいてたかな?”
ニヤニヤする桃子ー
スカートを汚した女子高生が、
納豆をひとつ買う…なんてゾクゾクするなぁ!
そう思いながら桃子は「やべやべ!」と
まるで、トイレを我慢する少年のようなポーズをとりながら
そのまま家へと走って行ったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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納豆をテーマにした憑依のお話デス~!
ちなみに私は納豆は苦手デス~笑
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