最近、近所に焼き芋の移動販売が
やってくるようになったー
”今の時代に、珍しいな…”
一人暮らしの大学生は、
そんな風に思いながら、興味本位でそのお店に近づいた…。
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石焼き芋の移動販売ー。
最近はほとんど見かけなくなった。
「---ん?」
一人暮らしの大学生・向田 省吾(むかいだ しょうご)は、
ある音を耳にしたー
石焼き芋の移動販売の音だー
「---はっ、今時石焼き芋か…
売れてんのかな?」
省吾は、馬鹿にしたような感じで笑う。
小さいころ、おばあちゃんと一緒にお墓参りをしたときに
お墓の近くを走っていた石焼き芋の移動販売を
買ってもらったことがあるー。
その時も既に石焼き芋の移動販売は
かなり少なくなっいてきていたが、
今では、スーパーなどでも石焼き芋を
買うことができる。
しかも、安い。
当然、省吾も、小さいころにおばあちゃんに
買ってもらった以外、
自分で石焼き芋の移動販売を利用するようなことは
なかったー。
「--」
省吾は、なんとなく興味本位で、
家に帰る前に、石焼き芋の移動販売を見てみようと思った。
買うつもりはないー
だが、どんなおっさんが石焼き芋を売っているんだろうな?と、
なんとなく冷やかしのつもりで石焼き芋の車に近づいた。
石焼き芋のいい臭いがしているー。
「---……」
省吾が近づいていくとー
そこには、自分と同じぐらいの年齢の
おしゃれな女性がいたー。
「……え?」
省吾は驚くー
石焼き芋の移動販売と言えば
おじいさんやおじさんがやっているものだと
省吾の中で勝手にイメージしていたし、
車が鳴らしている音も、男の声だったから
なんとなく男性がやっているイメージしか
なかったー。
だが、ミニスカートに黒タイツ姿の
可愛らしい女性が、そこにはいたー。
「---あ、、あの…」
ちょっと眺めて通りすぎるつもりだったが、
省吾はなんとなく声をかけてしまったー
「--え?あ、はい」
女性が振り向くー
「あ、、あの、お店の人ですか?」
省吾が緊張しながら言うと、
女性はほほ笑んだー
「---あ、はい!石焼き芋、食べます?」
にっこりと笑うその女性はー
とても穏やかな雰囲気を持つ
綺麗な女性だったー
「え…あ、、、」
省吾は顔を赤らめてしまうー
こんなきれいな人が
石焼き芋の移動販売、なんて
イメージがなかったのだ。
「---ふふふ、どうかしましたか?」
「あ、、い、、いえ、焼き芋をひとつ頂こうかな~って」
買うつもりで近づいたのではないのに、省吾は
思わず石焼き芋を買うことにしてしまった。
「--ありがとうございます!ちょっと待っててくださいね」
嬉しそうに車の中に入っていくと、
店主の女性は、出来立ての石焼き芋を袋に詰めて
それを省吾に手渡したー
省吾がお金を払いながら訪ねる。
「あの…一人でやってるんですか?」
どうせ、いつもは祖父か何かがやっていてー
この人は臨時でおじいちゃんの手伝いを
している、とか、そういうネタだろうと
省吾は思ったのだった。
「--はい!」
だがー、
省吾の予想に反して
女性は、一人で石焼き芋の移動販売をしているのだという。
「え…おひとりなんですか?」
省吾が聞くと、女性は「わたしみたいな人が、石焼き芋
売ってるなんて、やっぱり変ですよね」
と、苦笑いをするー。
「---あ、、いえ、いえ、全然変なんかじゃないですよ。
ただ、びっくりして」
省吾が顔を真っ赤にしながらそう言うと、
店主の女性はにっこりとほほ笑んだー。
「あ、長々とすみません」
省吾はそう言うと、頭を下げて
家のほうに向かったー
”まいったな…芋、別に好きじゃないのに
ついつい買っちゃったぜ”
苦笑いしながら、省吾は
帰宅し、石焼き芋を
なんとも言えない顔で食べ始めたー
石焼き芋としての味はそこそこだが、
別に石焼き芋が特に好きではない省吾は
渋い顔をするしかなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
石焼き芋の移動販売の声を聞いて、
省吾は再びふらりとその車に近づくー
数人の客が並んでいた。
わざわざ石焼き芋を買いに来たのだろうかー。
他の利用客のことは分からない。
けれど、省吾の目的は違うー
なんとなく、このお店の店主のことが
気になるのだー
「あ、こんにちは!昨日も来てくれましたよね~?
ありがとうございます!」
にっこりとほほ笑む店主の女性。
名前も素性も分からないが、
省吾はこの人のことが気になって
仕方がなかったー
「--あ、どうも」
省吾は少し顔を赤らめながら言う。
「---…今日も1つ、貰えますか?」
省吾がそう言うと、
店主の女性はとても嬉しそうに石焼き芋を準備して
それを省吾に手渡したー
自分と同じぐらいの年齢なのに、
この子はどうして石焼き芋の移動販売を
やっているのか、
何か理由があるのかー
省吾は、いろいろなことが気になっていたー。
「---どうしたんですか~?」
店主の女性が笑う。
「--え?」
省吾が我に返る。
思わず、女性のほうをじーっと
見つめてしまっていた。
「あ、いや、石焼き芋ってホラ、
今、あんまり売れなそうなイメージですし、
どうして始めようと思ったのかな~って
ちょっと気になって」
省吾がそう言うと、
店主の女性はほほ笑む。
「--ですよね~!
わたしも、石焼き芋なんて
売れないと思ってたんです」
店主の女性が、今焼いている最中の石焼き芋を見つめながら言うー。
「でもーーー
おじいちゃんの願いだったので」
店主の女性が懐かしそうに笑う。
「---おじいさん?」
省吾が聞くと、
女性は省吾のほうを見て続けたー
「おじいちゃん、わたしが小さいころから
ずっと石焼き芋の移動販売をしていたんですけど、
1年前に病気で死んでしまってー。
それで、売るための車とか、機材とかだけ
残っていたので、おじいちゃんが大好きだった
石焼き芋、ちょっとだけやってみようかなって」
その言葉に、
省吾は感心して口を開いた。
「そっか…優しいんですね」
省吾の言葉に、「いえいえ」と照れ臭そうに言う
店主の女性。
「まぁ、でも、思ったより売れるんですよ~!
決して楽じゃないですけど、お客様みたいに
リピーターさんもいらっしゃいますし!」
うふ♡と、嬉しそうに笑う店主の女性ー
その姿を見て、省吾は思わずドキッとしてしまうー
少しでも、この子の力になってあげたいー
そんな風に省吾は思ったー
別のお客さんがやってくる。
「じゃ、俺はこれで」
省吾がそう言うと、
「またお待ちしてま~す!」と店主の女性は声をかけた。
そして、次のお客さんの接客を始めるー
・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
移動販売を終えた彼女は、
車の中に入るー
そして、バックミラーを見つめるー
「--あぶねぇ」
彼女はボソッと呟いたー
”頭”が少しずれていたー。
「あぶないあぶない」
頭のあたりを触りながらそう呟く彼女の
表情には、不気味な笑みが浮かび上がっていたー
そして、彼女は呟いたー
「女の身体は便利だぜ…くくくくく」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・
大学ー
「--そういえばさ、最近、めっちゃ可愛い子が
俺んちの近所で石焼き芋売っててさ」
省吾が友達に、石焼き芋屋のことを話す。
「はぁ?焼き芋?なんか古臭いなぁ」
友達の健太郎(けんたろう)が苦笑いする。
「いやいや、味もうまいし、本当にいい感じでさ」
省吾は、すっかり石焼き芋の
移動販売に夢中だー。
「---お前、まさか、その子に惚れ…」
健太郎がニヤニヤしながら言う。
「ち、違う違う!俺はただ、焼き芋を!」
真っ赤になりながら否定する省吾ー
分かりやすすぎる反応だったー
「ははは、やめとけやめとけ。
女なんて、すぐに心変わりするぞ~?」
健太郎がケラケラと笑う。
「別の大学に通ってる俺の親友なんだけどさ、
2年間付き合ってた彼女に、突然連絡先も何もかも
ブロックされて音信不通になっちゃってさ~
そいつも、女なんてもうやめだ~!って喚いてたぞ」
健太郎がニヤニヤしながら言う。
健太郎は、”女なんて、信用できない”と日ごろから豪語しており、
一切恋愛するつもりはなさそうだー
「へ~…そりゃ怖いな~」
省吾は苦笑いしながら言う。
「何か怒らせるようなことしたんじゃないのか?」
省吾がペットボトルのお茶を飲みながら言うと、
「それがさ、まったくこころ当たりないんだってさ。
前日まで普通に仲良く話してたらしいし」
健太郎がニヤニヤしながら言う。
男女関係の不幸を話しているときの
健太郎はとっても楽しそうだ。
「ーーほら、これ見てみろよ」
健太郎がスマホを手にして、
写真を見せるー
健太郎の友人と、その彼女の写真だー
「----!?!?!?」
その写真を見て、省吾は驚くー。
”こ、これは…”
健太郎の友人と一緒に写っている女性ー
その女性は、
石焼き芋の移動販売をしている女性にそっくりだったー。
「--こ、、このコ…」
省吾が動揺していると、
何も知らない健太郎は答えたー
「--え?あぁ、俺の友人と同じ大学に通ってる子で
こいつの彼女だよ」
健太郎が、写真に写る自分の友人を指だしながら笑う。
「哀川 菜々美(あいかわ ななみ)…だったかな」
健太郎の言葉に、
「-ーーーそ、そっか」
と、省吾は呟くー
石焼き芋の移動販売をしている女性に似ているー
まぁ、もちろんー
同一人物であってもおかしくはないー。
だが、何か違和感を感じるー
「---」
省吾は失恋したような気分になった。
石焼き芋の移動販売のコが、
哀川菜々美という子ならー
彼氏持ちと言うことになるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
夕方ー
省吾は石焼き芋の車を見つけると、
また、石焼き芋をひとつ購入した。
「いつもありがとうございます~♡」
店主の女性は嬉しそうに言うー
写真を見ただけだから、
他人の空似かもしれないし、
さっき健太郎が言ってた
”友人の彼女”なのかもしれない。
別に現役女子大生が石焼き芋を売ってても
おかしくはないし、あり得ない話ではない。
まさか、彼氏持ちだったなんてー
「--ーーーどうかしましたか?」
店主がにっこりとほほ笑むー。
「--あ、いえ…」
省吾が言うと、
店主の女性は「わたしの顔に何かついてます~?」と
笑いながら言った。
省吾は、いつものように少し雑談したあとに立ち去ったー。
「---あぁ、、、短い恋だったな…」
とぼとぼと家路につく省吾ー
だが、省吾は気づいていなかったー。
ただの失恋で済めば、どれほど良かったことかー。
まだ、彼は知らないー
石焼き芋の移動販売をしている女性のー
いや、その内側に潜む”闇”をー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
石焼き芋の車(名前があるのかも?)が
通っているのを見た時に
思いついた小説デス~笑
今回は導入部分で1話が終わっちゃいましたケド…
明日以降は本番(?)になりますネ~!

コメント
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そんな会話の中まで石焼き芋石焼き芋言いますかね?
普通は屋号は石焼き芋でも焼き芋って言いません?
ちょっと違和感あったのでコメントさせていただきました
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> そんな会話の中まで石焼き芋石焼き芋言いますかね?
> 普通は屋号は石焼き芋でも焼き芋って言いません?
> ちょっと違和感あったのでコメントさせていただきました
コメントありがとうございます~!
確かにそれもそうですネ~!
あまり焼き芋のお話を日常でする機会がないので
ついそう書いちゃいました!
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「”頭”が少しずれていたー」
この部分は好きです!
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> 「”頭”が少しずれていたー」
> この部分は好きです!
ありがとうございます~!
身の回りに頭がずれている人がいたら、
中に誰かが入っているかもですネ~笑