欲望に負けて
憑依薬を使って、親友の妹に憑依した晃。
彼はもう、戻れないー。
妹を奪うため、ひたすら欲望の道を走る続ける。
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「---くくく…
すごいだろ?憑依薬の力は?」
春奈が両手を広げながら
自信に満ち溢れた表情で言う。
「--ふ…ふ…ふざけるな!」
京悟は大声で叫ぶ。
「俺の妹を返せ!
お前…自分が何をしてるのか分かってるのか!」
京悟は必死に叫んだ。
しかしー
パチンー
春奈が京悟の頬をビンタした。
「むかつくんだよ」
鋭い声だった。
「いつもいつもいつも
妹の自慢ばかりしやがって!
俺はお前のそんなところが嫌いだった!」
春奈が声を荒げるー。
普段決して声を荒げない春奈が
怒りの声を上げている。
「--ーだ、、だからって、春奈は関係な…」
パチン!
さらに春奈が京悟をビンタするー
大好きな兄のことを容赦なくビンタする春奈。
身体も心も完全に乗っ取られている春奈は
晃の思いのまま行動するー
やがて、拳を作り、
その綺麗な手で兄を殴り始めた。
「--テメェ…!」
吹き飛ばされた京悟は怒りの形相で
立ち上がり、春奈に反撃しようとしたー
しかしー
「殴れば?」
春奈は挑発的な笑みを浮かべる。
「---くっ…」
京悟は手を震わせた。
「痛いのはわたしだよ?殴れば?ふふふ…」
春奈はそう言うと、兄の京悟に
向かって唾を吐きかけた。
「---く…くっ…」
京悟は怒りに拳を震わせていた。
今にも殴りかかりそうな京悟。
しかしー
妹を殴ることなんてできない。
「--春奈…
頼む…目を…覚ましてくれ…」
振り絞るようにして、そう言葉を発しながら、
京悟は床に膝をつく。
「---んふふふふ…
悔しいだろ?くふふふふ…
春奈は俺のものだぁ~!」
そう叫ぶと、春奈は自分の太ももを
両手でこすりはじめた。
「あぁぁ~女の身体すげぇ~!
ぁぁあああ♡ あぁぁぁあああん♡」
春奈が甘い声を出すー。
興奮しきった様子の妹を見ながら
京悟は、唇から血が出るほどに怒り狂い、
噛みしめていたー。
「~~~っぁあ~♡」
春奈が顔を真っ赤にして
満面の笑みを浮かべているー。
こんな姿、見たくないー
「やめろぉぉおおおお!やめてくれぇえええ!」
京悟は叫ぶ。
額を床にこすりつけて
土下座する京悟。
「晃!俺がお前に不快な思いをさせたなら謝る!
謝るから!もうやめてくれ」
京悟はこれ以上ないぐらいの嘆願する姿勢で
春奈に土下座する。
妹の春奈を返してほしいー
取り戻したい。
その一心で。
しかしー
春奈はそんな京悟の手を踏みにじった。
「---んひひひひ…♡
いい気味…」
春奈の声は歪んでいた。
興奮しきって、おかしくなりそうな声ー
そんな感じだ。
「--わたしは…晃くんの妹…」
春奈が突然ぼそっと呟きだした。
「な、、何・・・?」
京悟は春奈の呟いた言葉の意味が分からず、困惑する。
「--わたしは…晃おにいちゃんの妹…」
春奈がニヤリと笑みを浮かべながら
そう呟く。
「な…何を言っている…?」
京悟には、意味が分からなかった。
目の前で起きている
”恐ろしいことを”今の京悟に理解できるはずはなかった。
”妹の思考が書き換えられている”などと
理解できるはずもなかった。
「おにいちゃん…だいすき…」
春奈はうっとりとした表情を浮かべながら
自分を抱きしめている。
「晃おにいちゃん…
晃おにいちゃん…
晃おにいちゃん~♡」
春奈の表情は、トロンと、
何か催眠術にかかったかのような
表情ー
そして、春奈はさらにー
「京悟なんて、お兄ちゃんじゃないー」
「京悟はお兄ちゃんの敵ー」
そう呟き始めた。
その様子を唖然としながら見つめていた京悟は
ハッとする。
「--お前!春奈に何してる!」
京悟は大声で怒鳴り声をあげた。
「---ふふ」
春奈は微笑む。
そして、バカにしたような笑みを浮かべながら呟く。
「もう、遅いぜ」
とー。
「--な、、何…」
京悟は絶望の表情を浮かべながら、
春奈の方を見る。
「--ま、そろそろ返してやるよ。
春奈ちゃんの身体を…
くひひひひひひ…ぁ」
春奈は笑いながら糸が切れたかのように
その場に倒れてしまうー。
「---は、、春奈!春奈!」
慌てて倒れた妹に駆け寄る京悟。
「う…」
背後に倒れていた晃が先に目を覚ます。
京悟は振り返る。
「--貴様ぁ!」
京悟は有無を言わさず晃を殴りつけた。
妹が解放された今、
怖いものはないー
こいつを警察に突き出してやる。
京悟はニヤリと笑う晃を
1発、2発と殴りつけた。
しかしー
「--やめて!」
背後から妹の春奈の声がした。
「--春奈」
振り返る京悟。
そうだー
妹の前で誰かに暴力を振るうなんて…
京悟は、晃から手を離す。
「---お兄ちゃん…」
春奈はそう言いながら京悟の方に近づいてくる。
「---春奈…もう、大丈夫だからな」
京悟は、近づいてきた春奈を
優しく抱きしめようとしたー
しかしー
春奈は京悟を素通りした。
「--!?」
そしてー
背後にいた晃に抱き着いた。
「晃おにいちゃん…」
春奈は、そう言いながら晃に抱き着いたのだった。
「くくく…春奈ちゃん…いや、春奈…」
晃はニヤリと笑みを浮かべながら
春奈を抱きしめた。
「--な…」
京悟は唖然とする。
「---ど、、どういうことだ!」
京悟は叫ぶ。
晃は泣きじゃくる春奈の頭を撫でながら笑う。
「--くくく…
お前の妹は、俺のものだ」
晃の言葉に、京悟は凍りついた。
「な…なんだと…」
京悟は信じられないという表情を浮かべて
春奈の方を見る。
春奈は、本気で晃に抱き着き、
安心しきった表情を浮かべている。
「お…おい…春奈!春奈!」
京悟が叫ぶと、
春奈が晃から離れてようやく振り向いた。
「---……お兄ちゃんに、酷い事しないで!」
敵意をむき出しにする春奈。
「---は、、春奈…!」
京悟は、心がえぐられるような思いを
しながら、春奈の方を見つめる。
「---そ、、そいつはお前のお兄ちゃんじゃない!
春奈!目を覚ましてくれ!」
京悟は叫ぶ。
「---……」
春奈は一瞬、戸惑ったような表情を浮かべるー
”お前は、俺の妹だー”
「--!!」
春奈の中に潜んでいる晃の魂の一部が
春奈の脳をさらに染め上げて行くー
「---わ…わたしは…あ、、、あ、、、
晃くんの…妹…」
春奈が苦しそうにそう呟く。
晃は笑っている。
「--貴様ーー!!!!」
京悟は、怒りのあまり、晃に殴りかかろうとする。
しかしー
「やめて!」
春奈が両手を広げてその前に立ちはだかる。
「は、、春奈!そこをどいてくれ!
お前は…お前はあいつに!」
京悟の必死の言葉ー
それも、今の春奈には届かない。
「---お兄ちゃんに手を出さないで!」
晃の前に立ちはだかる春奈。
晃は勝ち誇ったような表情で
京悟を見つめている。
「---は…春奈…
違う!違う!」
京悟は、そう言うと慌ててスマホを取り出した。
京悟と春奈。
兄と妹で写っている写真を見せれば、春奈も…。
「---…」
兄と妹で写っている写真を見せられて
春奈は、ぼーっとそれを見つめる。
「--春奈!俺がお前の兄だ!
お前は操られているんだ!」
京悟が叫ぶ。
だがー
春奈はそんな兄を鼻で笑った。
「--写真まで合成して…
本当にキモい!」
心底嫌悪するような表情で
冷たく言い放った春奈。
京悟は唖然とする。
「ち…違う…違う!」
京悟はさらにLINEでのやりとりを見せた。
「--ねぇ、いい加減にして!」
春奈は乱暴に京悟からスマホを取り上げて、
それをベットの方に投げつけた。
「--あんたなんか、お兄ちゃんじゃない」
春奈の言葉に、京悟は絶望の二文字が
心の中に浮かび上がる。
どうすればいい?
今の春奈は、完全に操られてしまっている。
どうすることもできない。
「---お前…!こんなことして楽しいのか!?」
京悟は、晃の方を見つめた。
「--あ?」
晃はニヤニヤしながら京悟の方を見つめる。
「楽しいに決まってるじゃんか」
ーと。
「俺はな…ずっとずっと、妹が欲しかったんだよ。
毎日のようにお前に自慢されてうんざりしてたんだよ…
でもな…」
晃は春奈に背後から抱き着く。
「おにいちゃん…♡」
春奈が嬉しそうに顔を赤らめる。
「今日、やっと手に入れた…
春奈、お前は永遠に俺の妹だ…」
晃がそう言うと、
春奈は満面の笑みで「うん!」と答えた。
晃は京悟の方を見つめながら
春奈の太ももをイヤらしい手つきで
触って行くー
春奈は顔を赤らめて
「お兄ちゃんってば~うふふ…」と嬉しそうにしているー。
京悟は、晃をボコボコにしてやりたいと思ったー
だが、この状況…
晃をボコボコにすれば
下手すれば自分が犯罪者にされてしまう可能性がある。
今の春奈は、晃の言いなり。
どうすることも、できないー。
「---あ、、、晃!」
京悟は春奈に投げ飛ばされたスマホを手に叫ぶ。
「--警察に通報するぞ!」
京悟は、怒りの形相で叫んだ。
スマホを持つ手が激しく震えている。
我慢ならない、という感じだ。
「--…ははは…」
晃が笑いながら京悟の方を見つめると
晃は言った。
「警察に通報する?して、どうするよ?」
晃の言葉に、京悟のスマホを持つ手が
さらに震える。
確かに、どうするー?
この状況をどう説明する?
妹が憑依されて変えられてしまった、なんて説明してもどうなる?
警察に自分が頭のおかしいやつだと思われるだけではないか?
京悟の額から冷や汗がこぼれ落ちる。
エッチなことをされていても春奈がそれを
受け入れている以上…
「---うふふふふ…」
春奈はゴミを見るような目で京悟を見つめている。
「--くそっ…」
それでも、京悟は警察に連絡しようとする。
これ以上、晃の好きにさせるわけにはいかない。
それに、晃は憑依薬を持っているー。
それを警察につきだせばー
「おい、京悟」
警察に連絡しようとした京悟に晃が声をかける。
「--あんまり調子に乗ってると、
春奈を滅茶苦茶にするぞ」
晃が春奈の髪の毛を乱暴に引っ張りながら笑う。
春奈は髪を引っ張られても
へらへら笑っている。
「---憑依させた俺の魂の一部を通じて
春奈を廃人にすることもできるし、
痴女にすることだってできるんだぜ?」
晃の目には狂気が宿っていたー。
「--ふ…ふざけるな…!
お前…!」
京悟は泣きそうになりながら叫ぶ。
晃はこんなやつじゃないはずだ。
確かに、妹の話で嫉妬していたのは
間違いない。
だがー
こんなー
こんなことするやつであるはずはー
「ーーーはっ…!」
京悟は、晃の方を見てはっとする。
なんだか、邪悪なオーラのようなものが
一瞬見えた気がしたー
「---くくく…」
晃は笑うー
晃は”憑依”という力を手にして
その力に溺れていたー。
人は、力を手に入れれば、狂うー。
晃は、人ならざる力を手に入れて暴走していた。
「---じゃあ、そろそろ帰るか」
晃が笑う。
「うん。お兄ちゃん♡」
春奈は嬉しそうに晃の手を掴む。
「帰る…!?」
京悟が不思議そうに言うと、
晃は微笑んだ。
「今日から俺の家で春奈と一緒に暮らすんだ。
くく…毎日毎日春奈のご奉仕してもらうんだ…
あははははは!」
ケラケラと笑う晃。
春奈もうふふ と笑っている。
「お前…春奈はおもちゃじゃないんだぞ!」
京悟は怒り狂った声で叫ぶ。
「--おもちゃだよ」
春奈が言った。
「わたしはお兄ちゃんのおもちゃ!
お兄ちゃんのためならな~んでもしちゃう!」
春奈はそう言って、晃に抱き着く。
晃は春奈の頭を撫でると
笑いながらそのまま京悟の家から
出て行ってしまうー
「--春奈…!春奈~~!!!」
京悟の叫びは届かない。
一人残された京悟は
床に這いつくばって泣くことしかできなかった…。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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奪われてしまった妹…
果たして、取り戻すことはできるのでしょうか…。
続きは明日デスー
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