<憑依>ラグナロク②~破滅へのカウントダウン~

世界の終焉は着々と迫りつつあった。

そんな中、彼女に憑依した守護者は、
世界を守る為だ、と彼氏を振り回し始める…。

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「---冗談はやめてくれよ!」
ラーメン屋の店内で、智也は叫んだ。

「---」
有菜は無言で、立ちあがった智也の方を見つめる。

「--ちょっと…悪ふざけが過ぎるだろ…
 俺…もう、学校行くから」

そう言って、智也は、
学校へと向かうのだった。

一人残された有菜は「馬鹿な人間だ…」と
呟きながら、ニヤニヤしているラーメン屋店主の方を睨んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しかしー
その日も、翌日、その次の日も、
有菜が学校に来ることはなかったー。

そしてー
その日の放課後ー

”地球に超巨大隕石が接近”

智也は、ビルの壁に設置されたテレビを見て、
目を点にしたー。

「え…マジ…?」
智也はその場から動くことができなかった。

専門家が言うー

”この規模の隕石が地球にやってくるのは
 初めてですねー。
 これが地球に衝突でもしたら、
 世界は滅びます

 我々にできることは、地球から逸れたルートを
 通過することを祈るだけでしょう”

「--…ま…まじ…?」

そう呟くと同時に、智也は走り出していた。

有菜は本当に”守護者”とやらに憑依されているー

智也はそう確信したのだー

「--わたしは、この星を守る為、
 遠い星からやってきた守護者だ」

有菜なら…
いや、有菜を乗っ取った何かなら、
この地球を救えるー?

そう思った智也は、土下座してでも
有菜に世界を救ってもらおうと決意し、
有菜の家に走った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--なんだとぉ!?」

沖ノ鳥島を占領し、軍事国家を作り上げた
都戸川 外康は、部下からの報告を聞いて叫んだ。

「--地球に、巨大隕石」
外を見つめながら唖然とする外康。

「こ…これが…現代の黒船か…」

外康はそう呟くと、
へなへなとその場に座り込んだ。

「殿…!お気を確かに!殿!」
部下のサムライたちが、
外康に慌てて駆け寄り、
恐怖で失禁した外康を抱え込む。

「--準備だ…」
外康が呟く。

部下たちが「は?」と首をかしげているのを見て、
外康は大声で叫んだ。

「--新江戸最終兵器”コバヤカワ”を用意しろ!」

外康の叫び声に部下のサムライたちが唖然とする。

「コ…コバヤカワでございますか?」

新江戸最終兵器”コバヤカワ”
あらゆるものを一撃で粉砕する、新・江戸幕府の最終兵器。
本来、他国を一撃で粉砕するために作り上げた超最新兵器だったが
仕方がない。
外康は、そのコバヤカワを放つ準備を部下に指示すると、
濡れた下半身を触りながら呟いた。

「新江戸幕府は黒船に屈したりはせぬ…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---お願いします!お願いします!」
有菜の家に駆けこんだ智也は、
ひたすら有菜に頭を下げていた。

「都合のいいやつだな…」
有菜はうんざりした様子で腕を組んでいる。

髪の毛はぼさぼさになっており、
ラーメン屋に行った日から着替えていないのか
服もしわしわだった。

「ーーまぁ良い。このまま
 お前たちが滅びるのを見届けても良かったのだが、
 そこまで頼まれたら、救ってやらんこともない」

有菜が少し嬉しそうに呟いた。

”調子のいいやつだなー”と思いながら
智也は「ありがとうございます!」と叫んだ。

「--で、どうすれば?」
智也が言うと、
有菜は椅子に座りながら
足を組んで微笑んだ。

「エネルギーの補充だ。
 隕石を破壊するためには、
 膨大なエネルギーが必要になる。

 だが、ザンネンながら、この身体に
 そんなエネルギーはない。
 だから、隕石がやってくるその日までに
 できる限りのエネルギーを補充しないといけない」

有菜が言う。

「--…ちょっと待て!」
智也が言うと、有菜は首をかしげた。

「--お前…有菜の身体で何をするつもりだ?」
智也の言葉に、
有菜は微笑む。

「2度言わすな。隕石を破壊する」

智也は”有菜はどうなる?”と思いながら叫んだ。

「あ、有菜は、無事に返してくれるんだろうな?」
智也が言うと、
有菜は「あぁ、そのつもりだ」と微笑むー。

「--そのつもりぃ?ふざけるな!
 有菜は俺の大切な彼女だぞ!?
 お前、有菜を勝手に乗っ取っておいて、
 何勝手なこと言ってるんだ!?」

智也が怒鳴り声をあげる。

有菜の身体で隕石を破壊するー?
そんなことできるわけないし、
もしも出来たとしても有菜はー

「---じゃあ、死ぬか?」

有菜が冷たい声で言う。

「---え…?」
智也が聞き返すと、
有菜は大きな声で叫んだ。

「私の力が無ければお前らは滅ぶんだよ!
 自分の立場、分かってるのか!?」

有菜の怒鳴り声に、智也は萎縮してしまう。

「--…で、、でも、、お、、お前に
 本当にそんな力…」

そこまで智也が言うと、
智也は言葉を止めた。

有菜が青色の光に包まれて、
目が赤く光り、
そのままその場所に居たら、身体ごと砕かれてしまいそうなオーラを
有菜が発したのだ。

「--ひぃっ!?」
智也が叫ぶと
有菜が言った。

「わたしの力を使えば可能だ。
 だから、この身体にエネルギーを蓄えないといけない。
 分かったか?」

有菜の言葉に、智也はうなずくことしかできなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんとか有菜に髪の毛を整えさせた智也ー

「--そんな汚れた制服のままじゃまずいから、
 適当な服に着替えてきてくれよ」

智也がそう言うと「そうか」と言いながら
有菜がその場で服を脱ぎ始めた。

「ってうぉぉ~!やめろ!俺の見えないところで着替えろ!」

そう言って智也が有菜に服を押し付けると
「なんだ?なにそんなに赤くなっている?」と首をかしげながら
部屋の外へと出て行った。

「くっそ…なんなんだよ」
智也が呟く。

隕石の到来ー
有菜が守護者とやらに憑依されるー

散々な日々だー

しかも、どうして有菜が守護者に選ばれたんだよー、
と智也が心の中で不運を呪っていると、
部屋の中にスカートを頭からかぶった有菜が入ってきた。

智也はその姿を見て叫んだ。

「ちがーう!」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結局、智也が有菜の服を着替えさせることに
なってしまった。

物凄くドキドキしながら服を
着替えさせていると、
パンパンに破裂しそうになったズボンを見て、
「なんだそれは?」と有菜が聞いてきたので
智也は答えることもできなかった。

やっとの思いで、着替えを終わらせると、
有菜は「うどんだ」と呟いた。

「はぁ?」

「うどんを食べるんだよ」

有菜にそう言われて、
智也は仕方がなく、近くのデパートのフードコートに
有菜を連れて行く。

この前の、ラーメン屋のようなところでは、
今の有菜の非常識な行動が目立ちすぎる。

だから、フードコートを選んだ。

「---ぐっ…」
有菜は箸を持ちながら震えていた。

有菜に憑依している守護者は、
箸を使うことができないー。

そのため、震えていたのだ。

物欲しそうな顔で、智也の方を見る。

「----あ~!分かったよ!
 俺が食わせてやりゃいいんだろ?」

智也が、あ~んをさせながら
有菜にうどんを食べさせていく。

「---うむ。エネルギーが満ちてくる」
有菜は腕を組みながら、智也が口に運んでくる
うどんを食べている。

(おいおい…)

智也は内心で呟く。
本当に、こいつ”地球を守ってくれるのか?”と。

隕石追突まであと数日。
そのせいか、周囲の様子は暗い。

政府は”隕石は地球から少しそれた場所を通る”と
発表したが、
ネット上を中心に「嘘乙」などという情報が
出回っている。

パニックを起こさないための、
政府の作戦なのかもしれないし、
もしかしたら本当に、衝突しないのかもしれない。

「おかわりだ」
有菜が呟く。

「は?」
智也が思わず声をあげた

「--もっとエネルギーを吸収するぞ」
有菜の言葉に、智也は思わず食い下がった。

「--待て待て待て待て!有菜はダイエット中だ!」

有菜は確かダイエットをしていたー
元々細見だからそんな必要ないだろ?と思いつつも、
いざ、目の前で大食いされると気になる。

「--エネルギーが足りんのだ。
 もっと吸収させろ!」

有菜の言葉に智也は「ダメダメダメ!」と呟く。

しかしー
有菜は冷たい表情で
「滅ぶぞ?この星…」と呟いた。

「…だ、、、だめなものは、、だめだ!」
智也の言葉に有菜は舌打ちをすると
自分の胸を突然わしづかみにした。

「--これは、何だ?」
胸を揉みながら有菜が聞いてくる。

「--な、何だって?そ、それは…」
智也が答えにくそうにしていると、
「邪魔だな…」と言いながら胸を揉みまくっている有菜。

「おい…ここでそれは…」
智也はあまりの非常識さに頭を抱えてしまう。

「--と、、とにかく行くぞ!」

周囲の客が、二人の方を見ている。

智也は顔を真っ赤にしながら、
有菜を引っ張って連れ去った。

ビチャ…。

「--!?」
デパートの階段で突然、液体の音がした。

振りかえるとー
有菜がスカートの中から、
水を垂れ流していたー

「おおおおおおい!?」
智也は叫んだ。

こいつ、漏らしやがったー

「ば、、ばっかやろう!トイレに行きたいならトイレに行くって…!」

そこまで言うと、有菜は微笑んだ。

「トイレって、なんだ?」

とー。

そう言えばー
有菜の部屋に行ったとき、ちょっと変なニオイがしていたようなー?

「--ふざけるなぁ!」
智也は思わず叫んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校は隕石通過まで臨時休校となった。

やはりー
本当に衝突するのかもしれないー

その日は、明後日に迫っていた。

あれからも毎日、有菜に付き合っているが、
あまりの非常識さに、智也は困惑していた。
何かを食べるだけで、本当に地球を
救ってくれるのかもわからない。

しかもー
街中には、時々ゾンビのように徘徊しながら
「新江戸幕府万歳!」と叫んでいる女性や男性がいるー。
ニュースでやってた”新江戸幕府による洗脳”だろうー。

だが、智也にはそんなことはどうでも良かった。

”臨時報道です”

テレビの報道があわただしく何かを告げる。

”新江戸幕府が隕石破壊を宣言”

「---なんだって?」

智也は希望に満ちた目でニュースを見つめる。

「---た、、たまには役に立つじゃねぇか!」と。

新江戸幕府が頑張ってくれれば、
有菜の中にいる守護者に頼る必要はない。

テレビに中継が表示される。

新江戸幕府の天守閣から、
謎の巨大砲台が出現する

「全世界のみなさん。
 これが、我々の最終兵器
 ”コバヤカワ”である」

都戸川外康が堂々と宣言したー。

彼らが”世界にラグナロクをもたらす”として、
利用していた洗脳音波は失敗に終わった。

世界中に電磁波として飛ばすことで、
外康たちの計算では全世界の人間を一度に
洗脳できる予定だったのだが、
ほとんど効果はなく、
全世界の人間の100人に一人程度しか
洗脳できなかった。

開発段階で問題があったのだというー。

そこで、外康は計画を変更した。

他国との戦争用に用意していた秘密兵器
”コバヤカワ”を用いて隕石を破壊、
”地球の英雄”になろうとしたのだ。

コバヤカワの準備が完了する。

その様子が、生中継されている。

新・江戸幕府中央放送が、
全世界に向けて映像を発信している。

外康は叫んだ。

「--コバヤカワ!起動!!!!」

と。

天守閣にある砲台が、莫大なエネルギーをチャージし・・
そして、そこから光線が放たれた。

光線は宇宙へと向かっていく。

「おおおおおおおおおおお!」
テレビを見ていた智也は叫んだ。

「新江戸幕府万歳~!」

と。

洗脳されたわけではない。
心からそう思った。

そしてーー
宇宙のかなたで、コバヤカワから放たれた光線は
隕石に直撃した!

「世界のみなさん!これがコバヤカワである!」
外康は叫んだー

「殿…」
側近が外康に耳打ちをする。

「なにぃ!?」

ニュースの報道が切り替わる

”コバヤカワ着弾 隕石への影響なし”と
テロップが表示された

「つっかえねーー!」
智也は思わず大声で叫んだ。

やはり、有菜に頼るしかない。
そう思った智也は、今日も有菜のもとへ向かうのだった。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

果たして地球に迫る破滅から
地球を救うことができるのでしょうか?

次回をお楽しみに!

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憑依<ラグナロク>

コメント

  1. より:

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    これはもうダメかもしれねえ笑
    無論新江戸には期待して無かったけど

  2. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    期待を裏切らない新江戸幕府…w
    果たして地球を救う事はできるのか…? 次回が楽しみですね

  3. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > これはもうダメかもしれねえ笑
    > 無論新江戸には期待して無かったけど


    コメントありがとうございます!
    新江戸は…ダメダメですネ~

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 期待を裏切らない新江戸幕府…w
    > 果たして地球を救う事はできるのか…? 次回が楽しみですね

    ありがとうございます!
    地球は…どうなっちゃうのでしょうか?笑