<憑依>ラグナロク③~終末~(完)

ついにその日がやってくるー。

地球に隕石が衝突するその日がー。
世界の終焉・ラグナロク。

その運命を回避することは、できるのか…。

--------------------—

「くそっ!もう一度コバヤカワを放て!」
都戸川外康が叫ぶ。

新江戸幕府が英雄になるどころか、
新江戸幕府は全世界にその恥を晒した。

しかもー
秘密兵器の存在が、全世界に露呈してしまった。

「コ…コバヤカワから煙が…!」

秘密兵器のコバヤカワは、超強力な光線を連射できる装置だった。
だがー、たった1発でショートしてしまった。

「---な、、な、、なんだと!?」
外康はうろたえる。

こんなはずじゃなかった。

全世界の人間を洗脳して、
新江戸幕府が、天下、いや、世界を統一するはずだった。

コバヤカワから炎が噴き出る。
その炎は天守閣に燃え移った。

「---う…裏切ったな!コバヤカワ!」
故障して炎を噴きだす兵器に向かって叫ぶ外康。

「--と、、殿!ここは危険です!早くお逃げください!」

「ええい!うるさい!」

外康は怒りの形相でコバヤカワを睨む。

「--おぉぉぉぉお…!
 コバヤカワ~!貴様は西軍につくのかー!」

意味不明は言葉を口走りながら、
新江戸幕府の天守閣はそのまま炎上しー
都戸川外康は、そのままコバヤカワと運命を共にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

隕石衝突のその日がやってきた。

有菜が、膨れた腹を叩きながら
歯に引っかかったもやしをとろうとしている。

「---…」
智也は呆れ果てていた。

みそラーメン3倍を平らげた有菜は
げっぷしながらのんきにしている。

「--おい…」

隕石衝突まであと10時間と発表されているなか、
有菜はいつも通りだった。

「お前…本当に世界を救ってくれるんだろうな?」
智也は、有菜を疑っていた。

こいつ、ラーメンやうどん、そばを食べに来ただけの
異星人じゃないかと。

「--心配はいらない。
 わたしはお前たちを救い来た。
 最初に言った通りだ」

有菜は笑う。

「--だったら、証拠、見せてくれよ!」
智也が呟いた。

もしも、もしもこいつが、
何もしてくれないのなら、
自分も地下シェルターだとか、そういう場所に逃げ込みたい。

どうやら隕石は本当に衝突するようだから、
こんな場所に居たら危険だ。

だがー
もしも、有菜に憑依した何かが世界を救ってくれるのであればー

「--それはできぬ」
有菜が呟いた。

「せっかくチャージしたエネルギーをここで使えば、
 隕石は破壊できない」
有菜の言葉に、智也が首を振る。

数日前、
新江戸幕府が放った兵器”コバヤカワ”
あれは相当な威力に見えた。

だがー
隕石は破壊できなかった。

しかも、何故か新江戸幕府は、その日、崩壊したー。

「--お前に、コバヤカワ以上の力を出せるのか?」
智也が疑いの目で有菜を見つめると

「あんなものと一緒にするな」
と、有菜は頬を膨らませて不貞腐れた態度を見せた。

「---…わかったよ!」
智也は頭を掻きながら言う。

「--お前が、本当に隕石を破壊できたとしても
 できなかったとしても、
 俺はお前と運命を共にする。

 俺はお前を信じる」

智也がそう言うと、
有菜が「そうか。信じてくれて感謝する」と呟いた。

「---それにー
 どうせ死ぬなら、有菜と一緒がいいしな」

と、智也が笑いながら言うと、
有菜は顔を赤らめながら「そ、、それは…その…嬉しいな」と目を逸らした。

智也は思わず突っ込んだ。
「お前は有菜じゃねぇ~!」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不気味な音が響き渡る。

隕石衝突の時がやってきた。

「---感謝する」

「あ?」

前を歩いていた有菜が急に感謝の言葉を口にした。

「わたしのしもべとして、1週間の間、
 ご苦労だった」

その呟きに、智也が笑う。

「--そのしもべって言い方、どうにかならないのか?」
智也が言うと、
有菜は「わたしの星では、自分以外のことを全てしもべと呼ぶ」と答えた。

「はぁ?意味わかんね…」
智也が苦笑いしていると、
有菜は空を見上げた。

空が赤く染まりつつある。

「--ラグナロク」
智也が呟いた。

もしも、もしもこのまま世界が終わるのであれば
有菜と一緒に居たい。

有菜は智也の方を向いて言った。

「安心しろ。約束は、守る」

そう言うと、有菜は突然
青い光を身にまとった。

「ぬううううううううううううう…!」
有菜の顔に謎の文様が浮かび、
有菜の背中から黒い羽根が生えてくるー

「---あ、有菜!」
智也は思わず声をあげた。

有菜が異形の存在へと姿を変えていく。

その姿はまるでー
堕天使のようだった。

「---」
有菜が空を見つめた。

そこにはー
巨大な隕石が見え始めているー

まるで、接近してくる月かのように、
少しずつ、大きくなっていく隕石。

かなり、不気味な光景だった。

「---」

智也がふと有菜を見ると、
有菜は自分の胸を触ってニヤニヤしていた。

「ってぉおい!」
智也が叫ぶ。

この後に及んで何をしているのだろうか。

「やっぱ気持ちいいなぁ♡ お前たちのこれは♡
 ふへっ♡」

有菜が笑いながら言う。

「おい!こらこらこら!世界を救ってくれよ!」
智也が叫ぶと、
有菜はうなずく。

「分かってる。…最後ぐらい、気持ちよいこと
 させてくれ」

それだけ言うと、
有菜は思いついたかのように口にした。

「一つ、どうしても気になることがあるんだが
 聞いてもいいか?」

「なんだ?」

智也は次第に大きくなる、空の隕石を見つめながら返事をした。

「--わたしの身体は膨らんでいるのに、
 どうしてお前は、平らなんだ?」

とー、有菜が質問をしてきた。

「--あ?それは男と女の違いでだな…」

智也はこんな時にそんなこと疑問に思っている場合か、
と思いながら、有菜の方を見る。

「おとことおんな?」

有菜の言葉に智也は頭を掻きながら
呟いた。

「--この地球を守る担当だとか何だとか
 言ってたけど…
 案外、知らないこと多すぎないか?」

とー

有菜はその言葉に苦笑いすると、
そのまま、空を見上げた。

最初は月ほどの大きさだった隕石が
今では空に大きく映っている。

あれだけのサイズの隕石が落ちたら、
直撃を免れた場所以外も、大気が激変して
滅び去ってしまうだろうー。

「---本当に、できるのか?」
智也が言うと、
有菜は「誰に向かって口をきいている?わたしは守護者だぞ!」と
自信満々に呟いた。

有菜が身体中から光を放つー。
七色の光が、有菜の背中から生えた翼を
さらに進化させていく。

「あ…あの…」
智也は呟いた。

周囲に人影は無い。
政府が用意したシェルターに皆逃げ込んだか、
それとも、家で最期のひと時を過ごしているのかー

「---有菜は、助かるんだろうな?」
智也の心配はそこだった。

有菜の身体は異形の姿に変形している。

しかも、隕石にその身体で立ち向かう。

そうなれば、有菜が無事に帰ってくる可能性は
かなり低いような気がする。

そう心配していると、有菜は笑った。

「---心配性だな。
 わたしを信じろ―」

と。

そして、有菜は
「お前との1週間、なかなか良かったぞ」と笑いながら言うと、
「その…なんというか……ありがとう」
と顔を赤らめながら呟いた。

「---え、、あ、、、は、、どういたしまして」
智也も顔を赤らめながら答えると、
有菜は智也に背を向けて、空高く飛び上がった。

”今日がラグナロクになるのかー”

智也は、そんな風に思いながら
空を見つめる。

物凄いスピードで上空の隕石に向かう有菜ー。

もう、光しか見えないー
有菜はどうなってしまうのだろうー

だが、結局、あの隕石をどうにかできなければ、
有菜は助からない。

だったら、信じるしかないー。

ドォォォォォォォォン

激しい轟音が空から響き渡った。

智也がびっくりして空を見ると、
空の隕石の動きがおかしくなっていた。

隕石の周囲を、七色の光が
激しく動き回っている。

「有菜…!」
智也には願うことしかできなかった。

上空の隕石が、さらに近づいてくる。

かなりの大きさだ。
昔、智也は月が落ちてくるゲームを遊んだことがあった。

その光景によく似ている。

七色の光が周囲を激しく動き回り、
隕石を攻撃しているように見える。

「---だ、、大丈夫なのか?」
隕石が消滅する様子はない。

なんだか、守護者を名乗るわりに
あまり頼りなさそうな守護者だった。

本当にー?

そう思っていると、
空でもう一度大きな爆音がした。

そしてー
隕石が、粉々に砕け散ったー

「---!?」

智也は目を見開いて、その光景を見つめる。

今度は粉々になった隕石が地上に降り注ごうとしている。
まるで、火の雨のようにー

その雨のように降り注ごうとしている
隕石を、七色の光が切り裂いていくー

「---・・・!」
智也はその光景から目を離すことができなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

地球はーーー
滅んでいなかった。

”ラグナロク”は回避されたのだった。

「---」
智也が病院を訪れるー

病室をノックして
中に入ると、そこには、有菜の姿があった。

「---智也」
身体に包帯を巻いた有菜が微笑む。

「有菜…」

有菜は無事だった。
あの後、雨のように降り注ぐ破片が
消滅したのち、
有菜の身体が空からゆっくりと堕ちてきた。

かなりボロボロになっていたから、
智也は慌てて救急車を呼んだ。

そのおかげかー
こうして有菜は無事に、一命を取り留めたのだった。
怪我も、大したことがないらしい。

「---有菜が無事で良かった―」
智也がそう呟くと、
有菜は「ありがとう…」と嬉しそうに呟いた。

智也は思う。
あの守護者は本物だった。

地球を、守ってくれたー

「…お礼ぐらい言わせろよー」
智也は小さくそう呟いた。

守護者と交わした会話は、胸がどうこうだとか、
そんなものが最後になってしまった。

地球を守ってくれたあの守護者はどうなったのだろうか。
有菜から抜け出して、元の星に帰って行ったのか、
それとも、隕石との戦いで、命を燃やし尽くしたのか。

いずれにせよー
あの守護者とは、もう、会えない。

けれどー

あの守護者が救ってくれたこの世界と有菜を
今までよりもちょっぴり大切にしようー

智也は、そう思うのだった。

「----------」
有菜は智也の様子を見ながら、あることを考えていた。

”この身体からー出るにはどうしたらいいのだ?”

とー。

有菜の記憶が流れ込んできたから、
有菜に成りすますのはたやすい。

だがー

”帰りたいー”

有菜の無事を喜ぶ智也を見て
有菜は苦笑いしながらこう思った。

”今更、身体から抜け出せなくなったなんて言えない…”

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

混乱する住民ー

混乱する要人たちー

斬り捨てられる人々ー

沖ノ鳥島ー

新江戸幕府が崩壊した今、
新たな政府が誕生しようとしていた。

「これが、新・明治維新である」

新江戸幕府の跡地では、
新明治政府(しんめいじせいふ)が
誕生の時を迎えていたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

無事に地球の滅亡を回避することができました~!
良かったですネ~!

有菜の変化に、いつか智也くんが気付く日は
やってくるのでしょうか~!

お読み下さりありがとうございました!

憑依<ラグナロク>
憑依空間NEO

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いや〜、地球救われて良かった。
    無名さんだと「地球は粉々になりました。もっと早く信じてあげるべきでしたネ!」とかやりかねないのでちょっと本気でハラハラしましたねw

    で、一件落着かと思いきや、とんでもないオチが!
    なんか顔赤らめてフラグ立ってましたし、この二人どうなっちゃうのでしょうか…
    面白かったです!(アレには突っ込まない)

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > いや〜、地球救われて良かった。
    > 無名さんだと「地球は粉々になりました。もっと早く信じてあげるべきでしたネ!」とかやりかねないのでちょっと本気でハラハラしましたねw
    >
    > で、一件落着かと思いきや、とんでもないオチが!
    > なんか顔赤らめてフラグ立ってましたし、この二人どうなっちゃうのでしょうか…
    > 面白かったです!(アレには突っ込まない)

    ありがとうございます~!
    地球はちゃんと救いました~!

    このあとは、色々な意味で大変そうですネ~!
    新明治政府…?ノーコメントで!

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