龍平は憑依された子にたどり着いた。
あざ笑う少女を前に、絶望する龍平。
しかし、それでも龍平は諦めなかった。
凶悪犯罪者から、少女を救うために…。
※なりすましモノ祭り2018投稿作品です!
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教室で対峙する龍平と彩香。
彩香は、龍平をバカにした笑みを浮かべている。
「どういうことなんだ…彩香!」
信じたくなかったー
大切な彼女の彩香がー
いつも優しい彩香がーー。
「ふふふ…
最初はね…わたし、淳子に憑依してたの。
一番動きやすそうだったからね」
淳子ー。
スポーツ好きの子だ。
”私、最近寝不足でさ、
今日の朝も眠くて
な~んかボーっとしてたんだよね!”
淳子の言葉を思い出すー。
そうか、あの日の朝までは淳子に…。
「でもさ、学校に登校して、コイツが目に入った。
この女がね」
彩香が自分のことを他人のように言う。
そしてーー
「だから、俺は引越ししたのさ!
この彩香って女にな!
ひひひひひひひひっ!」
彩香が表情を歪めて笑う。
今まで見たこともない表情。
「うふふ…でね、わたし、乗っ取られちゃったの!
今では心も体も、思うがまま!うふふふ…」
「嘘だ・・・」
龍平が首を振る。
「嘘だ~~~~~~!」
龍平は叫んだ。
「--”からだ”を移動できないと思ってたなんて…
バカね」
彩香はバカにしたようにして鼻で笑う。
「--そうだ。
あんた、わたしのエッチなところ、見たことある?」
龍平は突然の言葉に首を傾げる。
彩香とは、まだそういう段階にはなっていない。
「---ないんだ? うふっ…
じゃ、見せてあげる」
彩香が自分の胸を触り出す。
「--や、やめろ!ここ学校だぞ?
あ、彩香、目を覚ましてよ!」
龍平が叫ぶ。
「あん…あっ♪ うふふっ♪
わたし、、けっこう感度がいいのよ?
あっ♪ ふふっ… うふふふふっ」
胸を揉みながら甘い声を出し始める彩香。
今まで聞いたこともないようなエッチな声を出す彩香。
「ねぇ、、やめてよ彩香!ねぇ!」
龍平は叫んだ。
だがー
「どう?わたしの、、あっ♪
エロい声…♪
ほら、、彼女が目の前で喘いでるのよ??
あなたも興奮するでしょ???
ウフフッ・・・あはははははははっ!」
彩香の乱れた姿ーー。
そんな恥ずかしい行為を”やらされている”彩香。
「やめろ!!!彩香を汚すな!」
龍平が叫びながら彩香のほうに向かう。
「邪魔だ!どけ!」
彩香が乱暴に叫んで、龍平を吹き飛ばす。
「うわぁ」
机に激突する龍平。
「あん…♪
わたし…こんなことしたくないのに…
興奮しちゃってる!!
うふふ…わたしの、、ううん、俺の興奮が
この女のからだを興奮させている!!!
あはははははははっ!」
彩香から愛液がこぼれ落ちる。
「--やめてくれ!!!!彩香!彩香!目を覚ましてくれ!」
龍平は必死に叫ぶ。
「んふふふふっ!む~りよ!
わたし、完全に乗っ取られちゃってるの!うふっ!」
そう言うと、今度は自分の制服を引きちぎり始めた。
「あははっ、わたし、教室で制服破いちゃってる!
完全に変態ね!!
えへへへへ…たまんねぇ、、たまんねぇよ!!!」
制服のちぎれる音が響き渡る。
「おい!やめろよ!ふざけるなよ!!
座間ぁぁあぁ!」
龍平は我を忘れて彩香に突進した。
だが、彩香は引きちぎった制服を龍平に投げつけた。
そしてー
背後から龍平を羽交い絞めにした。
「--調子乗るなよ。なぁ?
いいのかよ?服を全部脱ぎ捨てて、学校から飛び出して
街中走ってやるぞ?」
彩香が笑う。
「---やめろ…彩香の人生を…壊す気か?」
苦しみながら龍平は言う。
「うふふ…そうねぇ、あなた次第かな?」
彩香は笑う。
悪魔のように。
「---龍平、わたしを助けたい?」
彩香が尋ねる。
「---決まってる!彩香は僕の大事な、彼女だ!」
龍平が涙ぐみながら彩香を見る。
目の前には、制服を半分引きちぎって、
淫らな姿になってしまった彩香。
「--うふふふふふ、そ~んなにわたしを助けたいんだ…
じゃあさ…」
彩香がニヤリと笑う。
「そこから飛び降りなさい」
ー無情な言葉。
教室は4階。
彩香はその教室のベランダから、飛び降りろと、
龍平に指示を出した。
「---え、、、無理だよ…」
龍平が躊躇する。
「--あっそ」
彩香が低い声で言うと、今度はスカートに手をかけ始めた。
「----やめろ!やめてくれ!」
龍平が叫ぶ。
彩香が冷たい表情で龍平を見ている。
なんとかこの場を収めようと龍平は土下座した。
「分かった…、、分かったから、
これ以上、彩香を汚さないで!」
龍平が叫ぶと、
彩香は龍平の頭を靴で踏みつけた。
「ふふふふ、女王のわたしを守るために、
ベランダから飛び降りなさい!
…な~ちゃってね♪あははははははは!」
頭を散々踏まれた龍平は、彩香を睨む。
彼女は、完全に支配されている。
やむを得ず、ベランダに向かう龍平。
彩香が腕を組みながら、
それを笑ってみている。
ベランダに出た龍平。
下を見つめる。
「---」
”ここから飛び降りれば、
彩香は解放されるのか?”
龍平は考える。
いやーーー、
相手は凶悪犯罪者だ。
嘘に決まっている。
自分がここから飛び降りたところで…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--はぁ~あった、あった」
テニスコートにやってきていた淳子が
嬉しそうに自分のテニスラケットを手に取る。
昼休みにテニスをしていた淳子は、
友達と話をしているうちに、
テニスラケットを忘れたままにしてしまっていたのだ。
「---さ、戻ろっと!」
どうせ、授業は自習的なものだから、
少し抜けても、大丈夫大丈夫、などと思いながら、
再び視聴覚室へと戻ろうとする。
「---あれ?」
淳子はふと、4階のベランダを見た。
そこにはーー
龍平が下を見つめて立っていた。
「うそっ!
市村くんじゃんあれ!
まさか…自殺?」
淳子はそう呟くと、慌てて校舎に入っていく。
そして…
視聴覚室に戻ると、仲の良い由香里のところに行き、
耳打ちした。
「え?市村くんが?」
由香里が不思議そうに淳子に聞き返す。
さっき、由香里が目薬を教室に取りに戻った際、
龍平もあとからやってきて、忘れ物だなんだの言っていた。
「---勘違いじゃないの?」
由香里が心配そうな顔で聞く
「ううん、今にも飛び降りそうだったんだって!」
淳子が言うと、
由香里は、授業で流れている映画のほうを一瞬
見つめてから呟いた。
「---もしそうなら、止めにいかなくちゃ!」 と。
由香里と淳子が慌しく視聴覚室から出て行く。
映画に夢中な生徒達は気づかない。
「----由香里?淳子?」
仲良し三人組の一人、
おしゃれ好きの美香が、二人が出て行くのに気づき、
なんとなく興味本位でそのあとに続いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほら、飛び降りなさい」
彩香が笑う。
乱れきったその姿で。
「---いやだ」
龍平は涙を流しながら言う。
「---は?」
彩香が不快そうに声を出し、
龍平を睨む。
「---座間、だったよな…
どうせ僕が飛び降りても、お前はそれを笑って、
彩香に成りすまし続けるつもりだろう!
ふざけるな!
僕は騙されないぞ!」
龍平がベランダの方から彩香に向かって叫んだ。
「---ふふふっ…
そうね・・・
だってさぁ…みんな バカばっかりなんだもん。
彩香に”成りすましている”だけで、
誰も気づきやしない!
み~んな外見だけ!
外見が彩香なら、中身が誰であろうと
関係ないってことでしょ?
うふふふふふっ」
彩香が笑う。
龍平は悔しさで唇を噛みしめた。
どうしてーー、
どうして気づいてあげられなかったのかー と。
「くふふふふ、誰も俺が座間だってことに気づかない!
あははははははは!
可笑しくて笑っちゃうんだけど!あはははははは♪」
座間と彩香の口調が入り乱れる。
その時だった。
「----彩香…?」
クラスメイトのスポーツ女子、淳子が教室に入ってきた。
「---どういうこと…?」
生徒会の由香里も…
「--何なの?」
おしゃれ好きの美香も…。
3人が教室に入ってきた。
「----!」
彩香が慌てていつものような笑みを浮かべて三人のほうを
振り返る。
「--みんな、どうして?」
龍平が言うと、
由香里が、答えた。
「どうしてって…市村くんが、ベランダから
飛び降りようとしてるって、淳子が言うから…」
由香里に続いて、淳子が口を開く。
「ほら、あんたさっきベランダに立ってたでしょ?
私、見たんだからね!
まだ死ぬには早いって!」
淳子が少しふざけた調子で言う。
「それは、その…」
龍平が返事に困っていると、
おしゃれ好きの美香が口を開いた。
「---で、、座間って…?どういうこと?
何かニュースでやってた逃亡中の犯罪者のことよね?」
美香が尋ねると、
彩香が笑いながら言った
「--ちょ、ちょっとね。気にしないで」
彩香がそういうと、
由香里が口を開いた。
「--最近、市村くんが色々調べてたのはーー
あなたのことだったのね…?」
由香里が彩香に言う。
生徒会の由香里は、
洞察力や勘も鋭い子だった。
「---何のこと?」
彩香が少しイラついた様子で言う。
「---…今の話、聞いたわ…。
松本さんの体を、返してあげて…」
由香里が悲しそうに言う。
彩香が座間に憑依されているー。
3人の女子生徒は、
この非現実的な事実を、
認めるしかなかった。
何故なら目の前の彩香が
たった今、
「俺は座間だ!」と叫んでいたのだから。
「---チッ!うっせぇんだよ!
この体は俺のものだ!
俺が、いや、わたしが彩香だよ!」
彩香が胸を触りながら言う。
制服は破れ、乱れている格好で。
「---松本さんはそんな弱い子じゃない」
由香里が言う。
「ははっ!ばっかじゃないの!
こうして私に好き勝手されてるじゃない!」
彩香が言う。
その表情を見て、
由香里ははっとした。
そしてーーー
「…なら…どうして涙を流しているの?松本さん」
彩香はーー
目から涙を流していた。
「---は?わたしが泣いてなんか…!」
そう言いかけたそのとき、
彩香の頬を涙が伝う。
「---えっ…な、、なに…?どうして…?」
彩香の目から涙がこぼれ落ちていく。
由香里ー
美香ー
淳子ー
そして、彼氏の龍平。
大事な仲間たちが
”自分を助けようとしてくれている”
そのことが、
奥底に幽閉されている彩香の意識を呼び覚ました。
「--ねぇ…彩香」
龍平が静かに呟いた。
彩香は龍平のほうを見て、睨みつける。
「---」
彩香が龍平を鋭い目で睨んでいる。
「--僕は…彩香のことが大好きだ」
龍平が真顔で言う。
「--ちょ、、昼間から愛の告白?」
おしゃれ好きの美香が言う。
「お~流石に未来の警察官は違うね~!」
スポーツ好きの淳子が冷やかす。
だから、警察官にならないってば、と思いながら
龍平はさらに続けた。
「ーーーうるせぇ!黙りやがれ!」
彩香が怒鳴り声をあげる。
だが、目からの涙が止まらない。
「くっそ…この女、、俺に支配されているのに!
無駄な抵抗しやがってぇ!」
彩香が頭を抱えながら
憎しみに満ちた目で、龍平を見つめる。
「--彩香!彩香はこんなやつになんか負けないって
僕は信じてる!
お願いだ!戻ってきてきてよ!」
龍平が言う。
「--松本さん」
生徒会の由香里も彩香の名を呼ぶ。
「---これだけ彼氏に叫ばれちゃ、
放っておけないよね?」
スポーツ好きの淳子が彩香に語りかける。
「--いつまで体、好き勝手にされてんのよ!」
おしゃれ好きの美香が叫ぶ。
「だ、、、黙れええええ!!」
彩香が、怒りを爆発させて、壁のほうに歩いていき、
自分の頭を壁に打ち付け始めた。
ゴン!ゴン!と音がする。
「この体は俺のものだ!
いつまでも抵抗しやがって!
消えろ!消えてしまえ!」
本来の意識に語りかけながら頭を強く打ち付けている彩香。
可愛い声で、
信じられないような汚い言葉を吐いている。
「----!?」
彩香の手を龍平がつかんだ。
「---どんなになっても、
僕は彩香を信じるからーー」
龍平のまっすぐな目…。
「----龍平…」
彩香の表情が緩んだ。
そして…
「うっ…うああああああああああっ!」
彩香が頭を抱えて、その場に蹲った。
「ぐ…っ ごほっ…ぐふっ…」
彩香が苦しそうに咳き込むと、
ドロドロした液体が出てきた。
彩香がその場にうずくまる。
ドロドロした液体が、
少しずつ移動している。
「---これは!」
龍平は思った。
これが”座間”だと。
「---よくも彩香を…」
スライムのような小さな液体を睨む龍平。
そしてーーー
「--僕はお前を、許さない!」
そう叫ぶと、龍平は、床を這いずる小さな
スライムのような物体になった凶悪犯罪者の座間を
力強く踏みつけた。
「ぎぃあああああああああっ!」
断末魔のような声が、
聞こえた気がしたーーーー
「---人の体を弄ぶなんてーーー」
龍平はそう呟く。
スライムのような物体は、龍平に踏み潰されて、
蒸発するかのようにして消えた。
「お・・・のれ・・・」
…その言葉は、既に、言葉にならなかった。
彼にはもう、体が無かったからだ。
「--松本さん!」
「ほら、しっかりしなさいよ!」
「…全く、世話がやけるわね!」
由香里、淳子、美香の3人が
倒れたままの彩香を優しく
抱えている。
「------」
「---彩香!」
龍平が叫ぶ。
その呼びかけに応じるかのように、
彩香はゆっくりと目を覚ました。
久しぶりの目覚め…。
彩香はうつろな目で周囲を見渡す。
「あれーー、わたし…?」
不思議そうな顔をして、
龍平のほうを見る彩香。
制服が乱れきった姿…。
こんな姿に、無理矢理”させられた”ことに
龍平は強い怒りを感じた。
けれどー
座間はもう居ない。
「---そっか」
彩香が優しく微笑んだ。
「---龍平が、助けてくれたんだね」
その言葉に、龍平は静かに微笑み返した。
生徒会長の由香里がその様子を微笑ましそうに、
安心した様子で見つめている。
「---さすが!未来の警察官!」
淳子がふざけた様子で、拍手をしている。
「--ちょっとぉ、感動の再会は
2人だけの世界でやってよね」
おしゃれ好きの美香が、苦言を漏らす。
「---あっ!」
由香里が、時計を見て、声をあげる
「そろそろ授業終わる時間よ!
先生戻ってきちゃう!」
映画の授業で、先生も居ないから抜け出してきたけれど、
そろそろまずい。
由香里たちは「先に戻ってるね!」と龍平に声を
かけて、慌てて視聴覚室へ戻っていった。
「---彩香、おかえり」
龍平が優しく手を差し伸べると、
彩香は微笑んで
「ありがとう。ただいまーー」と優しく呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そうか…座間は…」
夜。
父に事件の結末を報告した。
座間は彩香に憑依していたこと。
やむを得ず、座間と思われる物体を踏み潰したことー
「まぁ、問題ないさ」
父が呟いた。
「--憑依薬なんて、警察内部でも誰も
信じちゃくれない。
恐らくこのまま座間は、行方不明で処理されるだろう」
座間はもう居ない。
見つかりようがないのだ。
だから、龍平が座間を踏み潰したとしても、
そのことは、誰にも分からないー。
「---龍平。」
父が手を差し伸べた。
「よくやってくれた。本当に、ありがとう」
父の言葉に龍平は笑いながら答えた。
「--困ったときは、お互いさま、だろ?」
その言葉に父子は微笑んで、握手を交したーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
学校は、いつものように賑わっていた。
そんななか、
校舎を歩くとある生徒。
人目を気にするように、お手洗いに入っていく。
そしてーーー
鏡を見つめて、その生徒は笑みを浮かべた。
「これで、もう誰も”俺のこと”を探す人間は居ないー」
”座間”は消えていなかった。
龍平に踏み潰されて消滅したように、見えた座間。
確かに、一度は体から追い出された。
だが、”霊体”は目に見えない。
あれは、座間の演出に過ぎなかった。
あの時、龍平が踏み潰したのはーーーー
そしてーーー
「これからは、”この体”としてーー
”成りすまして”生きていくさーー。
ふふふ・・・
俺はここにいるのにー、
誰も、俺に気づけない」
ーお手洗いの鏡に、邪悪な笑みを浮かべて映っていた
生徒はーーーーーーーーー
もう、誰も、気付かない。
彼が”成りすまして”いることにーーー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
私のサイト以外で、始めて投稿してみました!
お読み下さりありがとうございます^^
成りすましモノ祭りにこのように
参加させて頂けてとても光栄です。
ありがとうございました!!
※(コメントも原文のまま掲載しました)
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