<憑依>フュジティブ③~対決~

龍平は憑依された子にたどり着いた。

あざ笑う少女を前に、絶望する龍平。
しかし、それでも龍平は諦めなかった。

凶悪犯罪者から、少女を救うために…。

※なりすましモノ祭り2018投稿作品です!

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教室で対峙する龍平と彩香。

彩香は、龍平をバカにした笑みを浮かべている。

「どういうことなんだ…彩香!」

信じたくなかったー

大切な彼女の彩香がー
いつも優しい彩香がーー。

「ふふふ…
 最初はね…わたし、淳子に憑依してたの。

 一番動きやすそうだったからね」

淳子ー。
スポーツ好きの子だ。

”私、最近寝不足でさ、
 今日の朝も眠くて
 な~んかボーっとしてたんだよね!”

淳子の言葉を思い出すー。

そうか、あの日の朝までは淳子に…。

「でもさ、学校に登校して、コイツが目に入った。
 この女がね」

彩香が自分のことを他人のように言う。

そしてーー

「だから、俺は引越ししたのさ!
 この彩香って女にな!

 ひひひひひひひひっ!」

彩香が表情を歪めて笑う。
今まで見たこともない表情。

「うふふ…でね、わたし、乗っ取られちゃったの!
 今では心も体も、思うがまま!うふふふ…」

「嘘だ・・・」
龍平が首を振る。

「嘘だ~~~~~~!」
龍平は叫んだ。

「--”からだ”を移動できないと思ってたなんて…
 バカね」

彩香はバカにしたようにして鼻で笑う。

「--そうだ。
 あんた、わたしのエッチなところ、見たことある?」

龍平は突然の言葉に首を傾げる。

彩香とは、まだそういう段階にはなっていない。

「---ないんだ? うふっ…
 じゃ、見せてあげる」

彩香が自分の胸を触り出す。

「--や、やめろ!ここ学校だぞ?
 あ、彩香、目を覚ましてよ!」

龍平が叫ぶ。

「あん…あっ♪ うふふっ♪
 わたし、、けっこう感度がいいのよ?
 あっ♪ ふふっ… うふふふふっ」

胸を揉みながら甘い声を出し始める彩香。

今まで聞いたこともないようなエッチな声を出す彩香。

「ねぇ、、やめてよ彩香!ねぇ!」
龍平は叫んだ。

だがー

「どう?わたしの、、あっ♪
 エロい声…♪
 ほら、、彼女が目の前で喘いでるのよ??
 あなたも興奮するでしょ???

 ウフフッ・・・あはははははははっ!」

彩香の乱れた姿ーー。

そんな恥ずかしい行為を”やらされている”彩香。

「やめろ!!!彩香を汚すな!」

龍平が叫びながら彩香のほうに向かう。

「邪魔だ!どけ!」
彩香が乱暴に叫んで、龍平を吹き飛ばす。

「うわぁ」
机に激突する龍平。

「あん…♪
 わたし…こんなことしたくないのに…
 興奮しちゃってる!!

 うふふ…わたしの、、ううん、俺の興奮が
 この女のからだを興奮させている!!!
 
 あはははははははっ!」

彩香から愛液がこぼれ落ちる。

「--やめてくれ!!!!彩香!彩香!目を覚ましてくれ!」

龍平は必死に叫ぶ。

「んふふふふっ!む~りよ!
 わたし、完全に乗っ取られちゃってるの!うふっ!」

そう言うと、今度は自分の制服を引きちぎり始めた。

「あははっ、わたし、教室で制服破いちゃってる!
 完全に変態ね!!

 えへへへへ…たまんねぇ、、たまんねぇよ!!!」

制服のちぎれる音が響き渡る。

「おい!やめろよ!ふざけるなよ!!
 座間ぁぁあぁ!」

龍平は我を忘れて彩香に突進した。

だが、彩香は引きちぎった制服を龍平に投げつけた。

そしてー
背後から龍平を羽交い絞めにした。

「--調子乗るなよ。なぁ?
 いいのかよ?服を全部脱ぎ捨てて、学校から飛び出して
 街中走ってやるぞ?」

彩香が笑う。

「---やめろ…彩香の人生を…壊す気か?」

苦しみながら龍平は言う。

「うふふ…そうねぇ、あなた次第かな?」
彩香は笑う。

悪魔のように。

「---龍平、わたしを助けたい?」

彩香が尋ねる。

「---決まってる!彩香は僕の大事な、彼女だ!」

龍平が涙ぐみながら彩香を見る。

目の前には、制服を半分引きちぎって、
淫らな姿になってしまった彩香。

「--うふふふふふ、そ~んなにわたしを助けたいんだ…
 じゃあさ…」

彩香がニヤリと笑う。

「そこから飛び降りなさい」

ー無情な言葉。

教室は4階。

彩香はその教室のベランダから、飛び降りろと、
龍平に指示を出した。

「---え、、、無理だよ…」
龍平が躊躇する。

「--あっそ」
彩香が低い声で言うと、今度はスカートに手をかけ始めた。

「----やめろ!やめてくれ!」
龍平が叫ぶ。

彩香が冷たい表情で龍平を見ている。
なんとかこの場を収めようと龍平は土下座した。

「分かった…、、分かったから、
 これ以上、彩香を汚さないで!」

龍平が叫ぶと、
彩香は龍平の頭を靴で踏みつけた。

「ふふふふ、女王のわたしを守るために、
 ベランダから飛び降りなさい!

 …な~ちゃってね♪あははははははは!」

頭を散々踏まれた龍平は、彩香を睨む。

彼女は、完全に支配されている。
やむを得ず、ベランダに向かう龍平。

彩香が腕を組みながら、
それを笑ってみている。

ベランダに出た龍平。
下を見つめる。

「---」

”ここから飛び降りれば、
 彩香は解放されるのか?”

龍平は考える。

いやーーー、
相手は凶悪犯罪者だ。
嘘に決まっている。

自分がここから飛び降りたところで…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--はぁ~あった、あった」
テニスコートにやってきていた淳子が
嬉しそうに自分のテニスラケットを手に取る。

昼休みにテニスをしていた淳子は、
友達と話をしているうちに、
テニスラケットを忘れたままにしてしまっていたのだ。

「---さ、戻ろっと!」

どうせ、授業は自習的なものだから、
少し抜けても、大丈夫大丈夫、などと思いながら、
再び視聴覚室へと戻ろうとする。

「---あれ?」
淳子はふと、4階のベランダを見た。

そこにはーー
龍平が下を見つめて立っていた。

「うそっ!
 市村くんじゃんあれ!
 まさか…自殺?」

淳子はそう呟くと、慌てて校舎に入っていく。

そして…
視聴覚室に戻ると、仲の良い由香里のところに行き、
耳打ちした。

「え?市村くんが?」
由香里が不思議そうに淳子に聞き返す。

さっき、由香里が目薬を教室に取りに戻った際、
龍平もあとからやってきて、忘れ物だなんだの言っていた。

「---勘違いじゃないの?」
由香里が心配そうな顔で聞く

「ううん、今にも飛び降りそうだったんだって!」
淳子が言うと、
由香里は、授業で流れている映画のほうを一瞬
見つめてから呟いた。

「---もしそうなら、止めにいかなくちゃ!」  と。

由香里と淳子が慌しく視聴覚室から出て行く。

映画に夢中な生徒達は気づかない。

「----由香里?淳子?」
仲良し三人組の一人、
おしゃれ好きの美香が、二人が出て行くのに気づき、
なんとなく興味本位でそのあとに続いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ほら、飛び降りなさい」
彩香が笑う。

乱れきったその姿で。

「---いやだ」
龍平は涙を流しながら言う。

「---は?」
彩香が不快そうに声を出し、
龍平を睨む。

「---座間、だったよな…
 どうせ僕が飛び降りても、お前はそれを笑って、
 彩香に成りすまし続けるつもりだろう!

 ふざけるな!
 僕は騙されないぞ!」

龍平がベランダの方から彩香に向かって叫んだ。

「---ふふふっ…
 そうね・・・

 だってさぁ…みんな バカばっかりなんだもん。
 彩香に”成りすましている”だけで、
 誰も気づきやしない!
 
 み~んな外見だけ!
 外見が彩香なら、中身が誰であろうと
 関係ないってことでしょ?
 うふふふふふっ」

彩香が笑う。
龍平は悔しさで唇を噛みしめた。

どうしてーー、

どうして気づいてあげられなかったのかー と。

「くふふふふ、誰も俺が座間だってことに気づかない!
 あははははははは!
 可笑しくて笑っちゃうんだけど!あはははははは♪」

座間と彩香の口調が入り乱れる。

その時だった。

「----彩香…?」
クラスメイトのスポーツ女子、淳子が教室に入ってきた。

「---どういうこと…?」
生徒会の由香里も…

「--何なの?」
おしゃれ好きの美香も…。

3人が教室に入ってきた。

「----!」
彩香が慌てていつものような笑みを浮かべて三人のほうを
振り返る。

「--みんな、どうして?」
龍平が言うと、
由香里が、答えた。

「どうしてって…市村くんが、ベランダから
 飛び降りようとしてるって、淳子が言うから…」

由香里に続いて、淳子が口を開く。

「ほら、あんたさっきベランダに立ってたでしょ?
 私、見たんだからね!

 まだ死ぬには早いって!」

淳子が少しふざけた調子で言う。

「それは、その…」
龍平が返事に困っていると、
おしゃれ好きの美香が口を開いた。

「---で、、座間って…?どういうこと?
 何かニュースでやってた逃亡中の犯罪者のことよね?」

美香が尋ねると、
彩香が笑いながら言った

「--ちょ、ちょっとね。気にしないで」
彩香がそういうと、
由香里が口を開いた。

「--最近、市村くんが色々調べてたのはーー
 あなたのことだったのね…?」

由香里が彩香に言う。

生徒会の由香里は、
洞察力や勘も鋭い子だった。

「---何のこと?」
彩香が少しイラついた様子で言う。

「---…今の話、聞いたわ…。
 松本さんの体を、返してあげて…」

由香里が悲しそうに言う。

彩香が座間に憑依されているー。

3人の女子生徒は、
この非現実的な事実を、
認めるしかなかった。

何故なら目の前の彩香が
たった今、
「俺は座間だ!」と叫んでいたのだから。

「---チッ!うっせぇんだよ!
 この体は俺のものだ!
 俺が、いや、わたしが彩香だよ!」

彩香が胸を触りながら言う。
制服は破れ、乱れている格好で。

「---松本さんはそんな弱い子じゃない」
由香里が言う。

「ははっ!ばっかじゃないの!
 こうして私に好き勝手されてるじゃない!」

彩香が言う。

その表情を見て、
由香里ははっとした。

そしてーーー

「…なら…どうして涙を流しているの?松本さん」

彩香はーー
目から涙を流していた。

「---は?わたしが泣いてなんか…!」

そう言いかけたそのとき、
彩香の頬を涙が伝う。

「---えっ…な、、なに…?どうして…?」
彩香の目から涙がこぼれ落ちていく。

由香里ー
美香ー
淳子ー

そして、彼氏の龍平。

大事な仲間たちが
”自分を助けようとしてくれている”

そのことが、
奥底に幽閉されている彩香の意識を呼び覚ました。

「--ねぇ…彩香」
龍平が静かに呟いた。

彩香は龍平のほうを見て、睨みつける。

「---」
彩香が龍平を鋭い目で睨んでいる。

「--僕は…彩香のことが大好きだ」
龍平が真顔で言う。

「--ちょ、、昼間から愛の告白?」
おしゃれ好きの美香が言う。

「お~流石に未来の警察官は違うね~!」
スポーツ好きの淳子が冷やかす。

だから、警察官にならないってば、と思いながら
龍平はさらに続けた。

「ーーーうるせぇ!黙りやがれ!」
彩香が怒鳴り声をあげる。

だが、目からの涙が止まらない。

「くっそ…この女、、俺に支配されているのに!
 無駄な抵抗しやがってぇ!」

彩香が頭を抱えながら
憎しみに満ちた目で、龍平を見つめる。

「--彩香!彩香はこんなやつになんか負けないって
 僕は信じてる!
 お願いだ!戻ってきてきてよ!」
龍平が言う。

「--松本さん」
生徒会の由香里も彩香の名を呼ぶ。

「---これだけ彼氏に叫ばれちゃ、
 放っておけないよね?」
スポーツ好きの淳子が彩香に語りかける。

「--いつまで体、好き勝手にされてんのよ!」
おしゃれ好きの美香が叫ぶ。

「だ、、、黙れええええ!!」
彩香が、怒りを爆発させて、壁のほうに歩いていき、
自分の頭を壁に打ち付け始めた。

ゴン!ゴン!と音がする。

「この体は俺のものだ!
 いつまでも抵抗しやがって!
 消えろ!消えてしまえ!」

本来の意識に語りかけながら頭を強く打ち付けている彩香。

可愛い声で、
信じられないような汚い言葉を吐いている。

「----!?」

彩香の手を龍平がつかんだ。

「---どんなになっても、
 僕は彩香を信じるからーー」

龍平のまっすぐな目…。

「----龍平…」
彩香の表情が緩んだ。

そして…

「うっ…うああああああああああっ!」
彩香が頭を抱えて、その場に蹲った。

「ぐ…っ ごほっ…ぐふっ…」
彩香が苦しそうに咳き込むと、
ドロドロした液体が出てきた。

彩香がその場にうずくまる。

ドロドロした液体が、
少しずつ移動している。

「---これは!」

龍平は思った。

これが”座間”だと。

「---よくも彩香を…」

スライムのような小さな液体を睨む龍平。

そしてーーー

「--僕はお前を、許さない!」
そう叫ぶと、龍平は、床を這いずる小さな
スライムのような物体になった凶悪犯罪者の座間を
力強く踏みつけた。

「ぎぃあああああああああっ!」

断末魔のような声が、
聞こえた気がしたーーーー

「---人の体を弄ぶなんてーーー」
龍平はそう呟く。

スライムのような物体は、龍平に踏み潰されて、
蒸発するかのようにして消えた。

「お・・・のれ・・・」

…その言葉は、既に、言葉にならなかった。
彼にはもう、体が無かったからだ。

「--松本さん!」
「ほら、しっかりしなさいよ!」
「…全く、世話がやけるわね!」

由香里、淳子、美香の3人が
倒れたままの彩香を優しく
抱えている。

「------」

「---彩香!」
龍平が叫ぶ。

その呼びかけに応じるかのように、
彩香はゆっくりと目を覚ました。

久しぶりの目覚め…。
彩香はうつろな目で周囲を見渡す。

「あれーー、わたし…?」
不思議そうな顔をして、
龍平のほうを見る彩香。

制服が乱れきった姿…。
こんな姿に、無理矢理”させられた”ことに
龍平は強い怒りを感じた。

けれどー
座間はもう居ない。

「---そっか」
彩香が優しく微笑んだ。

「---龍平が、助けてくれたんだね」

その言葉に、龍平は静かに微笑み返した。

生徒会長の由香里がその様子を微笑ましそうに、
安心した様子で見つめている。

「---さすが!未来の警察官!」
淳子がふざけた様子で、拍手をしている。

「--ちょっとぉ、感動の再会は
 2人だけの世界でやってよね」
おしゃれ好きの美香が、苦言を漏らす。

「---あっ!」
由香里が、時計を見て、声をあげる

「そろそろ授業終わる時間よ!
 先生戻ってきちゃう!」

映画の授業で、先生も居ないから抜け出してきたけれど、
そろそろまずい。

由香里たちは「先に戻ってるね!」と龍平に声を
かけて、慌てて視聴覚室へ戻っていった。

「---彩香、おかえり」
龍平が優しく手を差し伸べると、
彩香は微笑んで

「ありがとう。ただいまーー」と優しく呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そうか…座間は…」

夜。

父に事件の結末を報告した。

座間は彩香に憑依していたこと。

やむを得ず、座間と思われる物体を踏み潰したことー

「まぁ、問題ないさ」
父が呟いた。

「--憑依薬なんて、警察内部でも誰も
 信じちゃくれない。
 恐らくこのまま座間は、行方不明で処理されるだろう」

座間はもう居ない。
見つかりようがないのだ。

だから、龍平が座間を踏み潰したとしても、
そのことは、誰にも分からないー。

「---龍平。」

父が手を差し伸べた。

「よくやってくれた。本当に、ありがとう」

父の言葉に龍平は笑いながら答えた。

「--困ったときは、お互いさま、だろ?」

その言葉に父子は微笑んで、握手を交したーーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。
学校は、いつものように賑わっていた。

そんななか、
校舎を歩くとある生徒。

人目を気にするように、お手洗いに入っていく。

そしてーーー
鏡を見つめて、その生徒は笑みを浮かべた。

「これで、もう誰も”俺のこと”を探す人間は居ないー」

”座間”は消えていなかった。
龍平に踏み潰されて消滅したように、見えた座間。

確かに、一度は体から追い出された。

だが、”霊体”は目に見えない。

あれは、座間の演出に過ぎなかった。
あの時、龍平が踏み潰したのはーーーー

そしてーーー

「これからは、”この体”としてーー
 ”成りすまして”生きていくさーー。

 ふふふ・・・
 
 俺はここにいるのにー、
 誰も、俺に気づけない」

ーお手洗いの鏡に、邪悪な笑みを浮かべて映っていた
 生徒はーーーーーーーーー

もう、誰も、気付かない。

彼が”成りすまして”いることにーーー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

私のサイト以外で、始めて投稿してみました!
お読み下さりありがとうございます^^

成りすましモノ祭りにこのように
参加させて頂けてとても光栄です。

ありがとうございました!!

※(コメントも原文のまま掲載しました)

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憑依<フュジティブ>

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