成りすましモノ祭りに投稿した
「フュジティブ」のアフターエピソードです!
(過去のフュジティブはこちら)
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凶悪犯罪者 座間が用いていた憑依薬。
その製造元を龍平の父、孝彦は突き止めた。
憑依薬を決して、流通させるわけにはいかない。
孝彦は、その製造元である工場に突入した。
一方、息子の龍平は、クラスメイトの由香里から
とあるお願いをされることに・・・
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ーー座間 良一郎(ざま りょういちろう)
数々の罪を犯した凶悪犯罪者だ。
彼は、警察官の市村 孝彦(いちむら たかひこ)に
追い詰められた際に、裏世界のとあるルートで
怪しげな男から手に入れた”憑依薬”を使ったー。
そして、通りすがりの女子高生たちに憑依し、
悲劇は起きたー。
数人の被害者を経て、最終的には清水 由香里(しみず ゆかり)という
女子高生が半年以上もの間、座間に支配され続けることとなってしまった。
その座間は、由香里のクラスメイトでもあり、
警察官・孝彦の息子である市村 龍平(いちむら りゅうへい)の手によって
その霊体は消滅させられた。
しかしー
父の孝彦にとっては、まだやるべきことがあった。
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市村 龍平(いちむら りゅうへい)
高校生。凶悪犯の座間の憑依を突き止めた。
市村 孝彦(いちむら たかひこ)
龍平の父親。座間を追っていた。
松本 彩香(まつもと あやか)
高校生。龍平の彼女。
清水 由香里(しみず ゆかり)
高校生。生徒会副会長で、読書好き。
竹内 美香(たけうち みか)
高校生。お嬢様育ちでわがまま。
小笠原 淳子(おがさわら じゅんこ)
高校生。ショートカットが似合うスポーツ好きの少女。
座間 良一郎(ざま りょういちろう)
凶悪犯罪者。憑依薬を手に、女子高生に成りすましをしていた。
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「--いよいよだな」
秘密裏に結成された特捜部の部長が言う。
「はい」
龍平の父、孝彦はあれからも”憑依薬”について
調べていた。
だが、憑依薬なんてもの、普通は誰も信じないし、
何より、それが明るみに出るのはまずい。
大混乱が起きる上に、同じ憑依薬を作ろうとするものが
次々と現れれば、それこそ、世界は終わりだ。
そんな孝彦は、新人時代からよくしてくれている
警察上層部の男、佐倉(さくら)に相談し、
相談を受けた佐倉は、特別チームを結成。
孝彦は二人の部下と共に、少数で、憑依薬の行方を追っていた。
そして、先日、ついにその憑依薬の出所を突き止めたのだ。
「---西地区の廃工場。
こんなところで作っていたとは」
孝彦が装備を整える。
「準備完了です」
後輩刑事の一人、南(みなみ)と、
「--わたしも、大丈夫です」
可愛らしい風貌の女性警官、雪野 史恵(ゆきの ふみえ)が
答える。
「--目的は、工場の制圧と、関係者の逮捕だ」
孝彦が、南と史恵にそう伝えて、
特捜部の部屋から出ようとした。
「---市村君」
上層部の男、佐倉が孝彦を呼び止めた。
「---もしも・・・
もしも仮に、誰かが”憑依”された場合、
”もろとも”で構わないー。
射殺を許可する。
憑依薬…
あんな悪魔のようなものを広げるわけにはいかない。
事後処理は私が内密に行う」
佐倉の言葉に孝彦は戸惑いつつも、
頷いた。
”憑依薬の拡散”は、おわりを意味するー
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「おはよっ!」
彼女の松本 彩香(まつもと あやか)が
元気よく背後から声をかけてきた。
「あ、おはよう!」
龍平は嬉しそうに返事をする。
「--あれ?今日はポニーテール?」
龍平が不思議そうに尋ねる。
彩香はにっこりと笑った。
彩香も年頃の女子高生だから、髪型は定期的に変わる。
けれども、ポニーテール姿は見たことが無かった。
「---何か、うなじの部分がどうこうって
ちょっと前に言ってたじゃない?
あの時、龍平も一人で騒いでたから、
龍平に喜んでもらえるかなって!」
少し顔を赤らめて言う彩香。
確かに龍平はポニーテールの話題で、
少し前に、男子生徒たちと盛り上がっていたことがある。
「--え…、ぼ、僕のためにわざわざ」
顔を真っ赤にして言う龍平。
「そっ。ほら、わたしのうなじの部分、どう…」
彩香がポニーテールのうなじの部分を
龍平に見せて笑っている。
「---うあっ…」
龍平が変な声を出した。
「---ちょっ!龍平!鼻血!大丈夫??」
「大丈夫じゃないよー」
困り果てた様子で龍平は悲鳴をあげた。
「何よ~ポニーテールぐらいで鼻血なんか出して~」
彩香が呆れた様子でティッシュを龍平に渡す。
そんな様子を、通学中の
おしゃれ好き生徒・美香とスポーツ好き生徒・淳子が
たまたま見かけていた。
「なぁに、あれ?」
美香が不思議そうに遠目から二人を見つめる。
「え?なになに?」
淳子が興味深そうに二人を見る。
「あ~あれは…
市村くんがトマトジュースを飲んでいるタイミングで
彩香が市村くんを笑わせて
鼻からトマトジュースってとこね」
淳子が得意げに言う。
「んなわけないでしょ」
美香が冷めた様子で言うと、
淳子は「あ、未来の警察官クン、もしかして鼻血?」と
背後で楽しそうに話していた
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「--あの…」
昼休み。
クラスメイトの由香里が話しかけてきた。
座間に憑依されていた彼女も、
今ではすっかり立ち直っている。
「ちょ、、ちょっと…市村くんに相談が」
由香里が顔を赤らめて小声で言う。
「え…え?ど、どんな相談?」
龍平が戸惑いながら言うと、
由香里は「ほ、放課後でいいかな?」と答えた。
何だろう?
そう思いながら龍平は、
放課後の図書室に向かう。
”食卓にはダンゴ虫”という謎の小説を読んでいた由香里が
微笑む。
そして、小声で本題に切り出した。
「---市村くん…
そ、、その…メイド服とかチャイナドレスとか
コルセットとか…いる?」
「え…えぇっ!?」
龍平は思わず声をあげてしまう。
「---ど、どうして…?僕に女装趣味なんて」
龍平が顔を真っ赤にして言うと、由香里が続けた。
「あの…わたし、憑依されてる間に
そういう服買ったみたいで…いっぱいあるの…
でも、お父さんとかお母さん、憑依のこと、知らないし、
ばれずに処分したいな…って」
由香里が言うと、
龍平は「あぁ…そうだよね。家庭ごみで出せば
ばれちゃうもんね」と答えた。
「---市村君のお母さんとか、着ない?」
「-----!!」
龍平は母のメイド服姿を想像して、吐き気を催した。
「あ、ご、ごめん…無理だよね」
”無理”とバッサリ切り捨てられた龍平の母。
天然に酷いこと言うなぁ、と龍平は苦笑いしながら
由香里の話の続きを聞く。
「--あ、彩香ちゃんは…?」
由香里が言うと、
龍平は鼻血を噴きだした。
彩香のチャイナドレス姿を想像して、
龍平はノックアウトされてしまったのだ。
「え???ちょ、ちょっと、市村くん!?」
慌てる由香里。
そこに、スポーツ好きの淳子がたまたまやってきた。
「--あれ?未来の警察官、ちょっと興奮しすぎじゃない?」
淳子が、悪戯っぽく笑った。
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その夜ー。
父の孝彦は、廃工場に辿り着いていた。
ここで、憑依薬が製造されている。
座間が憑依薬を使ったのが、既に半年以上前。
普通に考えれば、既に憑依薬は
座間以外の人間にも流出しているだろう。
しかし、それを調べる手立てはない。
座間の場合は、たまたま孝彦の目の前で
憑依薬を使ったから、それに気づくことができた。
だがー
誰も見ていない場所で憑依薬が使われたらー?
誰かが憑依されて、悪事に手を染めたらー?
世間は、”あの人がこんなことするなんて思わなかった”と
言うだろう。
誰も、その人間が憑依されたなどと、思わないだろう。
しかしー
座間が目の前で憑依薬を使ってくれたのは、
ある意味では幸運だったのかもしれない。
もしも座間が別の場所で憑依薬を使っていたのであれば、
息子の彼女である彩香や、クラスメイトの由香里は、
永遠に座間の操り人形だったかもしれないのだからー。
永遠に、誰かに”成りすましたまま”
彼は生きながらえたかもしれないのだからー。
「---油断はするな」
孝彦が、後輩刑事の南と史恵に指示をする。
南は30代後半の刑事で
孝彦の後輩にあたる。
孝彦のことを慕っており、口も堅いことから、
憑依薬に関する捜査にも適任だと孝彦が判断し、
協力を要請したのだった。
もう一人の史恵は20代中盤の女性刑事で、
期待の新人とされる人物。
美貌と警察官としての能力両方を併せ持つ人物で、
異例の若さで今回の捜査に抜擢されたのには、
上層部の佐倉の親戚筋であることのが理由のようだ。
「--”発砲”の許可も出ている。
なるべくなら確保したいところだが、
相手は憑依薬を作る連中だ。
やむを得ない場合は、発砲も視野に入れて行動するように」
孝彦が言うと二人はうなずいた。
憑依薬の製造工場ー。
中に居るのは5人だと既に確認している。
相手も、あまり憑依薬の事を明るみに出したくないのだろう。
「--私はあちらから」
後輩刑事の南が言う。
工場の道が3方向に分かれている。
本来、別行動は得策ではない。
だがー、工場に居る5人のうちの一人も逃がすことはできない。
ここは、電撃的に制圧する必要があった。
「わかった。俺は中央から進む。」
「じゃあ、私はあちらから進みますね」
史恵が言うと、孝彦はうなずいた。
「--何かあった場合はただちに連絡するように。」
孝彦はそう言うと、
サインを出し、3人は別の方向に進み始めたー。
孝彦は廃工場を進みながら思う。
憑依薬なんてものは、この世にあってはならないー
孝彦は、座間に憑依された子を直接見たわけではない。
けれどー
息子の龍平から、話は聞いた。
最後に座間に憑依されていた由香里という少女ー。
優等生であった彼女は、
座間に思うが儘にされて、半年間もの間、操られていた。
「-男と遊びまくって!
何人もの男とヤリまくって!!
タバコを吸いまくって、酒を飲みまくって…!
くくく…
真面目なわたしがぶっ壊れていく日々…!!
あぁ、…ゾクゾクするぅ…!うふふ・・・あははははは!
そんなわたしを、今更助けてどうするの?
えぇ??市村くん!!」
彼女は、完全に支配されていたー。
だが、龍平はそんな彼女に懸命に言葉をかけて、
救い出したのだと言う。
直接見たわけではない。
それでも、その憑依薬の恐ろしさは、
よく伝わってきたー。
人の尊厳を踏みにじる、薬。
それはーー
ふと、物陰からナイフを持って襲い掛かってきた男を
孝彦は格闘術で制した。
「一人確保」
孝彦が無線で連絡を入れると、
後輩の南と、文恵からも”それぞれ一人確保した”と
連絡が入った。
「--と、いうことはあと二人か」
憑依薬を座間以外に売買している可能性は非常に高い。
この者たちから、それを聞き出して、
行方を追うのもまた、孝彦たちの役割だ。
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「---」
女性刑事の史恵は、
親戚である警察上層部の男、佐倉のコネで
警察官になった。
自分は、努力をしてきた。
今も、努力を怠らず、日々、自分を高めるようにしている。
けれどー
同僚からは”コネ女”だとか、
そういう風に見られている。
彼女は、それが悔しかった。
だからー
親戚である佐倉に懇願して、
この危険な仕事に志願した。
表には出来ない仕事。
けれど、
それをこなすことで、少し、自分がまた成長できると思った。
「----動かないで」
物陰に、男が居るのに気付いた。
史恵は銃を構えて、
その男に近づいていく。
「----手を挙げて、ゆっくりとこちらを向きなさい」
史恵が毅然とした様子で言う。
男はゆっくりと手を挙げた。
しかしーー
手を挙げた男の手から、
”何かの容器”が落ちた。
「------!」
床に音を立てて転がり落ちる容器ー。
「---くくく、若い女刑事さんか」
男は背を向けたまま呟いた。
「最高だぜー」
そう言うと、男が突然気を失った。
「----えっ」
文恵が驚く。
ふと、転がり落ちた容器に目をやると、
そこには”憑依”と書かれていた。
「-----!!!」
パァン!
史恵は咄嗟に発砲した。
男の倒れた体の、胸部に銃弾が命中する。
しかしー
「うっ…!」
史恵が声をあげた。
体がビクビクと痙攣する。
「---!!」
”憑依”
血の気が引いていくような感覚を味わって、彼女の意識は途切れた。
「-----雪野!大丈夫か?」
銃声を聞きつけた、孝彦の後輩刑事、南が駆け付けた。
倒れている男の方を見る南。
「--」
南が、史恵に合図をし、
その倒れている男の生死を確認する
「先輩」
史恵が背後から声をかけた。
「ん?」
南が振り返ると、文恵が
狂気の笑みを浮かべて銃を向けていた。
「---お、、お前、何をー」
南はハッとした。
”これが、憑依ー”
「---わたし、乗っ取られちゃいました!うふふ♡」
史恵は嬉しそうに、銃を先輩刑事に向かって
撃ち込んだ…。
②へ続く
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次回も、龍平サイド(学校)のお話と、
憑依薬確保サイド(父親側)のお話があります^^
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