<憑依>生き地獄②~愛と憎しみ~

幼馴染の彼女ー。

最愛の彼女が、次第に変えられていく…。

憑依されているから、とは分っているけれど…
執拗な彼女の煽りに、憎しみの感情が湧きあがるーー。

憑依された彼女を救うため、彼は”生き地獄”の中
もがき苦しみ続ける…。

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律夫は、通学路を歩いていた。

「おはよー!」
背後から彼女の愛菜の声がした。

「---愛菜…」
律夫が振り返り、愛菜を見る。
いつものような優しい笑顔。

昨日の久松の言葉を思い出す。

「ううん。毎朝起きてから、昼休みまでは愛菜チャンのこと
 解放してあげる!
 ま、俺は中にいるけどな!
 本人が怖がらないように、記憶だけすこ~しいじるけどな」

愛菜は、、今、愛菜なのだろう。

「----どうしたの?
 怖い顔して!
 せっかくのイケメンが台無しだよ!」

愛菜がいつものように、律夫をからかいながら笑う。

「---愛菜・・・
 どこか調子悪いところはないか?」

律夫が心配そうに聞く。

「え?どうして?
 わたしはいつも通り元気だよ!

 ホラ、わたしって健康なところ取り柄だし!」

愛菜がほほ笑む。

がーー、
愛菜の微笑みを見ても、律夫は笑うことはできなかった。

”何事も無かったかのように記憶が
 久松に操作されている”

この事実は、律夫に強い危機感を抱かせた

「愛菜…あのさ…昨日の…」
律夫が言いかけると、
愛菜の表情が突然歪んだ。

「チッ・・・ チッ・・・ チッ・・・」
愛菜が無言で舌打ちを繰り返している。

その表情は”悪魔”のようだった。

「---おっと、一つ言い忘れた。
 俺に逆らったり、愛菜本人に憑依のことを話したりすれば
 ”ゲームオーバー”だ!」

久松の言葉を思い出す。

「----…」
律夫はそれ以上、何も言えなかった。

愛菜はすぐに笑顔に戻った。

「あれ?どうしたの?律夫、
 急に黙り込んじゃって?」

愛菜が笑う。

「--ん、い…いや、何でもないよ」

ーー何とかしなければ…。
律夫はそう思った。

愛菜を、何とか助け出さなくては…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

指定された空き教室に来ると、
愛菜は、昨日と同じように、机の上に座り、
色っぽく足を組んで、ほほ笑んでいた。

その手には、コーラが握られている。

「--愛菜チャン、炭酸嫌いだったよな?」
愛菜が言う。

再び、久松に支配されているようだ。

「--テメェ・・・・・・」

律夫は愛菜を睨んだ。
愛菜は炭酸飲料が苦手だった。

コーラをごくごくと飲み、
律夫の方を見る愛菜。

「こわ~~~い!
 そんな風に睨まないでよ!」

挑発的な口調で言う愛菜。

そして続ける

「わたしが嫌いなモノなのに、
 わたしは今、喜んでコーラを飲んでる。

 健康にも良くないし、
 わたしの苦手な味だから
 飲まなかったんだけど…」

そこまで言うと、コーラをグビグビと飲んで、
ペットボトルを教室の端に投げ捨てて笑う

「--今のわたしは喜んでコーラを飲んでる!

 ふふふふふっ♡
 わたしがしたくないことをさせられちゃってる!!

 最高に美しいじゃない!!!」

愛菜が興奮した様子で言う。

「今のわたしは、久松くんの思うがまま!!!
 ぜ~んぶ、俺…いや、久松くんの思い通り!!

 うふふふふ♡
 なのに、わたし、メッチャクチャうれしそう!!

 あははは♡ たまんねぇ!!!!!
 月から地球を見た宇宙飛行士の気分よ!!

 うははははははっ!」

律夫が大きく舌打ちをした。

「---御託はいい。
 早く今日の”おねがい”とやらを教えろー」

律夫は言った。

毎日、愛菜は昼休みに律夫に”お願い”をするー。
それをその日のうちに達成すれば1ポイント。

そして、それを7ポイント貯めれば、クリアだ。
愛菜が解放される。

それが、久松の定めたルール。

「---ふふん。
 今日は最初だからね…イージーモードにしてあげる。

 …まだ弁当、食べてないよね?」
愛菜が言う。

「---ああ」
律夫が言うと、愛菜が手を差し出した。

「---あ?」
律夫が声を出すと、愛菜は
「弁当没収」と言った。

律夫が「ふざけるなよ…」と言いながら、
”荷物を全部持ってくるように指示されていた”ため、
空き教室に持ってきていたカバンから弁当を出して
手渡した。

「--ふ~~~ん!
 冷凍食品ばっかね…
 
 でも、、アンタにはもったいない!」

愛菜はそう言うと、近くに置いてあった、
ドックフードの袋を律夫の方に投げた。

「---ほ~ら、律夫!
 エサよ!お食べなさい!」

ゴミを見るかのような目で、
律夫を見つめる愛菜。

「---ふ、、、ふざけるな!」
律夫が声をあげる。

「--ふ~ん、いいんだ。
 今日のポイント獲得は諦めても…」

愛菜が意地悪な笑みを浮かべて、
横目で律夫を見る。

愛菜はさっきから、自分の胸を時々イヤらしく触っている。

「---お願い!律夫!」
両手を前に合せてお願いするポーズを作る愛菜。

「わたしを助けて!!!」

まるで、本当に愛菜が言っているかのように
感じて律夫はドキッとしてしまう。

その様子を見て、愛菜は勝ち誇った表情を浮かべる。

「--ホラ!律夫!
 あなたにはお似合いよ!
 くくく…家畜は家畜らしくそれを食えよ!」

愛菜が顎でドックフードの方を示す。

「-----」
律夫は唇をかみしめた。

このうえない屈辱。

「---喰えよ!!!ゴミ野郎!」
愛菜が汚い言葉で律夫を罵った。

「----喰えばいいんだろ!喰ってやるよ!」
律夫が怒鳴り声をあげて、
悔し涙を流しながらドックフードを食べ始めた。

愛菜は自分のピンク色の可愛いスマホを
取り出すと、写真に撮り始めた。

「---うふふ!
 律夫!なに犬のえさなんか食べてるのぉ~~~?
 うふふふふふふっ!!!」

煽りながら写真をとっていく愛菜。

「---わたしの彼氏は犬のえさを食べてます!

 ツイート っと!」

愛菜が自分のツイッターに律夫の写真を載せる。

ーーーー!?

「---ひっ!?」
律夫が愛菜の胸倉をつかんでいた。

「久松、、覚悟しとけよ」
律夫の怒りに満ちた目を見て、愛菜は身を震わせた。

そして、そのまま律夫はドックフードの空袋を愛菜の方に
投げ捨てて、そのまま空き教室から立ち去って行った。

「---ーーーはぁ…はぁ…ふざけやがって」
愛菜がつぶやく。

「---これからの生き地獄、楽しみだなぁ!
 あはははははははっ!」

愛菜が、律夫から受け取った弁当を弁当箱ごと
ゴミ箱に叩きつけながら大きな笑い声をあげた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

今日は曇り…。

律夫の心を現しているかのようだ…。

「おはよっ!」
背後から、愛菜の声がした。

背後を振り返り、
律夫は目を見開いた。

愛菜は、
髪にウェーブをかけていた。

「---愛菜…」
律夫は思わず、悲痛な声を出した。

「--どう?似合う?」
愛菜がほほ笑む。

「-ーーま、、愛菜らしくないな…」
律夫はそう答えた。

愛菜はいつも黒髪のロングヘアーで、
真面目さを現すかのようなヘアースタイルだった。

しかし、今日の愛菜は少しだけ茶色がかった髪に
ウェーブをかけている。

「---あれ?律夫には喜んで貰えると思ったんだけどな…
 ザンネン…!」

愛菜が自虐的に笑みを浮かべる。

「--どうして急に?」
律夫が尋ねる。

なんとか、愛菜本人に憑依されていることを
気づかせたい。

「---うーん…
 ホラ、男の人に尽くすのって、女の子の役割でしょ?
 だから、律夫にも喜んでもらおうかなって!」

何も疑いもせず、そう答える愛菜。

「--あ、そうそう、
 憑依している間はさ、俺が愛菜チャンの脳を使うから、
 もたもたしていると、どんどん愛菜チャン自身も
 ”俺”みたいな人間に変わっていくぜ?」

久松の言葉を思い出す。
これは、、憑依の影響だ…。

「--愛菜…」
律夫は悲しそうな表情を浮かべて続ける。

このままだと、愛菜が愛菜でなくなってしまう。

愛菜が、どんどん遠くに行ってしまう。

「---愛菜…
 俺は、、、そのままの愛菜が好きなんだ…。」

愛菜の手を握り、律夫は言う。

「だから、愛菜ー。
 いつもの自然な愛菜のままが、俺は一番、嬉しい」

律夫が真剣な表情で言うと、
愛菜は一瞬、戸惑うような表情を見せたあとに微笑んだ。

「そっか…そうだよね…!
 そう言ってくれて嬉しい…」

愛菜が可愛らしく微笑む。

それを見て律夫は思う。

まだ、、、
まだ間に合う。。

今ならまだーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

空き教室に行くと、
煙のニオイがした。

「---タバコ?」
律夫が声をあげる。

愛菜が色っぽく足を組みながらタバコを吸っていた。

「---ふ・・・ふざけるなぁ!!!!!!
 愛菜に何させてるんだテメェ!!!」

律夫が愛菜のもとに近づいて、
怒鳴り声をあげる。

愛菜は見下すようにしながら、
律夫の方を見る。

よく見ると、
床にイヤらしい液体が落ちている。

「---き…貴様ぁあああ!」
律夫が声をあげる。

だが、愛菜はあくまでクールだった。

「--昨日も言ったでしょ?
 わたしが絶対しないことを
 俺が”させてる”

 しかも、わたしは喜んでる。

 凄いじゃん!
 これが憑依の醍醐味の一つだよ!
 わかる?律夫?」

そう言うと、美味しそうに煙草を
吸う愛菜。

「ふざけるな!未成年なんだぞ愛菜は!
 何してんだお前は!!!」

「---だって、わたしのからだじゃないし」
愛菜が笑う。

「---どうなったって、関係ないじゃん!うふふっ♡」

笑う愛菜。

「----くそがぁ!!!」
律夫が拳を作り、愛菜に向けた。

「ふふ・・・なに?女の子を殴るの?
 超サイテ―――!」

愛菜が嫌悪感を丸出しにして言う。

火災探知機が鳴り響き始めた。

「---お、、おい…!まさかテメェ!
 愛菜を…!」

愛菜を停学にでも追い込むつもりか?と
律夫は思う。

けれどー
違った。

「---違うよ。今日のお願い
 ”わたしの罪を被って”

 うふふ・・・じゃあね!」

愛菜は煙草とライターを捨てて
空き教室から笑いながら出て行った。

ウェーブがかった髪をなびかせながら…

「----久松!!!!待ちやがれ!」
律夫が叫ぶ。

そしてーー
その直後、生活指導の先生が入ってきたーー

律夫は…
停学になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

”2ポイントゲットー!
 おめでとうーぱちぱち!”

LINEが愛菜から届いた。

停学処分中は、空き教室に行けない。
こうしている間にも、愛菜は…。

けれどーー
律夫にできることはない。
土日を入れて4日間のロスが発生してしまったーーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

月曜日。

「---おはよう!」
愛菜が背後から声をかけてきた。

「----おはよう。」
律夫が恐る恐る振り返る…。

そこには、スカート丈が短くなり、
化粧が少し濃くなった愛菜の姿があった。

「---愛菜…」
律夫は思わず顔をそむけてしまう。

「---ど、、どうしたの…?
 わ、わたし、何か悪いことしたかな…?」

よそよそしい律夫の雰囲気に戸惑う愛菜。

「--いや…
 化粧とか…生活指導的に大丈夫かなって思って」
律夫が言うと、愛菜は答えた。

「”真面目に生きる”なんてバカらしいじゃない?
 いいのよ、このぐらい」

とーー。

満面の笑みで。

違う…!違うだろ愛菜!
律夫は心の中でそう叫んだ。

「---愛菜!
 頼む、聞いてくれ!」
律夫が必死の声で呼びかける。

「--ど、どうしたのよ?」
愛菜が戸惑いの表情を浮かべる。

「---”今までの自分”を見失わないでくれ!
 ここのところ急に”色々変わってる”!

 ウェーブかけたり、化粧を濃くしたり…!
 おかしいと思わないのか!」

律夫が言うと、
愛菜の目に明らかに動揺の色が浮かぶ。

「--そ、、それは…
 わ、、、わたし……そうよね…
 ど、、どうしちゃったんだろ…」

愛菜が混乱した様子で、恐怖の表情を浮かべている。

「で、、でも…女は可愛くなきゃいけないし…
 女に生まれて、わたしみたいに可愛い子は、
 女を最大限生かしていかないと…

 そ、、、そうだよね?」

律夫に確認するように尋ねる愛菜。

「---愛菜…」

怯えきった表情の愛菜。

これ以上、本人に何を言っても無駄な気がするー。

そう判断した律夫は話しを変えた。

「---愛菜…俺が必ず助けてやる…
 心配するな」 

そう言って、愛菜の方を決意のまなざしで見つめる律夫。

「-----うん。。。。ありがとう」
愛菜は目から涙をこぼしてそう言った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み

「朝のは何?
 安っぽい乙女ゲーか何か?
 ばっかみたい!」

愛菜が、自分の太ももを
触りまくりながら笑っている。

「----とっとと、お願いをしやがれクソ野郎!」
律夫が叫んだ。

現在2ポイントー

目標まであと、5ポイント。

愛菜が愛菜で無くなる前にーーー
律夫は、愛菜を取り戻せるのかーー。

「---わたしと…えっちしよ?」
愛菜が色目を使って言う。

「---ふ、、、ふざけるな!」
律夫が叫ぶ。

「--やるの?やらないの?」
愛菜が冷たい声で言う。

「---くそっ!」
律夫はしぶしぶ承諾した。
愛菜とは、まだそういう関係にない。

だが、、、
もう時間的猶予がない。
愛菜は日に日に、久松色に染められている。

早く、助けないと。

愛菜が体をAV女優かのように、
くねらせながら服を脱ぎはじめた。

そしてーー

「さぁ…来なさい」
愛菜が高圧的に言った。

「き、来なさいって…
 ま、、そんなことしたら…!!!
 もし、妊娠したらどうすんだよ!!!」
律夫が叫ぶ。

「そんなのわたしには関係ねぇよ!!!
 妊娠したって苦しむのはこの女とお前だ!

 早くしやがれ!!!」

愛菜が怒鳴り声をあげたーー。

「……くそっ…」
律夫は悔しすぎて、涙が目からあふれ出した。

喘ぐ愛菜ー。

その顔はとても嬉しそうだ。

けれど、
本当の愛菜は笑っていない。

律夫は、愛菜のエロい声と、
姿を見つめながら思う。

愛菜の喘ぎ声も聞こえないほどに、
強く思うー。

”久松、、、テメェを引きずり出して、
 生き地獄…いや、地獄に突き落としてやる”

とーーーー

「はぁ・・・はぁ・・・♡」
愛菜があまりの快感に燃え尽きて、
だらしない姿で寝転がっている。

「---さんぽいんとめ…おめでとぅぅ~」
愛菜がそう呟いた。

あと、4ポイント…。
もう、、、時間が無い…。

律夫は焦る気持ちを抑えて、空き教室を後にした。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

④まで書けそうな雰囲気なのですが、
③までで予定組んじゃったのが、
惜しいところです^^

明日で最終回です!!

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憑依<生き地獄>

コメント

  1. から より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    絶対かいてほしいリクエストです
    憑依能力を持つ成績優秀な美人はテストの前、幽体離脱することでテストを確認していた。そのことに気がついた同じく憑依能力を持っていたブスは彼女が幽体離脱しているうちに体を乗っ取ってしまうというものです
    お願いします

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 絶対かいてほしいリクエストです
    > 憑依能力を持つ成績優秀な美人はテストの前、幽体離脱することでテストを確認していた。そのことに気がついた同じく憑依能力を持っていたブスは彼女が幽体離脱しているうちに体を乗っ取ってしまうというものです
    > お願いします

    リクエストありがとうございます!
    内容が頭の中で固まったら書いてみます!
    気長にお待ち下さい!!