<憑依>生き地獄①~幼馴染~

小さいころからずっと一緒だった幼馴染の彼女。

もしも、目の前でその体が奪われて、
最愛の相手が、最大の敵になってしまったら…?

愛憎の狭間ー
それは、生き地獄。

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「おはよー!」

高校への通学路。
聞きなれた声が背後から聞こえてきた。

「あ、おはよう!」
高校生、工藤律夫(くどう りつお)は、
背後から声をかけてきた女子生徒に笑顔で返事を返した。

「---って、また寝癖ついてるよ」
幼馴染の桜井 愛菜(さくらい まな)が微笑みながら
寝癖の箇所を指摘する。

「--う、、うるさいなぁ!これは俺のファッションなんだよ!」
律夫が慌てた様子で言う。

彼はどちらかと言うと、イケメンで、
友達も多いほうだが、何故か朝、急いでいるのか
よく寝癖がついている。

「---せっかくのイケメンが台無しだよ~?」
愛菜が笑う。

律夫と愛菜は、
小さいころから親同士で近所付き合いのあった、
幼馴染だ。

中学卒業の頃から、律夫が、愛菜を異性として
意識し始めて、最終的には二人は付き合うことになった。

「--なんか、わたしたちってずっと一緒だよね」
歩きながら愛菜が言う。

綺麗な黒髪で、顔もスタイルも一級品の愛菜。
小さいころは、愛菜がこんなかわいい子になるとは
思ってもみなかった。

「---え?もしかして嫌だった?」
律夫が、ふざけた様子で聞くと、

「ううん、律夫と一緒に居れて嬉しい…」
少し恥ずかしそうに言う愛菜。

彼らは、友達間でも公認のカップルだった。
理想のカップルとしてーーー。

「--律夫は?わたしと一緒に居れて嬉しい?」
愛菜の言葉に、律夫は顔を赤くしながら
「も、もちろん」と答えた。

幸せないつもの日常。

ーーしかし、二人の後姿を、
これから起こる事態を予期するかのように、
1羽の鴉が不気味に見つめていた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

登校して、ロッカーをいじっていると、
律夫は、背後から声をかけられた。

クラスメイトの久松 隆康(ひさまつ たかやす)。
粘着質で非常に面倒くさい男子生徒だ。

「--工藤君さぁ…
 いつも、なかよしで羨ましいよな」

久松が語り出す。

律夫は「面倒くせぇ」と思いながら
ロッカーの整理に集中しているふりをして、
久松の話を流し聞きしていた。

「---俺なんかさ、童貞だよ。
 生まれてこのかた、彼女なんかできたこともない。
 告白されたこともない!

 わかるか!工藤君!君にこのくやしさが!

 分からないよなぁ!このリア充!」

一人でエスカレートしている久松を
冷たい目で見つめて、律夫はため息をつく。

”そういう、面倒なところが、彼女が出来ない原因だぞ”と
言ってやりたかった。

けれどー。
言わなかった。

言えば、余計に面倒なことになるからだ。

「---その目。
 そうやって、どいつもこいつも俺を見下す!

 お前なんかより、俺の方がずっと、女の子を
 大切にできるのに!」

久松が喚いている。

「---もう授業始まるから戻っていいか?
 教室に…」

あきれ顔で律夫が言うと、久松が頭をかきながら言った。

「…大切なモノがさ、目の前で壊されていく、
 犯されていく…けれども、大切なモノはとても楽しそうにしている」

意味の分からない言葉を呟く久松。

「・・・・・」
気味悪そうに、律夫が久松の方を見る。

「---とっても素晴らしいと思わないか!
 花が汚されていく!でも花は喜んでいる!

 ククク…たまらねぇ!
 興奮でゾクゾクするぜ!」

体を震わせながら狂気の笑みを浮かべる久松。

「一人で言ってろ…」
律夫は、久松とこれ以上関わりたくないと
心底思った。

そして、教室へと戻る。

「--だいじょうぶ?」
愛菜が心配そうに訪ねて来た。

律夫だけでなく、クラスメイト全員から、久松は
気持ち悪がられている。

「--ああ、大丈夫。」
律夫が笑うと、愛菜も安心した様子でほほ笑んだ。

「--あ、そうだ、今日の昼休みなんだけど、
 わたし、先生に話があるから、今日は一緒にお昼
 食べれない… ごめんね!」

愛菜が苦笑いしながら言う。

二人はいつも、一緒に昼食を食べるほど、
仲良しだ。

「--あぁ、わかった」
律夫は微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

愛菜は職員室に向かった。

律夫はいつものように、
弁当を食べていると、
スマホにLINEでメッセージが届いた。

「ん?愛菜からだ…
 どうしたのかな?」

律夫がメッセージを確認する。

すると、そこには…

”た す け て
 ーー東棟3階の空き教室ーー”

とだけ書かれていた。

「-----!!」
律夫は弁当をその場に放り出して、
空き教室に走った。

ーー愛菜は悪戯するような人間じゃない。
愛菜が「助けて」と言ったらそれは「助けて」なのだ。

ものの数分で空き教室の前に辿り着いた律夫。

そこにはーーー

久松と愛菜の姿があった。

愛菜が、椅子に体を縛りつけられている。

「---よぉ、ヒーロー!」
久松がふざけた様子で笑う。

「---お前・・・ふざけやがって!」
律夫は怒りを露わにして、久松の方に向かう。

そして、胸倉をつかんだ。

「--お?殴るのか?
 工藤君よぉ!
 殴ったらどうなるかわかってんのか??
 停学だよ?? て・い・が・く!」

胸倉をつかまれても、怯まない久松。

「---律夫!構わない方がいいよ!」
愛菜が縛られながらも叫ぶ。

空き教室の端にある机にハサミが置いてある。

「--ほぅら、そのハサミで愛しの彼女を
 助けろよ!工藤君!」

久松が笑う。

律夫は「お前、覚悟しとけよ!」と言って、
胸倉から乱暴に手を離した。

「---そのハサミで!
 愛菜チャンをたすけてあげなよ!

 うはははは!うははっ!うはははははは!」

久松が挑発を続ける。

ハサミを手に、律夫は久松に襲い掛かってやろうかと思った。
だが、思いとどまる。

「----ごめんね・・迷惑かけて」
愛菜が涙ぐんで律夫を見る。

「---いいさ、、悪いのはこのクソ野郎だ!」
律夫が叫ぶ。

そして、ハサミをつかみ、
愛菜の方へと向かう。

「いいぞぉ!ヒーロー工藤!
 舞台は整った!!

 はははっ!
 最高のショータイムだ!」

そう言うと、久松は突然発作を起こし、
その場に倒れた。

「---なっ…?おい、久松!」
突然、目の前で同級生が倒れた。

嫌なヤツとは言え、
律夫は驚きを隠せない。

「うっ…あっ…あぁぁっ…やめて!やめて!」
突然、縛られている愛菜が苦しみだした。

「----!?どうした!?」
律夫が愛菜の方を見て、叫ぶ。

「--あ・・・律夫…たすけて・・・!!!
 ひ・・・ひさま・・・・」

そこまで言うと、愛菜はガクッとうなだれて
気を失ってしまう。

「--愛菜!」
慌てて、縄をハサミで切断する律夫。

「愛菜!愛菜!しっかりしろ!」
愛菜を揺さぶる律夫。

一体どうしたのか?
久松が倒れただけじゃなくて、愛菜まで…。

愛菜が目をカッと開いた。

「---愛菜…良かった!」
愛菜の肩に手を触れながら、律夫が喜びの笑みを浮かべる。

「・・・・・・」
愛菜は黙っている。

そして、言った。

「----気安く、触らないでくれる?」
嫌悪感をにじませた、敵意むき出しの声。

律夫は驚いて手を離す。

「---愛菜?」

愛菜は、律夫が触れていた部分を手で払うと、
微笑んだ。

「----律夫…
 これから、わたしがあなたに生き地獄を味あわせてあげるね。
 ふふふ」

愛菜が、いつもは見せないようなイヤらしい笑みを浮かべている。

「---ま…愛菜…どうしたんだよ?」
律夫が言うと、
愛菜は突然、胸を触り始めた。

「うっふふ…♡
 これが、”わたし”の胸かぁ…
 うふふ♡ あぁん♡
 こ、声がでちゃう!気持ちイイ!」

愛菜の突然の行動に、律夫は唖然とする。

そして、愛菜は続けてスカートをめくり、
自分の太ももや下着を見て、涎を垂らし始めた。

「くふふっ…♡
 すっごぉい!!!
 たまらない… たまんねぇ!!!!

 うふふ♡ あは、あは!!
 ははははははははははっ!
 ひ~~~ははははははははは!」

愛菜が、大笑いし始める。

「---お、、おい…愛菜!」
律夫が言うと、
愛菜は鼻で律夫を笑って、
倒れている久松の体を足でうつ伏せから、あおむけにした。

そして、久松の胸ポケットから容器を取り出した。

容器は体が、水色の液体らしきものがついている。
何か、液体が入っていたのだろう。

「---憑依」
愛菜がつぶやいた。

「なに?」
律夫が言うと、
愛菜は笑う。

「---憑依薬…。
 そんな夢のようなものがあったら、
 どうする…!?」

愛菜が目を見開いて、挑発的な表情で律夫を見る。

「---ま、、、まさか!」
律夫が声を上げると、
愛菜は大声で叫んだ

「ぴんぽーーーーーーーーーん!!!!
 だいせいかーーーーーい!」

そう言うと、
机に飛び乗って、足を組んで座り、律夫の方を見た。

「今の愛菜はね~~
 俺に好き勝手されてるわけ!
 からだもこころも、ぜ~~~んぶ俺の、、、
 いや、、わたしのもの!!

 うふふふふ♡
 この綺麗な手も…髪も…
 胸も、足も、ぜ~~~んぶ俺の、いや、わたしのものなの!
 はははははははっ!」

手の甲のニオイを嗅ぎながら笑う愛菜。

「嘘だろ…
 おい、、、愛菜!」
律夫が叫ぶ。

「嘘じゃないし…。
 お前の彼女が、こんなことするかぁ~?」

愛菜が制服を脱ぎ捨てる。

「---ほら、見たいだろお前も!
 愛菜チャンの裸を!」

ブレザーに続いて、下の服にまで手をかける愛菜。

「--や、、やめろ!わかった!やめろ!」
律夫が言うと、
愛菜は手を止めて、
微笑んだ。

「---うふふ・・・
 わたしのこと、嫌いなの?」
愛菜が、上目遣いで、律夫の方を見る。

「---テメェ・・・
 今すぐ愛菜を解放しろ!
 先生に言いつけるぞ!」

律夫が言うと、
愛菜は笑った。

「先生???
 言ってどうするの?
 わたしはわたしよ… うふふ♡」

机から降りて、律夫の方に歩み寄る愛菜。

律夫は背筋の凍る思いをする。

そうだーーー
先生に言って、何になる?

愛菜が憑依されている、なんて…。

「---俺も鬼じゃないから、
 愛菜チャンを助ける方法、教えてやるよ」

愛菜はそう耳打ちしてから続けた。

「--これから、毎日昼休みにこの部屋で、
 律夫に愛菜からの”おねがい”を言うから、
 律夫はその日のうちに、わたしの願いを叶えてくれれば
 1ポイントあげる!」

律夫は、愛菜を睨む。

「で、愛菜ちゃんポイントが、7ポイント貯まったら、
 解放してあげる!うふふっ♡

 わたしを助けるために、頑張って!律夫!」

挑発的な口調で言う愛菜。

「---ふざけるな!その間ずっと
 愛菜を乗っ取っているつもりか!?」

律夫が言うと、愛菜は笑った。

「ううん。毎朝起きてから、昼休みまでは愛菜チャンのこと
 解放してあげる!

 ま、俺は中にいるけどな!
 本人が怖がらないように、記憶だけすこ~しいじるけどな」

愛菜が机のカドに、自分の体をこすりつけながら言う。

「あぁん…♡ いいからだだぜ!」
愛菜のその様子に、律夫の怒りは頂点に達する。

「---おっと、一つ言い忘れた。
 俺に逆らったり、愛菜本人に憑依のことを話したりすれば
 ”ゲームオーバー”だ!」

愛菜が笑う。

「ゲームオーバーだと…?」

律夫の言葉に、愛菜はニヤリと笑みを浮かべて続けた。

「そう…律夫がゲームオーバーになったら、
 わたし、全裸になって、校舎の中で大暴れさせられちゃうの!

 スマホで動画をとりながらね!
 うふふ・・・
 わたしの人生、終わっちゃう♡」

律夫は、恐怖に身を震わせた。

「久松…テメェ・・・」

だが、従うしか無かった…。

「わたしを救え!は明日からスタートよ!
 また、昼休みにね!

 わたしのお願いを達成したら1ポイント。
 その日のうちに達成できなかったら0ポイント。
 合計7ポイントたまったら、わたし、助かる!」

あざといポーズをとって、笑う愛菜。

「---くそが!」
律夫は空き教室から立ち去ろうとした。
これ以上、何を言っても愛菜をこの場で解放してくれるつもりは
なさそうだ。

「--あ、そうそう、
 憑依している間はさ、俺が愛菜チャンの脳を使うから、
 もたもたしていると、どんどん愛菜チャン自身も
 ”俺”みたいな人間に変わっていくぜ?」

愛菜が言った。

「----」
律夫は振り返り、愛菜を睨みつけた。

「そんなことはさせないー。
 最短で愛菜を救出してやる。

 ”生き地獄”を味わうのはお前だ!」

そう言い、律夫は空き教室を後にした。

「---くくく、ははははははははっ!」
髪のニオイを嗅ぎながら笑う愛菜。

「---可愛いわたしが!!!
 まじめなわたしが!!
 こんな風に壊されちゃってるぅ♡
 
 これこそ、芸術…!!!!
 うつくしい!!!!美しいよォ♡」

愛菜はその場で狂ったように、
自らの体を弄び、大声で喘ぎ始めた。

そしてーー
彼女はーーそのまま絶頂に達した・・・。

②へ続く

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コメント

”生き地獄”の本番は明日からー!?
愛菜を助けられるのでしょうか!

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憑依<生き地獄>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    これは続き期待してます!

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > これは続き期待してます!

    ありがとうございます!頑張ります!