小さいころからずっと一緒だった幼馴染の彼女。
もしも、目の前でその体が奪われて、
最愛の相手が、最大の敵になってしまったら…?
愛憎の狭間ー
それは、生き地獄。
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「おはよー!」
高校への通学路。
聞きなれた声が背後から聞こえてきた。
「あ、おはよう!」
高校生、工藤律夫(くどう りつお)は、
背後から声をかけてきた女子生徒に笑顔で返事を返した。
「---って、また寝癖ついてるよ」
幼馴染の桜井 愛菜(さくらい まな)が微笑みながら
寝癖の箇所を指摘する。
「--う、、うるさいなぁ!これは俺のファッションなんだよ!」
律夫が慌てた様子で言う。
彼はどちらかと言うと、イケメンで、
友達も多いほうだが、何故か朝、急いでいるのか
よく寝癖がついている。
「---せっかくのイケメンが台無しだよ~?」
愛菜が笑う。
律夫と愛菜は、
小さいころから親同士で近所付き合いのあった、
幼馴染だ。
中学卒業の頃から、律夫が、愛菜を異性として
意識し始めて、最終的には二人は付き合うことになった。
「--なんか、わたしたちってずっと一緒だよね」
歩きながら愛菜が言う。
綺麗な黒髪で、顔もスタイルも一級品の愛菜。
小さいころは、愛菜がこんなかわいい子になるとは
思ってもみなかった。
「---え?もしかして嫌だった?」
律夫が、ふざけた様子で聞くと、
「ううん、律夫と一緒に居れて嬉しい…」
少し恥ずかしそうに言う愛菜。
彼らは、友達間でも公認のカップルだった。
理想のカップルとしてーーー。
「--律夫は?わたしと一緒に居れて嬉しい?」
愛菜の言葉に、律夫は顔を赤くしながら
「も、もちろん」と答えた。
幸せないつもの日常。
ーーしかし、二人の後姿を、
これから起こる事態を予期するかのように、
1羽の鴉が不気味に見つめていた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
登校して、ロッカーをいじっていると、
律夫は、背後から声をかけられた。
クラスメイトの久松 隆康(ひさまつ たかやす)。
粘着質で非常に面倒くさい男子生徒だ。
「--工藤君さぁ…
いつも、なかよしで羨ましいよな」
久松が語り出す。
律夫は「面倒くせぇ」と思いながら
ロッカーの整理に集中しているふりをして、
久松の話を流し聞きしていた。
「---俺なんかさ、童貞だよ。
生まれてこのかた、彼女なんかできたこともない。
告白されたこともない!
わかるか!工藤君!君にこのくやしさが!
分からないよなぁ!このリア充!」
一人でエスカレートしている久松を
冷たい目で見つめて、律夫はため息をつく。
”そういう、面倒なところが、彼女が出来ない原因だぞ”と
言ってやりたかった。
けれどー。
言わなかった。
言えば、余計に面倒なことになるからだ。
「---その目。
そうやって、どいつもこいつも俺を見下す!
お前なんかより、俺の方がずっと、女の子を
大切にできるのに!」
久松が喚いている。
「---もう授業始まるから戻っていいか?
教室に…」
あきれ顔で律夫が言うと、久松が頭をかきながら言った。
「…大切なモノがさ、目の前で壊されていく、
犯されていく…けれども、大切なモノはとても楽しそうにしている」
意味の分からない言葉を呟く久松。
「・・・・・」
気味悪そうに、律夫が久松の方を見る。
「---とっても素晴らしいと思わないか!
花が汚されていく!でも花は喜んでいる!
ククク…たまらねぇ!
興奮でゾクゾクするぜ!」
体を震わせながら狂気の笑みを浮かべる久松。
「一人で言ってろ…」
律夫は、久松とこれ以上関わりたくないと
心底思った。
そして、教室へと戻る。
「--だいじょうぶ?」
愛菜が心配そうに訪ねて来た。
律夫だけでなく、クラスメイト全員から、久松は
気持ち悪がられている。
「--ああ、大丈夫。」
律夫が笑うと、愛菜も安心した様子でほほ笑んだ。
「--あ、そうだ、今日の昼休みなんだけど、
わたし、先生に話があるから、今日は一緒にお昼
食べれない… ごめんね!」
愛菜が苦笑いしながら言う。
二人はいつも、一緒に昼食を食べるほど、
仲良しだ。
「--あぁ、わかった」
律夫は微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休み。
愛菜は職員室に向かった。
律夫はいつものように、
弁当を食べていると、
スマホにLINEでメッセージが届いた。
「ん?愛菜からだ…
どうしたのかな?」
律夫がメッセージを確認する。
すると、そこには…
”た す け て
ーー東棟3階の空き教室ーー”
とだけ書かれていた。
「-----!!」
律夫は弁当をその場に放り出して、
空き教室に走った。
ーー愛菜は悪戯するような人間じゃない。
愛菜が「助けて」と言ったらそれは「助けて」なのだ。
ものの数分で空き教室の前に辿り着いた律夫。
そこにはーーー
久松と愛菜の姿があった。
愛菜が、椅子に体を縛りつけられている。
「---よぉ、ヒーロー!」
久松がふざけた様子で笑う。
「---お前・・・ふざけやがって!」
律夫は怒りを露わにして、久松の方に向かう。
そして、胸倉をつかんだ。
「--お?殴るのか?
工藤君よぉ!
殴ったらどうなるかわかってんのか??
停学だよ?? て・い・が・く!」
胸倉をつかまれても、怯まない久松。
「---律夫!構わない方がいいよ!」
愛菜が縛られながらも叫ぶ。
空き教室の端にある机にハサミが置いてある。
「--ほぅら、そのハサミで愛しの彼女を
助けろよ!工藤君!」
久松が笑う。
律夫は「お前、覚悟しとけよ!」と言って、
胸倉から乱暴に手を離した。
「---そのハサミで!
愛菜チャンをたすけてあげなよ!
うはははは!うははっ!うはははははは!」
久松が挑発を続ける。
ハサミを手に、律夫は久松に襲い掛かってやろうかと思った。
だが、思いとどまる。
「----ごめんね・・迷惑かけて」
愛菜が涙ぐんで律夫を見る。
「---いいさ、、悪いのはこのクソ野郎だ!」
律夫が叫ぶ。
そして、ハサミをつかみ、
愛菜の方へと向かう。
「いいぞぉ!ヒーロー工藤!
舞台は整った!!
はははっ!
最高のショータイムだ!」
そう言うと、久松は突然発作を起こし、
その場に倒れた。
「---なっ…?おい、久松!」
突然、目の前で同級生が倒れた。
嫌なヤツとは言え、
律夫は驚きを隠せない。
「うっ…あっ…あぁぁっ…やめて!やめて!」
突然、縛られている愛菜が苦しみだした。
「----!?どうした!?」
律夫が愛菜の方を見て、叫ぶ。
「--あ・・・律夫…たすけて・・・!!!
ひ・・・ひさま・・・・」
そこまで言うと、愛菜はガクッとうなだれて
気を失ってしまう。
「--愛菜!」
慌てて、縄をハサミで切断する律夫。
「愛菜!愛菜!しっかりしろ!」
愛菜を揺さぶる律夫。
一体どうしたのか?
久松が倒れただけじゃなくて、愛菜まで…。
愛菜が目をカッと開いた。
「---愛菜…良かった!」
愛菜の肩に手を触れながら、律夫が喜びの笑みを浮かべる。
「・・・・・・」
愛菜は黙っている。
そして、言った。
「----気安く、触らないでくれる?」
嫌悪感をにじませた、敵意むき出しの声。
律夫は驚いて手を離す。
「---愛菜?」
愛菜は、律夫が触れていた部分を手で払うと、
微笑んだ。
「----律夫…
これから、わたしがあなたに生き地獄を味あわせてあげるね。
ふふふ」
愛菜が、いつもは見せないようなイヤらしい笑みを浮かべている。
「---ま…愛菜…どうしたんだよ?」
律夫が言うと、
愛菜は突然、胸を触り始めた。
「うっふふ…♡
これが、”わたし”の胸かぁ…
うふふ♡ あぁん♡
こ、声がでちゃう!気持ちイイ!」
愛菜の突然の行動に、律夫は唖然とする。
そして、愛菜は続けてスカートをめくり、
自分の太ももや下着を見て、涎を垂らし始めた。
「くふふっ…♡
すっごぉい!!!
たまらない… たまんねぇ!!!!
うふふ♡ あは、あは!!
ははははははははははっ!
ひ~~~ははははははははは!」
愛菜が、大笑いし始める。
「---お、、おい…愛菜!」
律夫が言うと、
愛菜は鼻で律夫を笑って、
倒れている久松の体を足でうつ伏せから、あおむけにした。
そして、久松の胸ポケットから容器を取り出した。
容器は体が、水色の液体らしきものがついている。
何か、液体が入っていたのだろう。
「---憑依」
愛菜がつぶやいた。
「なに?」
律夫が言うと、
愛菜は笑う。
「---憑依薬…。
そんな夢のようなものがあったら、
どうする…!?」
愛菜が目を見開いて、挑発的な表情で律夫を見る。
「---ま、、、まさか!」
律夫が声を上げると、
愛菜は大声で叫んだ
「ぴんぽーーーーーーーーーん!!!!
だいせいかーーーーーい!」
そう言うと、
机に飛び乗って、足を組んで座り、律夫の方を見た。
「今の愛菜はね~~
俺に好き勝手されてるわけ!
からだもこころも、ぜ~~~んぶ俺の、、、
いや、、わたしのもの!!
うふふふふ♡
この綺麗な手も…髪も…
胸も、足も、ぜ~~~んぶ俺の、いや、わたしのものなの!
はははははははっ!」
手の甲のニオイを嗅ぎながら笑う愛菜。
「嘘だろ…
おい、、、愛菜!」
律夫が叫ぶ。
「嘘じゃないし…。
お前の彼女が、こんなことするかぁ~?」
愛菜が制服を脱ぎ捨てる。
「---ほら、見たいだろお前も!
愛菜チャンの裸を!」
ブレザーに続いて、下の服にまで手をかける愛菜。
「--や、、やめろ!わかった!やめろ!」
律夫が言うと、
愛菜は手を止めて、
微笑んだ。
「---うふふ・・・
わたしのこと、嫌いなの?」
愛菜が、上目遣いで、律夫の方を見る。
「---テメェ・・・
今すぐ愛菜を解放しろ!
先生に言いつけるぞ!」
律夫が言うと、
愛菜は笑った。
「先生???
言ってどうするの?
わたしはわたしよ… うふふ♡」
机から降りて、律夫の方に歩み寄る愛菜。
律夫は背筋の凍る思いをする。
そうだーーー
先生に言って、何になる?
愛菜が憑依されている、なんて…。
「---俺も鬼じゃないから、
愛菜チャンを助ける方法、教えてやるよ」
愛菜はそう耳打ちしてから続けた。
「--これから、毎日昼休みにこの部屋で、
律夫に愛菜からの”おねがい”を言うから、
律夫はその日のうちに、わたしの願いを叶えてくれれば
1ポイントあげる!」
律夫は、愛菜を睨む。
「で、愛菜ちゃんポイントが、7ポイント貯まったら、
解放してあげる!うふふっ♡
わたしを助けるために、頑張って!律夫!」
挑発的な口調で言う愛菜。
「---ふざけるな!その間ずっと
愛菜を乗っ取っているつもりか!?」
律夫が言うと、愛菜は笑った。
「ううん。毎朝起きてから、昼休みまでは愛菜チャンのこと
解放してあげる!
ま、俺は中にいるけどな!
本人が怖がらないように、記憶だけすこ~しいじるけどな」
愛菜が机のカドに、自分の体をこすりつけながら言う。
「あぁん…♡ いいからだだぜ!」
愛菜のその様子に、律夫の怒りは頂点に達する。
「---おっと、一つ言い忘れた。
俺に逆らったり、愛菜本人に憑依のことを話したりすれば
”ゲームオーバー”だ!」
愛菜が笑う。
「ゲームオーバーだと…?」
律夫の言葉に、愛菜はニヤリと笑みを浮かべて続けた。
「そう…律夫がゲームオーバーになったら、
わたし、全裸になって、校舎の中で大暴れさせられちゃうの!
スマホで動画をとりながらね!
うふふ・・・
わたしの人生、終わっちゃう♡」
律夫は、恐怖に身を震わせた。
「久松…テメェ・・・」
だが、従うしか無かった…。
「わたしを救え!は明日からスタートよ!
また、昼休みにね!
わたしのお願いを達成したら1ポイント。
その日のうちに達成できなかったら0ポイント。
合計7ポイントたまったら、わたし、助かる!」
あざといポーズをとって、笑う愛菜。
「---くそが!」
律夫は空き教室から立ち去ろうとした。
これ以上、何を言っても愛菜をこの場で解放してくれるつもりは
なさそうだ。
「--あ、そうそう、
憑依している間はさ、俺が愛菜チャンの脳を使うから、
もたもたしていると、どんどん愛菜チャン自身も
”俺”みたいな人間に変わっていくぜ?」
愛菜が言った。
「----」
律夫は振り返り、愛菜を睨みつけた。
「そんなことはさせないー。
最短で愛菜を救出してやる。
”生き地獄”を味わうのはお前だ!」
そう言い、律夫は空き教室を後にした。
「---くくく、ははははははははっ!」
髪のニオイを嗅ぎながら笑う愛菜。
「---可愛いわたしが!!!
まじめなわたしが!!
こんな風に壊されちゃってるぅ♡
これこそ、芸術…!!!!
うつくしい!!!!美しいよォ♡」
愛菜はその場で狂ったように、
自らの体を弄び、大声で喘ぎ始めた。
そしてーー
彼女はーーそのまま絶頂に達した・・・。
②へ続く
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コメント
”生き地獄”の本番は明日からー!?
愛菜を助けられるのでしょうか!
コメント
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これは続き期待してます!
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> これは続き期待してます!
ありがとうございます!頑張ります!