<憑依>消え失せた愛情②~夫~(完)

心優しい母親は、男に憑依されて
実の娘に手をあげたー。

そして、会社に行っていた夫が帰ってきた。

さらなる悲劇が今、始まる…。

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家に帰宅した夫の正芳は異変に気付く。

「---」
いつもならすぐに、茉穂と娘の由夢が出迎えてくれるのだが
それが無い。

別に、強要はしていないし、
出迎えがなくても正芳は気にしない。

けれど、なんだか嫌な予感がした。

「---ただい…!?」
”ただいま”そう言いながらリビングに
入ろうとした正芳が驚きで目を見開く。

そこにはーー
SM衣装を身に着け、
自分の体を大胆に露出した妻、茉穂が立っていた。

「--ま、、茉穂…
 どうしたんだ?その格好は…?」

唖然として正芳が言うと、
茉穂は振り返った。

「あら、お帰りなさい」

鞭で音を立てながら微笑む茉穂。

「--・・・な、、何をしてるんだ…」
正芳が困惑した様子で尋ねる。

「うふふ・・・♡
 わたしだって女なのよ?

 最近は、母親として、色気もそっけもない
 格好をしてたけど、
 やっぱ、わたしはこうじゃなくちゃ!」

茉穂が歩み寄ってくる。

あまりにもエロい衣装に、
正芳は思わず目を逸らしてしまう。

「--どう?」
茉穂が挑発的に言う。

「ど…どうって…」
正芳が困惑した様子で返事をすると、
茉穂が叫んだ。

「どうって聞いてるのよ?
 わたしの体、魅力的でしょ?」

わざと体を密着させて言う茉穂。

「・・・・・」
正芳が戸惑っていると、
泣き声が聞こえてきた。

娘の由夢だー。

「--由夢!?
 おまえ、何をやってるんだ!」

夫の正芳が叫んで、
由夢の声がした寝室の方にかけこむ。

そこにはテープで壁に縛り付けられた由夢の姿があった。

「ゆっ・・・由夢!由夢!」
慌てて正芳はそれを剥がそうとする。

「あっははははは♡」
背後から茉穂の声がする。
鞭を意味もなく振るっている。

「--ゆ…由夢…こ、、これは…!」
正芳は、由夢の体に打撲があることに気付く。

「---茉穂!まさかお前、その鞭で由夢を!?」
正芳が怒りを露わにする。

だが、茉穂は悪びれることなく答えた。

「うふふ・・・
 わたしは”母親”である前に”女”なのよ」

色っぽい声で言う。

どうしたことか。
茉穂の表情は”母”の顔ではなく”女”の顔になっていた。

「お、、お前・・・」
正芳が動揺した様子で呟く。

「--わたしは”妻”としてではなく
 ”女”として生きたいの。

 だってほら、見て!
 こ~んなに綺麗なんだよわたし!

 母親なんかやってられないわよ!」

母を放棄する宣言する茉穂。
正芳の怒りがついに爆発した。

「---ふざけるな!
 お前は母親だろう!
 いいからバカなことはやめーー」

「わたしは”女”よ!」

茉穂が正芳を睨みつけながら叫んだ。

「茉穂…」
正芳は困り果ててしまう。

「----わ…分かった…
 分かったよ…
 夜の営みが足りてなかったのは認める。

 だからもうやめてくれ…」

正芳が言うと、茉穂は突然笑い出した。

「ぷっ…くくく…ははははははははは!
 あっはははははははは~♡」

「ま…茉穂…?」
正芳が、恐怖すら目に浮かべてその名を呼ぶ。

茉穂は、一体どうしてしまったのだろうか。

「相変わらずバカだな!
 自分の妻が憑依されていても気づかないなんて!
 あっはははははは・・・」

汚らしく笑い続ける茉穂。

「---憑依、だと?」
正芳が訳が分からない、という様子で呟く。

「子供を愛してる母親が
 こんな恥ずかしい格好して、娘を鞭でたたくか?
 叩かねぇよなぁ!」

胸を乱暴に触りながら言う。

SM嬢のような格好をして、
乱暴な口調で叫ぶ妻ーー

もはや、別人のようにすら思えた。

「--俺だよ、水木だよ」
妻は言ったー。

”水木”

正芳も妻の茉穂と同じ大学の出身。

そういえば、茉穂と付き合い始めの頃、
「水木」という男とトラブルになった記憶がある。

水木の側が一方的に「俺の茉穂を!」とか言いながら
嫌がらせしてきただけだったが・・・。

「---お前…」
事態を理解した正芳は茉穂を睨んだ。

「---お前・・・自分が何をしてるか分かってるのか!?
 茉穂にそんなことさせて恥ずかしくないのか!」
正芳が怒りを露わにして叫ぶと、
茉穂は体をくねらせながら言った。

「うふふ~♡ 恥ずかしいのはわ・た・し!
 水木さんは恥ずかしくないわ!」

一人二役をしながら正芳をおちょくる茉穂。

「-貴様…!今すぐ茉穂から出て行け!」

そう言うと、茉穂はさらに続けた。

「いやよ…♡
 わたし、水木さんに”体を永遠にあげます”って
 約束したのー」

そして、茉穂が笑いながら続けた。

「あはは…
 だからよぉ…正芳!
 この女の体は俺のものだぜぇ!

 許可もとった!
 何をしようが俺の勝手だ!あっはははははは~♡」

正芳は握り拳を作り、茉穂を睨む。

「--お前が、言わせているだけだろうが!」

その言葉に茉穂は返事をせず、
鞭で娘を叩き始めた。

「うふふ♡
 あはははははははっ!」

手加減も無しに全力で由夢を叩く茉穂。

「--お、おい!やめろ!」

「おがぁさん!うあああああああん」
泣き出す由夢。

正芳が止めに入るが、
茉穂が「邪魔だ!どけ!」と叫んで正芳を突き飛ばした。

そして、狂気の笑みを浮かべながら娘を叩き続ける。

「くははははは♡
 お前の子なんていらねぇ!!
 わたしは、、水木さんの子供を産むの!

 あははははははっ!あはははははははは~~」

正芳が必死に止めようとするが、
茉穂は止まらない!

「あぁん♡
 からだがゾクゾクする!

 茉穂の意思が、拒絶反応を起こしてる!

 でも、それを抑え込んで暴力を続けるわたしに
 ゾクゾクする♡
 
 はっ、、あぁっ、、、あぁぁん!

 虐待する親の気持ちってこんななのかしら!」

茉穂に叩かれ続けた由夢は、
次第に衰弱して、動かなくなった。

「---…うおおおおお!」
正芳が怒りにまかせて叫び、
スマホを取り出した。

「通報してやる!」

だが、茉穂は笑った。

「いいけど…逮捕されるのはわたしよ?」

茉穂の言葉に正芳が手を止める。

「---き…さまぁ…」

「---あんたの子なんて要らないの。
 わたしは水木さんの子供を産むのよ!うふふふふ♡」

茉穂が笑う。

「---どうして、、どうしてこんなことを…!」
正芳の言葉に茉穂は笑う。

「俺さ、コイツが好きだったんだよ。
 茉穂も学食で、俺を見て微笑んでくれた。
 だから俺たちは将来を約束した!

 それなのに正芳!お前が茉穂を奪った!
 お前が、奪ったんだ!
 だから復讐だよ!」

あまりにも自分勝手な理由に、
正芳は憤慨する。

だがーー
体が茉穂のものである以上…

「---さ、由夢を殺したのは
 あなたよ…。
 警察に自首しなさい」

茉穂の言葉に正芳が茉穂を睨む

「ふざけるな…」

「・・・ふふ、いいの?
 あなたが自首しないなら、わたし、この恥ずかしい格好のまま
 外に飛び出してエッチしまくっちゃうよ!?

 茉穂の人生、壊れちゃうよ!?」

嬉しそうに言う茉穂。

茉穂を傷つけることは、、、できない。。

「---わ、、、、、分かった」

歯を食いしばり、そう答えるのが限界だった。

「まぁ、出てこれたら解放してやるよ!
 そのころにはわたしも20後半だろうし、
 ババアに用はねぇからな」

笑う茉穂を睨みながら、
正芳はーーー
茉穂を救うため、
”娘殺し”の汚名を被った…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数年後。

服役を終えた正芳は、
家に戻ってきた。

本当だったらー
娘の由夢と、妻の茉穂が待つはずの家。

だが、もう由夢は居ないー。

「---ただいま」
正芳が家に入ると、
そこには、少し年を重ねた茉穂が居た。

「あら…くくく、何年ぶりかしら?」
茉穂が挑発的に笑う。

「---お前・・・約束は果たしたぞ!
 茉穂を解放しろ!」

正芳は叫ぶ。
あの時と同じように。

「---いいわよ。
 でも…、わたし、あれからいろんな男とヤリまくっちゃったし、
 AV女優の仕事を初めて、AV撮りまくっちゃったし・・・
 もう、身も心もボロボロよ…?」

茉穂が言う。

「---ふ………ふざけるなよ…」
正芳が目から涙を流す

「お前に何の資格があって、茉穂をそんな目に…
 あんまりだ…
 あんまりだ!!」

正芳がその場に泣き崩れる。

20代後半になった茉穂は、
女子高生の制服を着ながら微笑む。

「---ババアのくせに、JK時代の制服着てるわたし…
 うっふふふふ♡
 ばっかみたい!最後の最後まで笑わせてくれるよね!

 俺が好きだったのは20代前半までの茉穂。
 もう今の茉穂は、老いたガラクタだよ!」

茉穂が狂ったように笑う。

正芳は絶望して、何も答えない。

「---茉穂、からだ、返さなくてもいいよね?」
茉穂が言う。

そしてー茉穂が答えた
「うん♡ 水木くんにぜ~んぶあげる♡」

もちろんー
茉穂の意思ではない。
一人二役だ。

「--茉穂、夫と一緒に死にたいか?」
茉穂が言う。

そして、また茉穂が答えた。

「うん♡ もうこのからだ、いらないもんね!
 そうする♡」

そう言うと、茉穂は部屋に”火”をつけた。

「------!!」
正芳が目を見開く。

そういえば、ガソリンのニオイがーーー

茉穂は夫の出所の日を知り、
予め細工していたのだった。

「じゃあな正芳!
 そして茉穂!

 もうこの体いらねぇから返品するわ!

 あはははははははっ!は~はははははは!」

そう言うと、茉穂はふっと意識を失ってその場に倒れた。

「----茉穂!」
正芳が叫ぶ。

火の手がもの凄い勢いで広がる。

「----あれ…」
茉穂がうつろな目で目を覚ます。

数年ぶりの目覚め…。

「---茉穂!」
正芳は目に涙を浮かべた。

「---あ、、、わ、、、わたし・・・
 あの人に・・・・

 そ、、、、そうだ・・・由夢は…?
 由夢は…無事???」

茉穂の時計は
”あの日”で止まったままだった。

娘の由夢を守るために、男に体を差し出した。

だからーーー
由夢の安否が気になって仕方がなかった。

「---あぁ、、、大丈夫。由夢なら無事だよ!
 今すぐ会えるさ!」

正芳は叫んだ。
そして、茉穂を温かく包み込んだ。

「---よかったーーー」
茉穂が嬉しそうにほほ笑んだ。

そしてーー
家は全焼した。

焼け跡からは二人の焼死体が見つかった。
二人は手を握り合ったまま、息絶えていた。

茉穂と正芳は、あの世で、娘と再会できたのだろうか…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

「-------------!?」

自分の体に戻ろうとしていた水木は目を見開く。

「-----バ…バカな!」
”自分の体”はとうの昔に死んでしまっていたー。

当たり前だー。
ほったらかしにしていたのだからー。

自分が住んでいたアパートは、既に
別の女子大生が住んでいた。

「----く…くそっ…俺は」

帰るべき体を失った水木は戸惑う。

しかしー
すぐに笑みを浮かべた。

「----可愛いじゃねぇか」

自分の住んでいたアパートの部屋に
新しく入居していた女子大生を見つめて、
霊体の状態の水木は不気味にほほ笑んだー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

母親憑依リクエスト作品、以上で完結です!
ありがとうございました!!

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