<憑依>彼色に染まる幼馴染① ”変色”

彼にとって、大切な彼女ー。

彼女であり、小さいころから一緒の幼馴染でもある
亜香音(あかね)に、次第に異変が起きていくー

”彼女”は
”彼色”に

 染 ま ル

------------------------------—-

高校の昼休み。

中庭で、福山 哲(ふくやま てつ)は、
彼女の皆川 亜香音(みながわ あかね)と楽しく談笑していた。

「まーた、そんなこと言って…」

亜香音は大人しい性格のメガネ女子で、
図書委員の委員長を務めている子だ。

人見知りで引っ込み思案な性格だけれども、
幼馴染の哲にだけは、ズケズケとモノを言う子だった。

哲にとってはそれが嬉しかったし、
そのギャップが、また可愛かった。

「---だってさ、数学!
 方程式とかさっぱり分かんないよ!」

哲が言うと、
亜香音が呆れた様子でため息をつく。

「--はぁ…
 あんた方程式って中学生で習わなかった?」

亜香音の言葉に哲は
”そんな昔のことは忘れたよ”とほほ笑む。

「--都合のいいことだけ昔になるんだから」

亜香音は哲の方を見て言う。

「---ホラ、そんなこと言ってると、
 赤点になっちゃうよ!
 私といっしょに卒業するんでしょ!?」

怒った顔で言う亜香音。

まるで姉のようだー。

「プッ…あはは…」
哲が笑う。

突然笑い出した哲を不気味なものを見る表情で
見つめる亜香音。

「な、、何がおかしいのよ…?」

哲は笑いながら言った

「いや、笑った亜香音も可愛いなって」

そう言うと、亜香音が顔を赤らめて
「そ、、そういうこと言ってごまかしてもだめだからね…」

と、照れた様子で、小さな声で呟いた。

「--ははっ!
 でもさぁ、XとかYとか、
 なんなんだかさっぱり分かんないよ!
 はっきりしろって感じ!」

哲はーー
数学だけ大の苦手だった。

他の教科では平均点をとるのだが…。

「--お!今日もラブラブしてんじゃねぇか!」

嫌な声がしたー。

クラスの問題児
長瀬 長次郎(ながせ ちょうじろう)だ。

茶髪のチャラい生徒で、
何度か停学にもなっている。

「今日も可愛いね!
 亜香音ちゃ~~ん!」

長瀬が気持ち悪い目で亜香音を見る。

亜香音は目を逸らして
「う…うん」とだけ答える。

哲以外には、亜香音は大人しい性格だったー。

「--いやぁ、しっかし、真面目なのに
 亜香音ちゃんの体ってエッロイよなぁ…

 そーんな体してたら俺、興奮しちゃうなぁ」

長瀬が亜香音をじろじろ見ながら言う。

「そ、、そんな目で見ないで…」
亜香音が恥ずかしそうに言う。

彼女は確かにー
男子ウケしそうな体つきをしているー。

だが、亜香音は、
そういう目で見る男を嫌悪していたー。
根本的にH方面の話が彼女は嫌いだったー。

「--ちょ、やめろよ」
哲が止めに入るが、長瀬は止まらなかった

「なぁなぁ、こんなチンゲン菜みたいな男捨てて
 俺と付き合おうぜ!?

 な、いいだろ?
 俺は亜香音ちゃんのエッロイ体を堪能して、
 亜香音ちゃんは女の喜びを知る

 どう?これこそWin-Winじゃね?
 ははっ!」

「----ごめんなさい」
亜香音が頭を下げる。

そして哲の後ろに隠れるようにして言った。

「わたしはーー、哲のことが好きだからー」
顔を赤らめて恥ずかしそうに言う亜香音。

「---チッ」
長瀬は舌打ちをした。

「そっかそっか…
 亜香音ちゃんには失望したよ。

 せっかく”自由”に恋愛させてあげようと思ったのに」

そう言うと長瀬は、哲たちに背を向けて言った。

「ま、気が変わって後悔するなよな」

そして、長瀬は立ち去った。

「---大丈夫?」
哲が訪ねる。

哲の袖をつかんでいた亜香音の手は震えていた。

彼女はー
中学生の時に暴漢に襲われた経験があり、
男性に対して恐怖を抱いている。

「---う、、うん、ごめんね」
亜香音が手を離して、申し訳なさそうにしている。

「--いいよ、何かあったら、僕に言って。
 ホラ、こう見えても僕、やるときはやる男だから」

哲の言葉に「信用ないなぁ~」と亜香音はいつものような
笑顔を浮かべてくれた―。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

廊下を歩きながら長瀬は、とある液体の入った
試験管のようなものを取り出した。

「あのエロボディ、、ぜひ彼女にしたいー」
長瀬は笑う。

だがーー
長瀬は人に”憑依”して自由に操りたい、という趣味はない。
あくまでも長瀬は、亜香音に「彼女になる」と言って欲しいのだ。

あくまでも、自分の意思で。

「--悪いけど…”俺色”に染めちゃうよ…」

その憑依薬の説明書にはこう書かれていた。

”長時間・長期の憑依にはご注意ください。
 
 憑依中は、憑依対象の人間の脳を使います。
 そのため、長期の憑依は、憑依対象の脳に
 影響を与える可能性があります。

 人体実験の結果、数時間以上の憑依を
 毎日繰り返したところ、
 憑依対象の人間の性格・思考が、
 憑依している側の人間に徐々に近づいていく
 ”副作用”が確認されています ”

「---」
長瀬はニヤッとした。

憑依する趣味はない。

だが、この”副作用”は使えるじゃないかーーと。

つまり、毎日亜香音に憑依すれば、
亜香音はだんだん、自分に近づいてくるのだとー。

「ふふふっ!」
長瀬は不気味に笑ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その夜。
自宅の部屋で私服姿の亜香音はベットの上で
寝転んでいた。

「---はぁ…」
彼女は、自分の体に悩んでいた。

男は、自分のことを「エロい目」でしか見ない。
みんなそうだ。

ほとんどの人は嫌らしい目で、
胸を見ていたり、スカートを見ていたり…。

「---」
だが、亜香音にとって幼馴染の哲は違った。

彼はー、
”そういう目”で亜香音を見なかった。

だからこそ亜香音は彼のことを信頼し、
好意を抱き、付き合うことにしたのだった。

「----!?」

突然、亜香音に激しい悪寒が走った。

「---えっ?」
亜香音は後ろを振り向いたがー、
何も居なかった。

すぐに悪寒は落ち着くー。

だがー。
この時、既に長瀬が憑依していた。

「---ククク、亜香音ちゃんの体の中か…」
長瀬は呟く。

だが、その言葉は亜香音には届かない。

そしてー
長瀬は思う。

「体を操ったりはしない。
 亜香音ちゃん、中に居候させてもらうだけだよ。」

長瀬はーー
その日、2時間、亜香音の中に居座った。

ーーー憑依薬の説明書が正しいのなら、
毎日これを繰り返していれば、亜香音は
”俺色”に染まってくるはずだ!…と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「--そうなんだ!へー!すごいね!」
亜香音がクラスメイトたちと談笑しているのを哲が見つめていた。

「今日は…亜香音、いつもより明るいような…」
哲は微笑ましくその様子を見る。

「何かいいことでもあったのかな…」

そんな風に思っていると、クラスメイトの長瀬がやってきた。

「---よぉ、福山!」
哲は名前を呼ばれて嫌々、長瀬の方を見る。

「---俺さ、やっぱ、亜香音ちゃんのエロい体
 諦めらんねーわ!
 あの体で色々してもらいてぇなぁ」

長瀬が恥ずかしげもなくつぶやく。

「---ダメだよ。
 亜香音はそういうの、嫌いなんだ。
 ーーー僕の彼女に手を出すなよ」

哲が言うと、長瀬は笑った。

「でも、亜香音ちゃんが望んだら仕方ねぇよなぁ。
 亜香音ちゃんの望みを俺が叶えて、
 亜香音ちゃんは自分のエロい欲望を満たす。

 どーだよ、俺と亜香音はウィンウィンだぜ!」

長瀬の言葉に哲は失笑した。

「ーーー亜香音が望むなんてありえないよー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

いつものように中庭で談笑する哲と亜香音。

「---どう、数学の勉強は進んだ?」
亜香音が言う。

「え?いや…ホラ…僕、文学系だから」
哲が誤魔化すと、亜香音は呆れたようにため息をついた。

「---来週テストなのよ~?
 しっかり勉強しなきゃ!」

亜香音はそう言ってほほ笑んだー。

いつも通りの日常ー。

そう、この日まではー。

”翌日”から亜香音に異変が起き始めるー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜、長瀬はまた、亜香音に憑依した。

今度は3時間。
昨日と同じように、何もせずに離脱した。

亜香音はまた悪寒を感じただけで気づいていない。

「---はぁっ…どうしたんだろ。
 テスト近いのに、なんか今日は気分が乗らない…」

亜香音は、テスト勉強のモチベーションが上がらないことに
違和感を感じつつも、懸命に勉強を続けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日の昼休み。

今日は亜香音のテンションがおかしい気がする。
哲はそう思っていた。

なんだか、とても明るい気がするのだー。

いや、哲に対してはいつも明るい。

けれどー。
他の子たちの前でも今日は、哲と接するような感じで
明るかった。

それにー。

何か、スカート丈が少し短くなった気がする。

「---うふふっ…今日はなんかいい気分!」
亜香音が上機嫌で落ち着きのない様子で言う。

「はは、何かいいことでも?」
哲が言うと、亜香音は微笑んだ。

「ううん?べっつに~!
 でもなんか今日は調子がいいみたい!」

亜香音が笑顔で言う。

「--私は上機嫌でとっても気分いいし、
 哲もわたしに勉強、勉強言われなくて気分いいよね!

 ふふっ、Win-Winだね!」

亜香音が言った。

哲は顔をしかめたー

”Win-Win”

長瀬の口癖だ。

長瀬を嫌悪する亜香音の口からその言葉が
出てくるとは思わなかった。

「---ま、、、亜香音が
 楽しいなら良かった!」

哲が言うと、亜香音は満面の笑みでほほ笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

前夜も当然、長瀬は亜香音に憑依していた。
何もせず―。
ただ、亜香音の中で正座をしていただけなのだがー。

「--亜香音ちゃん!今日、可愛いね!」
クラスメイトたちが亜香音に声をかけている。

亜香音がー
化粧をして、登校したらしいー。

いや、いつも薄いメイクぐらいはしているのだろうけれど、
今日は少しいつもより、分かりやすいメイクだった。

そう言えば、髪型もいつもより可愛らしい。

「---」
哲は首をかしげる。

「なんか、最近変だなぁ…浮気?」
哲は”そんなことないよな”と自虐的に笑った。

昼休み…。

亜香音が中庭の椅子に座って足を組んだ。

いつも恥ずかしそうにスカートを抑える様な亜香音に
しては珍しい行動だ。

「---亜香音、
 なんか、、、今日はイメージ違うね?」

哲が笑うと、
亜香音は笑う

「-そぉ?うーん、私には分からないけど、
 哲が言うならそうなのかもね!」

亜香音は自分の髪をいじりながら笑う。

なんか、誘うようなしぐさが多いような…

哲が違和感を感じていると”ヤツ”がやってきた。

長瀬だー。

「おー!今日もイチャラブ中~!?」

長瀬がまた、亜香音の体をじろじろと見つめる

「おぉ~亜香音ちゃん、今日は一段とエロいなぁ!
 俺、そういうの大好きだぜ!
 やっぱエロは偉大だぜ!」

長瀬がまた不謹慎なことを言う。

「--おい、やめー」
哲が長瀬を止めようとしたその時だった。

「うん!ありがとっ!」

ーーーーーーー!?

哲は亜香音の方を見た。
”エロい体”

亜香音が言われて一番嫌がる言葉だ。

けれどー
亜香音は今ー?

「ははっ!喜んでもらえてうれしいよ。」

長瀬が亜香音の肩に手を触れる。

亜香音はそれを拒むことなく楽しそうに笑っている。

「---亜香音?」
哲が不思議そうに言うと、長瀬はすぐに手を離した。

「あぁ~亜香音ちゃんとエッチなことしてぇな~」
長瀬が言うと、
亜香音はまんざらでもなさそうにほほ笑んだ。

「じゃ、またな。
 チンゲン菜野郎捨てて、俺と付き合いたくなったら言えよ!」

「うん!」

亜香音が嬉しそうに返事をした。

立ち去る長瀬。

「---亜香音・・・?」
哲がもう一度、その名前を呼んだ。

振り返った亜香音は笑う。

「--冗談よ、冗談!
 哲くんのこと、捨てるわけないでしょ~!」

ケラケラと笑う亜香音。

そしてー

「ねぇ、哲…
 テスト終わったらさ…
 わたしとえっちなことしよっか?」

亜香音が耳元でささやいた。

「えっ…えっ…
 いや、、だ、、ダメだよ!
 亜香音だってそういうこと嫌いじゃないか!」

哲が言うと、
亜香音の表情から笑みが消えた。

「--ふぅん。そ、ま、いいけど…」

そう言うと、愛想悪く亜香音は立ち去ってしまった。

一人残された哲は思うー

「亜香音ーー?
 どうしちゃったんだ…?」

毎日少しずつ進む異変に、
哲は違和感を感じ始めていたー

②へ続く

ーーーーーーーーーーーーーー

コメント

少しずつ染まっていく…
イヤらしい感じですね(笑)

続きは明日です!

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    確実に染まって行ってますねぇ

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 確実に染まって行ってますねぇ

    私も染めたいです!(笑)