彼にとって、大切な彼女ー。
彼女であり、小さいころから一緒の幼馴染でもある
亜香音(あかね)に、次第に異変が起きていくー
”彼女”は
”彼色”に
染 ま ル
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高校の昼休み。
中庭で、福山 哲(ふくやま てつ)は、
彼女の皆川 亜香音(みながわ あかね)と楽しく談笑していた。
「まーた、そんなこと言って…」
亜香音は大人しい性格のメガネ女子で、
図書委員の委員長を務めている子だ。
人見知りで引っ込み思案な性格だけれども、
幼馴染の哲にだけは、ズケズケとモノを言う子だった。
哲にとってはそれが嬉しかったし、
そのギャップが、また可愛かった。
「---だってさ、数学!
方程式とかさっぱり分かんないよ!」
哲が言うと、
亜香音が呆れた様子でため息をつく。
「--はぁ…
あんた方程式って中学生で習わなかった?」
亜香音の言葉に哲は
”そんな昔のことは忘れたよ”とほほ笑む。
「--都合のいいことだけ昔になるんだから」
亜香音は哲の方を見て言う。
「---ホラ、そんなこと言ってると、
赤点になっちゃうよ!
私といっしょに卒業するんでしょ!?」
怒った顔で言う亜香音。
まるで姉のようだー。
「プッ…あはは…」
哲が笑う。
突然笑い出した哲を不気味なものを見る表情で
見つめる亜香音。
「な、、何がおかしいのよ…?」
哲は笑いながら言った
「いや、笑った亜香音も可愛いなって」
そう言うと、亜香音が顔を赤らめて
「そ、、そういうこと言ってごまかしてもだめだからね…」
と、照れた様子で、小さな声で呟いた。
「--ははっ!
でもさぁ、XとかYとか、
なんなんだかさっぱり分かんないよ!
はっきりしろって感じ!」
哲はーー
数学だけ大の苦手だった。
他の教科では平均点をとるのだが…。
「--お!今日もラブラブしてんじゃねぇか!」
嫌な声がしたー。
クラスの問題児
長瀬 長次郎(ながせ ちょうじろう)だ。
茶髪のチャラい生徒で、
何度か停学にもなっている。
「今日も可愛いね!
亜香音ちゃ~~ん!」
長瀬が気持ち悪い目で亜香音を見る。
亜香音は目を逸らして
「う…うん」とだけ答える。
哲以外には、亜香音は大人しい性格だったー。
「--いやぁ、しっかし、真面目なのに
亜香音ちゃんの体ってエッロイよなぁ…
そーんな体してたら俺、興奮しちゃうなぁ」
長瀬が亜香音をじろじろ見ながら言う。
「そ、、そんな目で見ないで…」
亜香音が恥ずかしそうに言う。
彼女は確かにー
男子ウケしそうな体つきをしているー。
だが、亜香音は、
そういう目で見る男を嫌悪していたー。
根本的にH方面の話が彼女は嫌いだったー。
「--ちょ、やめろよ」
哲が止めに入るが、長瀬は止まらなかった
「なぁなぁ、こんなチンゲン菜みたいな男捨てて
俺と付き合おうぜ!?
な、いいだろ?
俺は亜香音ちゃんのエッロイ体を堪能して、
亜香音ちゃんは女の喜びを知る
どう?これこそWin-Winじゃね?
ははっ!」
「----ごめんなさい」
亜香音が頭を下げる。
そして哲の後ろに隠れるようにして言った。
「わたしはーー、哲のことが好きだからー」
顔を赤らめて恥ずかしそうに言う亜香音。
「---チッ」
長瀬は舌打ちをした。
「そっかそっか…
亜香音ちゃんには失望したよ。
せっかく”自由”に恋愛させてあげようと思ったのに」
そう言うと長瀬は、哲たちに背を向けて言った。
「ま、気が変わって後悔するなよな」
そして、長瀬は立ち去った。
「---大丈夫?」
哲が訪ねる。
哲の袖をつかんでいた亜香音の手は震えていた。
彼女はー
中学生の時に暴漢に襲われた経験があり、
男性に対して恐怖を抱いている。
「---う、、うん、ごめんね」
亜香音が手を離して、申し訳なさそうにしている。
「--いいよ、何かあったら、僕に言って。
ホラ、こう見えても僕、やるときはやる男だから」
哲の言葉に「信用ないなぁ~」と亜香音はいつものような
笑顔を浮かべてくれた―。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
廊下を歩きながら長瀬は、とある液体の入った
試験管のようなものを取り出した。
「あのエロボディ、、ぜひ彼女にしたいー」
長瀬は笑う。
だがーー
長瀬は人に”憑依”して自由に操りたい、という趣味はない。
あくまでも長瀬は、亜香音に「彼女になる」と言って欲しいのだ。
あくまでも、自分の意思で。
「--悪いけど…”俺色”に染めちゃうよ…」
その憑依薬の説明書にはこう書かれていた。
”長時間・長期の憑依にはご注意ください。
憑依中は、憑依対象の人間の脳を使います。
そのため、長期の憑依は、憑依対象の脳に
影響を与える可能性があります。
人体実験の結果、数時間以上の憑依を
毎日繰り返したところ、
憑依対象の人間の性格・思考が、
憑依している側の人間に徐々に近づいていく
”副作用”が確認されています ”
「---」
長瀬はニヤッとした。
憑依する趣味はない。
だが、この”副作用”は使えるじゃないかーーと。
つまり、毎日亜香音に憑依すれば、
亜香音はだんだん、自分に近づいてくるのだとー。
「ふふふっ!」
長瀬は不気味に笑ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜。
自宅の部屋で私服姿の亜香音はベットの上で
寝転んでいた。
「---はぁ…」
彼女は、自分の体に悩んでいた。
男は、自分のことを「エロい目」でしか見ない。
みんなそうだ。
ほとんどの人は嫌らしい目で、
胸を見ていたり、スカートを見ていたり…。
「---」
だが、亜香音にとって幼馴染の哲は違った。
彼はー、
”そういう目”で亜香音を見なかった。
だからこそ亜香音は彼のことを信頼し、
好意を抱き、付き合うことにしたのだった。
「----!?」
突然、亜香音に激しい悪寒が走った。
「---えっ?」
亜香音は後ろを振り向いたがー、
何も居なかった。
すぐに悪寒は落ち着くー。
だがー。
この時、既に長瀬が憑依していた。
「---ククク、亜香音ちゃんの体の中か…」
長瀬は呟く。
だが、その言葉は亜香音には届かない。
そしてー
長瀬は思う。
「体を操ったりはしない。
亜香音ちゃん、中に居候させてもらうだけだよ。」
長瀬はーー
その日、2時間、亜香音の中に居座った。
ーーー憑依薬の説明書が正しいのなら、
毎日これを繰り返していれば、亜香音は
”俺色”に染まってくるはずだ!…と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
「--そうなんだ!へー!すごいね!」
亜香音がクラスメイトたちと談笑しているのを哲が見つめていた。
「今日は…亜香音、いつもより明るいような…」
哲は微笑ましくその様子を見る。
「何かいいことでもあったのかな…」
そんな風に思っていると、クラスメイトの長瀬がやってきた。
「---よぉ、福山!」
哲は名前を呼ばれて嫌々、長瀬の方を見る。
「---俺さ、やっぱ、亜香音ちゃんのエロい体
諦めらんねーわ!
あの体で色々してもらいてぇなぁ」
長瀬が恥ずかしげもなくつぶやく。
「---ダメだよ。
亜香音はそういうの、嫌いなんだ。
ーーー僕の彼女に手を出すなよ」
哲が言うと、長瀬は笑った。
「でも、亜香音ちゃんが望んだら仕方ねぇよなぁ。
亜香音ちゃんの望みを俺が叶えて、
亜香音ちゃんは自分のエロい欲望を満たす。
どーだよ、俺と亜香音はウィンウィンだぜ!」
長瀬の言葉に哲は失笑した。
「ーーー亜香音が望むなんてありえないよー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休み。
いつものように中庭で談笑する哲と亜香音。
「---どう、数学の勉強は進んだ?」
亜香音が言う。
「え?いや…ホラ…僕、文学系だから」
哲が誤魔化すと、亜香音は呆れたようにため息をついた。
「---来週テストなのよ~?
しっかり勉強しなきゃ!」
亜香音はそう言ってほほ笑んだー。
いつも通りの日常ー。
そう、この日まではー。
”翌日”から亜香音に異変が起き始めるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夜、長瀬はまた、亜香音に憑依した。
今度は3時間。
昨日と同じように、何もせずに離脱した。
亜香音はまた悪寒を感じただけで気づいていない。
「---はぁっ…どうしたんだろ。
テスト近いのに、なんか今日は気分が乗らない…」
亜香音は、テスト勉強のモチベーションが上がらないことに
違和感を感じつつも、懸命に勉強を続けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の昼休み。
今日は亜香音のテンションがおかしい気がする。
哲はそう思っていた。
なんだか、とても明るい気がするのだー。
いや、哲に対してはいつも明るい。
けれどー。
他の子たちの前でも今日は、哲と接するような感じで
明るかった。
それにー。
何か、スカート丈が少し短くなった気がする。
「---うふふっ…今日はなんかいい気分!」
亜香音が上機嫌で落ち着きのない様子で言う。
「はは、何かいいことでも?」
哲が言うと、亜香音は微笑んだ。
「ううん?べっつに~!
でもなんか今日は調子がいいみたい!」
亜香音が笑顔で言う。
「--私は上機嫌でとっても気分いいし、
哲もわたしに勉強、勉強言われなくて気分いいよね!
ふふっ、Win-Winだね!」
亜香音が言った。
哲は顔をしかめたー
”Win-Win”
長瀬の口癖だ。
長瀬を嫌悪する亜香音の口からその言葉が
出てくるとは思わなかった。
「---ま、、、亜香音が
楽しいなら良かった!」
哲が言うと、亜香音は満面の笑みでほほ笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
前夜も当然、長瀬は亜香音に憑依していた。
何もせず―。
ただ、亜香音の中で正座をしていただけなのだがー。
「--亜香音ちゃん!今日、可愛いね!」
クラスメイトたちが亜香音に声をかけている。
亜香音がー
化粧をして、登校したらしいー。
いや、いつも薄いメイクぐらいはしているのだろうけれど、
今日は少しいつもより、分かりやすいメイクだった。
そう言えば、髪型もいつもより可愛らしい。
「---」
哲は首をかしげる。
「なんか、最近変だなぁ…浮気?」
哲は”そんなことないよな”と自虐的に笑った。
昼休み…。
亜香音が中庭の椅子に座って足を組んだ。
いつも恥ずかしそうにスカートを抑える様な亜香音に
しては珍しい行動だ。
「---亜香音、
なんか、、、今日はイメージ違うね?」
哲が笑うと、
亜香音は笑う
「-そぉ?うーん、私には分からないけど、
哲が言うならそうなのかもね!」
亜香音は自分の髪をいじりながら笑う。
なんか、誘うようなしぐさが多いような…
哲が違和感を感じていると”ヤツ”がやってきた。
長瀬だー。
「おー!今日もイチャラブ中~!?」
長瀬がまた、亜香音の体をじろじろと見つめる
「おぉ~亜香音ちゃん、今日は一段とエロいなぁ!
俺、そういうの大好きだぜ!
やっぱエロは偉大だぜ!」
長瀬がまた不謹慎なことを言う。
「--おい、やめー」
哲が長瀬を止めようとしたその時だった。
「うん!ありがとっ!」
ーーーーーーー!?
哲は亜香音の方を見た。
”エロい体”
亜香音が言われて一番嫌がる言葉だ。
けれどー
亜香音は今ー?
「ははっ!喜んでもらえてうれしいよ。」
長瀬が亜香音の肩に手を触れる。
亜香音はそれを拒むことなく楽しそうに笑っている。
「---亜香音?」
哲が不思議そうに言うと、長瀬はすぐに手を離した。
「あぁ~亜香音ちゃんとエッチなことしてぇな~」
長瀬が言うと、
亜香音はまんざらでもなさそうにほほ笑んだ。
「じゃ、またな。
チンゲン菜野郎捨てて、俺と付き合いたくなったら言えよ!」
「うん!」
亜香音が嬉しそうに返事をした。
立ち去る長瀬。
「---亜香音・・・?」
哲がもう一度、その名前を呼んだ。
振り返った亜香音は笑う。
「--冗談よ、冗談!
哲くんのこと、捨てるわけないでしょ~!」
ケラケラと笑う亜香音。
そしてー
「ねぇ、哲…
テスト終わったらさ…
わたしとえっちなことしよっか?」
亜香音が耳元でささやいた。
「えっ…えっ…
いや、、だ、、ダメだよ!
亜香音だってそういうこと嫌いじゃないか!」
哲が言うと、
亜香音の表情から笑みが消えた。
「--ふぅん。そ、ま、いいけど…」
そう言うと、愛想悪く亜香音は立ち去ってしまった。
一人残された哲は思うー
「亜香音ーー?
どうしちゃったんだ…?」
毎日少しずつ進む異変に、
哲は違和感を感じ始めていたー
②へ続く
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コメント
少しずつ染まっていく…
イヤらしい感じですね(笑)
続きは明日です!
コメント
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確実に染まって行ってますねぇ
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> 確実に染まって行ってますねぇ
私も染めたいです!(笑)