”憑依空間”
TSF小説を日々掲載しているサイト。
その管理人「無名」とは一体何者なのか。
正体を探ろうとした少女に起きた、悲劇とはー?
※私のサイトを題材とした小説です!
もちろん、フィクションです(?)
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「隆信くん、最近、なんか私のことかまってくれないよねー」
皆口 星香(みなぐち せいか)は、
すねた様子で、
彼氏の杉村 隆信(すぎむら たかのぶ)に向けて言った。
「そうすねるなって!」
2人は近くの高校に通う高校生。
お互い、仲の良いカップルなのだが、
最近、彼氏の隆信がとあるモノにはまってしまい、
星香はなかなか相手にしてもらえず、退屈していたのだ。
「はぁ…また今日も”例”のサイト?」
星香が言うと、
隆信はうなずいた。
「あぁ!だって、あのサイト、毎日更新されるんだぜ!
しっかも、俺の好きな憑依系小説!
くぅ~たまんねぇぜ!」
隆信が言うと、星香が呆れ顔で言う
「---話として好きなのは、私は別に構わないと
思うけど…」
星香が言う。
彼女も、彼氏の隆信がTSFと呼ばれるジャンルが
好きなのは知っていた。
だが、別に趣味として、物語として好きな分には
全然構わないーと、
星香は特に気にも留めていなかった。
星香がふと、はっとした様子で言う。
「まさか隆信くん、私に憑依したい!
とか考えてないよね?」
その言葉に隆信は笑った。
「はは!フィクションとして好きなだけだから、
心配するな!
しっかし、この憑依空間ってサイトの
無名って管理人、
毎日更新って恐ろしいよなぁ・・・
ネタもよく続くよな!
ある意味尊敬だぜ!」
隆信は最近、憑依空間とやらのことばかり、
本当につまらない。
星香はそう思っていた。
会うたびに、憑依空間の話ばかり。
隆信が憑依空間というサイトを発見する前は、
毎日毎日、楽しかったのに…。
星香は、”憑依空間”というサイトを更新している人物
”無名”を心の中で憎んだ。
「わたしと、隆信くんの邪魔をしてー」
隆信はうれしそうに憑依空間の話を語っている。
「俺がさー、個人的に憑依空間で5本指に入ると思っている小説は~
暴走憑依男、ムスメの身代金、夏空に消える花、
凶悪犯罪者室井、あとはミストゾーンってやつかな」
隆信が5本の指を立てて言う。
星香はすねた様子で叫んだ。
「まだ、憑依空間の話ばっかり!
私、つまんないよ!
もう今日は帰るね!」
怒りっぽく言うと、星香はそのまま不機嫌な様子で立ち去ってしまった。
「---お、おい!星香!」
隆信が必死に呼びとめようとしたが、
もう遅かった。
「--あぁ…、、ちょっとすねさせちゃったかな…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅後、星香はスマホで
憑依空間の管理人”無名”のツイッターアカウントを開いた。
「---何が純白の憑依人よ!」
星香が吐き捨てるように言う。
そして、星香は
無名のツイッターアカウントに対して
メッセージを送りつけた。
「--私の彼氏があなたのサイトにのめりこんでいます。
あなたは悪くないですけど、
彼氏が私の相手をしてくれなくなったので複雑です」
星香は監視の意味も込めて、少し前に無名の
アカウントをフォローした。
だから、DMを送ることができるのだ。
「…送ったところでどうにもならないと思うけど…」
そう呟きながら、無名にメッセージを送った星香。
”無視されるだろう”
そう思っていた。
けれどー、
意外なことに数十分後、無名から返事があった。
”ごめんなさい(笑)”
それだけだった…。
「…・・・」
星香は”(笑)”の部分が無性に腹立たしかった。
こっちは真剣に悩んでるのに、
アンタにとっては、笑うことなのね・・・ と。
一言言ってやる!
化けの皮をはいでやる!
私がどれだけ、彼氏との関係で寂しい思いをしているか思い知らせてやる!
そう思った星香は
親戚のPCオタクで自称ハッカーのオタクに、
”無名がサイトを更新している場所を調べて欲しい”と頼み込んだ。
最初は親戚のオタクも難色を示していたが、
彼が好きな作品のフィギュアを手土産に持っていったところ、
態度が180度変わった。
そしてー
彼は3日で、”憑依空間”が更新されている場所を突き止めた。
意外なことにー。
結構近い場所だった。
星香は決意した。
一度、無名とやらに会いに行って、
一言だけ言ってやる!
言ったところで何にもならないけれど、
”更新”することによって、
わたしのような子が生まれていることを
思い知らせてやるー。
私が、どれだけ寂しい思いをしたか、
思い知らせてやるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
土曜日。
星香は地図を頼りに”無名”が居る場所へと
たどり着いた。
あまり人気の無いところに建っている家だった。
「ここに、無名がー?」
普通の雰囲気の家。
星香は恐る恐るインターホンを鳴らした。
だが、反応は無いー。
試しに玄関の扉に手をかけてみる。
するとー、
驚いたことに扉が開いた。
「--ちょ、、ちょっとだけ…」
星香が中に入ると、
家の中は質素な内装だった。
全体に綺麗に整ってはいるものの、
どこか”心”を感じさせないような、
そんな不気味な空間が広がっていた。
カタカタカタカタカタ・・・
奥から物音がする。
この音はー、
パソコンのキーボードの音…?
星香がその音のする部屋の前で立ち止まる。
「この奥に、無名が…??」
星香は一瞬帰ろうかと思った。
けれどー。
”無名”とやらの正体を突き止めて、
そして、彼氏に構ってもらえない!という不満を
ぶちまけてやろう。
星香はそう思った。
トビラを開くとー。
そこには、可愛らしい女子高生が居たー。
「えー?」
女子高生は無表情で、キーボードを叩き、
文字を入力しているー。
星香が女子高生の入力している画面を見るー
“凶悪犯罪者 室井Ⅱ”と書かれた小説を
女子高生が入力している。
凶悪犯罪者 室井ー。
確か彼氏の隆信が
“憑依空間の小説”として名前を挙げていたタイトルだ。
それをこの女子高生が入力している、ということは…
「--あなたが…無名?」
恐る恐るたずねると、女子高生は入力を止めて、
星香のほうを見た。
「---」
そしてニヤリと笑った。
可愛らしい容姿に不釣合いな邪悪な笑み
「そう…そうね…フフフ・・・
一応、そういうことになるかしら…ッフフ」
不気味に笑いながらうっとりとした表情で
星香を見る女子高生。
「---(な、何なのこの子ー)」
その不気味な様子にたじろいでいると、
部屋の隅に設置されていたスピーカーから
声が聞こえた。
「始めましてー。
どなたか知りませんが、
何か御用ですか?」
ーー機械音声のような声で、
男だか、女だか分らないー。
加工されている音声のようだ。
「--あなたが無名??」
星香が尋ねると、
スピーカーの声は少しだけ笑った
「ーーーそうですよ」
どことなく、下手な感じの声は
自分が”無名”だと言った。
「---こ、この子は!?」
星香が指をさすと、部屋の隅の監視カメラが光った。
「その子もーー
私と言えば私です…。 」
無名の声がそう言った。
星香は「どういうこと?」とたずねる。
すると、部屋の隅から、ケーブルのようなものが不気味に波打ちながら
出てきて、その女子高生の耳に刺さった
「あぁっ♪」
女子高生が声をあげて、体をビクン、ビクンとさせる
「----憑依…」
無名の声がそういうと、壁にスクリーンが出てきた。
星香は警戒した様子で、周囲を見渡す。
この家、どうなっているの??と…。
「--憑依空間ーーー。
色々な小説を書いているうちに、私は
”現実で憑依することはできないか” そう考えて・・・
”コレ”を生み出しました。。」
無名の声が聞こえる。
そして、スクリーンにとある数字の羅列が表示された。
「私に”憑依”なんてことをすることはできないー。
でも、代わりに”擬似的”に人に憑依することを
思いついたー。
それが”擬似憑依”」
星香は、不気味なものを見るような目で、
目の前のケーブルが耳にささった女子高生を見る。
女子高生は満面の笑みを浮かべながら
体をピクピク震わせているー。
「擬似、、憑依?」
星香の声に、無名が反応したー。
「そう…
コンピューターのプログラミング・・・
それを”人間の脳”に流し込むことに私は成功したー
”プログラミング”で人間の脳を支配するー」
そう言うと、
モニターにプログラミングが映し出される。
意味不明な文字の羅列。
その下にプログラミングの意味が書かれている。
”私は無名の忠実なしもべ”
”学校帰りにここに寄って、小説を書き”
”無名の意のままに体を楽しんだ後に”
”夜にはちゃんと家に帰ってもとの生活に戻る”
「今、そこの子は、脳内にこのプログラミングを
”書き込まれている”
彼女はこのプログラミングどおりに行動する…」
星香が青ざめた表情で呟く…
「そ・・・そんなことが・・・」
「では・・・今から、”擬似憑依”を実演しますねぇ・・・」
無名が笑いながら言うー
スクリーンに無名らしき人物が映し出されたー。
顔を隠しているためー
はっきりとその人物像が分らないー。
意外と”普通”な人物に見えるー。
「--今の世の中のVR技術ってすごいですよね~
それを応用して作ったのが、この機械。」
無名が背後にある機械を指さして笑う。
「この機械には、
今、そこに居る女子高生の
視覚・聴覚・感覚…その全てが、送信されてきている…。」
女子高生の耳にささった謎のケーブル。
それを通じて、無名の背後にある謎の装置に、
彼女の全ての感覚が送信されているのだという。
「ふふふ…そして…」
無名が背後の装置にすわり、
スコープのようなものを装着すると、
目の前に居た彼女が邪悪に微笑んだー。
「機械を通して、私は彼女の全ての感覚を
”感じる”ことができてー、
この発進装置の役割も果たすこの機械を通じてー、
彼女を自由にコントロールすることもできるー」
目の前の女子高生が
さぞおかしそうに大笑いする。
「これがー
機械とプログラミングー
現代の技術の結晶で生み出したー
”擬似憑依”ですよー
ふふふふ…凄いでしょ?」
女子高生が笑う。
星香は青ざめた表情であとずさった…
「ひっ・・・、、ひどい…
じゃあ、、、この女の子は…」
星香が言うと、目の前の少女は笑った。
「ううんー。大丈夫。
私の脳にー
”しあわせ”だと感じるように、
プログラムが書き込まれているからー
私、乗っ取られてこうやって
好き勝手されてても、すっごくしあわせなの!」
目の前の女子高生が言うー。
無名が言っているのかー
それとも、脳にプログランミングを書き込まれた彼女が
言っているのかー。
スピーカーから再び声がする。
「本当はー
同じように小説を書いていて、私が尊敬する
井澄ミスト様って方のように、
直接、憑依できればいいんですけど、
私にはあの方のように、霧を通して人に憑依
したりだとか、そんなことはできないので…
面倒なやり方ですけど…」
無名が語る。
ミスト…。
彼氏の隆信から時々、その名前も出ていた気がする。
同じように、彼氏の好きなTSFと呼ばれるジャンルの
小説を書いている人だったはずー。
無名は今、なんと言った?
その人は、直接憑依できるといわなかったかー?
「---た、、、助けを呼ぶわ!」
星香が叫んだ。
だが、無名は笑った。
「・・・彼女たちはちゃんと家に帰っている。
しかも、みんな”喜び”を感じて…。
だれ~も、悲しんでなんか居ない。
私は”純白の憑依人”なので、
人を傷つけることはしないんですよ!ふふふ…」
無名のその声に星香は怒鳴り声をあげた。
「ふざけないで!この子だって、アンタに好き勝手にされて!」
しかしー、
目の前の女子高生は幸せそうな顔で言った。
「わたしー幸せだよ?」
その言葉に星香は表情をゆがめた。
「わたしーすっごく幸せ
うふふ・・・
ここで無名さんの代わりに小説入力できてるなんて…
夢みたい」
うっとりとした様子で言う女子高生。
「---あ、、、あんた…」
星香はそれ以上、言葉をかけられなかった。
脳内にーー
プログラムを書き込まれてーーー
こんな風に変わってしまったのか…
「さて!憑依のお時間です!」
無名がスピーカーごしに叫んだ。
「ひっ!?」
部屋の上部からケーブルが飛び出てきて、
星香の耳にささった。
「や…やめて!」
星香が叫ぶが、無名は笑うだけだった。
「大丈夫。
これから”喜び”を感じるプログラムも書きこんじゃいますからネ」
ふざけた様子で言う無名。
機械音声でーーー
男性なのかー女性なのかすらも分からない。
「コンピューターのメモリと人間の脳にはー
ある共通点があった。
それを見つけた私は…
人の脳にプログラムを書き込むことで!
”疑似憑依”を実現させたー。
憑依能力はーー
人の手には届かないもの。
けれど、電子の力を使えば…」
星香の脳に
なんとも言えない変な感覚が流れ込んでくる。
静電気のような…
そんな感覚が頭の中ではじけ飛ぶ。
「ひっ…ぎっ…あ、、、っあっ…やめて…
あっ、、、、ああああっ、、あ!」
これが
”プログラム”が頭に流れ込んでくる時の感触―
気持ち悪い―
気持ち悪い―
だけどーーーーー
「はぁん…き、、、気持ちイイ♡」
だらしない笑みを浮かべて笑い出す星香。
”脳”に新しい命令―。
プログラムが加えられたー。
「-----開発完了デス」
無名はスピーカーからそう呟いた。
星香はうっとりとした表情で、その場に立ち尽くしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
監視カメラの映像からそれを見た”無名”は
微笑んだー。
”人は想像できることは必ず実現できるー”と。
「ーーー誰も私に辿り着けはしないー」
無名は、そう言って笑ったー
”TSF”
私がそんな趣味を持つ人間だなんてー
誰も気づかないー。
何故なら私は”表”ではー
”一緒に居ると安心できる―”人なのだからー。
「---憑依空間…」
無名は自分のサイトを開いて確認した。
そして、今日のアクセス状況を満足げに見つめると
「ありがとうございますー」とつぶやいた。
そしてーー
先ほどの装置の方に向かって
呟くー
「皆口 星香ー
試してみますか…」
無名はVR技術を応用した装置を持ち、
星香の体の感覚・意識を共有し始めたー。
「ひぅっ…えへへ…星香になっちゃったぁ…」
微笑む星香。
イヤらしい目付きで、もう一人の女子高生を見つめると、
その女子高生に”解除コード”を入力して一旦帰宅させた。
星香はさっきまで女子高生が座っていた椅子に座り、
満足げに足を組むと、
スカートの乱れを気にすることもなくー。
”憑依空間”の新たな小説の執筆を再開したー。
「ーーー私は今、この状況を喜んでいる―。
”誰も傷つかないー”
これがーー純白憑依人の憑依よーフフ」
星香は邪悪な笑みを浮かべた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日。
孝信が星香に話しかける
「最近、星香、帰り早くね?」
その問いに、星香は笑った。
「ふふ・・・!最近、楽しいこと出来ちゃった!」
星香の言葉に孝信は首をかしげる
「浮気じゃないよな?」
その言葉に星香は笑う
「浮気じゃないよ!うふふ・・・!
じゃあ、私、今日も急ぐから!ばいばい!」
星香は足早に立ち去って行った。
星香は笑う
「さっ!今日も無名さんのところで小説書かなきゃ!」
彼女はーー
今日も幸せいっぱいだった…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
私のサイトを題材とした小説(笑)でした!
え?あまり酷いことしていない?
そうですねぇ…私はツイッターで”純白”を名乗っているので
酷いことはしないのです!
ちなみに、私はプログラミングに精通してません^^
ただ、色々、あの手この手を考えて先に対策しておく
タイプの人間だったりは…するかもしれません
あと、私は職業柄(?)、敬語で話すことが多いので
作中でも基本敬語にしておきました(笑)
ーーあ、、あくまでもフィクションですからねっ???
フィクションです。はい… たぶん…
お読み頂きありがとうございました!
コメント
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みんな”喜ぶ”を感じて
喜ぶ→喜び
┐(´д`)┌
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> みんな”喜ぶ”を感じて
> 喜ぶ→喜び
>
> ┐(´д`)┌
喜ぶを感じて!?!?
新しい表現ですね…!
…ではなく、ありがとうございます(汗
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まさかこの様にして毎日更新を可能にしていたとは…!
執筆活動が疑似憑依された女の子のルーティンとして組み込まれているという設定はイイ味出してます
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> まさかこの様にして毎日更新を可能にしていたとは…!
> 執筆活動が疑似憑依された女の子のルーティンとして組み込まれているという設定はイイ味出してます
ありがとうございます!
実は今も憑依して…(え?笑)