<他者変身>俺がスキャンダルを作ってしまった②~決断~(完)

①にもどる!

変身薬を使って、大好きなアイドルの姿を
こっそりと、個人的に楽しんでいた男。

しかし、それが大きなスキャンダルに
繋がってしまい…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”氷川 葵 男性宅でお泊りデート”
”お相手は一般のサラリーマン?”

そんな、週刊誌の記事を見つめながら
光男は思わず「くそっ!」と、叫んだー。

「俺の…俺のせいでー」
そう言葉を口にしながら、光男は週刊誌の記事に
載っている”写真”を見つめるー。

”葵に変身している光男”が、
光男の部屋の中に入っていく場面だー。

あの日、バイクによるひき逃げ事故が
アパートの前で起きて、悲鳴を聞いて
つい、葵の姿のまま外に出てしまった時に
撮影されたものだと思うー。

きっと、あの付近に週刊誌の記者か何かが
”たまたま”いたのだろうー。

いずれにせよ、
そのせいで、”葵”のスキャンダルになってしまい、
本物の葵は今、きっと迷惑しているはずだー。

葵が一般男性と交際しているのは、
以前から知られていることで、公式に発表もされている。

だからこそ、”葵に変身した光男”が部屋に戻っていく場面を
見られてしまった=男性宅でお泊りして浮気 ということに
誤解されてしまって、
騒ぎになっているー。

既にネットでは
”氷川 葵” 
”葵ちゃん”
”アイドルの浮気”
などと、トレンド入りを果たしていて、
収拾のつかない状態になっているー。

本人は、先ほど、
その時間には自宅にいたとして、否定する
コメントを事務所を通じて出しているものの、
世間はますますヒートアップして、
炎上状態になっているー。

「ーーく、くそっー…ど、どうすりゃいいんだー…」
そう思いながらも、光男に”どうにかする方法”は
浮かばずに首を横に振ると、
「ー落ち着くんだー。落ち着くんだー」と、
自分に言い聞かせるようにして言葉を口にするー。

何度か深呼吸をした光男は
ようやくある程度落ち着きを取り戻すと、
すぅっと息を吐き出してから
「こんな時は変身しよう。リラックスだー」と、
そう言葉を口にしてから、
再び、”葵”の姿に変身してみせたー。

もちろん、この前のようなヘマはしないー。
もう、悲鳴が聞こえても何があっても
葵の姿のまま玄関から飛び出したりはしない。

反射的に飛び出したりしないように、
”変身解除!”と、書いたメモを玄関に貼っておき、
今度同じようなことが起きてしまわないように
彼なりに注意した上で、
いつものメイド服を着て、鏡の前で嬉しそうに
ポーズをしてみせる、葵の姿をした光男。

「ーーーー葵だよ♡」
可愛らしいポーズを決めながら
そう言葉を口にする葵ー

”変身している自分の姿”をいつものように堪能し、
楽しんでいく中ー、
ふと、その表情から突然笑顔を消すー。

「あ~~~…ダメだだめだだめだー」
綺麗な髪がぐしゃぐしゃになるまで掻きむしりながら
そんな言葉を口にすると、
どうしても”俺のせいでスキャンダルになってしまった”ということが
気になってしまい、いつものように”葵の姿に変身しても楽しめなくなって
しまったのだー。

何事も、大きな心配事やショックな出来事があると、
それが好きなことであっても、
心の底から楽しめなくなってしまうし、
酷い場合には、そのことばっかり考えてしまって
落ち込んでしまうー。

「ーーーー…はぁ…」
葵の姿に変身していた光男は、
そのままため息を吐き出すと、変身を解除して
落ち込んだ表情を浮かべるー。

「ーーーぁ…」
メイド服を着たまま変身を解除してしまったことで
光男の方が葵よりも体格がいいために、
いつものように服がビリッと音を立てて
ダメージを受けてしまうー。

「ーー…くそっ」
メイド服を着た自分の姿を鏡で見つめながら
「俺はただ、本人に迷惑を掛けずに楽しみたかっただけなのにー」と、
そう言葉を口にすると、
首を横に振るー。

そして、メイド服を脱ぐためだけに、もう一度葵の姿に
変身すると、すっかり伸びてしまったメイド服を脱いで、
雑に近くに放り投げるー。

「ーーー」
そして、鏡に映る自分の姿ー…
”葵”の姿を見つめると、今一度寂しそうな表情を浮かべてから
首を横に振るー。

「こんなことになるなんて思わなかったー
 思わなかったんだー」

光男は、本当に”葵”を傷つけるつもりはなかったし、
葵に迷惑をかけるつもりもなかったー。

もちろん、本人からしてみれば、
例え、家の中で”個人的に”楽しんでいるだけ、とは言っても
イヤなモノはイヤだろうし、面白くないとは思う。

でも、それでも、本人に知られず、
家の外に絶対に出ず、という状況であれば
少なくとも本人が”勝手にわたしの姿を使われている”ということは
知ることもなく、
本人以外の誰も知らず、誰にも迷惑はかからないー。
そのはずだったー。

それなのにー
こんなことにー。

「ごめんー。本当にごめんー」
葵の姿のまま、鏡の前で謝罪の言葉を口にする光男ー。

葵の姿を勝手に使う、という行動をしていながら、
本物の葵のことは心の底から応援していたー。

こんな結果になってしまい、
葵本人を苦しめることになってしまったこの状況を、
光男は心底悲しんでいたー。

鏡の前で、鏡に映る葵に何度も何度も謝罪を
繰り返すと、
ようやく、変身を解除して自分の本来の姿に戻った光男は、
小さくため息を吐き出すー。

そして、不安そうな表情を浮かべながら
テレビをつけると、
”氷川 葵さんの降板を発表”と、
そんなニュースが流れていたー。

呆然とした表情を浮かべる光男ー。

葵は、テレビCMにも出演しているー。
しかし、先日の光男が作り出してしまったスキャンダルによって、
葵は3社から、テレビCMの降板を告げられたというのだー。

しかも、葵が出演している連続ドラマの降板も決定したらしく、
次回の第4話から、葵が演じていた女性看護師は登場しなくなるのだと言うー。

「ーー…う、嘘だろ…?」
”信じられない”というような表情を浮かべる光男。

完全に、”俺のせい”だー、と、そう思わずにはいられないー。

今、騒がれている葵の”浮気”スキャンダルは、
葵本人のものではないー。
本人が本当に浮気をしたのであれば、
自分自身のイメージというものが資本となる仕事において、
仕事を失うことは仕方のないことかもしれない。

イメージが自分の職業のために必要な道具のひとつでもあるからだ。
それを自ら壊してしまえば、そういうこともあるだろう。

しかし、今の葵のスキャンダルは完全に”濡れ衣”でしかない。
交際中の男性がいるのに、一人暮らしの男性の家にお泊り…
確かにそれは大きくイメージを損なう行為だ。

ただ、あの葵は”光男が変身した葵”であって葵本人ではないー。

所属事務所を通じて、葵は
”そのような場所を訪れたことはありません”と、否定したものの、
”疑わしきもの”は徹底的に叩かれ続ける世界ー。

翌日にはさらにCMの降板、そしてバラエティ番組の当面の出演見送りー、
アイドルグループとしての稼働自粛なども発表された。

週刊誌の記事によれば、”氷川 葵は憔悴しきっている”とのことで、
週刊誌の記事であるため、”憔悴しきっている”というのが
本当か、嘘なのかまでは分からなかったものの、
とにかく、葵本人に非常に大きなダメージを与えてしまった、ということは
紛れもない事実だったー。

「ーーー俺のせいでー…」
光男は、自分自身の迂闊さを呪うような口調で
そう言葉を口にすると、悲しそうに
大きくため息を吐き出すのだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから数日が経過しても、
葵に対するバッシングは止まらなかったー。

ついに、氷川 葵 本人が記者会見に登場して、
”身に覚えのないこと”と、しながらも
”これだけ、ファンの皆様、関係者の皆様にご迷惑をおかけしている以上、
 わたしは本日を以て、グループを脱退することを決断しました”と、
涙ながらにそう言葉を口にするー。

その映像を見た光男は悔しそうに歯ぎしりしながら
涙を流していたー。

悔しい感情ー
悲しみの感情ー
怒りの感情ー。

あらゆる感情が光男の中に渦巻くー。

「ーーーー馬鹿野郎ー」
怒りの形相でそう言葉を口にする光男ー。

しかし、その怒りは、今、謝罪会見で波を流している葵に
向けられたものでは当然ないし、
葵に質問をしている記者に向けられたものでもないー。

このような事態を招いてしまったー…
本来なら、スキャンダルがないであろうはずの葵の
スキャンダルを作ってしまった自分自身に対する怒りだったー。

「くそっ…!俺のせいで、葵ちゃんはー…!」
謝罪会見の映像が流れる中、怒りの形相で
そう言葉を口にするー。

どうして、葵が謝罪をしなければならないのかー。
当然、そこに”理由”などないー。
葵は、浮気などしていないのだからー。

そしてーー
その日の夜、
光男はさらに信じられない記事を目にしたー。

それはー、”浮気スキャンダル”の後に、
葵が”交際を発表していた一般男性と別れた”というものだったー。

記事によれば、
相手は”君を信じる”のスタンスだったようであるものの、
葵のほうが、
”このままじゃ、あなたも巻き込まれてしまうから”と
別れたい、ということを必死に告げて、
相手に納得してもらったのだと言うー。

「ーー俺がー…俺が、葵ちゃんの全てを奪ってしまったー」

”葵”の大ファンだった光男ー。
そんな葵に自分自身が、悲しい思いをさせてしまったー。

後悔しても、後悔しきれないー。
そしてー…光男には何の打つ手もー…

「ーーーーー!」
光男は、そこまで考えて表情を歪めるー。

”いやー……あるー”
心の中で、光男はそう言葉を口にすると、
意を決して、目を見開くー。

もしかしたらー…
”氷川 葵”を救うことができる方法が
”まだ”残っているかもしれないー。

そんなことを思いつつ、光男は
生中継されている会見で、
心底悲しそうな表情を浮かべている葵を見つめるー

「ーー葵ちゃんー…」

しかし、光男が思いついた”最後の手段”は、
光男自身の人生を破滅させてしまう方法だー。

これをすれば、光男はもうー…
元の生活に戻ることができなくなるー。

ただ、今ならー…
今ならまだ間に合うかもしれないー…。

そう思った光男は、大事に保管してある変身薬のうちの
1本を手にして、それを飲み干すと葵の姿に変身するー。

そして、私服スタイルな女性モノの服を身に着けて
そのまま家を飛び出すと、繁華街に向かって走っていくー。

「ーー男の家に出入りしていたのは、俺だ!!!」
葵の姿のまま、光男はそう叫ぶー。

「俺が、”変身薬”って薬を使って
 勝手に葵ちゃんの姿に変身したんだ!!!」

繁華街のど真ん中で、葵に変身した光男は
ひたすらに叫ぶー。

「浮気のスキャンダルは俺のせいだ!!
 俺のせいなんだ!!」
とー。

人がたくさんいるその場所で、
大声で叫んでいる”葵”の姿に注目が集まるー。

駅ビルのスクリーンでちょうど流れていた
”葵”の会見にも異変が起きていたー。

恐らく、”葵の姿をした人物”が
繁華街に姿を現した、ということが
会見場にも伝わったのだと思うー。

「ーー葵ちゃんは何も悪くない!!
 悪いのは、全部俺だ!」
葵の姿をした光男は叫び続けるー。

やがて、報道関係者らしき人物もやってきたのを確認すると、
葵の姿をした光男は少しだけ笑みを浮かべるー。

そしてーーーー

「ーー葵ちゃんのスキャンダルは全部、俺のせいですー」と、
葵の姿のままそう宣言すると、
その場で”変身”を”解除”してみせたー。

「ーーー!!!!!!」
繁華街に集まった人々が、
そして、報道陣がどよめくー。

駅ビルのスクリーンに映っている本物の葵の記者会見の場でも
どよめきが広がっているー。

それを見て、光男はどこか穏やかな笑みを浮かべるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。
光男は、警察で取り調べを受けていたー。

このまま、光男はさらに色々調べられることになるだろうー。

けれども、後悔はしていなかったー。

「ー氷川さん、どうなってますかー?」
光男が警察官に確認すると、
警察官は「降板が発表されていた番組、CMのほとんど復帰が決まったよ」
と、そんな言葉を口にするのだったー。

”葵ちゃん、ごめんーーー。
 これからも、頑張ってー”

そう、心の中で呟きながらー。

おわり

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コメント

自分が変身能力を使っていたせいで、
大好きなアイドルがスキャンダルになってしまったものの、
最後はなんとか本物を救う…そんなお話でした~!☆

お読み下さり、ありがとうございました~~!☆☆!

「俺がスキャンダルを作ってしまった」目次

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