彼女は”女体化”した経験を持つ”元男”だったー。
女体化してから数年ー。
既に彼女は”女”として生きることにすっかり慣れてはいたものの、
定期的に”男子トイレに間違えて入ってしまう”ということを繰り返していて、
どうしてもその癖を治せずにいたー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「また、やっちゃったー…」
遥香は、ショッピングモールでのデート中、
”また”うっかりと男子トイレに入ってしまい、
騒ぎになってしまったことで、
戸惑いの表情を浮かべていたー。
しかも今回は、彼氏の忠雄は少し離れた場所にいたものの、
男子トイレに入って行こうとする遥香を止めることができず、
ちょっとした騒ぎになってしまったー。
「ご、ごめんね…いつもいつもドジでー」
遥香は申し訳なさそうにそう言葉を口にするー。
”ー本当のこと言ったら、余計に混乱させちゃうだけだもんねー…”
女体化した治樹=遥香は、心の中でそう言葉を口にしながら
”わたしがドジだからー”ってことにしよう、と、
そう自分に言い聞かせるー。
もちろん、”いつかは”打ち明けないといけないとは
ずっと思っているー。
けれど、自分が元男だと打ち明けた時に
果たして忠雄がどんな反応を示すのかー、
それが分からなくて、そして不安で打ち明けることができなかったー。
そもそも、打ち明ける必要があるのかどうかも分からない。
打ち明けることで忠雄が苦しみ、
遥香がスッキリするだけなら、
それはただの自己満足でしかない。
”どうすればいいんだろうー?”というそんな気持ちの中、
遥香はひとまず、
「ごめんねー…気を付けるからー」と、そう言葉を口にしたー。
自分が”間違えて男子トイレに入ってしまう”ということを
減らすようにー、いや、なくすようにすれば、
ひとまず心配をかけてしまうことはなくなるー。
まずはこの癖を治したいー、
改めて遥香はそう思いつつも、
何故だか”男子トイレに入ってしまう癖”だけは
なかなか治せずにいたー。
そんなことを思っていると、
彼氏の忠雄が不安そうにしながらも
「いや、俺にはそんなに謝らなくていいよー。
周囲の迷惑かけちゃった人たちには謝らないとだけどさー…」と、
そんな風に苦笑いするー。
遥香は改めて、騒ぎになってしまった周囲に頭を下げると、
そのまま二人で移動をし始めるー。
すると、忠雄は不安そうにしながら、
ふと口を開いたー
「あまり、男子トイレに間違えて入ってる姿を見るとさ~、
実は男なんじゃないかってー」
と、冗談めいた口調で”遥香”の反応を探るー。
親友の恭平から言われた”冗談”が気になって、
そんな言葉を口にしたのだー。
すると、遥香はドキッとした様子で、
「えっ…えっ…?」と、言葉を失うー。
その反応に忠雄は
”変なことを聞いて驚かせてしまった”と、そんな風に思って
「あ、いやー、実はこの前、そういう変な夢を見てー」と、
苦笑いしながら「急に変なこと言ってごめん」と、
謝罪の言葉を口にする。
が、”女体化した”過去を持つ遥香からすれば、
女体化のことに気付かれたのかと、
心底驚いてびっくりしてしまっていたー。
”び、びっくりしたぁ…”
遥香はそう思いながら
”いつかは、言わないとねー…”と、
心の中で改めてそう呟くー。
「ーーーわ、わ、わたしは…ちゃ、ちゃんと女だよー…?」
遥香はドキドキしながらも、やっとの思いでそんな言葉を口にするー。
そうー、生物学的には今は完全に”女”で、
嘘はついていない。
”女体化した元男”であることを除けば、
今は完全に”女”なのだからー。
「ーーー…そ、そ、そうだよなー…
へ、変なこと言ってごめん」
忠雄も改めてそんな言葉を口にすると、
”本当に女だよな?”みたいなことを聞かれて慌てていたのか、
「ーーさ、触って確認してみる?」と、
自分のスカートを触りながらそう言葉を口にするー。
「ーーはっ!?え、いや、い、いいよー
それはー」
忠雄は顔を真っ赤にしながらそう言葉を口にして
遥香から目を逸らすと、遥香も自分がとんでもないことを
言ってしまったと自覚したのか、苦笑いしながら
「そ、そ、そうだよねー。ごめんー」と、
そんな風に言葉を口にしたー。
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「ーーははははー、だから冗談だって言っただろ?」
数日後ー。
親友の恭平が、忠雄から先日のデートの時の話を
聞かされると、思わず笑いながら
そう言葉を口にしたー。
「い、いや…でも、何か気になっちゃってー」
忠雄はそう言うと、恭平は苦笑いしながら、
「ー流石に”実は男でした~!”なんてことないだろ?
桑名さん、あんなに可愛いんだし、
あれで男とか無理があるようなー」と、そう続けるー。
「ーでも、区別がつかないような男の娘も今の時代いるしさー」
冗談めいた口調で言う忠雄ー。
そんな忠雄を前に、恭平は
「そりゃまぁ、写真で見ればなー。
ずっと一緒にいりゃ流石に分かるだろうし、
ずっと一緒にいて気付かない、なんてのはアニメとか漫画の中の
世界だけだろ」と、笑いながらそう言葉を口にしたー。
「ーー…ははは…まぁ…そうかー」
恭平の言葉に、忠雄はようやく納得したような表情を浮かべると、
恭平は少しだけ心配そうに呟いたー。
「ーあんま変なこと聞いたりして、桑名さんに嫌われないようにしろよー?
お前にとって初めての彼女なんだからさー」
とー。
「ーはは、分かってるさー」
忠雄はそこまで言うと、恭平は安心した様子で、
少し暗くなってしまった空気を少しでも変えようと、冗談を口にするー
「でも、もしも桑名さんが”実はついてて~”とか言い出したら
どうするつもりだったんだよー?」
恭平がニヤニヤしながら言うと、
忠雄は苦笑いしながら
「いやぁ~…そしたら流石に別れるかなぁ…」と、そう答えるー。
「ーおいおい、別れるのかよー
”こんなに可愛いのについててお得”ってならねぇのか?」
恭平がそう言うと、
忠雄は「いや~それは流石に」と、答えた上で、
「まぁ、それよりもー」と、呟きながら言葉を続ける。
「それよりもさ、”実はついてて”なんて言われたら
今までずっと嘘つかれてたことになるだろー?
ーーそしたら、俺はちょっと無理かなって
最初から”実はついてるけど”って言われてたら
考えるけど、
後からだと、その先も別のことで嘘をつかれるかもしれないし
その先ー…結婚したりとかは難しい気がするんだー」
真面目な表情で忠雄が言うと、
恭平は、ははー…と、少しだけ笑いながら
「確かに、ずっと嘘をつかれてるってのは嫌かもな」と、
忠雄の言葉にも理解を示すのだったー。
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それからしばらくしてー、
”遥香”は、自分が元々男であること、
女体化した人間であることを忠雄に告げることを
決心していたー。
この前もまた男子トイレに間違えて入ろうとして
心配されてしまったー。
これ以上、これを続ければ
もっと彼を心配させてしまうことにもなるし、
やっぱり、ちゃんと伝えておきたいー。
そう思っての決断だー。
”この先、ずっと一緒にいるなら、いつかは分かることだしね…”
遥香は内心でそう思うー。
いずれ、もしも結婚したりすることになれば
両親とも会うことになるし、
色々なことをお互いに知ることになるー。
小さい頃の話が出たりもするだろうし、
高校生の頃に女体化した彼女が
全てを隠すことは、現実的に”不可能”に近いことだったー
だからこそ、将来を見据えて打ち明けることにしたー。
”大事な話があるの”ー、と、
忠雄を呼び出した遥香は、
意を決して、そのことを口にし始めたー。
遥香は、元々”治樹”という男だったことー
両親の職場である研究室に見学に行った際に、
事故で新薬を浴びてしまい女体化したことー
両親は行政的な機関で勤務していて
遠い未来のための新薬の研究を行っていて、
そのため、治樹は、行政側の配慮もあって
”桑名 遥香”として生活できていることー、
それらを伝えたー。
その上で、今まで話そうと思っても
話せなかったことを伝えると、
忠雄は少し困惑したような表情を浮かべてから
口を開いたー。
”どうしてー”
とー。
「ーーえ…?」
遥香が少し戸惑いの表情を浮かべると、
「どうして、今まで言ってくれなかったんだー…?」と、
そう言葉を続ける忠雄ー。
「そ、それはー…そのー……
忠雄を困らせちゃうと思ってー…」
遥香が困惑した様子で言うと、
「ーーー…ずっと、嘘をついてたんだなー」と、そう言葉を吐き出す忠雄ー。
遥香は「ち、ちがー…」と、反論しようとするも、
”嘘をついていた”ことは事実ー。
そのまま口を閉ざしてしまうー。
そんな様子を見て、忠雄は少しだけ笑うー。
「ーーいや、ごめんー
遥香が悪意を持って嘘をつくとは思ってないよー。
遥香も、色々苦労したんだと思うし、
俺を困らせちゃうから、って理由も嘘だとは思ってない。」
忠雄のそんな言葉に、
遥香は少しだけ表情を明るくするー。
しかし、忠雄はすぐに続けたー。
「でも、だからこそー”どうして”なんだー…?」
とー。
「え…」
遥香が不安そうな表情を浮かべながら忠雄を見ると、
忠雄は心底困惑した様子で言ったー。
「どうして、こんな”中途半端”なことを…」
とー。
「言うなら、最初に言ってほしかったし
嘘をつくなら、ずっと隠しておいて欲しかったー」
忠雄はそれだけ言うと、
遥香は「そ、それはー…」と、そう吐き出してから
”この先ずっと嘘をついていくのはムリだと思ったからー”と、
そう答えるー。
結婚したりすればいつかはバレることだし、
だから、そのうち話さないといけないと、そう思っていたとー。
「ーーーー…」
忠雄は少しだけ考えると、
「この先も、悪意は無くても嘘をつかれるかもしれないって思ったらー
俺ー」と、遥香を見つめるー。
「ー俺さ…遥香が男子トイレに入るの、本気で心配してたんだー。
最初にこのことを言って貰えてたら、理解もできたしー、
支えてあげられたかもしれないー
でもー」
忠雄は首を横に振ると、
「ーーごめんー頭の整理がつかない」と、そう言葉を口にして、
悲しそうな表情を浮かべるー。
そう言われてしまった遥香も、悲しそうな表情を浮かべるー。
「ーーもっと器の大きいやつなら、
”そうだったのかー。これからも一緒に頑張ろう”って言えるのかもだけどー
俺はーーー…俺はーそんな立派な人間じゃないんだー」
忠雄はそう吐き出すと、”距離を置きたい”と、
遥香にそう言い放ったー
遥香は涙目で何かを言おうとしたものの
「そっかー…ごめんー。うんーわかったー」と、それを受け入れると、
しばらくの間、そこから動くこともできず身体を震わせることしか
できなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから半月後ー、
忠雄と遥香は別れたー。
忠雄は、何とかして遥香を受け入れようとしたけれど
無理だったー。
遥香が元男だからー、というよりも
ずっと隠されていたことがどうしても引っかかってしまい、
”この先付き合い続けても、俺は遥香の全てを疑ってしまう”
と、そんな思いが消えずー、
そして、その状態のまま付き合うのは遥香からしてみても
辛いだろうと、そう判断したようだったー。
一方の遥香は、”わたしが忠雄を苦しめてしまったー”と
打ち明けたことを後悔して、
”これからは…男の人を好きにならないようにしようかなー”と、
もう誰も傷つけないために、そんな決心をしてしまうのだったー。
そしてー
彼女と別れたことを聞かされた忠雄の親友・恭平は
戸惑いの表情を浮かべるー。
「えっ…そ、それってー…え?なんでー?
例の男子トイレに入る件と関係でもあるのかー?」
恭平はそう言葉を口にするー。
が、忠雄は苦笑いすると、
「”色々”あってさー」と、そう言葉を口にしたー。
忠雄はー、”遥香”のことを誰にも言わなかったー。
”遥香は本当は元男でー”ということは、
誰にも言わずに、自分の中にしまい続けたー。
それはー、忠雄の遥香に対する情だったのかー
それとも、もう関わりたくないだけだったのか、
それは本人にしか分からないー。
おわり
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コメント
受け入れてもらえない…ほうのパターンの
結末でした~!★
最初に打ち明けていたら…
上手く行っていたのかどうかは分かりませんケド、
違う結末になっていたかもしれませんネ~!!
お読み下さりありがとうございました~~!
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