<融合>喧嘩してたら融合しちゃった!?(後編)

前編にもどる!

喧嘩の絶えない兄と妹…

そんな二人は、いつものように喧嘩していたある日、
突如として”融合”してしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーあの二人、大丈夫かー?」
融合してしまった龍平と理穂の父親が
困惑した様子で言葉を口にするー。

二人は先ほど、病院で診察を受けるために、
外出したー。

残された両親が不安そうに龍平と理穂の二人のことを話しているー。

「ーー昔は仲良しだったのにねー」
母親はそう言葉を口にすると、
”融合を機に、仲直りしてほしい”と、そんなことを思いながら、
「無事に帰って来るのを待ちましょう」と、
静かにそんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

病院にやってきた龍平と理穂の二人ー。

”理穂”の意識が表に出ている状態で、
現在は龍平の姿をしている二人ー。

「ねぇ」
龍平の声で、理穂がそう言葉を口にすると、
内側にいる龍平の意識が”ん?なんだよ?”と
反応を示すー。

”まさか、診察受けるのやめようとか言わないよなー?”
龍平の意識のそんな言葉に、
龍平の姿をした理穂は、心底不満そうに
「あんたとこうやって一つになっている状況なんてー
 一刻も早く終わらせたいんだから、そんなわけないでしょ」と、
そう言葉を吐き出すー。

「ーー言いたかったのは、わたし、病院で待つの嫌いだから
 代わって、ってことー」
龍平の姿をした理穂がそう言うと、
龍平の意識は”いや、ダメだな”と、そう即答したー。

「はぁ!?わたしに待たせるわけ?ふざけないでよー」
龍平の姿で、理穂が不満を露わにするー。

しかし、龍平の意識は内側から
”いや、俺の保険証と診察券出しちゃっただろ?
 病院にも俺の姿で入っちゃったしー”と、
そう言葉を口にすると、
”俺が表に出ると、お前の姿に変わっちゃうから無理だ”と、
そんな言葉を付け加えたー。

そう指摘された理穂は、龍平の姿で不満そうにすると
「ー待てばいいんでしょ待てば」と、
不貞腐れた様子で、そう言葉を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがて、診察室に呼ばれた
龍平の姿をした理穂は、そのまま病室に入っていくー。

中には、優しそうな雰囲気のおじいさんが
待ち構えていたー。

「ーー今日は、どうされましたかー?」
その先生の言葉に、
龍平の姿をした理穂は
”なんでわたしが全部やらなきゃいけないのよ”と、
不満を覚えながらも、
”今、自分たちが置かれている状況”を説明したー。

「はははー、すると、二人が一つの身体になってしまっているー、と?
 はははーなるほど、分かりました」
診察を担当している医師・真田(さなだ)先生は、
明らかに”子供のイタズラ”とでも言いたげに笑って見せると、
「ーーまぁ、”融合”とかそういうものに憧れる年頃ですからね」
と、そう言葉を口にしながら、
「私も小さい頃は、変身して合体するヒーローとか、
 あとはそうだねー。ゲームの融合とか、
 そういうものに憧れたりしたものですよ」と、
それだけ言葉を口にしたー。

女性の看護師も苦笑いする中、
真田先生は「それで、調子の悪いところはーありませんか?」と、
そう言葉を口にするー。

「え、えっとー。ですからー、アイツ…いえ、兄と融合をー」
龍平の姿をした理穂がなおもそう言い放つと、
担当医の真田先生は困ったような笑みを浮かべながら
言葉を続けるー。

「ここは、病院だからねー。
 私も話は聞いてあげたいですけど、
 他の患者さんたちの迷惑になってしまうからー
 だから、こういうことはしちゃいけないよ?」

言い聞かせるように、諭すように、
そんな言葉を口にする真田先生。

完全に”嘘”だと思われているー。

そう思った龍平の意識は
”話で信じてくれればそれが一番だったけど、
 やっぱ見せるしかないなー”と、
この場で、龍平が表に出て
身体が龍平の姿から理穂の姿に変化する場面を見せるしかないと
そんな提案をするー。

「ーでも、騒ぎになるんじゃない?」
龍平の姿のまま、理穂は”お父さんとお母さんに見せたのとはわけが違う”と
そう指摘するー。

両親の前で”融合”した後の現状を見せたのと、
今ここで、医師の前で”融合”した後の現状を見せるのでは
”リスク”が大きく異なるー。

家族だからこそ”家庭内”での騒ぎに留まったけれど、
ここでそれを見せればー、話がそれ以上に大きくなってしまうかもしれないー。

”でも、このままじゃ俺たち、病院の先生を揶揄いに来た悪ガキだぞ?”
龍平の意識がそう言うと、
龍平の姿のまま、理穂は「ーーーそこまで言うなら」と、
そう呟いたー。

担当医の真田先生からすれば
龍平が”一人で呟いているようにしか見えない状況”に、
真田先生も、近くにいる看護師も
心底戸惑ったような表情を浮かべるー。

がーーー
理穂が奥に引っ込み、龍平が表に出て来たことで、
龍平の姿をしていた身体が急激に変化ーー
その場で”理穂”の姿に変化したのを見てーー

真田先生は、
「ーうぎゃああああああああああああ!?」と、
悲鳴を上げて、泡を吹いて失神、
椅子から転がり落ちてしまったー

「せ、先生!?先生しっかり!?」
女性看護師が戸惑いの表情を浮かべながら
失神した真田先生に近付くー。

「ーえ…ちょ…ちょっとー」
表に出て来たばかりの龍平は、理穂の身体で
困惑した表情を浮かべながらそう言葉を口にすると、
女性看護師が続けて悲鳴に似た声を上げたー。

戸惑いながら、理穂の姿をした龍平が
倒れている真田先生に近付いていくと、
どうやら、真田先生は悲鳴を上げて倒れ込んだ際に
頭を打ち付けてしまったようで、
頭から血を流していたー

「えっ… えっ… だ、大丈夫ですかー?」
理穂の姿をした龍平が慌てて声を掛けると、
女性看護師は、理穂の姿をした龍平を睨みつけたー

「ー化け物ー」
そう言葉を口にする女性看護師ー。

慌てて病院内の別のスタッフを呼びに行く看護師ー。

目の前で”融合”してしまった身体が変異する瞬間を
見せ付けてしまった結果ー、
それを見て驚いてひっくり返ってしまった真田先生が
頭を打ち付けてしまうという”事故”が、
起きてしまったのだったー…。

呆然としながらその様子を見つめ続ける
理穂の姿をした龍平ー。
しかし、やがて女性看護師から”出て行ってください”と
怒りの形相でそう言葉を口にされてしまった龍平は、
困惑の表情を浮かべながら、
診察室の外へと出たー。

”ーーちょっとー…どうするのよ!?”
理穂の意識がそう言葉を口にすると、
理穂の姿をした龍平は
「こんなことになるなんて思わなかったんだー」と
そう言葉を口にするー。

「こんなことに、なるなんてー…」
理穂の姿をした龍平はそう言葉を口にすると、
そのまま”奥”に引き下がってしまい、
理穂が表に出て来るー。

病院の患者やスタッフたちが行きかう中で、
突如として理穂の姿から龍平の姿に変わりー、
その様子を見た人が悲鳴を上げるー。

「ーーちょ、ちょっと…!?」
龍平の姿で理穂が叫ぶー。

しかし、龍平は”悪いーしばらく任せる”とだけ
そう言葉を口にして、引っ込んでしまったー。

やがて、頭から血を流している真田先生が
診察室から、同じ病院のオペ室へと運ばれていくー

しかも、最悪なことに真田先生は助かることなく
そのまま命を落としてしまったのだったー。

警察がやって来て、呆然とする龍平の姿をした理穂に
話を聞き始めるー。

理穂は必死に”今朝”を起きたことを説明したー。

「ーー今、それを見せるのでー」
龍平の姿をした理穂は”兄が表に出て来るとわたしの姿になってしまうので”
と、そう説明した上でそのまま龍平を表に出そうとするー。

しかしー…

「ーー!?」
龍平の姿をした理穂が表情を歪めるー。

「ちょっと!表に出て来てよ!」
龍平の姿をした理穂が不満そうに声を上げると、
龍平の意識は”ーちょっと疲れたー。休ませてくれ”と、
そう言葉を返して来たー。

「はぁ!?今、大事なタイミングなの!
 警察に事情を聞かれてるんだから、このままじゃ困るんだけど!?」
龍平の姿をした理穂が怒りの形相でそう言葉を口にすると、
警察官たちは少し戸惑った様子で、
”外から見ればひとりごとを喋っているようにしか見えない龍平”を見つめるー。

そんな状況の中、なおも龍平の姿をした理穂は
「早く表に出て来て!!!」と、そう叫ぶー。

このままだと、医師の真田先生を殺した容疑者のような
扱いを受けてしまいかねないー。
実際、女性看護師の一人は”あの人のせいです”などと
さっき喚いていたー。

とにかく、”融合”してしまって、二人が一つになってしまっている
この状況を警察官に見せて、分かってもらう必要があるー。

そう思いつつ「いい加減にしてよ!!何のつもり!?」と、
龍平の姿をした理穂が叫ぶー。

”ーー疲れたんだー頼むから休ませてくれー”
龍平の意識が内側からそう返してくるー。

「ーーー署までご同行願えますか?」
警察官はこの場で話を聞けないと判断したのか、
あるいは”頭のおかしなやつ”だと認定したのか、
そう言葉を口にすると、
龍平の姿をした理穂をそのまま連行しようとするー。

「ーちょっと!!!ほら!!出て来て!」
龍平の姿をした理穂が慌てて叫ぶー。

”ーーーわかったーーー”
ようやく、龍平の意識が渋々と表に出てくることに応じると、
理穂の意識が後ろに引っ込んで、
龍平の意識が表に出て来るー。

がー

”ーーえっ…?”
後ろに引っ込んだ理穂が“異変”を察知するー。

後ろに戻った瞬間に、ものすごく”体調”が悪くなったのを感じたのだー。

それと同時に、”融合してしまった二人の身体”が、
龍平の姿から理穂の姿に変化していくと、
理穂の姿をした龍平が冷や汗を流しながら
その場に膝をついたー

「ーーう、うわっ…ど、どうなってるんだー…?!」
警察官の一人が声を上げるー。

「き、君はいったいー?」
融合してしまった二人を連行しようとしていた警察官も
流石に目の前で”姿が変わる”場面を見せ付けられて
戸惑いの表情を浮かべていると、
理穂の姿をした龍平は「ーー苦しいー」とだけそう言葉を吐き出したー。

「ーえっ…?」
警察官が戸惑うと同時に、理穂の姿をした龍平は
その場に倒れ込んでしまうー。

「ーど、どうしたー?」
「大丈夫か!?」
周囲にいた警察官数名が駆け付けると、
理穂の姿をした龍平はうめくような声を上げたものの、
それ以上返事をすることは出来ず、
そのまますぐに病院の手術室へと運ばれたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーーーーーーー…」

龍平が目を覚ますと、
龍平は言葉を発しようとしたー。

が、言葉を発することは出来ずに、
続けて身体を動かそうとするー。

けれど、言葉を発することはおろか、
身体を動かすこともできず、
龍平は戸惑いの表情を浮かべることしかできなかったー。

そんな状況の中、
医師と警察官がやって来ると、
「ー聞こえているかね?」と、医師がそう言葉を口にするー。

龍平は返事をしようとするも、返事は出来ないー。

すると、医師は言ったー。

「ーどういうわけか、君たちは二人、”融合”してしまっていたー。
 君が真田先生に説明した通りだったということだー。
 君達には、二人分の遺伝子が存在するー。

 そして、君達は真田先生や刑事さんの前で見せたように、
 ”お互いの姿”にいつでも変化できるような、
 そんな状態になっていたー。

 ただー」

医師はそこまで言うと、困惑の表情を浮かべながら続けるー。

「身体の”変化”には負担がかかるー。
 姿が変わる度に、君たちの身体はゲル状に変化して
 大きな負担になっていたー。

 それを繰り返しすぎた結果が”今”の状態だー」

そう言葉を口にすると、警察官は
「ーー驚かないで、と言っても無理だと思うがー」と、
言葉を口にしながら、”鏡”を向けてきたー。

そこにはーー
”ゲル状”のような状態になってしまった龍平ー、
いや、理穂かもしれないー。
そんな姿が目に入ったー。

だから、動けないー。喋れないー。

”う、うわああああああ!?”
龍平の意識が声を上げるー。

が、その声は誰にも届かないー。

そして、それと同時に理穂の意識も
悲鳴を上げたものの、
お互いにその声も聞こえないー。

医師は困惑した表情を浮かべながら
「ー治療…できるかどうかは分からないがー
 全力は尽くさせていただきます」と、
それだけ言葉を口にするー。

融合してしまった兄と妹ー
二人は、離れたくても離れることすら
できなくなってしまったのだったー

おわり

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コメント

ちょっと変身っぽい感じの要素も
盛り込んだりして、いつもとは違う融合の感じに
してみました~!!

お読み下さりありがとうございました!☆

「喧嘩してたら融合しちゃった!?」目次

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