<憑依>仲間であろうと関係ない③~脱出~(完)

②にもどる!

人間に憑依する光の怪物が徘徊する異世界ー。

その世界に、教室ごと飛ばされた
”一匹狼”の彼はクラスメイトの犠牲もお構いなしに、
自分だけ生き延びようとするー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!」
教室で身の安全を確保して、眠りについていた涼雅が
目を覚ますー。

外から、窓を叩く音が聞こえて来たのだー。

”た、助けて!助けてくれ!開けてくれ!誰かいるんだろ!?”

そんな声が聞こえて来るー。

この声はー、
クラスメイトの一人で、いつも騒がしい男子生徒・水城 和夫の声だー。

「ーーーー」
が、涼雅はそれを無視するー。

助けを求める和夫の声ー。
だが、窓の向こうにいる和夫が、本当に正気の和夫とは限らないー。
既に憑依された和夫が、和夫のフリをして助けを求めているだけかもしれないー。

それに、和夫が正気だとしても助ける義理はないー。
助けるために、窓を開けて、あの怪物たちの侵入を許してしまっては終わりだー。

「ーひっ、来るなー…来るな!ぎゃああああああああああああ!」
和夫の悲鳴が外から聞えて来るー。

涼雅は表情一つ変えずに、そのまま座っていると、
次の瞬間ーー
窓の隙間から、”光”が入り込んで来たー。

「ーー!」
その光が、人型のような姿に変わり、ゆっくりと涼雅の方に向かってくるー。

「チッー…くそっ!そんな風に侵入できるのか」
人間では決して入り込めない隙間から、光の怪物は中に入り込んで来たー。

異世界に飛ばされた教室の中に閉じこもっていても、安全ではないのだ。

涼雅はすぐに行動を起こすと、そのまま廊下側の入り口のカギを開けて、
外に飛び出すー。

「くそっ!囲まれてるー」
涼雅がそう言葉を口にすると、
「逃げられると思うなよー」と、そんな声が聞こえたー

「ー!」
声のした方向を見つめると、クラスの人気者・梨菜の親友で
気の強い女子生徒・高橋 架純の姿が見えたー。

雰囲気から、既に”憑依”されて餌食になっていることが分かるー。

「ーーー俺はどんな手を使ってでも生き延びるー。
 どんな手を使ってでもだ」

涼雅はそう言葉を口にすると、”架純”の方に向かって走り出すー。

一見すると”包囲”されているー。
光の怪物に突進した場合、どうなるか分からないー。
最悪の場合、そのまま憑依されてしまう可能性もあるー。

しかし、”憑依された架純”相手に突進する分にはーー
そのまま憑依されることは恐らくないー。

そう判断して、涼雅はそのまま架純に突っ込むと、
「なっー!?」と、驚く架純がそのまま吹き飛ばされるー。

「ーくそっ…追え!追いかけろ!」
怒りの形相を浮かべる架純ー。

それを無視して、涼雅は
見たこともないような植物が生い茂る場所を走ったー。

その途中では、目を覚ました時から行方不明だった
生徒6人のうちの、残りの生徒たちが倒れているのが見えたー。

異世界の植物の”毒”にやられたようだー。

「チッー」
担任の笹田先生も行方不明ー。
そもそも、あとどのぐらいの生徒が憑依されずに
生き延びているのかも分からないー。

そう思いつつ涼雅は”助けを待つのは無理そうだな”と、
そう呟くと、そのまま周囲を見渡すー。

すると、妙に目立つ大木がある場所が見えたー。

「ーーー」
涼雅は”あそこに行ってみるか”と、
そう言葉を口にすると、そのまま移動をし始めるー。

その時だったー。

「ーー!」
生徒会副会長を務める、真面目な男子生徒・原口 誠が
倒れているのが見えたー。

既に、死んでいるー。

「ーーー…」
涼雅は、そんな誠のほうを見つめると、
首に絞められた跡があるのを見て、
舌打ちしたー。

あの怪物どもはー、人の身体を奪うことを目的としているはずー。
が、犬と狼が混じったような怪物に襲われたやつもいるし、
逆らうものは、容赦なくこうして始末するのかもしれないー。

そう思いつつ、涼雅が大木のほうを目指すー。

そして、大木まであと少しのところに迫ったところで、
「小郷くんー」と、そんな声が聞こえたー。

「ー!?」
涼雅が振り返ると、
そこには、クラスの人気者である女子生徒・月野 梨菜の姿があったー。

異世界に飛ばされる前には
”「ーーーねぇねぇ、小郷くんー、
 今度の文化祭なんだけどー」”
と、涼雅に確認をしていた子だー。

「ーーーーーー近寄るな」
涼雅は、梨菜も既に憑依されているのではないかと思い、
表情を歪めながら梨菜を見つめるー。

が、梨菜は「大丈夫ー憑依されてないよ」とだけそう言葉を口にすると、
涼雅は「証拠は?」と、そう確認するー。

「ーーー証拠ー…う~んーそう言われると、困っちゃうけどー」
梨菜はそこまで言うと、
「それよりー、この先に”不思議な泉”みたいなものを見つけたのー。
 憑依された子が、仲間に”転送の泉”って言ってたからー」
と、そう言葉を続けるー。

涼雅はさらに表情を歪めるー。

”どうして、そんなことを知っているー?”と、そう思ったのだー。

もちろん、梨菜が憑依された者たちの会話を盗み聞きして、
純粋に情報を入手しただけの可能性もあるー。

がー…
既に梨菜も憑依されていて、涼雅を罠にはめようとしている
可能性も、十分に考えられることだー。

「ーーー言っておくが、俺は生き延びるためなら何でもするぞー
 お前だって見捨てるかもしれない

 俺に仲間意識なんて期待するなー
 知ってるだろ?俺は一匹狼だってー」

涼雅がそう言うと、梨菜は「あははー…うんー知ってる」と、
苦笑いするー。

涼雅は”もしコイツも憑依されてるなら、始末すればいいだけのこと”と、
そう判断して、梨菜の話に乗ることにするー。

もし、梨菜の話が本当なら、この世界から出るチャンスだー。

そう思い、頷くと、
梨菜は「ついてきて」と、身を隠しながら移動していくー。

すると、不思議な青い光を放つ、
梨菜によれば”転送の泉”と呼ばれているのだという泉が
目に入ったー。

そしてーー…
その近くには、憑依されたクラスメイト・愛唯の姿があったー。
この世界に来たばかりの頃、涼雅と行動した
オカルト好きの子だー。

「ーー今回の獲物も、あと2人ー。
 他は全員死んだか、入れ物にすることに成功したー」
愛唯がそう言葉を口にしながら、同じく憑依されてしまった麻紀に
そう言葉を口にしているー。

麻紀も、この世界に来て早い段階で憑依されてしまった
カップルの女子生徒だー。

「ー二人ー…」
涼雅はそう呟くと、梨菜を見つめるー。

「わたしと、小郷くん以外はみんなー」
悲しそうな表情を浮かべる梨菜ー。

やがて、憑依されている愛唯と麻紀が
”転送の泉”と呼ばれる場所から離れていくのを確認すると、
涼雅と梨菜はそのまま”転送の泉”に近付いていくー。

ゴクリ、と唾を飲み込む二人ー。

ここに飛び込めば、元の世界に戻れるのだろうかー。
そう思いつつ、涼雅は”毒見をしたいところだなー”と、
表情を歪めるー。

この泉がもしも”毒の泉”だったら、
元の世界に戻るどころか、ここで”死”だー。

で、あればー

涼雅はチラッと横にいる梨菜を見つめるー。

が、その時だったー。

「待ちなさいー」
背後から声がしたー。

涼雅と梨菜が振り返ると、
そこには、担任の先生であるおばさんー
笹田先生の姿があったー。

「ーー笹田先生ー…?」
梨菜がそう言うと、笹田先生は笑みを浮かべたー。

「ーあなたたちは、一人たりとも逃がさないー」
とー。

「ーー…」
既に憑依されている、涼雅はそう思ったー。

がー、銃のようなものを手にしている笹田先生は笑ったー。

”これはわたしが仕組んだことー”
だとー。

いつも、幸薄そうな暗い感じだった笹田先生は、
プライベートも仕事も上手く行かず、この世に絶望していたー。
そんな中、ある書物からこの異世界のことを知り、
連絡を取る術を見つけ出し、自分ごと、教室を異世界に切り取って貰うよう、
紹介したというのだー。

生徒たちを生贄に捧げることで、
自分は、この世界での地位を約束されるー。
そういう、取引なのだとー。

「ーーわたしはいつも、楽しそうにしている生徒たちを見て
 我慢してたー。
 でもー、もう我慢する必要もないー。
 あなたたちを生贄に捧げて、わたしはこの世界で幸せを手に入れるー」

笹田先生がそう言葉を口にすると、
涼雅は背後の泉をチラッと確認するー。

この状況ー
賭けに出るしかないー。
泉に飛び込んで、
元の世界に戻れることに賭けるしかー。

涼雅はそう思いつつ、
「原口も、先生が殺ったんですか?」と、そう確認するー。

原口 誠ー
ここに来る途中に倒れていた生徒会の男子で
”首を絞められた”痕があったー。

「ーー原口くん?」
笹田先生がそう言葉を口にするー

涼雅は、誠の話題を出しながら、
”隙”を伺っていたー。

隣にいる梨菜を笹田先生の方に突き飛ばしてー、
そして、その隙に泉に飛び込むー。

梨菜は恐らく、笹田先生に撃たれて死ぬー。
だが、そんなことはどうでもいいー。
”一匹狼”の俺は、たとえ俺だけになっても生き延びる、と、
彼はそう思いながら、笹田先生のほうを見つめたー。

「教え子に自ら手をかけるなんて、
 酷いもんだー」

涼雅がそう言うと、笹田先生は何かを反論しようとするような
そんな表情を浮かべたー。

涼雅は”今だ”と、そう思いながら、
隣にいる梨菜の腕を掴んで、笹田先生の方につき飛ばそうとしたー。

がーーー

「ーーえっ…?」
それよりも早く、隣にいた梨菜が涼雅のことを突き飛ばしたー。

涼雅の身体が、笹田先生の方に飛ばされていくー。

「ーーーな、なにーーー?」
涼雅がそう言葉を口にすると、
梨菜は笑っていたー。

「ごめんねー。わたし、どうしても生き延びたいのー」
そう言い放つ梨菜ー。

「ーーー!」
涼雅は、梨菜の表情に悪意が歪んでいるのが見えるー

クラスの人気者・梨菜ー。
けれど彼女は、緊急事態の際には、周囲を犠牲にしてでも
自分だけが生き延びようとするー
そんな、”わたしが一番可愛い”という本性を持つ子だったー。

「ーーあ、それとねーー…
 原口くんを殺したのはわたしー
 だって、原口くん、パニックになって騒ごうとしたんだもんー。
 だから、わたしが首を絞めて静かにしてもらったのー。
 わたしが、助かるために」

梨菜はそう言葉を口にして、泉の方に向かっていくー。

涼雅は「くっ…」と、声を漏らすも、
突き飛ばされた身体は、笹田先生の方に向かっていくー。

それと同時に、笹田先生は銃を放ちー、
涼雅は、自分の身体にそれが命中するのを感じたー。

「ーーーーぁ…」
涼雅がその場に倒れ込むー。

既に、梨菜は泉に飛び込んだのか、姿が見えないー。

笹田先生はため息を吐き出すと、
「ーに、逃げられたー」と、そう言葉を口にしているー。

「ーー…逃がしたの?」
そんな声が聞こえたー。

光の怪物に憑依された、オカルト好きの愛唯の声だー。
その声は、怒りに満ちているー。

「し、仕方なかったのよ。この子がー」
笹田先生が言い訳をしようとするー。

そんな会話を聞きながら、撃たれた涼雅は
最後の力を振り絞って、教室で回収した”ハサミ”を手に、
それを笹田先生の首に突き立てたー。

驚いた表情を浮かべて、悲鳴を上げる笹田先生ー。

「ーーへへへーー…狼の牙を突き立ててやったぜー」
涼雅は満足そうにそう呟きながら倒れ込むと、
異世界からの脱出は叶わず、そのままその場で息を引き取るのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…え???」
涼雅を囮にして、”転送の泉”に飛び込んだ梨菜は
表情を歪めていたー。

転送の泉は、読み通り、”別の世界”へと繋がっていたー。

がーー
そこはーー

”元いた世界”ではなかったー。

既に、地球からの”切り取り”を終えていた光の怪物たちは
次の世界からの”切り取り”を行う準備を進めていて、
もう”地球”ではない、別の次元の世界に接続を切り替えていたー。

恐竜のような生物が徘徊する広大な大地ー。
雷が鳴り響き、雨が降り注ぐその世界で、
梨菜はへなへなと座り込むと、
思わず笑いだしたーー。

もう、助からないー。
そう悟った梨菜は、自虐的に笑うしかなかったー。

そして、そんな梨菜の方に向かって
恐竜のような生き物が大きな口を開けて、迫って来ていたー。

おわり

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コメント

結局、誰も助かることはありませんでした~…!

一匹狼の涼雅くんが、泉に飛び込んでいても、
どの道助からなかったので、
最後はどっちが囮になっても、あまり意味がなかったですネ~笑

お読み下さり、ありがとうございました~~!

「仲間であろうと関係ない」目次

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