<憑依>どんなに遠くに離れていても①~孤独~

とある宇宙船で”事故”が発生したー。

地球から遠く離れた海王星付近を航行している
最中だった宇宙船ー。

救助を送るにも、”時間”がかかり、
生き残った一人の女性宇宙飛行士は孤独に耐えていたー。

が、そんな中”憑依”なら、一瞬でその場に行けることにある男が気付きー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーはぁ…こんなことになるなんてー」

若い女性が、一人ため息を吐き出すー。

それなりに整った設備の中、一人で”宇宙食”として開発された
海藻を収穫すると、それを使って簡単な料理を作り、
口にしていくー

「ワカメばっかり飽きたなぁ…」

宇宙食として開発された、特殊な海藻ー
宇宙船内でも簡単に育てることができ、
増やすことも容易ー
栄養素もしっかりと含まれていることから、
今では宇宙を探査する際の”必需品”ともなっている、
”宇宙海藻”と呼ばれる海藻だー。

味はワカメに似ているために
宇宙飛行士たちからは”ワカメ”と、そう呼ばれていたー。

宇宙海藻を食べ終えて、彼女が一人でため息をつくと、
彼女は、”窓”の外を見つめたー。

そこはーー
”宇宙”だったー。
少し離れた場所には、太陽系の惑星のひとつ・海王星が
輝いているー。

「ーーーーーはぁ」
今一度ため息を吐き出す
女性宇宙飛行士・杉沼 真理愛(すぎぬま まりあ)ー。

真理愛が憂鬱な表情を浮かべている理由は
簡単だったー。

既に、2カ月も”こんな状況”が続いているからだー。

食料は”宇宙海藻”を中心とした食事で、困ることはないし、
酸素は”無限循環システム”が採用されたこの宇宙船では
故障がない限り尽きることもがないー。

動力に関しても”宇宙発電”という新技術が使われており、
無限に電力供給ができるー。

お風呂や、その他生活に必要なものも完備されている
この宇宙船・アイオーン号での生活は
そこそこ快適なものだった。

しかしーー
2か月前、この宇宙船で”事故”が起きたー。

宇宙船に乗船していたクルーの一人が、発狂して
暴れ始めたのだー。

出発前のメンタルテストや数々のチェックは突破していた男だったー。

が、宇宙の過酷な環境は時に人を狂わせるー。
その発狂したクルーによって、
最初に襲撃を受けた船長と副船長が死亡ー、

異常事態に気付く前に、さらに4人ほどの命が失われて、
残るメンバーで応戦ー、しかし、戦闘の末に、
真理愛と、もう一人の男性宇宙飛行士以外は死亡ー、
その男性宇宙飛行士も発狂したクルーとの銃撃戦で負傷しており、
1週間後に息を引き取ったー。

結果、真理愛はひとりとなってしまったのだったー。

そしてー、最悪なことに、
その戦闘が行われている最中に
宇宙船・アイオーンに搭載されていた”ワープドライブ”が
破損してしまったー。

地球から海王星ー。
その距離は非常に遠く、
既存の技術では人類が海王星にたどり着くことは
時間的にも不可能だったー。

がー、2212年に開発された
”ワープドライブ”によって、それは覆ったー。

人間の乗った宇宙船を”亜空間”を通じてワープさせることで、
遠い惑星の探査も可能になったのだー。

”ワープポイント”を宇宙の各地に設置、
それを使って、ワープドライブを搭載した宇宙船は、
遠くの宇宙にもすぐに移動できるようになったー

現在、人類はワープポイントを海王星付近にまで設置することに
成功しており、今後は冥王星、そして太陽系の外にまで
それを広げるつもりでいたー。

しかし、そのワープドライブが戦闘の際に破損ー、
さらには、発狂した男が宇宙船を操縦して
強引にワープポイントの方に向かったために、
ワープポイントと接触事故を起こし、
ワープポイントまで破損してしまった。

この宇宙船に積まれたワープドライブが破損したことで、
地球にすぐに帰ることができなくなったー。

そして、ワープに用いられるワープポイントも破損したことで、
地球から救助船をこちらにワープさせることも
できなくなってしまったー。

次に近いワープポイントは”土星付近”に存在していて、
そこからこの海王星付近に来るまでは何年もかかるー。

”死ぬことはない”
がー、真理愛はこの先何年もここで”孤独”に耐えなければいけなかったー。

しかも、ワープポイントが破損したことで、
”宇宙間通信システム”も通じなくなってしまい、
短時間しか使えない非常用通信システムで、
真理愛以外の全員が死亡したこと、身動きが取れなくなってしまったことを
地球側に伝えた上で、連絡も取れなくなってしまったー。

「ーーーーー」
”孤独”が、真理愛を蝕むー。

その日の夜もー
”ワカメ”こと、宇宙海藻を死んだ目で食べながら、
真理愛はそのまま晩御飯を終えると、
寝室となっている区画で眠りについたー。

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「生存者は杉沼 真理愛1名ー。
 救助までにかかる時間はー?」

地球ーー。
宇宙探査のために設置された組織の日本支部の支部長が
そう言葉を口にしていたー。

「ー海王星のワープポイントが破損している以上、
 土星のワープポイントを経由して、救助船を向かわせるのが
 最短のルートです

 現在の技術だと、どんなに急がせても、5年はかかりますー」

職員の男がそう答えるー。

「5年…かー」
支部長の浅沼(あさぬま)は、表情を歪めるー。

宇宙船・アイオーンの内部であれば5年間生きることはできるー。
が、それは孤独に耐えられれば、の話だー。

加えて、救助船を派遣するとすると、
その救助船のクルーも”最低5年”の宇宙の旅を強いられることになるー。

土星付近のワープポイントから海王星を目指して5年ー
その後、海王星付近のワープポイントが無事に修理できれば
すぐに帰ってこれるものの、修理できない場合ー、
また土星付近のワープポイントに引き返すことになり、
10年かかるー。

一人を救助するために、そんな過酷なミッションに名乗りを上げる宇宙飛行士など
いるだろうかー。

そう思いつつ、
支部長が表情を歪めていると、
「支部長ー。彼女と”話す”方法がひとつだけありますー」と、
職員の男が近付いて来たー。

「ー通信は既に遮断されているー。いったい、どうやってー?」
支部長がそう言葉を口にすると、
職員の男は言ったー。

「ーー”憑依”ですー」
とー。

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”憑依薬”ー
この時代では、他人に憑依することのできる薬が存在していたー。

当然、そんなものが出回れば社会は崩壊してしまうー。
だからこそ、すぐに製造が禁止され、
憑依薬が世間に出回ることはなく、そのまま封印状態にあったー。

がー、”宇宙”孤立している真理愛が、孤独に押しつぶされてしまわないようにと
この憑依薬を使う案が浮上したー。

憑依薬で幽体離脱した”霊体”であれば、
宇宙間通信のシステムにその霊体を飛ばし、
一瞬で海王星付近まで行くことができるー。

そして、真理愛に憑依することで真理愛との会話を可能にするのだー。

もちろん、真理愛のいる宇宙船内に憑依薬はないし、憑依薬を送ることも
できないため、真理愛が憑依薬を飲んでこっちに、別人の身体を借りる形で
帰って来ることはできないー。

けれど、真理愛に憑依して”会話”することで、
孤独に苦しむ真理愛の気持ちを少しでも和らげることができるのではないか、と、
そう考えられたのだー。

憑依薬を飲んで真理愛に憑依し、真理愛の孤独を和らげる役割として
選ばれたのはー、
真理愛の同期で真理愛と親しかった男性職員ー、
藤岡 龍太(ふじおか りゅうた)ー。

彼は、事情を説明するとすぐにその提案を受け入れ、
真理愛に憑依することを決めたー。

「ー真理愛ー…今、行くからなー」
龍太はそう言葉を口にすると、
支部長が見つめる中、憑依薬を飲み干し、
そのまま幽体離脱をしたー。

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「ーーーーーー」
真理愛は今日も、海王星付近に浮かび、移動することも
出来ない状態の宇宙船・アイオーン号の中で
宇宙海藻を食べていたー。

「ーワカメあきたー」
不満そうに、”ワカメ”と宇宙飛行士たちから呼ばれる
それを無表情で食べながら、そう呟く真理愛ー。

宇宙船の中には音楽を聴くことができるスペースもあるし、
映画を見ることができるスペースもあるー。
簡単なゲームもできるし、生活に不便はないー。

ただ、それでも地球にいるより娯楽は限られるし、
ずっとこのままだと気が狂いそうになるー。

「ーーー……」
大きくため息を吐き出す真理愛ー。

が、その時だったー。

「ーー!?」
真理愛がビクッと身体を震わせるー

今までに、感じたことのない感触ー

そんな感触に驚くと同時に、真理愛は意識を失ってしまうー。

「ーっととー…」
それと同時にバランスを崩す真理愛ー。

なんとかバランスを立て直して、転ばずに済んだ真理愛は
表情を曇らせると、
「しまったー…意識まで乗っ取ってしまったー」と、
真理愛に憑依した藤岡 龍太が、真理愛の身体でそう言葉を口にしたー。

「ーー加減が難しいなー…
 え~っと、真理愛の意識を呼び戻すにはー」

真理愛になった龍太がそう言葉を口にすると、
すぐに戸惑いの表情を浮かべるー

「ーま、真理愛の声で俺が喋ることができるって変な感じだなー…」
真理愛として、そう呟くと、
真理愛の声で喋っているという事実に再びドキッとしてしまうー。

「~~~~~~…」
真理愛の手や身体を見つめながら、さらに戸惑いの表情を浮かべると、
「ってー、俺は変なことしに来たんじゃないぞー」と、
自分に言い聞かせるかのように、そう言葉を口にすると、
周囲を見渡してから、少しだけ安心したような表情を浮かべるー。

周囲の状況を見る限りー、
ひとまず、宇宙船は無事で真理愛の生存には問題ない様子だったからだー。

それに、真理愛に憑依した感じ、
特別体調が悪い感じもしないー。

精神的な面はともかく、ちゃんと身体の健康状態は
維持されているのだと確信し、その点でも安心出来たー。

「ーーーー…」
宇宙船の窓から、少し離れた場所に見える海王星を見つめる真理愛ー。

「ーー俺も火星の調査には行ったことあるけどー
 海王星は初めてだからなー…」
そう呟きながら、海王星を見つめると、
「ーーさて…真理愛の意識を戻すにはーどうすればいいんだー?」と、
こうして、海王星付近にいる真理愛に憑依する前に、
読んで来たマニュアルの内容を頭の中で思い浮かべるー。

「ーーえ~っと、こうか?
 いや、こう?」

奇妙な動きをしながら、真理愛がそう呟くー。
が、真理愛の意識はなかなか戻ってこないー。

「~~~~~これじゃ、憑依した意味があまりないぞー…?」
真理愛に憑依している龍太が少し戸惑いの表情を浮かべながら
そう呟くー。

ひとまず、宇宙船アイオーン号が生命機能維持のための機能は
問題なく維持されていることは確認できたし、
真理愛に憑依したことで真理愛の健康状態もひとまず
問題無さそうなことは分かったー

ただ、一番の目的は孤独に苦しんでいるであろう真理愛を
支える、ということだー。
真理愛の意識が飛んでしまっていては、あまり意味がないー。

「ーーーえ~っと…そうだー…心の結びつきをー」
真理愛はそう呟くと、
目を閉じて、”憑依した側”である自分が、身体を支配を緩めるような
イメージを浮かべて深呼吸をするー。

そして、試行錯誤すること1時間以上ー

”ーーーぇ…”
真理愛本人の意識が、ようやく目を覚ましたー。

”えーーー…あ、あれ、わたしー…
 か、身体が動かないー…?”
真理愛本人の意識は目覚めたものの、
まだ”身体の主導権”は、龍太が握っている状態ー。

真理愛本人の意識は、意識があるのに身体が動かない状態に
心底困惑するー。

「ーあぁ、ごめんー。真理愛ー俺だよー藤岡ー
 藤岡 龍太ー」

真理愛の身体で龍太がそう答えると、
”え、龍太くん!?どういうことー!?”と、
真理愛本人の意識がそう叫ぶー。

龍太は、真理愛の身体で
”憑依薬”のこと、そして霊体になれば宇宙通信システムを利用して、
すぐにここまで飛んでこれることを伝えたー。

「ーーだから、俺が選ばれてこうして真理愛のところに来ることになったんだー
 残念ながら、このまま真理愛を連れて帰ることはできないし、
 救助にはまだ時間がかかるけど、
 地球側でも色々な検討は進んでいるし、こうして情報の伝達もできるし、
 話し相手になることはできるからー」

真理愛の身体でそう言葉を口にすると、
真理愛は”龍太くんーありがとう”と、そう言葉を返すー。

「あ、それでー、身体の主導権ーっていうのかなー
 それも真理愛に返せるんだけど、ちょっと俺も始めてでー
 やり方がイマイチ分からないからー、今から色々試してみるー」

真理愛の身体で、龍太はそう言うと、
真理愛の意識は笑いながら”久しぶりに人と話せたー”と
嬉しそうにそう言葉を口にするのだったー。

宇宙でひとりぼっちー。
そんな孤独から救われた真理愛は、
まだ地球に帰ることは出来ずとも、安堵の表情を浮かべたー。

②へ続く

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コメント

変わった憑依の使い方をするお話デス~!!!

宇宙でずっと一人…
快適な生活ができるなら、最初のうちは
楽しいかもですケド、
だんだん辛くなっちゃいそうですネ~…!

続きはまた明日デス~!!

続けて②をみる!

「どんなに遠くに離れていても」目次

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