☆こちらは「試し読み」コーナーデス
本コーナー以外の憑依空間内の作品は、憑依空間内で”必ず”完結します
<試し読み>と明記していない作品で、(試し読みコーナー以外では絶対にやりません)
「続きはFANBOXで」は絶対にやらないのでご安心ください!
「試し読み」は↓を全てご納得の上でお読みください☆!
(料金が掛かったりすることはないので、安心してください~!)
※こちらの小説はFANBOXご案内用の「試し読み」です。
(試し読みが欲しいというご要望にお応えして、試し読みをご用意しました)
pixivFANBOXで連載している長編「ナナイロカノジョ」の
第5話までを公開していきます!
※「試し読み」では、最後まで完結しません。ご注意下さい
(※FANBOXで現在連載中)
・試し読みコーナーでも、事前に<試し読み>と明記、どこまで読めるかを
明記した上で掲載しています。途中までであることをご納得の上でお読みください!
※1話あたりの長さは通常のと私の作品と同じで、
FANBOXでは1話ごとに公開していますが、
試し読み版では①~⑤を全部まとめてあります。
主な登場人物
・葉桐 斗真(はぎり とうま)
大学生。事故後、6人が憑依した状態になった彼女を前に困惑する。
・深山 麻美(みやま あさみ)
大学生。斗真の彼女。事故の犠牲者6人に憑依されてしまう。
①~発端~
「ーーこんなことになるなんてー」
男子大学生の葉桐 斗真(はぎり とうま)は、
困惑の表情を浮かべながら、病院の廊下を歩いていたー。
同じ大学に通う
彼女の深山 麻美(みやま あさみ)が、
”バスの事故”に巻き込まれたのだー。
”6人”の死者を出した悲劇の事故ー。
ニュースでも大々的に報じられたその事故の
”被害者”になってしまった麻美ー。
けれどーーー
斗真が険しい表情を浮かべていたのは、
”麻美が事故に巻き込まれたこと”が原因ではないー。
もちろん、それ自体もとても心配だったけれど、
”麻美が事故に巻き込まれたこと”が”小さなこと”に
思えてしまうぐらいにー、
”大変なこと”が起きていたのだー。
”深山”ー
そう書かれた病室の前にやってきて、
部屋をノックする斗真ー。
その先にはーーー
”麻美”の姿があったー。
がーーー
「ーーんだよーまた来たのかよー
そんなに”この人”のこと、好きなのかー?」
彼氏である斗真が病室にやってきたことに気付くと、
麻美はベッドの上で胡坐を掻きながら、
揶揄うような口調でそう言葉を口にするー。
「ーーあ、当たり前だろ!!
それにー、”君”にだって、彼女いるって言ってただろ?
だったら、俺の気持ちも分かるだろー!?」
斗真がそう言うと、
「へへへーまぁ、それは確かにー」
と、麻美は胡坐を掻きながら、髪をぐしゃぐしゃとかきむしるー。
「ーーでもさぁー、
俺、茉莉(まり)にこの身体じゃ会えないじゃんー。
女同士になっちまったしー、そもそも”俺”は死んだことに
なってるしー」
麻美がうんざりした様子で髪を掻きむしりながら言うと、
「ーってか、この”髪”邪魔だなーバッサリ切っていい?」
と、自分の髪を掴みながらそう言葉を口にしたー。
バスの事故に巻き込まれた麻美の様子が”おかしい”ー
そんな、麻美を前に、斗真は
「ーーい、いや、それはー」と、戸惑うー。
「ははー冗談だよー
”俺”一人で決めたら怒られちゃうしー、
ちゃんと、”相談”するからさー」
そう言いながらニヤニヤする麻美ー。
今、斗真の目の前にいる麻美は、
”麻美であって、麻美ではないー”
なぜならーーー
麻美には”バス事故で死んだ6人の魂”が、
憑依した状態になってしまっていたからだー。
今、麻美の身体を動かしているのは、
”6人”の死んだ乗客のうちの一人、
男子高校生の園田 哲也(そのだ てつや)ー。
「ーーはぁ、どうしてこんなことになっちまったかなぁー」
麻美は不満そうにそう言葉を口にすると、
”麻美の彼氏”である斗真のほうを見つめたー。
「ーなぁなぁ、ちょっとだけ揉んでいいー?」
胸のほうを指さしながら笑う麻美ー。
「ーダメだ!絶対ダメ!」
斗真は麻美(哲也)のほうを見つめながら、不満そうに
そんな言葉を口にしたー。
「ーだいたい、”どうしてこんなことなっちまったのかなぁ”は
俺のセリフだ!!」
斗真はそう言葉を口にすると、
”こうなってしまった”少し前の出来事を頭の中で思い浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”事故”の前日ー。
大学内でいつものように彼女の麻美と昼食を食べていた斗真ー。
「ーーーそっかぁ…じゃあ、早く元気になるといいなー」
斗真が、心配そうにそう言葉を口にするー。
反対側に座っていた彼女の麻美は、微笑みながら
「うんー。でも、”お兄ちゃん”も働きすぎだし、
ちょうどいい機会だったのかもー」と、
そう言葉を返すー。
麻美の兄・深山 慎吾(みやま しんご)ー
数日前、仕事中に足を滑らせて転倒、骨折してしまい、
現在は入院しているー。
斗真も、麻美も、麻美の兄の慎吾も
それぞれ一人暮らしをしていて、住んでいる場所は違うー。
慎吾が骨折したと昨日、聞かされた麻美は、
明日、兄の慎吾のお見舞いに行く予定になっていたー。
「ーーははー、確かにお兄さん、”仕事ができる~!”って
感じだもんなー」
斗真はそう言葉を口にしながら、
「まぁ、俺は”嫌われてる”けどー」と、苦笑いするー。
”麻美”の彼氏である斗真は、麻美の”兄”慎吾とも面識があるー。
が、会うたびに色々と言われて
斗真は”俺、嫌われてるんだろうなぁ”と、そんな風に感じていたー。
がー、麻美は少しだけ笑うと、
「あぁ見えて、お兄ちゃん、斗真のこと結構気に入ってるよー?
この前も、”麻美を任せられるのは、アイツしかいない!”とか
言ってたしー」と、
兄・慎吾の口調を真似ながら笑うー。
「えぇ~?本当かよー?」
斗真は思わず苦笑いすると、
麻美は「でも、ほらー、なんか”妹”の彼氏につい嫉妬しちゃうんだってー。
わたしには、全然そういう気持ち、分からないけどー」と、
笑いながら言葉を口にするー。
「ーーははーそんなもんなのかなー?
俺、妹とかいないし分かんないやー」
斗真はそれだけ言うと、昼休みの楽しいひと時を終えるー。
そして、その日の夜ー、
”明日は気を付けてー。あ、お兄さんによろしく言っておいてー”と、
そんなメッセージを送った斗真は、
”うん!お兄ちゃんもきっと喜ぶよー”と、麻美からの
返信を確認するーー
それがーーー
”事故”の前の最後のやり取りになるとは、
夢にも思わずにー。
その翌日ー
”事故”は起きたー。
麻美の乗っていたバスが事故により横転ー。
原因は、運転手の急病ー。
大勢のけが人とー、”6人”の死者を出しー、
ニュースでも大々的にそれが報じられていたー。
「ーーあ、麻美ー…う、嘘だろー?」
夕方には、
斗真も”どうやらそのバスに麻美が乗っていたらしい”ということを
同じ大学に通う、麻美の親友・杉本 繭(すぎもと まゆ)から
聞かされて、そのことを知ったー。
「ーーーー…麻美ーーー」
麻美の笑顔を思い出しながら、斗真は麻美の無事を只々祈ったー。
がー、やがてー…
”麻美”は6人の死者には含まれておらず、
病院に搬送されたこと、その搬送先の病院で
既に意識を取り戻していることを知った斗真は、
すぐにその病院へと駆け付けていたー。
「ーー麻美ーー!!」
麻美の病室に駆け付けるとー、
そこにはー、少し怪我をしているものの、
元気そうな麻美の姿があったー。
「ーーーあーー」
麻美は、斗真を見ると少し困惑した表情を浮かべながら
ぺこりと頭を下げるー。
その反応に少しだけ違和感を感じる斗真ー。
「ーあ、麻美ー、無事でよかったー
け、怪我はー大丈夫なのかー?」
斗真がそう言うと、麻美は「はいー…怪我は大したことないのでー」と、
そんな返事を口にするー。
「ーー??」
しかし、斗真は、その返事にさらに強い違和感を覚えたー。
それもそのはずー。
なぜか”他人行儀”だからだー。
そうこうしているうちに、部屋にいた看護師が
作業を終えて退出していくと、
麻美は周囲を見渡してから、
斗真のほうを見たー。
「ーーあ、あのーーー
ご家族の方ですか?それともー…彼氏さんですかー?」
と、そう言葉を口にしながらー。
「ーーー!?!?!?」
斗真は心底驚いた様子で、
「あ、麻美ー、ま、まさか俺が分からないのかー!?」と、
そう言葉を口にするー。
血の気が引いて、失神するかと思うぐらいのショックを受けながら、
斗真がそう言うと、
麻美は「す、すみませんー。違うんですー落ち着いて下さいー」と、
そう言葉を口にすると、
「ーー…信じられないと思いますけどーー…
わたしー…”深山 麻美”じゃないんですー」と、
心底申し訳なさそうにそう言い放ったー。
「ーーー…あ、麻美…じゃないー?」
斗真が戸惑いながら言葉を振り絞ると、
麻美は「ー正しくは、”身体”は、この子のものなんですけどー…
”中身”が違うんですー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーあ、麻美ーーど、どういうことなんだよー…
え…???」
混乱する斗真ー。
すると、麻美は言ったー。
「わたしはー、西園寺 涼子(さいおんじ りょうこ)と
言いますー。
ーーーこの子と同じ”バス”に乗っていてーー
そしてーーーーーー
……わたしは、そのーー…」
麻美は暗い表情を浮かべると、斗真を見つめながら言ったー。
「ーーわたしはー……死んでしまったみたいですー」
とー。
「ーーー…え…えっ…な、何を言ってー…?」
全く意味が分からないーそう思いながら斗真が麻美を見つめると、
麻美は「分かりますー。信じられないですよねー」と、
戸惑いながら、”斗真の反応”に理解を示すー。
「ーただー…”現実”なんですー
理由は分からないですけどー、
”事故”で死んだわたしが、この子の身体の中に入り込んでー…」
心底困惑した様子でそう言葉を口にする麻美ー。
斗真は、未だに”信じられない”という表情を浮かべながらも、
「ーーじ、じゃあー、麻美ー…い、いや、君は
麻美じゃないってことかー?
身体は麻美だけど、今、俺が喋ってるのは
麻美じゃなくてー、別の人ってことー?」
と、そう言い放つと、
麻美は「そうですー」と、頷くー。
「ーーーーーー」
呆然として言葉を失う斗真ー。
バスの事故で頭を打って、麻美がおかしくなってしまったのでは
ないかと心配するー
しかしー…
今の”麻美”の振る舞いは、普段の麻美とはまるで違うー。
表情も、口調もー、
いつもの麻美よりもさらに落ち着いたー、
”大人”な雰囲気を感じるー。
「まさか、本当にー…」
そう思いながら、病室で流れていた”バス事故”を報じる
ニュースに”犠牲者の身元”が確認できたとして、
名前が表示されるー。
先程まで、”死者6名”としか報じられていなかったものの、
数名の名前が判明したようだー。
表示されている三人の名前の中にー
先程、”麻美が名乗った””西園寺 涼子”の名前も表示されているー
「ーー!!」
名前が報じられたのは、たぶん今が初めてだー。
”麻美”は、その名を先に名乗ったー。
と、いうことはー
「ーーき、君はーー…ほ、本当にー…麻美じゃ…ないー?」
斗真が、”信じられない”と言う表情で言葉を吐き出すと、
麻美は「ーーはいー…すみませんー」と、申し訳なさそうに言うー。
”西園寺 涼子(24)”
”園田 哲也(17)”
”倉林 健司(38)”
犠牲者6名のうち、3名の名前が表示されているー。
それを見つめながら、斗真は
「じ、じゃあー、麻美はー!?麻美はどうなったんだー!?」と、
取り乱した様子で言うと、
”涼子を名乗る麻美”は、「ーーー無事ですー」と、そう言葉を口にしつつ、
「ただー、まだ”わたし以外”は意識が戻ってませんー。
生きてはいると思うのですけどー」と、そう付け加えたー。
「ーーー”わたし以外”ー?」
斗真がそう聞き返すと、麻美は頷くー
「ーーー…”誰”なのかは分かりませんー。
ただ、”意識が戻っていない魂”が、深山 麻美さん以外にー
”5人”この中にいるのが分かるんですー」
と、そう言いながらー
「ーー!?!?!?」
驚く斗真ー。
涼子を名乗る麻美は、テレビのほうを見つめながら言うー。
「ーー人数から考えると、恐らくーーー…
”わたし以外の犠牲者の5人”もーー
この中にーーー」
麻美(涼子)が、そう言い放つー。
”彼女の中に、”6人”の魂が憑依してしまったー”
そんな”現実”を前に、斗真は言葉を失ってしまうーーー
それがーーー
”七色の彼女”との日々の”はじまり”
だったーーー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その翌日ー。
麻美に憑依している6人のひとり、涼子は、
しっかり者で真面目なOLで、
休日に友達のところに遊びに行こうとバスで
移動している最中に事故に遭ってしまったのだというー。
昨日に続き、病院を訪れた斗真は、
麻美(涼子)と話をしながら、謝罪の言葉を口にしていたー。
「昨日は、取り乱してすみませんでしたー。
ーー西園寺さんだって、事故に巻き込まれて
自分の身体が死んじゃって大変な状況なのにー」
とー。
涼子が年上のOLだと知り、敬語で接するようになった斗真ー。
そんな斗真を前に、麻美(涼子)は苦笑いしながら、
「ーわたしの方こそ、ごめんなさいー。
ーーあなたの大切な彼女さんの身体をこんな風に
使ってしまってー」と、申し訳なさそうに言うー。
「ーいえーーー。
西園寺さんは何も悪くないですしー…」
斗真は戸惑いながら、そう言葉を口にするー。
「ーそれで、他の”5人”と、麻美はー?」
斗真が確認すると、麻美(涼子)は
「まだ、意識が戻っている感じはないですー」と、
首を横に振るー。
”同じ身体にいるもの同士”
何か”分かる”のだろうー。
「ーーそうですかー」
斗真がそう言葉を口にすると、
麻美(涼子)は「何か異変があったら、すぐに伝えますー」と、
そう言葉を口にした上で、
「ー彼女さんの身体は、しっかり安静にするようにするので、
心配しないでくださいー」と、斗真のほうを見つめながら
麻美(涼子)は言うー。
見た目は麻美なのに、”まるで違う”話し方に、
戸惑いながらも、
斗真は「ーはいー。すみませんー」と、そう言葉を口にして、
飲み物を買うために、いったん病室の外に出るー。
がーーー
飲み物を買って病室に戻った斗真はーー
驚きの表情を浮かべたー
「へへっーなんだこれー…すげぇ…へへへへっ♡」
麻美がベッドの上で胡坐をかいて、
自分の両胸を嬉しそうに揉んでいたのだー。
「ーちょ!?えっ!?何してるんですかー!?」
”涼子”が、麻美の胸を揉んでいるのかと思い、
声を上げる斗真ー。
がーー、
斗真に気付いた麻美の表情は
”麻美”とも、そして”さっきまで”とも、
まるで別人のようだったー。
「ーーーあ?あんた誰?」
胸を揉む手を止めると、麻美がそう言葉を口にするー。
「ーーーーえっ……そ、そっちこそー…だ、誰ですかー?」
斗真は思わずそう聞き返すと、
麻美はニヤリと笑みを浮かべながら
「”俺”?俺は、園田 哲也だけどー?」と、そう言葉を口にしたー。
事故の翌日ー、
この日、麻美に憑依した”6人の犠牲者”のうちのひとりー、
男子高校生の園田 哲也の魂が意識を取り戻したー。
「ーーーお……お、男ー?」
戸惑う斗真ー。
「ーーあ?
あぁーまぁーー…
で、これ、どういう状況?」
麻美(哲也)は、自分の手を見つめながらそう言葉を口にすると、
斗真は戸惑いながらも、”涼子”から聞いたこと、
今までに分かっていることを、
”麻美”に憑依している6人のひとり、哲也に伝えるのだったー。
そしてーーー
この時の斗真は、
”麻美に憑依した犠牲者たち”の中には、
”とんでもない人物”がいることを、
まだ、知らなかったー。
②へ続く
②~退院~
★あらすじ★
彼女が巻き込まれてしまった6人の犠牲者を出したバス事故ー。
彼女はなんとか助かったものの、
安堵したのも束の間、彼氏の斗真はとんでもないことを知ってしまうー。
それは、彼女・麻美の中に
”犠牲者6人の魂が憑依してしまっている”
と、いうことだったー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”バス事故”から数日が経過した現在ー。
麻美の中には”6人の犠牲者”が憑依しているー。
しかし、現在はまだ残りの4人の犠牲者と、
麻美本人は目を覚ましていない状態で、
現在、麻美の身体を動かしているのは
最初に目を覚ましたしっかり者のOL・西園寺 涼子と、
男子高校生の園田 哲也の二人ー。
他の4人と、本人の意識はまだ戻っていない状態だー。
麻美(哲也)の前で、
これまでのことを思い出していた斗真は、
「ーでも、最初に君と会ったときはびびったよー。
だってー病室に入ってきたら、いきなり麻美が
胸を揉んでたんだからー…」と、そんな言葉を口にするー。
「そりゃー、まぁーー…
可愛いお姉さんの身体になったら、揉むじゃん?」
麻美(哲也)がニヤニヤしながら自分を指差すと、
斗真は呆れ顔で首を横に振るー。
そんな斗真の反応を見て、麻美(哲也)は
自分の手ーー…麻美の綺麗な手を見つめると、
少し寂しそうに笑うー。
「それにさ、俺、バスの事故の瞬間、覚えてたからさー
てっきり死んだと思ってー
ーーあぁ、いや、まぁ、俺の身体は死んだみたいだけどさー
だからー、目を覚ましたとき、あの世で女になったのかと思ってー
それで、どうせなら好き放題するかって思っちゃったんだよ」
哲也からすれば、”事故が起きた瞬間のバスの車内”が最後の光景ー。
そして、目を覚ましたら麻美に憑依した状態になっていたのだー。
状況が飲み込めなくても仕方がないー
「ーーーーまぁー確かに、急にそんなになってたらー
何が起きてるかなんてわからないよなー」
斗真はそう言うと、麻美(哲也)は、少し戸惑ったような
表情を浮かべながら、
「でも、俺、これからどうすりゃいんだろうなー…?
女として生きてかなくちゃいけないってことか?」
と、不安そうに呟くー。
「そ、それはーー」
斗真は、ベッドの上で胡坐をかいている麻美(哲也)を見つめるー。
”どうすればいいー?”
そう聞かれても、分からないー。
こんな状況、どうすればいいか、斗真にも分からないのだー。
まさか、”麻美に憑依した6人の犠牲者”と一緒に、
7人で生きていくー、なんてことは無理だろうし、
麻美本人も、さすがにそれは嫌がるだろうー。
それに、現在、”麻美に憑依した6人のうちの2人”と
話は出来ていて、涼子も哲也も”悪い人”ではないものの、
残りの4人に問題児がいないとも限らないー。
しかも、”7人”全員が同じ方向を見て生きていくなんて
不可能だろうし、”このまま”では絶対にいられないー。
しかしー麻美に憑依してしまった
バス事故の犠牲者”6人”には、もう帰る場所がないー。
”麻美の身体から出ていけ!”と、この6人に言うことはー
それはつまりーーー
”死ね”と言っているのと同じー。
「そういえばー…君たちは互いに意思疎通はできてるのかー?」
斗真がそう呟くと、
麻美(哲也)は「ん?あぁーーー」と、そう言葉を口にすると、
「説明すんの面倒だからー、西園寺さんに任せようかなー」と、
そう続けてから目を閉じるー。
麻美がビクッと震えると、
目を開いて、途端に恥ずかしそうに胡坐をやめて、
普通にベッドに座ると、
「す、すみませんー。彼女さんの身体でこんな座り方ー」と、
表情も口調も変わって、”涼子”が表に出て来たー。
麻美の身体で最初に目を覚ましたOLだー。
「いえー、彼は男の子ですしー、まぁ、仕方ないですよ」
斗真が苦笑いしながら言うー。
同じ”麻美”の身体、声なのにー
哲也が表に出ている時とはまるで別人のように思えるー。
麻美(涼子)は穏やかに笑うと、
「ーそれで、わたしたちの状況なんですけどー…
”心の中”で一応、お話みたいなことはできる状態でー…
上手く、説明できないんですけど、意思疎通はできますー」と、
落ち着いた口調でそう言葉を口にするー。
”麻美の声”で喋っているものの、
喋り方と振る舞いだけで、この”涼子”という人は
本当にしっかり者で真面目だったのだろう、と、そう思うー。
「最初に葉桐さんとお話したとき、”中に5人”いるっていいましたよねー?
気配を感じることができると、意思の疎通もできるんですー」
麻美(涼子)はそこまで言うと、
斗真は「”表”に西園寺さんが出ていないときも、自分が何を
しているかは分かってるってことですか?」と、そう呟くー。
「ーーいえー。”表”に出ていないときは、
半分寝ているような不思議な状態でー…
ーーー園田くんが表に出ているときのことは、
園田くんと話をして、理解している感じですー
”見よう”と思えば見れるのかもしれませんけどー」
麻美(涼子)はそれだけ言うと、
「わたしたちも、まだ”こうなった”ばかりで
何ができて、何ができないのかは、あまり把握しきれてなくてー」
と、心底申し訳なさそうに頭を下げたー。
「ーーーいえ、ありがとうございますー
西園寺さんたちの方が大変なのにー、
ーー色々聞いてばかりですみませんー」
斗真は”これからどうすればいいんだー?”と、
そう思いながら、戸惑いの表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーはぁー…」
翌日ー。
大学内で繰り返しため息をついていた斗真ー。
そんな斗真の姿を見かけた男が、
斗真に声をかけて来たー。
「ーよぉ、葉桐ー。どうしたんだよ?
そんなため息ばかりついてー」
声をかけて来たのは、斗真の親友ー
寺岡 和人(てらおか かずと)ー
「ーーーーいやぁー…”麻美”のことでさー」
斗真がそう言うと、
和人は「あ~……だよなー」と、少し申し訳なさそうな
表情を浮かべるー。
”麻美”がバス事故に遭った、というのは当然大学の人間は
知っているー。
「ーーでも、何とか助かってよかったよなー。
退院は3日後だったっけ?」
和人がそう言うと、斗真はスマホを確認しながら、
「ーあぁ」と、頷くー。
”ーーーまぁ…俺が悩んでるのは”そこ”じゃないんだけどなー…”
斗真は内心でそんな風に思いながら
スマホを握りしめるー。
もちろん、バスの事故に巻き込まれたのは心配だったし、
無事でよかった、というのも事実だー
けれど、まさか”6人”の犠牲者に麻美が憑依された状態になってしまうなんてー。
そんな風に思っていると、
”麻美”から連絡が入ったー。
「ー悪いー」
和人にスマホを示して、電話がかかってきたことを伝えると、
和人は”出ていいぞ”という仕草をするー。
斗真が和人から離れて、電話に出ると、
電話の向こうから、麻美の声が聞こえて来たー。
”ーーー斗真ーーーー
ーーわたしー”
とーー。
「ーーえ…麻美?」
斗真がそう聞き返すと、麻美は”うんー…”と、そう答えたー。
”ーーーついさっき、意識が戻ってー”
麻美はそう言葉を続けると、
斗真は心底安堵した表情を浮かべながら
「よかったー…本当によかったー」と、そんな言葉を吐き出すー。
”ーー心配かけて、ごめんねー”
麻美も少し安心したような口調でそう言葉を口にするとー、
少し間を置いてから、言葉を続けたー
”ーーわたしの”今”のことー…
ーーー西園寺さんって人から聞いたよー
…わたしの中に、”6人”の魂が入ってるってー”
麻美は心底不安そうにそう呟くー。
斗真は”麻美の不安”を、痛いほど理解しながら、
「ーーー今から、そっちに行くからー」と、
そう言葉を返すと、
麻美との会話を終えて、そのまま病院へと直行したー。
病院に到着すると、
麻美は、斗真の姿を見ると同時に、
涙目になって「ーー斗真ー…」と、その名前を口にしたー。
「ー麻美ーー…
ーー本当に無事でよかったー」
斗真も心底嬉しそうにそう言葉を口にすると、
麻美に対して”バスの事故に巻き込まれたこと”
そして、”その事故の犠牲者6人”が何故か麻美に憑依してしまったことを
伝えたー。
麻美は心底困惑した様子で、
「ーーーーわたしー…これからどうなるんだろうー…」と、
そう言葉を口にするー。
思い悩む麻美の姿を前に、
斗真もなんて答えていいか分からなくなってしまうー。
”麻美本人”の意識が戻ったことはもちろん嬉しいー。
しかし、”犠牲者6人”が憑依した状態の麻美は
これから”どう”生きていけばいいのかー、
その答えをすぐに見つけることは難しいー。
「ーーと、とにかく、俺も麻美のこと全力で支えるからー
一緒に何とか乗り越えていこうー」
斗真がそう言うと、麻美は不安そうにしながらも頷くー。
”現在分かっていること”を、麻美に改めて伝える斗真ー。
麻美は既に意識を取り戻してから”涼子”に、話を聞いたようで、
ある程度の状況は理解していたー。
「ーーーねぇー…」
一通り、分かっていることを伝えると、麻美が少し不安そうに
斗真のほうを見たー。
「ーーわたし…”変なこと”したりしてないよねー?」
とー。
「ーーえっ!?」
斗真は麻美の質問に少しギョッとして、目を逸らすー。
麻美の中にいる6人の一人、男子高校生の哲也が、
麻美の身体で胸を揉んでいた場面を思い出してしまうー。
がー、そんなことを言えば麻美はパニックになってしまうかもしれないー。
「ーーーーい、いやー…特にはー
…まぁ、そりゃ、他の人が麻美の身体を動かしている時は
いつもの麻美と雰囲気は違うけどさー…
西園寺さんって人は、真面目そうだし、
ーー…園田くんはー…まぁー年頃の男子って感じだけど
悪い子じゃないと思うしー」
斗真がそう言うと、麻美は少し安心した様子で「そっかー」と、頷くー。
麻美によれば、涼子も哲也も、
麻美が目を覚ましてからは、”麻美”に身体の主導権を譲っていて、
”麻美”にはよくしてくれているのだと言うー。
「それならよかったー」
少し安堵の表情を浮かべる斗真ー。
ただーーー
”残りの4人”が、まだ、どんな人物なのか分からないー。
斗真はあのあと、”事故”の犠牲者を調べて、
残りの4人は、
”倉林 健司(38)”
”中島 祐樹(52)”
”冬森 京香(41)”
”愛川 萌愛(16)”
で、あることが分かっているー。
ただ、その”4人”がどんな人間なのかは分からないー。
もしもー、麻美の身体で、麻美に危害を加えるような
人物がこの中にいたらー…
「ーーー」
そんなことを考えながらも、斗真は
麻美を不安にさせないようにと、
「ーとにかく、まずは退院だなー」と、そう言葉を口にすると、
麻美は静かに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”退院”2日前ー。
「ーーすみませんー。今日はわたしでー。
”麻美ちゃん”を呼びますかー?」
病院に足を運ぶと、
麻美の身体は、”涼子”が動かしている状態だったー。
聞けば、麻美も色々疲れているらしく、
涼子が代わりに今日は表に出ている、とのことだったー。
「ーいえ、麻美も疲れているならー、無理はしなくて
大丈夫ですー」
斗真はそう言うと、麻美(涼子)は
「ーそれにしてもー、毎日お見舞いに来てー
本当に、麻美ちゃんのこと、大切にされてるんですねー」と、
穏やかに笑うー。
いつもと違う麻美の雰囲気に少しドキッとしながらも
苦笑いすると、
「ーーそれはもうー。大事な人ですからー」と、
斗真はそれだけ言うと、
「ーーって、今、麻美に聞こえてないですよねー?」と
恥ずかしそうに確認するー。
「ーふふー。今は”眠ってる”みたいですからー。大丈夫ですよー」
麻美(涼子)はそう言葉を口にするー。
”涼子”は、最初、麻美のことを”この子”と呼んでいたー。
が、今日は”麻美ちゃん”と呼んでいるー。
恐らく、麻美本人が意識を取り戻したあと、
本人と意思疎通が可能になって、ある程度打ち解けてくれたのだと
斗真は思うー。
「ーー…西園寺さんにも、色々迷惑をかけちゃうと思いますけど、
ーー…退院後も、宜しくお願いしますー」
斗真がそう言うと、麻美(涼子)は穏やかに微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
退院”前日”ー
「ーー深山さんって足、綺麗だよなぁ~」
今日の”麻美”は、高校生の哲也が表に出ていたー。
ニヤニヤしながら、自分の足を見つめる麻美(哲也)ー。
「ーー…~~~…あんま変なことしないでくれよー?」
斗真がそう言い放ちながら、
戸惑いの表情を浮かべるー。
どうにも、”中身が男”だと分かっていると落ち着かないー。
「ーーへへー。まぁ、でも
俺だってこの人の人生、壊すつもりはないしー
それに、この先ずっとこの身体で生きてくならー、
あんま変な事するわけにはいかないだろー?」
麻美(哲也)の言葉に、斗真は「ーそれならいいけどー」と、
不服そうに返事をするー。
「ーーでもさー
今、自分が”深山 麻美”っていう女になってるって考えると
やっぱドキドキしちゃうよなー。
だって、ほら、考えてみてくれよー
急にこんな”可愛い人”になったらー
あんただって、ドキドキするだろー?」
麻美(哲也)がニヤニヤしながら言うー。
哲也の立場を想像すると、斗真は
「ーーまぁ……気持ちは分かるような、分からないようなー」と、
曖昧な返事をするー。
麻美(哲也)はそんな反応を見ながら少し笑うと、
「でもまぁ、深山さん、”中”で話したけど、いい人だしー
悪いようにはしないよー」と、そんな言葉を口にしたー。
そしてーー
”退院当日”ー
麻美の母親・深山 雅代(みやま まさよ)と、
父親・深山 典久(みやま のりひさ)も、
今日、病院に来る予定だったものの、
斗真と、麻美本人の意思で、
”そんなに対した怪我じゃないし、退院はこっちで手続きできるからー”と、
実家の二人は、今日は病院に来ないことになって、
麻美の両親とも面識があり、それなりに親しい斗真が、
病院に迎えにやってきていたー。
麻美自身、親の前で”憑依している6人”が変な振る舞いを
してしまわないかどうか心配で、
親には来てほしくなかったようだー。
結局ー、今、”この状態”を知っているのは、
まだ、斗真のみー。
麻美の両親に”6人の犠牲者が憑依している”などと伝えるのは
ショックも大きいだろうし、麻美本人も
”今は、言わないでおいてー”と、そう言葉を口にしていたー。
「ーーー麻美ー」
斗真が麻美の前にやってくると、
麻美は「ーごめんねー。面倒かけてー」と、微笑むー。
「ー面倒なんて思わないよー。
麻美のためなら、何でもするしー」
斗真がそう言うと、麻美は穏やかに微笑んでから、
「ーーいつもありがとうー」と、そう言葉を口にしたー。
ひとまず、退院後は
しばらく、斗真が麻美の家で、麻美の面倒を見て
サポートしながら生活する約束をしていて、
今日からは麻美の家に出入りしつつの生活を送るつもりだー。
病院での手続きを終える二人ー。
しかしーーー
その時だったー
麻美がピクッと震えるー
ーーー少しだけニヤッと笑みを浮かべる麻美ー。
「ーーーーねぇー
先に行っててー
”あたし”、トイレに行きたくなっちゃったー」
麻美がそう言葉を口にするー。
「ーーん?あぁ、わかったー
じゃあ、俺はここで待ってるよー」
斗真がそう言うと、麻美はにこっと微笑んで、
そのまま斗真から離れていくー。
そしてーーー
廊下の曲がり角を曲がって、斗真が見えなくなると、
麻美はクスクスと笑いながら、
トイレには向かわずに、そのまま別の出口から病院の
外に向かおうとするー。
「ーーあ、深山さんー
今日退院だったんだねー。お大事にー」
麻美が世話になった看護師の一人が
すれ違いざまにそう言葉を口にするー。
麻美は、穏やかに笑いながら
「ありがとうございますー」と、そう言葉を口にして
通り過ぎると、
少し離れた場所で、言葉を口にしたー
「あたしは愛川 萌愛ー」
とー。
麻美に”憑依”してしまった6人の犠牲者のひとりー…
”ギャル”の萌愛がー、今朝、”意識”を取り戻したー
しかし、既に意識を取り戻していた麻美本人と
涼子・哲也の三人に気付かれないように、
心の中で大人しくしながら、状況を把握ー
”身体を乗っ取るタイミング”を見計らっていたー。
「ーーーー」
チラッと、彼氏の斗真がいた方向を見つめる麻美(萌愛)ー。
「ーあははー
この身体はあたしが貰っちゃうねー。ばいばいー」
麻美(萌愛)は、馬鹿にするような笑い方をしながら
一人でそう呟くと、
そのまま斗真に気付かれないように、病院から姿を消したー…。
③へ続く
③~捜索~
★あらすじ★
バスの事故に巻き込まれたことによって
犠牲者6人の魂が入り込んでしまった麻美ー。
戸惑いの中、彼氏の斗真は何とかその状況を理解し、
麻美に憑依してしまった6人のうちの2人、
涼子・哲也とも、ひとまず良好な関係を築くことに成功するー。
しかし、麻美の退院当日ー、
麻美に憑依した犠牲者6人の中の、
意識を取り戻していなかった4人のうちの一人が
目を覚ましー、麻美を乗っ取ってしまい…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーど、どこに行っちゃったんだー…?」
”トイレに行く”と行って立ち去った麻美が、
病院から姿を消したー。
必死に麻美のことを探したものの、
斗真は麻美を見つけることが出来ずに途方に暮れながらも、
すぐに麻美に連絡を入れるー。
が、麻美のスマホにいくら連絡しても、
電話には出てくれないし、返事も返ってこないー
「ーーーー…くそっー」
斗真はスマホを握りしめながら、嫌な予感を覚えるー。
麻美に憑依してしまった”6人の犠牲者”たちー。
そのうちの2人、涼子と哲也とは既に麻美の身体を通して
会話をして、ある程度どんな人物なのかは理解しているー。
しかし、”残りの4人”は、涼子によればまだ意識が
戻っていないようで、”いつ戻るかも分からない”とのことだったー。
その4人のうちの誰かが目を覚ましたのかもしれないー。
斗真は、不安を覚えながらも
「とにかく、見つけないとー」と、
病院の外に向かって走り出すのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーふんーーー」
一方、病院から抜け出した麻美はーー
麻美に憑依してしまった犠牲者6人のうちの一人、萌愛に
身体を支配され、街中を歩いていたー。
「ーーあたしが死ぬなんてあり得ないー
あたしにはまだ、やりたいことがいっぱいあるんだからー」
麻美(萌愛)は、スマホに届いた斗真からのメッセージを
不機嫌そうに見つめながらそう言葉を口にすると、
「ー結構、可愛いじゃんー。あたしの新しい身体ー」と、
鏡で”麻美”の姿を見つめながら笑うー。
「ーふふふふふー
あたし好みにカスタマイズしちゃおっとー」
麻美(萌愛)はそう言葉を口にするとー、
普段は浮かべないような不気味な笑みを浮かべて、
そのままゆっくりと立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーおいおい、マジかよー」
斗真の元に、大学の親友の寺岡 和人がやってくると
そんな言葉を口にしたー。
「ーーあぁートイレ行って来るって言ったきり、消えちゃってー」
まだ、斗真以外は”麻美”に6人の犠牲者が
憑依してしまったことは知らないー。
もちろん、斗真の親友の和人も例外ではないー。
が、今はとにかく”早く麻美を見つけ出さないといけないー”
麻美の中に宿る別の犠牲者が麻美を乗っ取ったなら、
早く見つけ出さないと、大変なことになる気がするー。
そう考えた斗真は、やむを得ず、親友の和人、
そして麻美の親友である杉本 繭に
”麻美が消えたから一緒に探してほしい”と、
そう連絡していたー。
既に、繭も”ちょうど暇だから、色々探してみる”と、
そう言ってくれて、別の場所を探してくれているー。
「ーーじゃ、俺は北口方面を探せばいいんだなー?」
和人がそう言うと、斗真は迷惑をかけて悪い、と謝罪しながら
「今度、何か奢らせてくれよー」と、
そう言葉を口にしてから、和人と別れて街の中を探し始めるー。
斗真ー、和人ー、繭の三人がそれぞれ
麻美を探して走り回るー。
しかしー、なかなか麻美は見つからずー、
時間ばかりが過ぎていくー。
「ーーー麻美ー」
麻美の親友・繭も心底心配そうな表情を浮かべながら、
そんな言葉を口にするー。
繭は、ポニーテールが特徴的な
困っている人を放っておけない性格の持ち主ー
ただー、運が悪いのか、
それとも俗に言う”不幸体質”なのか、
よく災難に巻き込まれていて、
自分が”困っている人側”になってしまうことも多いー。
既に周囲は暗くなり、麻美が病院から失踪して、
半日ぐらい経過しているー。
心配になった繭は、
ちょうど今いる、デパートの一角でスマホを手に、
他の場所で麻美を探している斗真に連絡を取るー。
「ーーあ、葉桐くんー?
麻美、見つかったー?」
繭がそう言うと、斗真は”いやーまだー”と、
かなり焦った様子で言葉を口にするー。
そんな言葉を聞いて、繭は躊躇いながらも言葉を口にするー
「ねぇ、警察に相談した方がいいんじゃないー?
何かに巻き込まれている可能性もあるしー」
とー。
”ーーーいやーーーまぁ…でもー”
斗真はためらうー。
もちろん、ここまで麻美が見つからないとなると、
警察や、麻美の両親に連絡するのが
”本来であれば”最善手だと思うー。
しかしー、今の麻美には”バス事故の6人の犠牲者”が憑依して
しまっている状態ー。
そのことが無駄に広まれば、混乱するだろうしー、
麻美自身も大変な目に遭うかもしれないー。
だからー、渋っていたー。
「ーーー…でも、本当にそろそろーーー」
繭が、そう言いかけたその時だったー。
「ーーあ~~~!くそっ!ウッザ!!!」
そんな”聞き覚えのある声”が聞こえて来たー。
デパートの休憩スペースで電話をしていた繭が
視線をそちらに向けるとー、
そこから見えるゲームコーナーで、クレーンゲームの機械を
乱暴に叩いている女の姿が見えたー。
派手な金髪に、派手な髪飾りー、
派手なミニスカートを履いた女の姿が見えるー。
「ーーーーえ」
繭は戸惑うー。
何故ならー、
今、”ウッザ!!!”と叫んでいたその声はーー
他でもない、”麻美”の声だったからだー
”ーーーす、杉本さん?どうかしたー?”
電話の向こうの斗真が心配そうに声をかけて来るー。
繭は、そんな斗真の声を聞きながら
「ーーあ、え~っと…ちょ、ちょっと待っててー」と、
そう言葉を口にして、スマホを耳元にから離すと、
いかにもギャル、という感じの女に近付いていくー。
ここからでは顔が見えずー、
どう見ても後ろ姿は麻美には見えないし、
麻美がクレーンゲームにムキになって
”うざっ!”などと声を上げるとは思えないー。
しかしー、
今の声は、よく聞き覚えのある声ー。
親友だからこそ分かる、”麻美の声”のような気がして、
繭は不安そうに、その女の顔が見える位置にまで移動するー。
するとー、ギャルのようなメイクをしているために
一瞬、分からなかったもののー
やはり”麻美”のように見えたー。
「ーーあ、麻美ーー…?」
繭がそう言うと、ギャルのような風貌の女はー、
「は???あんた誰ー?」と、不機嫌そうに答えるー。
「ーーーだ、だ、誰ってー…?
あ、麻美だよねー?」
繭がそう言うとー、
ギャルのような女ーーー
”6人の犠牲者のうちの一人・萌愛”に乗っ取られてしまった
麻美は笑みを浮かべながら
「あ~~~~~なるほどねー」と、呟くー。
麻美(萌愛)はどうやら、
目の前にいる繭が、”憑依した麻美の知り合い”であることを
理解したようだったー。
がーー
「ーー人違いじゃない?あたしは萌愛ー。愛川 萌愛だけど?」と、
ニヤニヤしながら言うー。
「ーーーーーえ、えぇっ!?
な、なにしてるの?
あ、麻美じゃんーー?
どう見ても、麻美だよねー?」
繭がそう声を上げるー。
しかし、麻美(萌愛)は
「ーはぁ?あたしは萌愛だからー。」と、
それだけ言うと、派手なネイルを輝かせながら、
そのまま立ち去って行こうとするー。
”ーーす、杉本さんー?な、何かあったのかー?”
通話状態のまま待たされていた斗真が言うと、
繭は、思い出したかのようにスマホを手にすると
「そ、それがー…」と、そう言葉を口にするー。
「ーーあ、麻美ーーっぽい子がいるんだけどー
”麻美じゃない”って言い張っててー」
戸惑いながら、斗真にそう伝える繭ー。
”ーーえ……”
斗真は”やっぱり、麻美に憑依した別の誰かがー”と、
そう思いつつも、繭にはまだそのことを言っていないために
何て言っていいか分からずに困惑するー。
「ーーそ、それとー、なんていうかー
ギャルみたいな格好しててー…」
繭は心底戸惑いながら、麻美の背中を見つめるー。
”ーー…え、えぇ…?
ーーで、でも、間違いなく麻美なんだよなー?”
斗真のその言葉に、繭は目を細めて麻美の後ろ姿を見つめながら、
「ーー95%ぐらい、麻美だと思うー」と、そう答えると、
”わ、分かったー。今からそこに向かうからー
何とかー、足止めしておいてくれるかー!?”と、
斗真はそう言い放ったー
「あ、足止め!?」
繭は戸惑いながらそう答えると、
「わ、分かったーやってみるー」と、そう言葉を口にして
電話を一旦終えるー。
そしてー、麻美(萌愛)に背後から声をかけると、
「ーーー何?あたしにまだ何か用なの?」と、
不満そうに、麻美(萌愛)が振り返るー。
ギャル化しているものの、やっぱり麻美だと、繭は
確信しながら、麻美(萌愛)を見つめていると、
麻美(萌愛)は「っていうか、あんた、可愛いじゃんー」と、
笑みを浮かべるー
「えっー!?」
いきなりの麻美(萌愛)の言葉に戸惑う繭ー。
「ーーねぇねぇ、あたしと遊ばないー?」
麻美(萌愛)は、繭に顔を近づけると、
笑みを浮かべながら、その手を掴むー
「ーーー綺麗な手ー」
うっとりした表情の麻美(萌愛)の言葉に、
繭は「ち、ちょっと!?あ、麻美ー!?」と、
心底困惑した様子で
「どうしちゃったの!?」と、声を上げるー。
そうこうしているうちに、麻美(萌愛)は
突然、繭の胸を触ると、
「ーえへへへーいいじゃんー。
あたしの”新しい身体”より少し大きいかなー?」と、
ニヤニヤしながら言うー。
「ーちょ!?!?ちょ!?!?ちょっと!?!?!?!?!?」
繭が顔を真っ赤にしながら叫ぶー。
麻美(萌愛)は
「照れない照れないー。あたし、可愛い子は好きだよー?」
と、嬉しそうに笑いながら、
さらに繭の胸を揉み始めるー
「~~~~~~~~~!?!?!?」
繭は顔を真っ赤にしながらも
”このままでいれば、葉桐くんが来るまで時間を稼げるかなー?”と、
そんなことを思いつつ、
それに”耐える”のだったー。
やがてーーー
斗真がデパートに到着して、
麻美(萌愛)と繭を見つけると、
繭が髪を触られているのを見てー、
そして、すっかり”ギャル”に豹変した麻美(萌愛)を見て
驚きの表情を浮かべたー
「ーーー~~~あ、こ、これはー」
繭が恥ずかしそうに目を逸らすと、
斗真は「麻美ーー…だよなー?」と、そう言葉を口にするー。
がー、麻美(萌愛)は
「ーーーー何ーー?あたしに近寄らないでくれる?」と、
不満そうに声を上げるー。
「ーま、ま、待ってくれー。
ーー…き、君はー」
斗真がそう言うと、
「ーあたし?」と、麻美(萌愛)は腕組みをしながら
不満そうに言うー。
「あたしは、愛川 萌愛だけどー?」
麻美(萌愛)のそんな言葉に、
斗真は”犠牲者6人”の名前の中に
その名前があったことを思い出すー。
「ーーーーーー」
斗真が険しい表情を浮かべていると、
「ーあんた、”この子”の彼氏ー?」と、
麻美(萌愛)がそう言い放つー
「ーー!?!?…
えっ!?えっ!?」
横にいた繭が、麻美(萌愛)を見ながら
”何言ってるの???”と言わんばかりの表情を浮かべるー。
「ーー…ーー」
斗真は、”杉本さんにはもう説明しないとダメだなー”と思いつつ、
麻美(萌愛)を見つめると、
「ーーーーそうだー」と、そう答えるー。
すると、麻美(萌愛)は言ったー。
「ー悪いけど、この身体はもうあたしのものー
それと、あたし、男は嫌いだから、
今後、一切あたしに関わらないで」
と、麻美(萌愛)は敵意をむき出しにするー。
6人の犠牲者のうちの一人、
愛川 萌愛はー、
男子は嫌いの女子高生ー。
典型的なギャルのような格好と振る舞いをする子でー、
バス事故の際にも、派手な容姿で友達と共に移動中だったー。
「ーーー悪いけど、そうはいかないー」
斗真がそう言うと、麻美(萌愛)は「ウザッ」と、吐き捨てるー。
「ーーえ、え~~~っとーー
この状況は、なにーー?」
親友の繭は、もはや訳が分からず、頭に?を大量に浮かべているー。
麻美(萌愛)の目の前にやってきた斗真は、
どうにか、麻美を返してもらおうと思いつつ、
言葉を口にするー。
「ーーーー男の言うことなんか絶対聞かないから!」
麻美(萌愛)はさらに敵意をむき出しにすると、
「ーーこの身体はあんたの彼女かもしれないけど、
あたしはあんたの彼女じゃない!気安く話しかけんな!」と、
そう声を荒げるー。
「~~~~~~~」
親友の繭は、戸惑いながらそんな二人の様子を見つめるー。
「ーー君も、このままじゃ困るだろー
だから、一度、麻美と話をさせてくれー」
斗真は、粘り強く説得を続けるー。
しかし、麻美(萌愛)は
「あたしは可愛い子の言うことしか聞かないから!」と、
そう言い放ち、立ち去ろうとするー。
それを見ていた繭は、
状況が飲み込めないながらも、ふと、”あること”を思いついて
口を挟むー。
「ーーねぇーーーお願いー。”麻美”と話をさせてー」
とー。
意味は分からなかったものの、
繭は、斗真の口ぶりに合わせてそう言うと、
麻美(萌愛)は露骨に態度を変えたー。
「ーえっーー?
え~~~~~~?
どうしよっかなぁ~?」
ニヤニヤしながら、考え始める麻美(萌愛)ー
その様子を前に、繭は
「ーな、な、なんでもするから!お願い!」と、そう言うと、
麻美(萌愛)は「えっ!?何でも!?」
と、嬉しそうな表情を浮かべると、
「ーーえへへーそういうことならー、オッケー」と、
そう言葉を口にしてー、
突然、ビクッと震えて、麻美の身体がそのまま倒れ込みそうになったー
「おっとー」
斗真が慌てて、麻美を支えると、
意識を取り戻した麻美が周囲を見渡して、
斗真と繭に気付くー。
「ー斗真ー… え…?繭ー?」
麻美が不思議そうに言うと、
繭は「ーあ、麻美ー…??? だ、大丈夫ー?」と、
事情が分からないまま、ヤバそうな人を見る目つきで
麻美を見るー。
その直後ーー
麻美の姿が、ちょうど近くにあった鏡に反射して、
麻美は「な、な、な、なにこれ!?!?!?」と、
ギャルになってしまった自分を見て戸惑うー。
「ーーーそ、そのー…
麻美の中にいる一人がーー」
斗真が事情を説明すると、麻美は顔を真っ赤にして
恥ずかしさのあまり、パニック気味になってしまうー
そんな様子を見かねたのかーー
”麻美”に憑依している6人の一人、
男子高校生の哲哉が、麻美の身体を支配して、
表に出て来たー
「おっとっとー深山さんー、慌てて階段駆け下りて
転がり落ちそうな感じだったからー
ここは俺がー」
とー、そう言葉を口にする麻美(哲也)ー
「ーー~~~…」
斗真は、戸惑いながら
”もはや理解不能”な状況を前に、口をぽかんと開けている
麻美の親友・繭を見つめるー。
そこにーーー
「うぉっ!?!?!?えっ!?!?!?」
斗真・繭と共に麻美を探していた斗真の親友・和人も合流して、
ギャル化した麻美を前に声を上げるー。
そんな反応を前にしても
お構いなしに麻美(哲也)は笑うと、
「ーーへへっー
賑やかだなー
ってか、ギャルの格好も似合うじゃんー」
と、呟きながら
ギャル化した麻美を鏡のほうを向くと、
「やっぱ女子ってすごいよなぁー」と、
感心した様子でそれを見つめるー
「どどどどどど、どうなってるんだー!?」
困惑の表情を浮かべる和人ー。
斗真は、和人と繭を見つめると、
「実はーーーー」と、これまでのことを
素直に打ち明け始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーう、嘘ーー…
え……」
全てを聞いた麻美の親友・繭は、
信じられない、という様子で
そう言葉を口にするー。
「マジかよー…」
斗真の親友・和人もそう言葉を口にすると、
麻美(哲也)のほうを見つめるー
「ーじ、じゃあ、み、深山さんには
そのバスの事故で死んだ6人が憑依している状態で、
今、表に出て来てるのはそのうちの一人ってことかー?」
和人がそう言うと、
斗真は「ーーま、まぁー…そういうことだなー」と、頷くー。
「ーーマジかー…
ーーえ…?で、ーーて、哲也って言ったっけー?
じゃあ、君は、男だけど女の身体になってることかー?」
和人がそう言うと、
麻美(哲也)は「へへー。そうそうー。」と、
腕組みをしながら言うー。
「ーす、すげぇー…
ーお、女の身体になるってどんな気分なんだー?」
和人が戸惑いながらも興味津々な様子でそう言うと、
麻美(哲也)は「ーははー、あんたの方が話が分かりそうだなー」と、
笑いながら、
「ーまず、やっぱ胸だよなぁ~…最初、慣れるまではさー」と、
嬉しそうに語り始めるー。
「おいおいおいおいー、あんまり変な話するなよー?」
斗真が釘を刺すと、和人は「分かってるよー」と、苦笑いしながら、
和人を見返すー。
斗真は、和人や繭、そして麻美(哲也)と話をしながらー、
心の中で”この先、どうすればいいんだー?”と、
改めて不安を覚えるー。
しっかり者のOL・涼子、男子高校生の哲也ー、
そしてギャルの萌愛ー。
さらにー、”まだ意識を取り戻していない”3人ー。
まだまだこの先、大変なことになりそうだと、
そんな風に思いつつも、斗真は、
麻美のことを絶対に守ると、
心の中でそう決意するのだったー。
④へ続く
④~相談~
★あらすじ★
バス事故に巻き込まれて、その犠牲者6人の魂を
宿す状態になってしまった彼女の麻美ー。
麻美に憑依している6人のうちの一人、ギャルの萌愛に
支配されてしまった麻美は退院の手続きの際に
病院から抜け出して失踪してしまうもー、
斗真たちが捜索を続けた結果、
なんとか、麻美(萌愛)を発見することに成功するー。
ひとまず、その事態は解決したものの、
”6人を宿す麻美”との生活は始まったばかりだったー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー~~~~~~~…」
髪の色を戻して、ギャルなメイクも落とした
麻美は恥ずかしそうにしながら、
斗真のほうを見つめるー
「ーーーーーー…あ、あのー……
さっきまでのわたしのことはー…忘れて、ねー?」
麻美が顔を真っ赤にしながら言うー。
斗真は「ーも、もちろんー」と、戸惑いながら頷くー。
あのあとー、
お互いの親友である和人・繭の二人と別れて、
麻美と斗真は麻美の家に引き上げて来たー。
麻美本人の願いもあって、
斗真と麻美は、普段は
お互いに一人暮らしで別々の家で暮らしているものの、
しばらく麻美の家で過ごしつつ、
麻美をサポートしていくことになっていたー。
もちろんー、
”他の6人”が変なことをしないように見張る、という意味合いもあるー。
「ーーーーーで、でも、
わたしってあんな雰囲気にもなれるんだねー」
麻美本人も、少しドキドキしながらそう言葉を口にすると、
斗真は「ま、まぁー……そ、そうだなー。俺も少しびっくりしたよー」と、
苦笑いするー。
麻美は、自分で”ギャル”みたいな格好をしたことがないし、
髪もあんな派手な色に染めたことはないー。
斗真自身も、大好きな彼女のあんな姿を見るのは初めてで、
お互いに別の意味でドキドキしていたー。
「ーーーーそういえば、あのギャルの子、もう大丈夫なのかー?
またー…麻美の身体を乗っ取ったりとかはー?」
斗真が心配そうに言うと、
麻美は「ーー繭のおかげで、ひとまずはー」と、頷くー。
麻美に憑依している6人の一人・萌愛は
”可愛い子”が好きなようで、繭にお願いされると断れないようだー。
先程、”哲也”を通して、”萌愛”に、
”麻美の身体で変なことしないって約束してー…お願い”と、
繭が伝えたところ、”萌愛”は、”可愛い子のお願いは断れないな~~”と、
麻美の身体で変な事はしないとひとまず約束してくれたー。
「ーーーそっかーそれならー」
斗真が少し安心した様子でそう言うと、
突然、麻美の表情が少しきつくなって、
麻美は腕を組むと、「あたし、あんたの言う事聞いたんじゃないから」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーき…君はー…」
斗真が戸惑うと、
麻美(萌愛)は「ー萌愛よー。」と不機嫌そうに呟くー
「ホントは、男と一緒にいるなんてマジで最悪なんだけどー
でもーーーまぁ、ーーえへへへー”繭ちゃん”に
お願いされちゃったらー…えへへへへへ♡ 仕方ないからー」
麻美(萌愛)は、麻美の親友・繭のことを思い出しながら
ニヤニヤすると、
苦笑いする斗真の方を見て、
「キモッー」と、不満そうに呟くー。
「ーってか、せっかく髪、染めたのにー、
元に戻すなんてー」
麻美(萌愛)はそれだけ言うと、
「え???あ~~~…うんー仕方ないなぁ」と、
斗真ではなく”中”にいる”麻美本人”の意識と話をしながら、
目を閉じたー。
目を開くとー”いつもの麻美”の雰囲気に戻るー。
麻美は苦笑いしながら
「ーなんかー、ごめんねー
わたしにもどういう状況なんだかー」と、
コロコロと人格が変わってるかのような状況に
戸惑いの表情を浮かべるー。
どうやら、”中”から、”麻美”が、萌愛に
”わたしに身体を返して”と、お願いして
麻美が表に出て来た様子だったー。
「ーー”表に出てるやつ”と会話できるのかー?」
斗真がそう言うと、
麻美は「う~ん…表に出ている人次第みたいだけどー
今は意識があったからー」と、そう呟くー。
条件は分からないものの、
”中”にいる時は意識が飛んでいる時と、
そうでないときがあるようだー。
その時、表に出ている人物が
”身体を独占しようとしているかどうか”ー、
そのあたりが関係しているのかもしれないー。
「ーーあ、そういえばー
”涼子さん”が、斗真と話したいってー」
麻美がそう呟くー。
”涼子”とは、麻美に憑依している6人の犠牲者の一人で、
最初に目を覚ましたしっかり者のOLだー。
「ーーあ~…西園寺さんー?
ーーわかったー」
斗真がそう言うと、麻美は「またあとでねー」と、
少し寂しそうに苦笑いして目を閉じるー。
すると、麻美はそれほど表面上は変わらない雰囲気で
目を開いて
「すみませんー…麻美ちゃんの身体を借りてしまってー」と、
麻美(涼子)は申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
「ーーいえーそれで話というのは?」
斗真が言うと、麻美(涼子)は「今後についてですー」と、呟くー。
「ーー今後ー」
斗真は少しだけ表情を曇らせるー。
麻美に憑依した”6人”は、バス事故で死亡した人々だー。
つまり、”帰る身体”はもうない状態ー。
この先、どうすればいいのか、斗真自身も不安だったし、
困惑していたー。
「ーー葉桐さんも知っているとおりー、
わたしとー、残りの5人の身体は、あの事故で死んでしまいましたー」
麻美(涼子)がそう言葉を口にすると、
斗真は何て言っていいか分からず、悲しそうな表情を浮かべるー。
「ーーそんな顔しないでくださいー。
葉桐さんが悪いわけじゃないですからー」
麻美(涼子)は、気まずそうにする斗真に気遣って
そう言葉を口にすると、
斗真は「なんか、すみませんー。気を遣ったことも言えなくてー」と、
苦笑いするー。
「ーー…ーーいえー」
麻美(涼子)は穏やかに笑うと、話を戻すー。
「ーなので、わたしと、残りの5人には”帰る身体”はありませんー」
麻美(涼子)のその言葉に、斗真は表情を曇らせるー。
確か、この西園寺 涼子は、犠牲者の名前の名簿を見た際に
24歳だと書かれていたー。
斗真たちより年上であるものの、まだまだ若いし、これからの年齢だー。
”麻美の身体から出ていけー”とはーーー
ーーーー…言えなかったー。
身体を失った6人からすれば、それは”死ね”と、同じ意味なのだからー。
けれどー、
だからと言って、麻美に”6人と仲良く生きろ”とも言えないー。
麻美には麻美の人生があるし、自分も含めて7重人格のような状態に
なってしまう、”6人に憑依された状態”のままにしておくわけにはいかないー。
「ーーーー」
斗真は沈黙するー。
涼子たちに”出て行って下さい”とは言えないー。
けれど、麻美をこのままにしておくこともできないー。
どうすればいいのか、全く分からなかったー。
完全に”悪人”なら、”出ていけ”と言えたかもしれないー。
でも、涼子はとてもいい人だし、
男子高校生の哲也も、生意気なところはあるけど悪い子じゃないー。
ギャルの萌愛もー…悪人、ということではないだろうー。
だからこそー、”出てけ”とは言えなかったー。
「ーーーーわたしはーー
”麻美ちゃんに”身体を返さなくちゃいけないって、
そう思ってますー」
沈黙を破って、麻美(涼子)が言葉を口にするー。
”ーーり、涼子さんーでも、それじゃー”
中から”麻美の意識”が、麻美(涼子)に語り掛けるー。
涼子自身、”身体の支配”を緩めているからか、
麻美本人の意識がある状態で、内側から会話が可能だったー
「ーーーいいのー
だって、この身体は麻美ちゃんのでしょ?」
麻美(涼子)がそう呟くー
「ーえ?」
”内側”から聞えている麻美本人の声は、斗真には聞こえないー。
そのため、目の前で急に、麻美(涼子)が、
誰かに話しかけるような口調で喋ったことに少し驚くー
「ーあ、ごめんなさいー。麻美ちゃんに心配されちゃってー」
苦笑いする麻美(涼子)ー。
「ーー正直に言えば、わたしも死にたくはありませんー
でも、わたしはもう、”死んだ”んですー。
ですからー、この身体は方法さえわかれば
麻美ちゃんにお返ししたいと、そう思ってますー」
麻美(涼子)がそう言い放つー。
斗真は困惑した表情を浮かべてから頷くとー、
「ーーでもー、まだ”その方法”も分かりませんからー」と、
そう言葉を口にするー。
そもそも、”涼子”が、麻美から出ていくつもりでも、
麻美の身体から”出る”方法自体が分からないのだー。
「ーーはいー。なので、それまではわたしも、
麻美ちゃんの身体をお借りすることになりますけどー、
わたしの気持ちを伝えておきたくてー」
麻美(涼子)はそう言うと、穏やかに笑うー。
「ーーーー」
斗真は悲しそうな表情を浮かべてから
「西園寺さんの気持ちは分かりましたー。
麻美のこと、心配してくれてありがとうございますー」と、
そう言葉を口にすると、
「ただー、俺は西園寺さんたちにとっても”いい方法”がないかどうかー、
それも考えてみますー」と、そう続けたー。
”まだ”時間はあるー。
麻美を完全に元に戻す方法を探しつつー、
日常を送る間に、”何か全員が納得できるような方法”があればー、
それを見つけたいー。
「ーーー!」
麻美(涼子)が、突然ハッとしたような表情を浮かべるー。
「ど、どうかしましたかー?」
斗真が言うと、麻美(涼子)はー、
「”気配”が増えましたー」と呟くー。
「ーそ、それは、どういうー?」
不安そうな表情を浮かべる斗真ー。
すると、麻美(涼子)は言ったー。
「ー意識が戻っていなかった残り3人のうちの一人が
意識を取り戻したんだと思いますー
ーー近いうちに”表”に出て来るかもしれませんー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夜ー。
「ーーじゃあー、おやすみーー」
麻美がそう言葉を口にするー。
「ーあぁ、おやすみー
”何かあっても”俺が止めるから、安心してー」
斗真が穏やかに笑いながら言うと、
麻美は「ーーーうんーー迷惑かけてごめんねー」と、
申し訳なさそうに呟くー。
「全然ー。麻美のためなら、何でもするさー」
斗真がそう言うと、そのまま麻美は目を閉じて、
眠りについたー
「ーーーーー」
斗真は”部屋の出口”の扉に寄りかかって、
その場に座るー。
暫く麻美の様子を確認してから、
そこで寝るつもりだー。
この部屋の出口は、ここと窓しかないー。
しかし、窓の側には机もあって、
強引に外に出ようとすればかなり音がするし、
扉から外に出ようとすれば、
仮に斗真が寝ていても、斗真自身をどかす必要があるため、
斗真を起こさずに外に出ることは不可能だー。
「ーーーーー」
麻美が穏やかな寝息を立て始めるー。
「ーーー……ーーー」
斗真は”この先、どうすればいい?”と、頭の中で
必死に考えるー。
まだ、答えは見つからないー。
バスの事故の犠牲者6人の魂を、どうすればいいのかー。
その答えが、見つからないー。
それにー、残りの”3人”ー。
”倉林 健司(38)”
”中島 祐樹(52)”
”冬森 京香(41)”
バス事故犠牲者の6人が麻美に憑依しているのであれば、
この3人が、まだ”麻美の中で意識を取り戻していない”状態だー。
OLの涼子によれば、このうちの一人が意識を取り戻したらしいものの、
この中に”厄介な人間”がいたらー、
また、面倒なことになるー
「ーーーーーー」
斗真は、麻美のほうを今一度確認すると、
目を閉じたフリをして、麻美の様子をそれとなく確認したー。
涼子の言う通りなら、”意識を取り戻した者”が、
斗真が寝るのを待っているかもしれないー。
そう思って、”寝たフリ”をしたー。
するとー、しばらくしてから、麻美が目を開いて
突然起き上がったー。
”ーーーーー!”
斗真は、寝たふりを続けながら警戒するー。
麻美本人かー、
涼子かー、哲也かー、あるいはギャルの萌愛かー。
それともー、”まだ見ぬ三人の誰か”かー。
そう思いつつ、様子を探っていると、
突然、麻美が自分の胸を両手で揉み始めたー
”ーーー!?!?”
斗真が思わず驚くー。
が、斗真が寝ていると思っているのか、麻美の身体を
触ると、「すっげぇ…♡」と、小声で呟くー。
「ーー僕が、女になってるー
へへー…すっげぇ♡ すげぇぞ♡」
そう呟きながら、自分の手のニオイを嗅いで、
髪のニオイを嗅ぐ麻美ー
さらには、麻美は自分の指を舐めると、
「ーーひひっ♡」と、奇妙な声を出して笑うー
”ーーー園田くんじゃないなー…”
斗真は、麻美に憑依しているうちの一人、
男子高校生の哲也ではないと判断すると、
”倉林 健司”か、”中島 祐樹”のどちらかだと
心の中で呟くー。
「ーへへへっ んっ♡ あっ♡」
麻美はアソコのあたりを手で触ると、
気持ち良さそうに声を上げるー。
”もう、これ以上は見てられないー”
そう思った斗真は「おいっ!何をしてる!」と、
目を開いて声を上げるー。
「ーー!」
麻美はビクッとした様子で、
「ーへ…へへへー僕が僕の胸を揉んだって自由だろ?」と、
開き直った態度を見せるー
麻美の顔は下品に歪み、顔を歪めながら
下心を丸出しにしているー。
麻美にこんな顔ができるのかー、と思ってしまうぐらいに、
歪んだ下品な表情ー。
「ーーーへへっ♡ あぁ~~気持ちイイー僕には刺激が
強すぎるぜー えへへへへ♡」
なおも胸を揉む麻美に対して、「おい!やめろって!」と、
斗真はそれを止めようと、麻美の腕を掴むー
がー
「ーねぇ、痛いよ斗真?」
麻美が弱々しい声でそう言葉を口にするー
反射的に斗真が手を離すと、
「へへへへへ~~!なんだよその反応!」と、
麻美はゲラゲラ笑いながら、
「そういえばこの女ー、メイちゃんに似てるなぁーえへへへ」
と、鏡を見つめながら「メイド服着ちゃおっかなぁーぐふふ」と、
そう言葉を口にするー。
「おいっ!いい加減にしろ!!」
斗真が声を上げると、麻美は「メイちゃんのコスプレさせてくれよー」と、
ニヤニヤしながら言うー。
「ーふ、ふざけるな!それは麻美の身体だぞ!
それにメイちゃんって誰だよ!」
斗真が騒ぐと、麻美は「おいおい、知らねぇのかよー」と、
そう言うと、
「腹黒メイドは全てを欺く、のヒロインだよー」
と、アニメのことを語り始めるー。
どうやら、”メイちゃん”とは、アニメのキャラクターのことのようだー。
「ーーメイちゃんはさー、可愛いけど腹黒でさー
裏ですっげぇヤバいこと考えてるんだよー
あの顔で、だぞー?
でもさー、決めるところではちゃんと決めたり、人助けしてさー
そのギャップがマジでヤバいっていうかー
あー、それでさー、たまに髪型が違う回があってさー
第3話と、第6話の後半ー、
あと、第4話の回想シーンの途中な!
そこでーー」
麻美が物凄い勢いでペラペラと話し始めるー
興奮した様子でアニメのことを語る麻美の姿に、
斗真は圧倒されながらー
「お、お前は誰だー」と、そう確認するー
すると、麻美はニヤニヤしながら
「僕?僕は倉林ー 倉林健司だよー」と、再び胸を揉みながら笑うー。
”倉林 健司”ー
バス事故犠牲者6人の一人で、確か38歳だとニュースでは
表示されていたー。
「ーへへーまさかこんな可愛い娘になれちゃうなんてー
死んでよかったぜー」
麻美(健司)はニヤニヤしながらそう呟くー
麻美に憑依してしまった6人のうちの4人目・倉林 健司ー。
彼は、38歳独身のオタク男ー
そんな彼にとって、麻美の身体に憑依できたこの状況はー、
まさに最高の出来事だったー
「ーへへー、メイだよ♡ な~んてな」
好きなアニメキャラの名前を名乗って笑う麻美(健司)ー
「~~~~~~~」
”くそっ…厄介なのが出て来やがったー”
斗真は呆然としながら、麻美(健司)を見つめると、
そんな風に思いながら、表情を曇らせるのだったー
⑤へ続く
⑤~欲望~
★あらすじ★
退院後の混乱もなんとか解決して、
しばらく、麻美の面倒を見ることにした斗真ー。
しかし、その日の夜、麻美の中に宿っている
”6人の犠牲者”のうちの、
まだ意識が戻っていなかった一人が、
意識を取り戻したー。
麻美は再び豹変して、
斗真は、豹変した麻美に振り回されることにー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お、おいっ!やめろ!!」
斗真が声を上げるー。
しかし、そんな斗真を無視するかのように、
麻美(健司)は鏡を見つめながら
「すっげぇー…僕がー、僕がこんなに可愛い娘にー」と、
嬉しそうに言葉を口にしているー。
麻美に憑依した6人の犠牲者のうちの一人、
38歳独身のオタク男ー、
倉林 健司が目を覚まして、麻美の身体を乗っ取ってしまったのだー。
「ーーーへへへへー
ーーへへ…わ、わたしーー へへへー
わたしー、倉林さんのことが、ずっとずっと大好きだったの♡」
興奮した様子で甘い声を出して、
下品に笑う麻美(健司)ー。
麻美に”僕のことが好き”と言わせて、麻美に憑依している
健司は興奮しているようだー
「ーおいっ!!!人の身体にそんなこと言わせて恥ずかしくないのかよ!」
斗真がそう言いながら、麻美の腕を掴むと、
麻美(健司)は「ーー”あんたのこと”なんか大っ嫌いー」と、
強い口調でそう言ってみせたー。
「ーーー!!!!」
斗真はー、”麻美の意思ではない”と理解はしつつも、
麻美の顔、声で、そう言われてしまったことに
一瞬、動揺してしまうー。
「ーへへっー
僕ーあぁ、いや、違うー、わたし、
これからは”倉林くん”と付き合うことにしたの♡」
麻美にそう言わせて、嬉しそうに笑う健司ー。
「ーーーっーーお前ー
いい加減にしろよ?」
斗真が麻美(健司)の腕を掴む手に力を込めていくー
がー、麻美(健司)は「いた~~~い…」と、
悲しそうに呟くと、斗真はハッとして
腕を話してしまうー。
「ーへへっ!おらっ!」
麻美(健司)が、斗真の急所を膝で蹴り飛ばしてきて、
斗真は思わず変な声を出して飛びあがってしまうー。
「へっへへへへへ!痛ぇよなぁ?
まぁ、”今の僕”には分からない痛みだけどさー
げへへへー」
麻美(健司)はそれだけ言うと、
鏡のほうを見て「メイだよ♡」と、
麻美を乗っ取っている健司が
大好きなアニメキャラの名前を勝手に名乗って、
そのアニメキャラのポーズのようなものを繰り返しているー。
「ー麻美の身体で好き勝手するな!!」
斗真がそう叫ぶと、麻美(健司)は
「ーーこんな身体が手に入ったんだから、好き放題するだろー」と、
ニヤニヤしながら言うー。
「えへへへへーそうかぁー
この身体なら、女子トイレも入れるしー
えへへー声優さんのイベントにも警戒されずに近づけるかなぁー
げへへへー
それにーメイちゃんのコスプレもできるかもー」
麻美(健司)が見たこともないような下品な笑みを浮かべるー。
麻美がこんな顔できるのかと思ってしまうぐらいに
下品な笑みー。
「ーーこー、これ以上、変な事したらー…!」
斗真が怒りの形相を浮かべながらスマホを手にするー。
しかしーーー
”その先の言葉”が浮かばなかったー。
それを見透かしたかのように、
「へへー”変な事したら”どうするんだ?」
と、麻美(健司)は笑みを浮かべるー。
「ー警察に通報するのか?
通報して、どうするんだー?
”彼女の中に~、ヤベェおっさんがいるから助けて下さい~!!”
とでも、言うのかー?」
麻美(健司)の邪悪な笑みー。
斗真は、反射的に警察に通報しようとしたものの、
”通報してもどうにもならない”と悟り、悔しそうな表情を浮かべるー。
「ーーーーーぐ………
お、お前が誰がだかは分かってるんだー
お前の知り合いにーー人の身体で好き勝手してるってことをー
暴露するぞー…!」
斗真は、警察がダメならー、と、そんな言葉を口にするー。
しかしーー
「ーーーへへへへへー
別にいいけどー?
親ももう死んでるし、友達なんていねぇし、恋人もいねぇからー
無駄だけどな!!
へへへっ!
僕はほらー、その”無敵の人”ってやつだよー へへ!」
麻美(健司)はそれだけ言うと、
ボリボリと太腿を掻きながら、
「ーさ~て、ボディチェックでもするかなー」と、
そんなことを口にし始めるー。
「ーーぐ… くそっー…
何とかしないとー」
斗真はそう思いつつ、麻美を止めようと
再び麻美(健司)に近付くも、
「ーー邪魔すんじゃねぇよ」と、腕に振り払われてしまうー。
乗っ取られていても、”身体”は麻美のものー
これでは、反撃することもできないー。
そう思って、険しい表情を浮かべていると、
麻美(健司)が突然「ぐー…」と、表情を歪めて頭を押さえ始めたー
「ーーぐ……寝てればよかったものをー
ぼ、僕の邪魔をするなー」
麻美(健司)がそう言葉を口にすると、
「ーーあんたキモッーいったい何なの?」と、
麻美が嫌悪感を露わにしてそう呟くー。
「ーー!」
斗真が少し驚いた様子で麻美を見るー。
麻美は決して”独り言”を喋っているわけではないー。
麻美の身体に憑依している別の犠牲者ー、ギャルの萌愛が
麻美の身体の主導権をオタク男の健司と奪い合い始めたー。
そしてーーー
「ーーは~~~最悪っ」
麻美の表情から下品な笑みが消えると、
嫌悪感を露わにして、
「ーー今はあたしの身体でもあるんだから、
勝手に触らないで!マジでキモイ!」と、
奥に追いやった健司に対してそう言葉を吐き捨てたー
「ーーーぁ…えっとー、君はー」
斗真は戸惑いながら、麻美(萌愛)のほうを見つめると、
麻美(萌愛)は、少し乱れた服を整えながら
「ーーなにー?あたしに何か文句あんのー?」と、
不満そうに言葉を口にするー。
「ーい、いやー、そのー…
助けてくれてありがとうー」
斗真が感謝の言葉を口にすると、
麻美(萌愛)はため息を吐き出してから、
「あたし、男は嫌いって言ったでしょ?
あんたのためなんかじゃないー」と、
麻美(萌愛)は敵意を露わにするー。
オタク男が奥に引っ込んだと思ったら
今度はこれだー
同じ麻美なのに、”誰が表に出てきているか”で、
大きく状況が変わってしまうー。
「ーってかさー、ここ”あたしの家”だよねー?
女の家にあがるなんて、図々しくない?」
麻美(萌愛)はそれだけ言うと、
「ーーいや…ーー俺と麻美はよく行き来してるしー…
それに、今は状況が状況だからー」と、
斗真はそう言い返すー。
「ーーあたしは、あんたの彼女じゃないー」
麻美(萌愛)は前にも言ったことを怒りの形相で呟くー。
「ーこの身体は彼女でも、あたしとあんたは他人ー
家にいられると、キモイんだけどー!」
麻美(萌愛)が攻撃的に言葉を口にするー。
「ーーーー君とは他人でも、麻美とは恋人同士なんだー」
斗真は負けじとそう言い返すー。
「ーそれにー、さっきのやつがまた麻美の身体で変なことを
しようとしたら、止めなきゃいけないし
誰かが見張ってないといけないー」
斗真がそう言うと、麻美(萌愛)は
「ーでも、さっきあんた、役に立たなかったじゃんー。
あたしがそのまま寝てたらどうするつもりだったの?」と、
呆れ顔で言うー。
「ーそれはー」
斗真は、表情を歪めるー。
情けない話ではあるものの、
”バス事故6人の犠牲者に憑依された麻美”と、
どう向き合っていけばいいのか、まだハッキリと
自分でも分かっていない部分があるのも事実だー。
「ーで、でも、君だって
また、さっきの男に乗っ取られたりする可能性は
あるんじゃないのかー?」
斗真がそう言うと、麻美(萌愛)は不満そうにしながら
「それはー…そうだけどー」と、呟くー。
萌愛をはじめー、OLの涼子、男子高校生の哲也、
オタク男の健司ー、それに麻美自身もまだ、
”身体の主導権の握り方”だったり、
表に出ていない状況で、どういう状態だと意識があって、
どういう状態だと意識がないのか、
そのあたりの具体的な条件は理解することができていないー。
「ーーもし、君がまた乗っ取られたら、
君ひとりだったら、どうなるか分からないだろー?」
斗真がそう言うと、
麻美(萌愛)は不満そうにしながらー、
「ーあんた、ウザッー」と、そう言葉を吐き捨てて、
そのまま、ふっ、と目を閉じるー。
そしてー
「ーーって、ーーあ???」
麻美の様子が変わると、
萌愛から強制的に”表”に出て来る役割を押し付けられた
男子高校生の哲也が、麻美の身体で少しだけ笑うと、
「ーーよ!今どんな状況なんだー?」と、
斗真のほうを見つめながら言うー。
斗真は少し疲れた様子で
「ー麻美の様子がコロコロ変わると、頭がおかしくなりそうだー」と、
冗談めいた口調を交えて言うー。
「ははー、ま~、気持ちはわかるかもなー
俺も彼女の茉莉が、この人みたいになったら
ビビるだろうしー」
麻美(哲也)はそう言うと、
「ーー揉んでいい?」と、胸を指差しながら言うー。
「ーだ~め~だ!」
斗真が言うと、麻美(哲也)は「ちぇっ」と言いながらも、
それに従うー。
オタク男の健司とは違って、”話が通じる”相手であるのは助かるー。
斗真が、オタク男の健司に麻美が乗っ取られていたことを言うと、
「ーやっぱ、俺も揉んでいい?」と、麻美(哲也)が
笑いながら確認するー。
斗真が不満そうに表情を歪めると、
麻美(哲也)は「そんな顔すんなって 冗談だよ冗談ー」と、
斗真をポンポン叩きながら言ったー。
「ーーま~…でも、俺みたいに分別がある人間ならともかく、
分別のないおっさんがこの中にいるってのはー
ーーあんま、いい感じじゃないよなー」
麻美(哲也)のその言葉に、
斗真は表情を曇らせながら、麻美(哲也)のほうを見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーまた迷惑かけてごめんね…!
本当に、ごめんー!」
翌朝ー、麻美が目を覚ますと、
麻美は斗真に対して、昨日の夜のことを謝罪したー。
”内側”でOLの涼子や男子高校生の哲也らと話して
昨晩の状況を知ったらしく、
心底申し訳なさそうにそんな言葉を口にした麻美ー。
「いやー、いいよー。
一番大変なのは麻美だしー
それにー、”麻美じゃない麻美”がしたことで
俺が麻美に怒ったりはしないからさー」
斗真が笑いながら言うと、
麻美はお礼を口にした上で、
「でも、やっぱり斗真だって大変だと思うし~」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーしかし、これからどうすりゃいいんだろうなー」
斗真は不安そうに呟くと、
麻美も不安そうな表情を浮かべるー。
「ーあぁ、いや、ごめんー
不安にするつもりはないんだけどー」
斗真はそう前置きした上で、
「ーーただ、このままの状況じゃいけないだろうしー、
こんな経験した人、そうはいないだろうしー、
麻美のためにもどうすればいいのかなーってさー」
と、そう言葉を口にするー。
「ーーうんー。そうだよねー…
わたしもまだ、どうすればいいのかよく分かってないけどー…
ーーーでも、わたしの中にいる人たちも、
ーこの前まで普通に生活していたんだろうしー…」
優しい性格の麻美は、自分に憑依している6人の犠牲者のことも
気遣うー。
病院で診察ー…
と、いうことも当然頭には浮かぶものの、
とは言っても、信じてもらうのは難しそうだし、
仮に信じて貰ったとしても、色々ややこしいことになるー。
そもそも、事故直後入院していた際に、
頭を少し打ったこともあってか、脳の検査もしているものの
”異常が見つかっていない”ため、
”6人の犠牲者に憑依されている”というこの状況は、
少なくとも”検査”などでは、異常として出て来ないということー。
そうなると、”わたしの中に犠牲になった6人が!”と、
麻美が訴えても”頭がおかしくなった”と思われるだけかもしれないー。
「ーーお兄さんには伝えるかー?」
斗真が、麻美の兄・慎吾の名を口に出すー。
麻美の兄・慎吾は、バス事故が起きた当時、
別件の骨折で入院していて、
麻美はそのお見舞いに向かう最中だったー。
現在は、兄の慎吾は退院しているものの
まだ事情を説明できていないー。
「ーお兄ちゃんは、心配性だから
こんなこと伝えたら、おかしくなっちゃうかもー」
冗談めいた口調で苦笑いする麻美ー。
「ーーははー…そっかー…
まぁ、麻美がそう言うならー」
斗真がそう言うと、麻美は
「とりあえずー…”みんな”が目を覚ますまで待ってみてもいいー?」と、
申し訳なさそうに言葉を口にするー。
「ーー…みんな?」
斗真は一瞬戸惑ったものの、
「あ~…麻美の中にいる人たちのことかー」と、
答えを聞く前に納得するー
麻美に憑依しているバス事故の犠牲者は6人ー。
既に意識を取り戻した
OLの涼子、男子高校生の哲也、ギャルの萌愛、オタクの健司の4人以外に、
”あと二人”意識を取り戻していない人物が憑依しているー。
OLの涼子や、麻美本人らによれば、
”意識自体の存在は感じる”とのことで、
”いる”のは、確かなようだー。
「わたしだけで、勝手に決めちゃうのはよくないと思うしー…
みんなで話し合って決めたいからー
ーーー斗真には迷惑かけちゃって本当にごめんだけどー…」
麻美がそう言い放つと、
斗真は少し笑いながら、
「ー憑依されてるって言うのに、やっぱり麻美は優しいなー」と、
穏やかに言葉を口にするー。
「ーーいいさー。どんなに振り回されても、俺は麻美に付き合うし、
麻美の身体で他のやつが変な事しようとしたら
絶対止めるー。
それに、麻美の中には西園寺さんとか、園田くんもいるしなー」
斗真は、しっかり者のOL・涼子や、
生意気だけど、まぁ話は通じる男子高校生の哲也らも
力を貸してくれるであろうことを期待して、そう呟くー。
「ーーー本当にありがとうー
わたしも、頑張るー」
麻美はそう言葉を口にすると、穏やかに笑うー。
”残り二人”ー
バス事故の犠牲者の名簿を確認した限りでは、
麻美に憑依している6人のうちの、残り2人は、
中島 祐樹(52)と、
冬森 京香(41)の二人だー。
今まで目を覚ました面々よりも、
年配の人たちだし、
”恐らく話が通じる相手”だと、期待してー、
いやー、そう祈りながら
斗真は”麻美のことは俺が守るー”と、
改めてそう決意するのだったー
⑥へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
お試しページではここまでになります~!
(ごめんなさいデス…!!)
憑依の長編はこれで3回目ですが、
今までとは違う感じのお話にしてみました~!
せっかく書くなら、
新しい雰囲気で書きたいですからネ~!
お読み下さりありがとうございました~~!

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