<入れ替わり>入れ替わ離婚②~亀裂~

夫婦が同意の上で”入れ替わる”ことができる
制度がスタートした世界…。

けれど、その制度による混乱は
さらに深まっていくー。

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千夏は、大学時代に出会った夫・修人と共に、
休日の今日、買い物をしていたー。

親友の由紀とその夫の浩太と同じころに結婚した二人は、
結婚2年を迎えていたものの、一度も入れ替わったことはなかったー。

と、言うのも、修人は奥手な性格で、
もしも千夏と入れ替わったりでもしたら
確実に戸惑うことは、安易に予想できたからだー。

そんな、奥手で優しいところが、
千夏が修人を好きになったきっかけではあったものの、
”入れ替わり”はこの先もきっと、一度も経験すること
ないんだろうなぁ、と、千夏はそんな風にも思っていたー。

「ーーーどうかしたー?」
少し思い悩んだ様子の千夏に気付いた夫・修人が
心配そうに言葉を口にすると、
千夏は「あ、ううんー。何でもないー」と、
少しだけ笑いながら、考えるのをやめるー。

”今のまま”で十分に幸せー。

千夏の”周りの友人”で結婚したことがある子はー、
多くが”一度は”入れ替わりを経験したことがあるー

そんな中、自分だけが入れ替わりを一度も
経験したことがないー、と、いうのは
少し複雑だと言うのが正直なところではあったものの、
それでも、修人のことを思うと”入れ替わりたい”などと
言う事はできなかったー。

「ーーーふざけんな!!俺も入れ替わらせろよ!クソッ!」

ふと、そんな声が聞こえたー。

二人が買い物を終えて、市役所の前を通った時だったー。
市役所の職員と、男が揉めているー

「ー結婚なんか俺にできるわけねぇだろ!!
 でも、俺は入れ替わりたいんだよ!!
 どうにかしろ!」
そう叫ぶのは、40代ぐらいだろうかー。
中年の小太りの男ー。

”入れ替わり制度”は、結婚した夫婦がお互いに同意して
手続きをした上で行うことができる”入れ替わり”ー

裏を返せば
”結婚相手がいなければ、入れ替わることはできない”
ということだー。

「くそっ!俺は美少女になりたいんだよ!
 いいから入れ替わらせろよ!おいっ!」
声を上げる男ー。

そんな”クレーマー”を見て、
千夏は「ああいう人の対応ー、大変そうだよねー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーくっそ~!!!俺みたいな負け組は
 永遠に入れ替われないなんて不公平だぞ!!
 おいっ!」

なおもその男のクレームは続くー。

が、そんな光景を見て
千夏の横を歩いていた夫の修人は呟いたー。

「ー”入れ替わり制度”なんてなければ
 ああいう人も出てこないのにー」

とー。

「ーーえ?」
千夏が、修人のほうを見ると、
「ーはは、何でもないよ」と、そう言葉を口にするー。

修人は”入れ替わり制度自体”を良く思っていないー。
がー、その言葉をハッキリ聞き取れなかった千夏は、
そのことに気付くことはなかったー。

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翌週ー

久しぶりに
”親友夫婦”の家に遊びに行った
千夏と修人ー。

千夏は”由紀”と、
修人は”浩太”と仲が良く、
この日も楽しそうに雑談していたー。

「ーーーんーー…あ、あぁ、悪いー」
由紀(浩太)が、修人に
”新発売の飲み物”のペットボトルを手に、
”お前も飲んでみろよ”と勧めたところー、
修人が戸惑いの表情を浮かべたのを見て、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーご、ごめんー。
 中身は浩太だって分かってるんだけどー、
 まだ慣れなくてさー」
修人が申し訳なさそうに言うと、
「いや、いいんだー」と、由紀(浩太)は
少し戸惑いながら笑うー。

”親友の浩太が妻の由紀と入れ替わった”ー
修人は、正直、そのことも内心では良くは思っていなかったー。

中身は浩太だと分かっていても、
どうしても、目のやり場に困ったり、
大学生時代は普通に”飲み回し”していたのに、
それができなくなってしまったー。

「ー別に気にしなくていいんだぜー?
 由紀も納得した上で俺たちは入れ替わってるんだしー」
自分が口をつけたペットボトルを手に、由紀(浩太)が
少しだけ笑うと、「で、でもー」と、修人は
心底戸惑ったような表情を浮かべるー。

「ーーははー悪い悪いー。」
由紀(浩太)は、浩太の”そういうのが苦手”な気持にも
理解を示すと、
「ー冷蔵庫にもう1本あるから、そっちならいいだろ?」と、
それを取りに向かうー。

そんな光景を少し離れた場所から見ていた
浩太(由紀)は、
「ー千夏ってば、いつまでも入れ替わり未経験なんてもったいないよ~」と、
そんな言葉を口にするー。

千夏は苦笑いしながらも、
「でも、修人はあまりそういうのー」と、
そう言葉を口にしかけるー

「それなら、”1回だけ”でもお願いしてみたらー?
 わたしと浩太はずっと入れ替わったままで過ごしてるけど、
 別にすぐに元に戻ったっていいんだしー。

 こうやってねー、入れ替わると
 相手のことをもっともっとよく知れるしー、
 それと、女と男の違いみたいなものも分かるしー、
 だからー、1回試してみた方がいいと思うよ~?

 入れ替わったことがない夫婦は”未経験”とか
 言われるんだしー」

浩太(由紀)のそんな言葉に、
千夏は「あははー」と、苦笑いするー。

”入れ替わりを原因とした離婚”は、
当然、全ての夫婦に起きているわけではないー。

それが増えていることが問題になっているだけであって
全員が全員、離婚するわけではなく、
由紀・浩太のようにうまく行っている夫婦も存在しているー。

「ーー梓(あずさ)も、莉子(りこ)も、
 みんな入れ替わって上手くやってるしー、
 千夏も1回ぐらい、入れ替わってみてもいいと思うんだけどなぁ~

 それにー…修人くんだって、
 千夏のことが本当に好きなら
 入れ替わってくれると思うよー。

 だって、”好きな相手のこと”を知りたいと思うのは
 普通のことでしょ?」

そう続ける浩太(由紀)ー。

千夏自身も”入れ替わり”に興味がないわけではないしー、
この世界では、確かに”一度も入れ替わったことのない夫婦”は
”えぇっ!?”と思われるぐらいの雰囲気はあるー。

由紀・浩太のようにずっと入れ替わったまま生活している人間は
そんなに多くないとは言え、
”ちょっとだけ入れ替わってみよう”というノリで
入れ替わりをする夫婦は非常に多いー。

「ーそっか、そうだよねー」
千夏はそう言葉を口にすると、
浩太(由紀)は「うんうん」と、満足げに頷いてから、
「ー男の人の身体、動く分にはすっごい快適だから、試してごらんー?」と、
腕をぶんぶん振りながらそう言葉を口にしたー。

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それから数日後ー。

千夏は、明日から土曜日と日曜日で、
二人とも仕事が休みになるタイミングを
見計らって、夫の修人に”少し話があるんだけど、いい?”と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーそれで、話ってー?」
話を快く聞いてくれた修人ー。

そんな修人に対して、千夏は
「ーーこれー」と、
”入れ替わり申請書”を手に、それを修人に見せるー。

「ーーえ」
修人の表情が曇るー。

「ーほら、わたしたち、一度も入れ替わったことなかったでしょ?
 わたしも1回ぐらい入れ替わってみたいなぁ~ってー」

千夏がそう言うと、修人は途端に戸惑いの表情を見せながら
「いや、僕はそういうのはー」と、首を横に振るー

「ーーーーー…1回だけでいいからー。
 ねー? みんな入れ替わってるし、わたしたちだけ経験がないって言うのもー」
千夏は、”修人が嫌だと思ったらすぐに元に戻ってもいいし”と、
そんな風に付け加えるー。

「ーーーーー」
しかし、修人は険しい表情を浮かべながら、
「ーーー千夏も、”そういうこと”したがる人だったんだなー…」と、
大きくため息を吐き出すー。

「ーーえ……そ、そのー、そんなにイヤならー…」
千夏が少し慌てた様子で言うと、
修人は今一度大きくため息を吐き出したー。

「ーーー…入れ替わり目当てだったのかー」
ボソッとそう呟く修人ー。

「ち、違うよ修人ー…そ、そんなんじゃー」
千夏は、修人の反応が思った以上に”良い反応”ではなかったことに
心底慌てた様子でそう言葉を付け加えるも、
修人は「いや、いいよー。分かったー。」と、少しだけ
笑顔を浮かべると、
「ーーじゃあ、”1回だけ”入れ替わろう」と、
修人はそう言葉を口にしたー。

千夏は心底戸惑いながら「本当に無理しなくていいからねー?」と、
そう言い放つも、修人は穏やかな笑みを浮かべたまま
「無理はしてないよ」と、それだけ答えたー。

翌日ー。
千夏とと修人は”今日1日だけ”という約束で
”短期入れ替わり申請”を役所に提出、
その日だけ入れ替わったー。

修人になった千夏は、念願の入れ替わり体験に
とても嬉しそうにしているー。

一方の千夏になった修人は、千夏の身体になっても、
特にあまり何もすることなく、大人しくしていたー。

千夏になっても、胸を揉んだり、ドキドキしたりする素振りも特に見せないー。

修人(千夏)は、そんな千夏(修人)を見て
少しだけ寂しそうにしたものの、念願の”入れ替わり”を楽しむのだったー。

そしてー、その日が終わると、
二人は元に戻って
また新たな日常を送るー…

ーーーはずだったー。

しかし、そうはならなかったー。

元に戻った翌日ー。
修人は”離婚届”を手に、千夏にそれを渡したー。

「ーごめん。僕はーー…その、無理なんだー」
とー。

「ーーー…えっ…ど、どうしてー…
 や、やっぱ入れ替わり、無理してたのー?

 そー、それならわたし、もう二度とそんなことー」

千夏が、修人のほうを見ながら
”もう2度と入れ替わりなんて言わないからー”と、
そう言い放つも、修人は首を横に振ったー

「昨日、僕と入れ替わって楽しそうにしてる千夏を見て思ったんだー
 僕じゃ、千夏を楽しませることはできないってー」

心底残念そうに、そう呟く修人ー。

「ー”入れ替わりを楽しみたい”千夏を我慢させちゃうー。
 だからー、僕はー…ダメなんだー」

修人はそれだけ言うと、離婚届の記入を促すー。

千夏は泣きながら別れたくないと言ったものの、
修人の意思は固かったー。

話をするうちに、
修人の親は、10年前ー、”入れ替わり制度”が導入された直後に
入れ替わりを試し、そして離婚していたことが分かったー。

加えて、修人の”兄”は、数年前に入れ替わりで騙されて、
身体を奪われていることも分かったー。

修人は”入れ替わり”に強いトラウマがあったのだー。

結局ー、千夏の願いは届かず、
修人と千夏もまた”入れ替わりによる離婚”に至ってしまったー。

そしてーーー

「おいおいー修人と入れ替わるように勧めたの、由紀って本当かー?」
由紀(浩太)が戸惑いながら言うと、
浩太(由紀)は「えっ…だ、だって、わたしー、千夏だけ入れ替わり
未経験だったから、それでー」と、戸惑いの返事を返すー。

別れてしまった修人・千夏の友人夫婦の話を聞き、
由紀(浩太)は、千夏に対して”修人と入れ替わって見たら?”と
勧めたのが”由紀”だったと知り、それを問い詰めていたー。

「ーー修人のやつ、アイツは入れ替わりにトラウマがあるのにー
 なんでそんなことー」
由紀(浩太)が呆然としながら言うと、
浩太(由紀)は「そ、そんなこと知らなかったんだもん!」と、そう反論するー。

その場では、何とか話は落ち着いたものの、
このことをきっかけに二人の関係も徐々に冷え込んでいきー、
この1年後ー、由紀・浩太の夫婦もまた”入れ替わり”が間接的な原因となって
”別れる”ことになってしまったのだったー。

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”婚姻届”

今日、この日、
婚姻届を提出したカップルー。

とても可愛らしい雰囲気の眼鏡をかけた子と、
不健康そうに太った40代ぐらいの男の組み合わせだー。

女の方は20代ぐらいに見え、
随分と歳の差があるー。

が、担当者は”人の好みはそれぞれだしー”と内心で思いながら
事務的に手続きを進めるー。

しかしー
それは、”入れ替わり制度”を利用したトラブルだったー。

「ーーークククーこれでお前の身体は俺のものだー」
40代の不健康そうに太った男・剛太郎(ごうたろう)が
邪悪な笑みを浮かべると、
怯えた様子で、眼鏡をかけた女は剛太郎のほうを見つめたー。

”無理矢理結婚して、身体を奪うー”
そんな”入れ替わり制度を利用した悪事”まで、
横行し始めていたー。

③へ続く

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コメント

入れ替わり制度による色々なトラブル…★

大変なことになっちゃっていますネ~!!

明日が最終回デス~!!

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