<憑依>人類を浸食する力②~拡散~

ある日ー、宇宙から”友好的な宇宙人”がやってきたー。

優れたテクノロジーを持つ惑星ゼグの宇宙人たちによって
提供された技術により、地球は飛躍的発展を遂げていくー。

しかし、その裏では”技術”を悪用する者たちが現れ始めていたー。

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「ーー”憑依禁止法”を、本日より施行いたしますー。
 法律を破った者には、5年以上の懲役ー、
 場合によってはーー」

この日ー
”憑依禁止法”が制定されたー。

惑星・ゼグからもたらされた”憑依”の力ー。
それを悪用する人間があまりにも増えてしまい、
収拾のつかない状態になってしまっていたー。

そのために、急遽、”憑依禁止法”が制定されたのだー。

がーーー

「ー憑依禁止法ぅ~~~!?!?!?」
突然、その場にいた女性記者が声を上げるー。

「ーへへへへへー
 そんなもん作ったって無駄だぜー?
 俺たちみたいな”憑依”の力を手に入れた人間を
 どうやって、逮捕するんだー?
 あ?」

一緒にいたカメラマンを突き飛ばして、
憑依禁止法の発表をした大臣に近付いていく女性記者ー。

ゲラゲラ笑いながら胸を揉むと、
「ほら!俺を逮捕してみろよ?あ?
 それともこの女ごと、仕留めてみるかー?」と
挑発的な笑みを浮かべるー。

「ーーぐ…」
大臣は表情を歪めるー。

そうー、
法律で禁止しようと、もはや”憑依”は止められないー。

惑星・ゼグの宇宙人からもたらされた”人間には過ぎたる力”によって、
社会は混乱しつつあったー。

「ーーへへへへー
 ”憑依”がある限り、何をしようと無駄だぜー

 いやぁ、ホント、宇宙人はいいものをくれたよなぁ」

そう言葉を口にすると、憑依された女性記者は
近くにいた別の女性記者に「なぁ?お前もそう思うだろ?」と
ケラケラ笑いながら絡んでいくー。

「ーーち、近寄らないでくださいー」
その女性記者がそう言うと、
「へへーそのケダモノを見る目ー嫌いじゃないぜー」と、
憑依された女性記者が言うと、その女性記者が突然倒れ込んでー、
男は”乗り換え”を行うー

「へへへー俺のことをケダモノを見る目で見てたお前も
 この通り、変態にしてやれるんだぜ!ひゃはは!」
乗り換えた先の別の女性記者の身体で嬉しそうに胸を揉むと、
会場から、他の記者たちが逃げ出し始めるー。

「ーははははは!憑依は最高だぜ!」
乗っ取られた女性記者は、嬉しそうに一人、そんな笑い声を
上げるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー”憑依”の制御方法ー?」

惑星・ゼグの代表、
グ・レブラが表情を歪めるー。

「ーはい。そうですー。
 各地で”憑依”による事件が続出していてー、
 このままでは発展どころか、人間の社会はー」

現総理大臣の海老原(えびはら)が
そう言葉を口にすると、
宇宙人の代表・レブラは戸惑いの表情を浮かべたー。

知性的な人型の昆虫のような風貌を持つレブラに
少し気圧されながらも、海老原は
”憑依の制御方法”を、レブラに相談していたー。

「ーーそれは、人類の皆さんでルールを決め、
 それを守れば良いことなのではないか?」
レブラがそう言葉を口にすると、
海老原総理大臣は困惑の表情を浮かべながら
「そ、それができないから、そう言っているんだー」と、
そう叫ぶー。

「?」
レブラは、表情を変えずに
「海老原総理大臣ー」と、そう言葉を口にして立ち上がると、
「ー”力”は使う者の意思が重要ですー。
 ”憑依”の力は、必ずや人類の役に立つはずー」と、
そう言葉を続けるー。

「ー医療用に使われている”憑依”の力は
 患者の身体の状況を確かめたり、
 注射を嫌がる患者の身代わりになったり、
 多くの分野で活躍していると聞いたー。

 他の場所でもそうだー。
 我々も人類の皆さんの身体を借りたりして、
 人類の皆さんを怖がらせないようにこの力を使っているようにー、
 ”正しき使い方”をすれば、必ずこの力は皆さんの力となるー」

と、そう言い放ったー。

「ーーしかしー」
海老原総理大臣が戸惑いながら言うと、
「ー力を、正しく使えばいいー。それだけで問題はないはず」と、
宇宙人の代表グ・レブラは淡々とそう言い放ったー。

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宇宙人の技術の拡大はさらに進むー。
人間社会は飛躍的に発展すると同時にー、
憑依や、その他の技術による”害”も広がりつつあったー。

最初の数年は、”惑星ゼグ”からやってきた宇宙人たちは
救世主なのではないか、と、そういう声がほとんどだったものの、
最近では、”こいつらは侵略を目論んでいる!”という声まで
広がりつつあったー

「へへへへーお前…彼氏?」
当初から宇宙人のことを敵視していた幹夫は、
目の前にいる彼女であり、幼馴染の雪菜を見ながら
震えていたー。

「ー残念だったなァーこの可愛い彼女は俺のものだー」
雪菜はニヤニヤしながらそう言い放つー。

彼女である雪菜とのデート中ー。
突然、雪菜の様子がおかしくなり、
豹変したのだー。

何が起こっているのか、幹夫はすぐに理解したー。

”雪菜”が憑依されてしまったのだー。

「ーー…ゆ、雪菜ーう、嘘だろー?」
呆然とする幹夫ー。

「ーへへへー嘘じゃねぇよー」
雪菜はそう言い放つと、自分の胸を揉んでから、
着ていた服をその場で脱ぎ始めるー

「お、おい!テメェ!雪菜から出ていけ!」
幹夫がそう叫ぶも、雪菜はお構いなしに、下着姿になって
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

周囲の通行人たちの視線が注がれるー。

「ーへへへー”憑依”には逆らえないー
 お前も知ってるだろ?」
雪菜はニヤニヤしながら、
路上で一人、自分の身体を弄び始めるー。

「お、おい!ふ、ふざけるなー!
 ゆ、雪菜には病気の妹さんがいてー」

幹夫はそう叫ぶー。

幼馴染の雪菜には病気の妹がいるー。
社会人になってからは、”やっと妹のために色々してあげられるー”と
雪菜は喜んでいたー。

その雪菜を、雪菜に憑依した男は踏みにじろうとしているー。

どよめく周囲をよそに、雪菜は路上でお構いなしに喘ぎ声を上げるー。

「ふ、ふざけんなー!!お前…!」
幹夫がそう叫ぶと、
雪菜はニヤニヤしながら、”あるもの”を取り出したー。

「ーそうそう、今朝こいつの鞄の中に”これ”入れといたんだよー
 こっそりとなー」

今朝、男は、”下準備”として、
あるものをデートに向かう雪菜の鞄の中に入れておいたー。
母親に憑依して、雪菜の鞄にそれを入れたのだー。

それはーーー
惑星ゼグの宇宙人からもたらされたー
”遺体処理用の粉”ーー。

「知ってるか?これ、生きてる人間も消えるんだぜ?」
雪菜がニヤニヤしながら、路上に座り込んだまま笑うー

「ーーな…何を言ってー…」
幹夫が呆然としながら、雪菜のほうを見ると、
雪菜は笑ったー

「そういや、さっき”この女”の妹がどうこう言ってたよなー?
 安心しなよー
 今朝、こいつが出かけたあとに病院にいる妹に憑依して
 ”寂しくないように”屋上から飛び降りておいたからさー」

雪菜はそれだけ言うと、
鞄から”遺体処理用の粉”を取り出して笑うー。

「ーーー!!!!」
幹夫はすぐに理解したー。
雪菜に憑依した男は、楽しみ終えた雪菜を”消す”つもりだとー

「おい!!!!クソッ!!!お前ーーー、
 そんなふざけたことー」
幹夫は”人間とは思えない悪魔の所業”だと思いながら
憑依された雪菜を止めようとしたー。

がー

「ばいば~い」
笑いながら雪菜は自分に遺体処理用の粉をかけるとー、
そのまま光の雫になるようにしてー、”消滅”してしまったー。

”へへへへー憑依してる身体が死んでも、
 そのまま幽体離脱できるなんて、宇宙人の憑依の力は最高だぜー”

男はそう言葉を口にしながら、その場から去っていくー。

「うっ…うああああああああああああああ!!」
彼女である幼馴染の雪菜が憑依された挙句”消されて”しまったー。
しかも、雪菜の妹まで”殺された”ー

幹夫は怒りの形相で地面を叩くと、
「ーーこれもーあいつらのせいだー」と、
宇宙人に対する憎しみをさらに強めていくー。

「ーーあいつらーーー絶対にーーー絶対に許さないー」
雪菜がついさっきまでいた場所の地面を何度も何度も拳で叩くと、
やがて、幹夫はゆっくりと立ち上がったー。

”あの宇宙人たちさえやってこなければ”
そう思いながらー。

勿論、雪菜に憑依して、雪菜を消した人間は許せないー。
けれどー…惑星ゼグだかジグだかバグだか知らないが、
そいつらが”憑依”の技術を地球に持ち込んだりさえしなければ、
少なくともこのようなことにはならなかったのだー。

だからー、幹夫は宇宙人たちを憎んだー。

上空に未だに点在している宇宙人の円盤を見つめるー。

「ー俺はお前らを許さないぞー。虫野郎どもー」
幹夫は怒りの言葉を吐き捨てると、
そのまま歩き出すー。

「えへへへへ♡ へへへへへー」
路上ではスーツ姿のOLが、憑依されているのか
ニヤニヤしながら自分の胸を揉んでいるー。

「どけ!!!!」
怒りに支配された幹夫は、そのOLを突き飛ばすと、
そのまま”宇宙人”たちに”ご挨拶”をしに行くため、
歩を進めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおやー?いつもの男はどうしたのだー?」
宇宙人の代表、グ・レブラが表情を歪めるー。

「ーそれが、海老原総理も”憑依”されてー」
岩隈副総理大臣がそう言葉を口にするー。

「ーー憑依された?」
グ・レブラが困惑の表情を浮かべると、
「そうだ!憑依されたんだ!お前たちのおかげで世間は大混乱だ!」と、
岩隈副総理大臣は少し不満そうに声を上げるー。

「ーーーーーーー」
グ・レブラは周囲にいた他の宇宙人たちと何やら
人間には理解できない言語で会話を始めるー。

レブラの周囲の宇宙人たちが、薄ら笑みを浮かべているのが分かるー。

「くそっ…お、お前たちー…こ、これが目的かー」
そう言葉を口にする岩隈副総理ー。

がー、
レブラは「いや、これは失礼したー」と、そう言葉を口にすると、
「ー”憑依した人間”を、排除するための装置を直ちに開発して、
 本星から送ってもらうことにしようー。」
と、そんな言葉を続けたー。

「ーー…」
岩隈副総理大臣は表情を歪めるー。

”この宇宙人たちほどの技術を持つ者が、
 憑依への対策を何も今まで考えていないはずがないー”
とー。

そう、憑依の力に対する対策も、
この宇宙人たちの技術力なら、とっくに完成しているはずなのだー。

その技術がないはずがないー。

こいつらは、地球人類が崩壊するまで待っているのだと、
岩隈副総理大臣はそう思ったー。

「ーーーでは、憑依対策技術が完成次第、
 こちらから連絡しよう」
宇宙人の代表・レブラの言葉に、岩隈副総理大臣は
悔しそうな表情を浮かべるー。

信じるべきではなかったのだー。
技術が飛躍的に発展しようとも、最終的に
崩壊させられてしまうのであれば同じことー

いやー…

宇宙人の母船から、転送装置で元居た場所に戻ってくると、
岩隈副総理大臣は空を見上げたー。

いやーーーどのみちー、
惑星・ゼグの母船団が地球に出現した時点で
人類の”負け”は決まっていたのだー。

地球から補足することすらできないような遠い惑星から
地球にやってくることができるほどの技術力ー。

仮に最初から地球が、侵略目的だと判断して
この宇宙人たちと戦う道を選んでいたとしてもー
”勝ち目”などなかったのだー。

「ーーーうひゃひゃひゃひゃ!」
背後から、ボロボロになった髪の女子高生が近付いて来るー。

「ーー!」
岩隈副総理大臣がそれに気づいた時には、
もう”粉”が噴き掛けられて”手遅れ”だったー。

遺体処理用の粉で、消滅していく身体を自分で見つめながら
”地球は、もう、おわりだー”と、
彼はそう思うことしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー
”憑依対策”と称した”浄化装置”が、提供されたー。

銃のような形をした装置で、
”憑依した人間の魂を消滅させることができる”
そんな、装置だったー。

直ちに各地にそれが送られーー
”憑依問題”は解決するかに思えたー。

がー、その銃は”憑依されていない人間”に撃つと、
その人間の魂が消えてしまう作用があったー。

”憑依された人間”に撃てば、憑依者の魂だけが消滅するものの、
”憑依されていない人間”に撃つと、その人間の魂が消えて廃人になってしまうー。

すぐに、誤使用もされるようになり、
廃人が爆発的に増えていくー。

地球の人口はますます減り、
世界各地が壊滅状態に陥りつつあったー…

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~~~!

緩やかに滅びに向かっていく世界…
このままだと大変ですネ~…!

結末は明日のお楽しみデス~!!

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