<憑依>人類を浸食する力①~来訪者~

2XXXー。
宇宙から、知的生命体が地球にやってきたー。

その知的生命体は友好的な振る舞いを見せ、
人類に様々な技術を提供していくー。

しかし、”憑依能力”を与えられた人類は、
次第に”自ら”崩壊の道を辿っていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2XXX年ー。
地球に向かう謎の”物体”が確認されたー。

地球側がそれを補足してから数日ー。
十分な準備もできないままー
地球に接近、さらには地球上空に姿を現したー。

”大型の円盤”ー
まるでSF映画にでも出て来そうな”UFO”とも言うべき存在が
地球の上空に現れたのだー。

「ーーまさか、高校生で人生終わりなんてなぁ…」

宇宙船が地球上空に出現したことで、
世界各国で緊急の対応が取られたー。

ちょうど、学校に登校している時間帯だった
日本では、”緊急下校”の対応が取られて
授業は2時間目で中断ー

そのまま下校が始まっていたー。

そんな中、男子高校生の
尾島 幹夫(おじま みきお)は、
愚痴を呟くようにして、そう言葉を口にしたー。

「ーそ、そんな不吉なこと言わないでよー」
幼馴染で、幹夫の彼女でもある
小森 雪菜(こもり ゆきな)が、戸惑いの表情を浮かべながら
空を見上げるー。

「ーーーー」
雪菜がゴクリ、と空を見上げるーー。

ここからでも、巨大な円盤がひとつ、少し離れた場所に見えているー。

やってきた宇宙船は1隻ではなく、複数ー。
アジアにも、ヨーロッパにも、アメリカにも、あらゆる場所に
出現して、”全ての国と地域をカバーするかのように”各所に
出現していたー。

現時点では、地球上空に出現して以降は動きを見せておらず、
現在、各国の偉い人たちが宇宙船と”交渉”をしているのだというー

「ーーだってさー、映画とかでもあるじゃんー?
 宇宙人がやってきて容赦なく攻撃してくるやつー。

 もうすぐ、宇宙船から変な飛行物体が飛び出してきたり、
 化け物みたいのが降りてきて、殺されるんだー」

自虐的に笑いながら、淡々とそう言葉を口にする幹夫ー。

「ーーねぇ、ちょっとー
 何でそんなこと言うのー?」
雪菜が不満そうにそう言い放つと、
「ー宇宙人がやってきて、仲良しになる物語とかもあるでしょ!
 まだ、ああやって空を浮いてるだけなんだから!
 攻撃なんかされるか分からないじゃん!」と、
そう言葉を口にするー。

がー、幹夫は首を横に振るー

「人生は諦めが肝心だからなー」

何事もすぐに諦めてしまう性格の幹夫はー、
自虐的にそう笑うー。

普段は優しい性格であるものの、こういうところは、
あまり良くない、と雪菜はいつも思っているー。

「どうせ死ぬならさー、楽しいことしようぜー?」
ニヤニヤする幹夫ー。

雪菜は「死ぬって決まってなんかないし!」と、
不満そうに言うと、
幹夫は「はははー、まぁ、死なずに牢屋に入れられて
強制労働かも」と、そう言い放つと、
雪菜は「怖いことばっかり言わないで!」と、目に涙を
浮かべながらそのまま立ち去って行ったー。

「ーーーははー」
一人残された幹夫は”嫌われたかなー”と、呟きながらも
「ま、どうせ死ぬんだーみんなー」と、
自虐的にそんな言葉を口にしたー。

がーー
幹夫が帰宅して1時間ぐらいが経過したタイミングで、
ついに世界各地域に停泊している宇宙船に
”動き”があったー。

”人類の皆さんー”
その言葉と共に、空に巨大なホログラム映像が投影されるー。

”我々は、敵ではありませんー”
知性的な雰囲気の人型の昆虫のような姿をした”宇宙人”が
言葉を口にするー。

世界各地域で、異なるホログラム映像が投影されていて、
その地域にあった言語を話しながら、宇宙人は言うー。

”私は、惑星ーーーー”
そこまで言葉を口にすると、宇宙人は少しだけ考えてから
”失礼、地球の皆さんに発音できる音ではなかったー。
 そうだなー…我々は惑星”ゼグ”からやってきたー”
と、そう言葉を続けるー。

「ー惑星ゼグー?聞いたことないぞ」
世界中の有識者を集めた会議の場にいた研究者の男がそう言葉を口にするー。

”知らないのも無理はないー。
 我々の星は遥か、彼方に存在するー。
 あなた方地球から発見できる距離にはないー”

”ゼグ”の宇宙人はそう言葉を口にすると、
改めて言葉を続けるー

”私はゼグの支援団代表・”グ・レブラ”だー”
代表・レブラがそう名乗ると、
”我々は、地球の皆さんと敵対するつもりはありません”と、
再度”敵意”がないことを繰り返すー。

「ーーでは…目的は何だねー?」
有識者会議に出席していた男の一人が言うと、
代表・レブラは答えたー。

”ーこの宇宙に知的生命体が住んでいる星は
 宇宙の広さに対して、あまりにも少ないー。
 ほとんどの星には生命体すら存在せずー、
 生命体が存在する惑星の多くは、知性を持たぬ生命体ばかりだー。

 我々の母星・ゼグや、あなた方の地球は
 宇宙の中でも極めてまれな存在ー。

 だからこそ、”知的生命体同士”我々は技術の提供を惜しまないー。”

レブラはそう言うと、
これまでにも地球以外の”知的生命体”が存在している星を訪れては
技術提供を行い、その星の発展を促して来たのだと言うー。

”全ての知的生命体は”友”だー。
 それ故、我々はこうして、知的生命体のいる星を回り、
 その星に我々の技術や力を与えているー。”

代表・レブラのその言葉に、各国の代表たちは戸惑うー。

がーー”惑星・ゼグ”とやらが地球よりはるかに優れた技術を持つことは
宇宙船を見ただけでも分かるー。
ここで”敵対”するのは、あまりにも愚かな行為だー。

人類は、”惑星・ゼグ”を受け入れることにしー、
この日、宇宙人との交流を始めたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”惑星・ゼグ”の者たちの技術は確かなものだったー。

”全ての病気を治癒する万能薬”で、
世界中の病気は”完治”したー。

無限に電気を生み出せるエネルギーや、
”水源”となる、不思議な石、あらゆる技術を
ゼグの代表・レブラたちは提供してくれたー。

実用的なものから、技術・力、あらゆるものをー。

それでも、惑星・ゼグの者たちは地球に何かを強制したり、
支配するような素振りを一切見せずー、
あくまでも”友人”として技術提供を続けたー。

そしてーーー

「ーー素晴らしいー。地球の皆さんは飲み込みが早いー」
”惑星・ゼグ”からやってきた宇宙人の一人が、そう言葉を口にするー。

ただー、その姿は、人間の女性の姿をしていたー。

「ーーそれよりー、”ガルド”さんー」
宇宙人の一人、ギ・ガルドに対してそう言葉を口にする
医師の男ー。

声を掛けられたガルドはー、
人間の”女”の姿で「何でしょう?」と、そう答えると、
「ー”それ”は、どうやっているのですかー?」と医師の男が
興味深そうに言葉を口にしたー。

「ーそれ? あぁー、”憑依”のことですかー?」
宇宙人・ガルドは乗っ取っている真桜(まお)という女性医師の身体で、
そう言葉を口にするー。

「ー我々の姿を見ると、怖がる地球人の皆さんも多いのでねー
 ですので”憑依”の力を使って、こうして肉体をお借りしているのですー」
ガルドに憑依されている真桜がそう言い放ったー。

がーー
男性医師はふと、言葉を口にするー。

「ーその”憑依”とやらも、地球に授けていただくことはできますかー?」
とー。

真桜は「ほぅ?」と、考えるような仕草をすると、
「ーー可能ですが、何に使うつもりで?」と、聞き返すー。

男性医師は「ーー医療の新たな扉が開けるかもしれませんー」と、
目を輝かせながら、宇宙人に憑依されている真桜に対して
”ぜひ、その力を授けて貰いたいー”と、そうお願いを繰り返したー。

こうしてー、
人類は惑星・”ゼグ”の宇宙人から憑依の力も授かったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから時は流れー、
惑星・ゼグからの技術提供により、
人類は飛躍的な発展を遂げていたー。

ゼグから提供された万能薬で、人類は”病”の恐怖から
解放されたー。
もちろん、突然死に近いような病はどうすることも
できなかったものの、
今まで、不治の病とされてきた病気は
惑星ゼグから提供された万能薬で全て治療することができたー。

電気・水道・ガス、エネルギー問題も解消し、
技術を惜しみもなく提供してくれる惑星・ゼグの面々により、
人類は空飛ぶ車や、ゼグが使うUFOのようなもの、
さらには瞬間移動を可能にする転移装置など、
あらゆる技術の開発に成功していたー。

だがー、その一方で、
”ある問題”が起き始めていたー。

それが、”憑依”だったー。

宇宙人がやってきた際には高校生だった幹夫も、
今では社会人ー。

がー、会社に出社すると同期の女性だった佐代子(さよこ)という子が
出社していないことに気付いたー。

「ーーあれ?今日は休みですか?」
幹夫が部長に確認すると、
「あ~…ーーーその…」と、部長は少し気まずそうに、
「”憑依”されて……」と、スマホー…ではなく、
空中に画面のようなものを表示して、
それを幹夫に見せたー。

これも、惑星ゼグから提供された技術による、新たな技術だー。

そこにはーーー
同期の佐代子が、憑依されて街中で暴れた挙句”確保”されたという
ニュースが表示されていたー。

「ーーそんなー」
呆然とする幹夫ー。

「ー最近は”憑依”が問題になっているからねー。
 うちの会社でも既に5人はやられたし、
 ーー会社とは関係ないけどー、俺の知り合いも3,4人憑依されて
 人生を滅茶苦茶にされてるー」

部長が心底困惑した様子で言うと、
幹夫は不満そうな表情を浮かべながら口を開いたー。

「ー惑星ゼグ…でしたっけー
 絶対、おかしいですよー。
 あいつらから見れば余所の星でしかない地球に
 こんなに良くしてくれるなんてー。

 あいつら、”憑依”ーー
 そう、人間には過ぎた力を与えて
 人間が勝手に滅ぶのを待ってるんですよー」

幹夫がそう言うと、
部長は少し困惑しながら、
「尾島くんは、宇宙人反対だったっけー?」と、苦笑いするー。

「ーー決まってるじゃないですかー。
 このままじゃ、地球はあいつらに占領されるーってー、
 俺はずっと高校生の時から言ってますからねー」
幹夫がそう言い切ると、
部長は「考えすぎじゃないかなぁ…」と、そんな言葉を口にしたー。

がーーー
その数日後、その部長も憑依されたー。
部長は男性だったものの、憑依されて、可愛い子を襲わされて
逮捕されてしまったー。

当然、行政も”憑依が悪用され始めた”ことを理解しつつも、
それに対処する法律の制定が間に合っていなかったー。

元は、”医療用”として、医師が宇宙人のひとり、ギ・ガルドに
頼み込んで提供してもらったものであったものの、
それがどこからか流出し、今では裏で売りさばかれるようになっていたー。

さらにはー、”憑依”だけではないー。
人間は、宇宙人から貰った”技術”を悪用し始めたー。

”遺体処理”の為に使われる”消失剤”と呼ばれる粉ー。
惑星ゼグでは、”死んだ同胞”に別れの儀式を行ったあと、
これを用いて”火葬”という非効率的なことはせずに、
遺体を処理しているのだというー。

がーーー
人類の手に渡ったそれは、犯罪者が人を殺したあとに
”証拠隠滅”のために使われ始めたー。

また、人の意識を操る技術も、悪用されているー。
惑星・ゼグでは、精神的に病んでしまったものを回復させたり、
緊張して何かできないことがある時に自分を勇気づけるために
使われていたり、そういった”良い方面”でその技術が使われていたものの、
地球では、悪用されていて、
好きな子を洗脳して自分のものにするような人間まで現れているー。

「ーーーくそっ!あの宇宙人、絶対俺たちが自滅するのを待ってやがるんだ!」

休日ー。
今でも彼女の雪菜と一緒に歩きながらそう叫ぶ幹夫ー。

が、雪菜は「あの宇宙人さんたちのおかげで、わたし、おじいちゃんが
助かってるしー」と、そう言葉を口にするー。

雪菜の祖父は、病気だったものの惑星ゼグが提供した”万能薬”に救われているー。

「ーーー雪菜までー…!
 くそっ!みんなアイツらに騙されてー」
幹夫が不満そうに言うー。

が、雪菜は「あの宇宙人さんたちは、悪い人じゃないと思うー」と、
そんな言葉を口にするー。

しかしー…
幹夫の言う通り、”憑依”や、人間に過ぎたる技術はさらに拡散し、
世界は混乱しつつあったー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

宇宙人によって提供された色々な技術…!

でも、憑依が悪用され始めて大変なことに…!

続きはまた明日デス~!!

コメント