惑星・ゼグから来訪した宇宙人によって
与えられた数々の技術ー。
しかし、”憑依”による混乱の拡大は止められないまま
拡大していくー。
地球の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーへへへへー
なぁなぁ、俺と遊ぼうぜー?」
ニヤニヤしながら、セーラー服姿の女が近付いて来るー。
「ーーーーーー他人の身体を勝手に使うクソ野郎めー」
彼女であった雪菜を”憑依”で失った幹夫は、
宇宙人たちを憎み、”その母船”に乗り込む方法を探していたー。
そして、宇宙人飛来後に、いくつかの地点に
”転送装置”が用意され、そこから、交渉役の人間が
宇宙人の母船に直接ワープし、宇宙人との交渉を
行っていることを突き止めていたー。
今日ー、その場所をようやく突き止め、
宇宙人の母船に乗り込もうとしていた幹夫ー。
が、その目の前に
”憑依されている女”が姿を現したのだー。
「ーへへーそんなこと言うなよー
最近は、人もあまりいねぇからさー
この身体も”飢えてる”んだよー
ヤリたくてヤリたくてたまらねぇ」
ニヤニヤしながら、そう言葉を口にする女を前に、
幹夫は”憑依された雪菜”の姿を重ねて
激しい怒りを覚えるー。
「ーーーなぁなぁ俺とヤろうぜー」
そう言葉を口にしながら近づいて来る女ー。
がー、幹夫は宇宙人が持ち込んだ
”浄化装置”を手に、それを撃ちこむーー
「ーーーぁ… … ぁ」
女が倒れ込んで、”憑依していた”男が消滅するー。
「ーーーぁ…」
やがて、その子は意識を取り戻すと、怯えた表情を浮かべながら、
慌てて逃げていくー。
「ーーー…」
幹夫は大きくため息を吐き出すー。
既に、社会は崩壊状態だー。
先月までは、各国の政府も色々と自国の国民に呼びかけを
行っていたものの、それも途切れたー。
何故なら、”憑依”能力で、ほとんどの”偉い人”たちが、
命を落としてしまったからだー。
生き残った人間も、混乱状態で、
報道関係も機能しない状態になってしまっており、
もはや”行政も機能していない”状態になってしまったー。
”憑依”で、好き放題する者たちは消えないー。
既に犠牲になった岩隈副総理大臣が惑星ゼグの者たちに頼み込んで
用意してもらった”浄化装置”も逆効果となり、
”憑依されていない人間”に対して、面白半分で撃ち込んで魂を殺す人間も出て来たし、
パニックになって、憑依されていない人間に対して撃ち込んで
その人間を廃人にしてしまう者もいたー。
もちろん、普通に”憑依した人間”が退治され続けていることによって
悪人も含め、人間の総数が激減している状態だー。
「ーーこれが、お前たちの狙いだったんだなー」
宇宙人の”母船”に向かうための”転送装置”がある場所の近くにやってくると
幹夫は不満そうにそう呟くー。
がー
その時だったー
「ーーへへへへへっー」
突然、奇妙な女の笑い声が聞えて来たー
「ーー!?」
慌てて、その女を躱すと、
女はナイフを手に、血に染まったメイド服姿で
幹夫を睨みつけて来たー。
「ーー!」
幹夫は、その女に見覚えがある気がして表情を歪めるー。
「ーーへへー”こいつ”のこと知ってるかー?」
メイドがニヤニヤしながら自分を指差すと、
「ーアイドルの愛優美(あゆみ)ちゃんだよーへへー」と、
愛優美と名乗るメイド服の女は、そう言葉を口にしたー。
「ー愛優美ー…」
幹夫はそう言葉を口にすると、
確か、人気アイドルグループの一人だったな、とそう心の中で呟くー。
特にファンではなかったものの、
テレビにもよく出ているぐらいには有名だったため、
覚えていたー。
「ーへへー可愛い子の身体で、こういうことするとさー
最高に興奮するんだよー」
血のついたナイフをペロリと舐めると、愛優美は
そのまま幹夫に襲い掛かって来るー。
「ーあぁ、クソッ!邪魔をするなー!」
幹夫は愛優美の腕を掴むと、必死にナイフを叩き落として、
愛優美をそのまま投げ飛ばすー。
「ーーっ…ぁ!?!?」
足を滑らせた愛優美が、階段から転がり落ちていくー。
それを確認した幹夫は「ー全部、あいつらのせいだー」と、
そう呟くと、そのまま転送装置がある場所にたどり着いて
”宇宙人の母船”へとワープしたー。
そこにはー、
惑星ゼグの”代表”であるグ・レブラと、白衣の姿の女がいたー。
白衣の姿の女は、”人類との交渉役”のギ・ガルドに憑依されている女だー。
「ーーお前らー」
幹夫が、レブラとガルドに憑依された女を睨みつけると、
「ー我らの宇宙船に何の用かなー?」
と、代表のレブラが言葉を口にしたー。
「ーーお前らのせいで、人類は滅茶苦茶だー。
雪菜ー…俺の彼女も、親も、”憑依”で壊されたー」
怒りの形相を浮かべる幹夫ー。
「ーーーそれは誤解ですー。我々は何もしていないー。
知的生命体同士、我々はただ、同じ知的生命体である
地球の人類の更なる発展を願い、技術を提供したに過ぎませんー」
ギ・ガルドに憑依された女がそう言うと、
幹夫は「そうやって、人間の身体を支配しておいて言う事か?」と、
不満そうに呟くー。
がー、ギ・ガルドに憑依されている女は言うー。
「ーこの身体は、5年以上昏睡状態になっていた女性の身体を
借りたものです
親族の了承も得ていますー。
決して、力ずくで奪ったわけではないし、
人間の身体を借りて活動している全ての同胞は、
ちゃんと、同意を得た上で憑依していますー」
ギ・ガルドに憑依された女はそう説明するー。
「ーふ、ふざけるなー…!
お前たちが与えた技術の、力のせいで、今、
地球はこんな状態になってるんだ!」
幹夫がそう叫ぶと、
代表のレブラが口を開くー。
「それは、実に嘆かわしいことー」
とー。
幹夫は、レブラを睨みながら、
「ーお前たちが与えた力と技術を全部回収して、
とっとと地球から消えろ!」と、そう叫ぶー。
「ーーーーー」
レブラは少しだけ表情を歪めると、
「この者は、何を興奮しているのだ?」と、
ギ・ガルドに憑依された女に確認するー。
「ー人間が持つ”怒り”という感情ですー」
女がそう答えると、レブラは
「”怒り”かー。不思議なものだー」と、そう言葉を口にするー。
そんな態度にも腹を立てて、幹夫は
レブラの方に向かって叫ぶー。
「ーお前たちの目的はなんだ!
地球を壊して、地球を占領するつもりか!?それともー、
他の星を壊して、楽しんでやがるのか!?」
幹夫が不満そうに叫ぶー。
レブラとギ・ガルドに憑依された女は
少しだけ薄ら笑みを浮かべながら戸惑うと、
やがて、代表のレブラがイスから立ち上がって言葉を口にしようとしたー。
がー
その時だったー
”転送装置”が起動したー。
幹夫が、この宇宙人の母船にワープする際に使った転送装置だー。
「ーーー!?」
幹夫がハッとして振り返ると、
背後にはーー
先程撃退した”メイド服の女”ー
アイドルの愛優美がいたー。
「ーーーーーーがっ」
愛優美に気付くと同時に、愛優美の持っていたナイフに
刺されてしまう幹夫ー。
「ーへへへーさっきはよくもやってくれたなぁ」
階段から転落した際に、頭を打ったのか、頭から少し血を流しながら
愛優美が笑みを浮かべるー。
幹夫は苦しみながら、愛優美を振り払うー。
「くそっーお前もコイツらの仲間かー」
そう言葉を口にすると幹夫は「せめてー」と、
宇宙人の代表グ・レブラだけでも仕留めようと、
グ・レブラの方に向かっていくー。
がー、愛優美に腕を掴まれて、首筋にナイフを突き立てられて
しまった幹夫は、そこで力尽きて、その場に崩れ落ちてしまうのだったー。
「ーへっへへへへへへ♡」
愛優美が血に染まったメイド服姿のまま、
倒れた幹夫を見つめると、
「で、ここはどこだー?」と、
ニヤニヤしながら愛優美は宇宙人たちを見つめるー。
「ーーー…理解できぬー」
グ・レブラはそう言葉を口にすると、愛優美のほうを見つめるー。
そしてー、ナイフを手に襲い掛かって来た愛優美を
鋭い爪の生えた腕で返り討ちにすると、
「ーーまるで、理解できぬー」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人類は、壊滅状態に陥ったー。
全ての病気を治すことができる万能薬も、
瞬時に別の場所に移動することができるワープの技術も、
無限に発電することができる夢のようなエネルギーも、
人類にとっては、世界そのものを飛躍的に発展させるであろうはずの技術を手にしながら、
人類は滅亡の道を自ら歩んでしまったー。
他人に憑依することができる”憑依”の技術もー、
他人に暗示をかけることができる技術も、
遺体を跡形もなく消滅させる技術もー、
”正しく”使うことができれば優れた技術だー。
他人に憑依してその健康状態を確認したり、
宇宙人のように相手の同意を元にその身体を一時的に借りたりー、
遺体を火葬せずに、瞬時に光の雫にすることができれば
当然、火葬の手間もかからないし、火葬する場所がいっぱいで
遺体を保管するようなコスト問題もかからなくなるー。
が、人類はそれを正しく利用することができなかったー。
「ーーー人間よ、教えてくれー」
惑星ゼグの代表・グ・レブラは、
生き残っていた人間の一人を母船に招いてそう言葉を口にしたー。
「あれだけ優れた技術があって、なぜ、地球はこのような状態になったのだー?」
壊滅状態に陥り、既に総人口の9割を失った状態の地球を見て
そう言葉を口にするー。
「ーーあ、あなたたちの…ひ、憑依のせいよ!
家族も、妹も、友達もー!みんな!」
女がそう叫ぶと、レブラは戸惑いの表情を浮かべたー。
「ーー”ルール”を決めて、正しく使えばこのようなことは起きぬはずだ」
そう、呟くレブラー。
「ールール?こんな力があれば、みんな悪用するに決まってる!
必ず悪用する人間が出てきて、対処しきれなくなる!
その結果がこれよ!」
女が叫ぶと、レブラは戸惑いの表情を浮かべたー。
彼らはーーー
”地球”を侵略しに来たのではないー。
最初に説明した通り、本当に”知的生命体同士”手を取り合おうと、
そうしていたー。
だからこそ、あらゆる技術を提供したー。
憑依も、人を操る力も、遺体処理用の粉も、
その他の技術も全て、
”善意”で提供したー。
何故なら、惑星ゼグでは、それらの力が”正しく”用いられて
何の問題も起きていないからだー。
惑星ゼグでは”ルール”を決めればしっかりとそれを守り、
悪用する者はいないー。
ゼグの宇宙人は”合理的な考え”を何よりも大事にしていて
無駄を徹底的に省いている。
怒りの感情すら、この宇宙人たちは”無駄なもの”をとして
持ち合わせていないー。
それ故に、”地球の今の現状”が理解できなかったし、
地球人に憑依の力を与えた結果”こうなる”などとは予想もできなかったー。
かつて岩隈副総理大臣が疑問を抱いた
”憑依の力を持っていながら、トラブルが起きた時のための技術”を
持っていなかったのもそのためー。
惑星ゼグでは、憑依を悪用しようと考える者など”存在しない”ため、
そういう技術を作る必要がなかったからだー。
地球側に頼まれて急遽、それを開発したものの、
やはり惑星ゼグ基準の”技術を悪用する人間などいない”という考えの元
作られた”浄化装置”は、さらに地球にとって逆効果となったー。
「ーー我々はただ、地球の皆さんの発展を願っていただけだー」
グ・レブラはそう呟くと、
不満そうに、生き残りの女性が「人殺し!」と叫ぶー。
「ーーー…理解できぬー」
グ・レブラは心底困惑した様子でそう言葉を口にしたー。
やがて、人類はほぼ”壊滅”したー。
社会システムは崩壊し、世紀末のような世界に
ごくわずかな生き残りがいるのみー。
その生き残りも憑依能力を使って悪事を働いたり、
略奪をしたり、混沌とした状況が続いているー。
「ーーーー撤収しましょう」
No2のガ・ギルドがそう呟くと、
代表団のリーダー・レブラは「やむを得ない」と、そう言葉を口にするー。
惑星ゼグの宇宙船たちが、空高く舞い上がっていき、地球から離脱するー。
その様子を見ていた”憑依されている女”は
ニヤニヤしながら笑うと、
「へへー地球を滅ぼしに来た宇宙人たちのおかげで、最高の身体が手に入ったぜ!」と、
ゲラゲラと笑いながらそう叫んだー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
侵略目的の宇宙人ではありませんでした~!☆
…でも、結果は悲惨な結果に…!
お読み下さりありがとうございました~~!
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