彼は、”自分の顔”が大嫌いだったー。
周囲からは”別にそんなに悪い顔じゃないだろ”などと
突っ込まれながらも、どうしても”自分の顔”が無理な彼ー。
そんな彼が、ある日、彼女と入れ替わってしまってー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チャイムが鳴り響く中、
教室で友達と雑談していた高校生・竹山 正彦(たけやま まさひこ)は、
苦笑いしながら、
「昨日も、鏡に映った俺の顔を見て”オェッ!”ってなったしー」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーおいおいおい、そこまで悪い顔じゃないだろー?
っていうか、お前の顔でオェッ!なら、俺はどうなるんだよー?」
正彦と話をしていた友人の野澤 浩平(のざわ こうへい)が
呆れ顔で笑うー。
「ーーははー、絶対、浩平の方がいい顔してるだろー?」
正彦が浩平に対してそう返すと、
浩平は少しイヤそうな顔をしながら、
「おいおい皮肉かー?全然モテない俺に対するー」と、
自分を指差しつつ、そう言い放つー。
「いやいや、皮肉じゃないしー。絶対、浩平の方がいい顔だろー?」
正彦はそれだけ言うと、
「ー小さい頃から、自分の顔を見ると吐き気を催すぐらい
自分の顔が嫌いなんだよなぁ~」と、ため息を吐き出しながら
言葉を口にするー。
正彦はー、”自分の顔”が小さい頃から大嫌いだったー。
世間的に”客観的に見れば”正彦の顔は別に
そんなに悪い顔はしていないー。
”イケメン”とは言えないものの、
”普通”の顔で、十分、”どこにでもいるようなタイプ”の顔だー。
が、”顔の好み”は、人それぞれー。
正彦は小さい頃から自分の顔がとにかく大嫌いで、
鏡に顔が映るだけでも”オェッ”となってしまうようなー、
とにかく、”生理的に俺の顔が無理”と、そんな状態だったー。
「ーま、よかったよー
人間が、自分の顔を自分で確認できる生き物じゃなくてー」
正彦が笑いながら、
”鏡を見たり、写真を見たりしなきゃ、俺が俺の顔を見る方法ないからな”と、
そんな言葉を付け加えるー。
「おいおいー…自分の顔に何の恨みがあるんだよー」
あまりに自分の顔を嫌悪する正彦に対して、友人の浩平は
”やれやれ”という様子を見せると、
そこに、”彼女”が通りがかったー。
と、言っても、浩平の彼女ではないー。
自分の顔を嫌悪している正彦の方の彼女だー。
そもそも、浩平には彼女はいないー。
「ーーあ、杉浦(すぎうら)さんー」
浩平がそう言いながら、正彦の彼女・
杉浦 瑠奈(すぎうら るな)を呼び止めると、
瑠奈に対して、「正彦のやつ、また自分の顔が~!とか、
始まったんだけど、どうにかしてくれよ~」と、笑いながら言うー。
「ーえ~?」
瑠奈は苦笑いしながら、彼氏である正彦のほうを見ると、
「ーーまた顔の話してるの~?」と、少し呆れたような口調で言うー。
「ーいや、だってー、昨日鏡でうっかり見ちまって、オェッってー」
正彦がそう言うと、
瑠奈は笑いながら、
「ーわたしからすると、好きな人の顔を馬鹿にされてる気分に
なるんだけど~…」と、そう言葉を口にするー。
と、言っても、その”好きな人”の顔を馬鹿にしているのは
”好きな人”本人なのだけれどもー…。
「ーーはは、ごめんごめんー
でもなぁー…やっぱ自分の顔は好きになれなくてー」
正彦のその言葉に、瑠奈は「ーやっぱり小さい頃に何かあったの?」と、
心配そうに言葉を口にするー。
”自分の顔が大嫌い”な正彦には、彼女もいるー。
自分の顔が大嫌いなだけで、性格的にはそこそこ良い感じで、
そもそも、顔も”悪い”わけではないー。
「ーーいや~自分には彼女がいるくせに、”俺の顔はオェッ~”とか、
言われてもなぁ~」
友人の浩平が笑いながら言うー。
「ーーふふー」
正彦の彼女・瑠奈は、そんな浩平の言葉に少しだけ笑うと、
「ーーでもー」と、彼氏の正彦のほうを見つめながら
言葉を口にするー。
「ーそんなに嫌わなくてもいいと思うけどなぁ~…」
とー。
瑠奈も、当然正彦が自分の顔が大嫌いなことは知っているー。
が、あまりにも正彦が自分の顔を嫌っているため、
そのことは付き合い始めた頃から心配していたー。
「ーーねぇ、知ってるー?
正彦、写真も一緒に撮ってくれないんだよ~?」
瑠奈が少し不満そうに、正彦の友人の浩平に対して
愚痴を口にすると、
浩平は「マジかよ!?」と、声を上げながら、
「ーお前、こんな可愛い彼女がいるのに、そんなことしてると
別れられちゃうかもしれないぞ?」と、
正彦に対して苦言を呈するー。
「ーーか、か、顔を隠してれば、何とかー
いや、だってさー、瑠奈の横にゴミみたいな顔があったらー
瑠奈が可哀想だろ!?」
正彦がそう言うと、
瑠奈は「自分の顔をゴミとか言っちゃだめ~!!」と、
そんな言葉を口にしたー。
ーーいつも通りのやり取りー。
いつも通りの日常ー。
けれど、この日の帰り道、二人の運命は大きく変わることになるー。
「ーー…そういえば、今度の土曜日だけど、
待ち合わせの場所は北口の方でいいんだっけー?」
瑠奈が歩きながらそう言葉を口にすると、
正彦は「ーーそうそうー南口の方が混んでるし、瑠奈もその方がいいだろ?」と、
穏やかな口調で言葉を口にするー。
どうやら、今度の土曜日のデートの話し合いをしているようだー。
二人とも、何だかんだで仲良しで、
瑠奈も”正彦が自分の顔のことを嫌っている”こと以外は
何も不満に感じている部分はなかったー。
「ーーーうん!でも、正彦は南口の方が楽でしょ?本当にいいの?」
瑠奈が、正彦に配慮するような言葉を口にすると、
正彦は「いいさいいさー。瑠奈に歩かせちゃうのも悪いしー」と、笑うー。
がー
その時だったー
「ーーーあぶない!!」
「えっ!?」
正彦が瑠奈よりも先に”あること”に気付いてー、
慌てて瑠奈に飛び掛かるようにして、瑠奈を突き飛ばすー。
”瑠奈”を守りー、
”自分自身”もそれを回避するためには、
瑠奈を押すだけではなく、瑠奈に飛びつくようにして、
瑠奈を守るしかなかったー。
直後ー
丁度、二人が歩いていた歩道をバイクが走り抜けていくー。
”そのまま歩いていたら”瑠奈ー、
いや、あるいは二人ともバイクに追突されていたかもしれないー。
「ーーあ、危ないな!!どこを見て走ってー」
起き上がった正彦が、歩道に突っ込むようにして
走って来たバイクに対して、そう言葉を口にするー。
がーーー
「ーーーえっ…?」
正彦は、”自分の声”の異変を感じたー。
自分の口から”女の声”ー
それも、よく聞き覚えのある女の声が出たのだー。
そう、彼女の”瑠奈”の声がー。
「ーーす、すみませんー」
困惑した様子のバイクの運転手が駆け寄って来るー。
よそ見をしていたのか、操作を誤ったのか、
居眠りしていたのかー
少なくとも、二人の命を狙ったとか、
そういうことではなさそうだったー
「ーーーえ……ど、どういうことー…?」
しかしー
瑠奈と正彦の二人はー、
駆け寄って来たバイクの運転手に構っている余裕もなくすほどの
”ある事態”に困惑していたー。
「ーーーわ、わたしが…め、目の前にー?」
”正彦”がそう言葉を口にすると、
先に起き上がってバイクに文句を言ったはずの正彦ー
ーーー瑠奈になってしまった正彦が
目の前に”自分自身”がいることに気付きー、
「ーーど、どうなってーー… お、オェッー」と、
”大嫌いな自分の顔”をみて、瑠奈の身体で吐きそうな仕草を
してしまうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人は、バイクに轢かれそうになって
転倒してしまった際に”入れ替わって”しまっていたー。
ひとまず、近くの公園に移動して、
状況を話し合うふたりー。
「ーーーこれって…わたしたち、その…入れ替わっちゃったーってやつだよねー?
まさか、こんなことが本当に起きるなんてー…
…映画とかでは見たことあるけどー」
正彦になった瑠奈は、戸惑いの表情を浮かべながら
そんな言葉を口にするー。
自分が発する声が、いつもの自分の声ー”瑠奈”の声ではなく、
正彦の声になっているこの状況に、正彦(瑠奈)は戸惑いを感じると共に、
少しドキドキもしていたー。
好きな彼の声を、自分が出すことができるこの状況にー、
何も感じずに平常心でいることは難しいー。
「ーーーそ、そうだよなー…い、いったいどうなってるんだ?」
瑠奈になった正彦もそんな言葉を口にするー。
自分が彼女の身体になってしまったことに落ち着かない様子を
見せているー。
がー、それ以上に
瑠奈(正彦)は、”あること”に困惑していたー。
それはー
”何よりも大嫌いな自分の顔”が、すぐ目の前にあることー。
”自分が自分である限り”ー
自分の顔は、一番近くにあるけれど、
鏡や写真で見たりしない限りは、
自分自身が”見る”ことはできなかったー。
けれど、”今”は違うー。
自分の大嫌いな顔が、目の前にあるー。
すぐ、目の前にー。
いつでもー、視界に入るところにー。
「ーーーー…っ」
瑠奈(正彦)が険しい表情を浮かべると、
吐き気を感じながら
「ーーと、とにかく元に戻る方法を探さないとなー」
と、そう言葉を口にするー。
正彦(瑠奈)は、そんな瑠奈(正彦)の様子を心配しながら
「…だ、大丈夫ー?どこか怪我でもしてるのー?」と、
さっきバイクに追突されそうになった時に、
怪我でもしたのかと思い、心配そうに言葉を口にするー。
「ーーーーいや…だ、大丈夫ー怪我はしてないー」
瑠奈(正彦)はそう返事を返すー。
自分の口から、大好きな彼女である瑠奈の声が出るー。
そのことには、正彦になった瑠奈と同じように
ドキドキするしー、
自分が瑠奈の身体になっていることにもドキドキするー。
スカートを履いている状態にも当然、ドキドキするし、
なんだか、ズボンとは違う違和感のようなものも感じるー。
けれど、それらが全て吹き飛んでしまうぐらいに、
瑠奈(正彦)は戸惑っていたー。
「ーーーーうっ…オエッー
ごめん…ダメだ、瑠奈ー
”俺の顔”キモすぎてー」
瑠奈(正彦)が、そう言うと、
再び正彦(瑠奈)から目を逸らすー。
「ーえっ…えぇ…?」
正彦(瑠奈)は、困惑した表情を浮かべるー。
まさか、こんな状況になってまで、
そんなことを言い出すとは思わなかったのだー。
「ーーーち、ちょっとー、い、今、そんなこと言ってる場合じゃなくないー?」
正彦(瑠奈)は、心底困惑した様子でそう言葉を吐き出すー。
今は、”顔”がどうこうよりも、
”入れ替わってしまった”この状況をどうにかしなくてはいけないー。
けれど、瑠奈(正彦)は嫌悪感を露わにしながら、
「ーご、ごめんー、俺、”本気で”無理なんだー自分の顔ー」と
なおも目を合わせないようにするー。
「ーーー~~…正彦ー」
どうして、正彦がそんなに自分の顔を嫌がるのかー
何か理由があるのかもしれないし、
理由がないけど、とにかく嫌いなのかもしれないー。
けれどー、いずれにせよ、”瑠奈”は、その理由を知らないー。
「ーーーー…じ、じゃあ、顔は見なくてもいいからー…、
とにかく、元に戻る方法、考えよー?」
正彦(瑠奈)が、そんな言葉を口にすると、
瑠奈(正彦)も納得した様子で静かに頷くー。
そして、二人で元に戻る方法を色々と相談して、
必要なことは試してみるー。
バイクに轢かれそうになった際と同じように、
飛び掛かってみたりー、
二人で手を握って元に戻るように念じたりー、
頭同士をぶつけてみたりー、
思いつくことは色々と試してみたー。
しかし、二人の身体が元に戻る気配は一向にないー。
「ーーー…どうしようー」
正彦(瑠奈)が、心底戸惑った様子で言うー。
瑠奈(正彦)は、相変わらず”自分の顔”を見ないようにしながら
目を逸らすとー、
「ーーもう、暗くなっちゃったなー」と、そう呟くー。
これ以上遅くなると、二人とも両親が心配してしまうー。
「ーー今日、寝れば治るかもしれないし、
いったん、今日はこのまま帰って
ーー俺は瑠奈のフリを、瑠奈は俺のフリをするしかないーーーかな?」
瑠奈(正彦)はそう言葉を口にすると、
正彦(瑠奈)も、戸惑いながらもそれに納得するー。
「ーーじゃあ、明日の朝、起きたら連絡するねー」
「ーーあぁ」
二人はお互いに必要なことを相談し終えると、
そのまま別れて、お互いの家に向かって歩き出すー。
がーーー
瑠奈(正彦)は、正彦(瑠奈)の姿が見えなくなると、
すぐ近くにあったトイレに駆け込むと、
そこが男子トイレであることも忘れて、一人、嘔吐するのだったー…。
どうしてもー、
”自分の顔”が受け入れられないー…。
そう、思いながらー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”自分の顔が大嫌い”な彼氏と、彼女の入れ替わり…!
なんだか、大変な組み合わせですネ~!!
どんな風になっていくのかは、明日以降のお楽しみデス~!!

コメント