<入れ替わり>自分の顔が無理だった②~疑念~

自分の顔がとにかく大嫌いな男子高校生ー。

そんな彼が、彼女と入れ替わってしまったー。

入れ替わってしまったことで、”自分の顔”を見る機会が
増えてしまった彼の運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお邪魔しますー……
 ーーーー あっ」

瑠奈(正彦)は”寝れば元に戻るかもしれない”と、希望を抱きながら
瑠奈の身体で、瑠奈の家に帰宅していたー。

瑠奈の家にはお邪魔したこともあるし、
瑠奈の両親のことも知ってはいるー。

がー、自分が”瑠奈”としてこの家に帰宅するとなると
色々と訳が違うー。

「ーーーじゃなくてー…ただいまー…」
”お邪魔します”と言ってしまったことを気まずく思いながら
瑠奈(正彦)がそう呟くと、
やがて、瑠奈の母親が「あ、おかえり瑠奈ー遅かったねー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーあ、うんー。部活の話し合いがあったのとー、
 あとー友達と少し話してたからー」
誤魔化す瑠奈(正彦)ー。

瑠奈の普段の話し方や性格は”彼氏”であるために
それなりに知ってはいるし、
瑠奈が親とどんな感じで話しているかも、
家に遊びに来た際に何度か見ているー。

ーーがー、
それでも”自分じゃない人間”を演じるのは、
思ったより難しかったー。

気まずくなって、早々に瑠奈の部屋に向かう
瑠奈(正彦)ー

瑠奈の部屋に姿見が置かれていたことにドキッとして
慌てて目を逸らすも、
「あ、いやー…そっかー…」と、すぐに姿見のほうを見つめるー。

そこにはー
”大嫌いな自分の顔”じゃなくて、瑠奈の顔があったー。

「ーー今はー鏡を見ても大丈夫なんだなー」
瑠奈(正彦)は、少し安堵の表情でそう言葉を口にするー。

鏡から目を逸らしたのはー、
”彼女になっている自分”を見てドキッとしてしまうためではないー。

”自分の顔”が大嫌いな正彦は、反射的に鏡から目を逸らすのが
癖になっていて、瑠奈の身体になっても、それをしてしまったのだー

「ーーってーー…俺が本当に瑠奈になってるー」
改めて、鏡を見つめながら自分が瑠奈になっていることを
実感すると、ドキドキが一気に膨らんでくるー。

「ーい、いやー…へ、変な事を考えるなー俺」
自分に言い聞かせるようにして、そう言葉を口にすると、
瑠奈(正彦)は首をぶんぶん振って、ひとまず椅子に座るー。

そしてーーー

「ーーいやーでも、もし、元に戻らなかったらー
 どうすればー…?

 ーー俺ーーー無理だぞ…?
 俺の顔見ながら生活するのー…」

瑠奈(正彦)が心底不安そうにそう言葉を口にするー。

瑠奈のことは大好きだー。
けれどー、”俺の顔”になった瑠奈をーーー
受け入れられるかどうか、正彦にはまだ分からなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

正彦(瑠奈)は、正彦の家に帰宅してー、
困惑の表情を浮かべていたー。

好きな彼氏の身体になってしまうー。
そんな状況を前に、ドキドキせずにはいられないー。

男子がドキドキするように、
女子だってもちろんドキドキするー。

「ーーえぇ~…どうしようー」
正彦(瑠奈)は、鏡に映る正彦を見て、ドキドキしながら
そう呟くー。

けれど、瑠奈になった正彦と同じように
「か、勝手に変なことするのはダメだよね」と、
そう言葉を口にしてから、
改めて、正彦の顔を鏡で見つめるー。

「ーでも、どうしてあんなに嫌がるんだろうー」

不思議だったー。
”正彦の顔”は、別に”悪い”わけではないと思うー。

正彦のことが好きな瑠奈に”好きだからこその補正”が
かかっているとしても、
決して正彦の顔は”世間的に悪いと言われるような顔”ではない。

アイドルになったり、そういうレベルの顔でもないけれど、
ごく普通の感じで、見るだけで吐き気を催すような、
そんな”顔”とは思えなかったー。

「ーーーーーー」
正彦(瑠奈)は少しだけ寂しそうに、
”自分の顔を毛嫌いする正彦”のことを心配すると、
静かにため息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーーー戻ってないー」
目を覚ました正彦(瑠奈)は戸惑いながら、そう言葉を口にするー。

やむを得ず、二人で連絡を取り合って、
そのまま学校に向かうことにするー。

学校でも、ひとまず”入れ替わったこと”は隠したまま
過ごすことにした二人は、
朝、学校にやってくるとそのまま二人で
空き教室で話し合いを始めたー。

「ーーーーーー」
相変わらず目を合わせようとしない瑠奈(正彦)ー

正彦(瑠奈)は、
「あ、昨日、大丈夫だったー?お風呂とか、トイレとかー」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーーま…まぁー…
 そのー…ーーなんか、ごめんなー」

仕方がなかったこととは言え、”瑠奈の身体”で
お風呂に入ったり、トイレを利用して
色々見てしまったことを謝罪するー。

「ーー別に謝らなくていいよー
 わたしだって、正彦の身体でお風呂に入ったんだしー」
正彦(瑠奈)がそこまで言葉を口にすると、
「ーそ、そっかー」と、瑠奈(正彦)は返事をしながら、
お互いに心の中で”幻滅されたりしてないよねー?”と、
自分の身体を見られたことを少し恥ずかしそうに、
そして不安そうにしながら、
”これからどうするか”を話し合い始めるー。

「ーー病院とかーー…行った方がいいのかなー?」
正彦(瑠奈)がそう言うと、
瑠奈(正彦)は「いやー…病院行ってもー…信じて貰える気がー」と、
不安な表情のまま言葉を口にするー。

やがて、チャイムが鳴り、
目を逸らしたまま、瑠奈(正彦)は立ち去ろうとするー。

がー、自分の態度に瑠奈(正彦)自身も申し訳ないと思ったのか、
「ー分かってると思うけど、瑠奈は何も悪くないからなー?」と、
そう言葉を口にするー

「ーー俺…俺の顔がどうしても無理でーー」
とー。

「ーーうん。大丈夫ー分かってるー」
正彦(瑠奈)はそう言葉を返すと、
瑠奈(正彦)は、正彦(瑠奈)の方は全く見ないまま
少しだけ笑うと、
そのまま足早に立ち去って行ったー。

分かってるー。
分かってはいるー。

でもー…
例え、身体が変わっても
好きな人に目すら合わせて貰えないのはー
とても、寂しかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休みー

「なぁなぁ、杉浦さんと喧嘩でもしたのかー?」
”正彦”の親友である浩平が少し心配そうに
そんな言葉を口にしてきたー

「えっ!?えぇっ!?」
正彦(瑠奈)は少しだけ慌てた様子で
「ーけ、喧嘩なんて、してないよー?」
と、そう言い放つー。

が、浩平はー
「いやいや、今日、杉浦さん、お前の目
 見ようともしてないじゃんー」と、
そうツッコミを入れるー。

正彦(瑠奈)は「え~…そ、それは~」と、
言い訳が浮かばずに、心底困惑したような表情を浮かべるー。

”瑠奈本人”には聞こえないように話をしているつもりだった浩平ー。
しかし、瑠奈になった正彦にもその言葉は聞こえてしまっていたー。

瑠奈(正彦)は少し離れた座席から戸惑いの表情を浮かべるー

”ーー喧嘩はしてないんだけどなぁー…
 でもー確かにそう見えてしまうかー…”

二人が”入れ替わっている”ことを周囲は知らないー。
想像もしていないはずだー。
そんな周囲からすれば、”瑠奈”が、”正彦”と避けているようにしか
見えないのだろうし、そう見えてしまうのも無理はないー。

「ーー浩ーい、いや、野澤くんー
 別にわたしたち、喧嘩はしてないよー?」
たまらず、瑠奈(正彦)が正彦(瑠奈)を助けようと、
二人の近くに行ってそう言葉を口にするー。

「ーえっ、あ、す、杉浦さんー
 え、聞こえてたー?」
気まずそうにする浩平ー

正彦(瑠奈)も、気まずそうに
瑠奈(正彦)のほうを見つめているー。

「ーーで、でも、二人、なんか今日は余所余所しいし、
 杉浦さん、今日、正彦と目を合わせないようにしているように見えたから
 な、何か心配でー」

浩平が戸惑いながらそんな言葉を口にすると、
瑠奈(正彦)は「え~?そんなことないよ~!」と言いながら
”瑠奈と正彦が喧嘩中”という間違った噂が立たないようにと、
必死に正彦(瑠奈)のほうを見つめるー。

「ーーそ、そ、そうかー…?いや、ならいいんだけどさー」
浩平がそう言うと、
正彦(瑠奈)は、心配そうに瑠奈(正彦)のほうを見つめながら
「そ、そうそうー。喧嘩なんてするわけないよー」と、それだけ言葉を口にするー。

”笑顔でそう言葉を口にする正彦(瑠奈)”を見てー、
”笑っている”俺”の顔”を見てしまった瑠奈(正彦)は
青ざめながら「ーーそういうことだからー心配しないでー」と、
浩平に対して”喧嘩してない”と、改めてそう言葉を口にすると、
すぐに廊下に飛び出して、そのまま”女子トイレに入らないといけない”ことも
忘れて、男子トイレに飛び込むと、個室で嘔吐しそうになって
オェッ、と何度も苦しそうな声を吐き出すのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーどうしようー?やっぱりお父さんとお母さんに言うー?」
正彦(瑠奈)がそう言葉を口にするー。

入れ替わった翌日の今日も、やはり一向に身体が元に
戻る様子はないー。

瑠奈(正彦)は相変らず目を逸らしながら、
「ーーー言って、信じてもらえるかなー?」と、不安そうに言葉を口にするー。

「ー分からないー…でもー…
 このままいても、元に戻れないかもしれないしー」
正彦(瑠奈)がそう言うと、
瑠奈(正彦)は戸惑いの表情を浮かべながらも、
「ーーそうだなー…相談するしかないかー」と、
そう言葉を口にしたー。

そして、この日ー、
二人はお互い”自分の本来の家”の方に向かうと、
”入れ替わってしまったこと”を、それぞれ説明したー。

けれどーーー

”ーーそれは一体、どういうことー?
 どうして、正彦くんがそれを知っているのー?”
瑠奈の家に帰宅した正彦(瑠奈)は、
瑠奈の母親からすぐには信じて貰えずに、
やむを得ず、正彦の身体のまま”中身はわたしなんだよ”と証明するために、
小さい頃の思い出や、母親のことなどを詳しく口にしたー。

がー、それが逆効果に出てしまったー。
瑠奈の母親は”娘の彼氏が、わたしや娘の細かいことまで何故か知っている”と
不気味がってしまい、ストーカー扱いするかのような
そんな言葉を口にし始めたのだー

「ま、待ってー、ち、違うの!」
正彦(瑠奈)がそう言うと、
”る、瑠奈のマネをするのはやめて”と、瑠奈の母親に言われてしまうー。

一方ー…
瑠奈になった正彦も、同じく、
”正彦の家”に帰宅して、事情を話していたものの、
”ちょっとごめんなさいー何言ってるか分からないんだけどー”と、
そう言われてしまったー。

”正彦が帰宅してから、確認するからー”と、そう言われてしまって
入れ替わりを簡単には信じてもらうことができないー。

二人はすぐに連絡を取り合って、
今度は”身体”の家のほうー…
お互い、”本来の家ではないほう”に向かって、
再び事情を説明するー。

正彦(瑠奈)は”正彦の家”でー、
瑠奈(正彦)は”瑠奈の家”でー。

けれどー
瑠奈の母親には”彼氏に何か言われて娘まで変な事を言い出している”と
判断されてしまいー、
正彦の母親には”二人でわたしを揶揄ってるの?”などと言われてしまったー。

これ以上騒ぐと、おかしな事態になるかもしれないー。
そう判断した二人はー、”入れ替わりのこと”を周囲に信じてもらうのを
諦めるのだったー。

思った以上にー、
”入れ替わっている”ということを信じてもらうことは難しいー。
そう、思わざるを得なかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人は元に戻るための方法を探しながら、
両親に相談した際の両親の反応から
”他の人に入れ替わりを信じてもらうのは無理”と、
そのままお互いのフリをして生活を続けていたー。

がー、ある日ー…

瑠奈(正彦)に呼び出された正彦(瑠奈)が、
その教室に向かうと、瑠奈(正彦)は困惑の表情を浮かべながら
言葉を口にしたー。

「ーー瑠奈ー」
瑠奈(正彦)が、”自分の名前”を呼ぶー。
入れ替わっているという事情を知らない人間からしたら、
”瑠奈が瑠奈の名前を呼んでいる”というおかしな光景ー。

正彦(瑠奈)は、瑠奈(正彦)が神妙な面持ちを浮かべていることに
不安を感じながらも「話ってー?」と、そう確認するー。

すると、瑠奈(正彦)は静かに口を開いたー。

「ーこのまま”元に戻れなかったら”別れてほしいー」
とー。

「ーーえ…」
呆然とする正彦(瑠奈)ー。

そんな正彦(瑠奈)に視線を合わせないまま、
瑠奈(正彦)は静かに言葉を続けたー。

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!!

どんな結末になってしまうのか、
ぜひ見届けて下さいネ~!!

今日もありがとうございました~~!★!

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