<女体化>もうすぐ男に戻るとき③~卒業~(完)

卒業式当日ー。

いよいよ、3年間の女体化生活を終えて
”男”に戻るその日がやってきたー。

卒業式を終えた彼女を待ち受ける運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

卒業式当日ー。

「ーーーー」
”遥香”は、他の生徒たち以上に寂しい気持ちになっていたー。

3年間を過ごした高校生活の締めくくりー。
この先、もうこの高校に足を運ぶことはー…
少なくとも今までのように、日常的に足を運ぶことはなくなるー。

友達とも”今日が最後”の子もいるかもしれないしー、
この先、関係が続く友達も、今までのように毎日のように
顔を合わせることはなくなるー。

寂しいのは当然だー。

けれどー、”遥香”にとっては”女”として過ごす最後の日であり、
”遥香”ー…自分自身とのお別れの日でもあるー。

そのことを辛く思いながらも、
卒業式本番直前、女子トイレに入った”遥香”は、
「これで、女子トイレに入るのも最後だねー」と、笑うー。

最初は妙な背徳感もあったー。
でも、今はそれが当たり前で、
女子トイレに入ってドキドキするようなことも
今は全くないー。

むしろ、男子に戻ったあとに”間違えて”女子トイレに
入らないように気を付けたいー。

そんな風にも思えるぐらいだー。

「ーーー」
最後の女子トイレを後にしー、
”遥香”は寂しそうな表情を浮かべつつ、
昨日、気まずい雰囲気になってしまった親友の星奈に声をかけるー。

「ー昨日は、ごめんねー」
”遥香”がそう言うと、星奈は「ううんー。わたしこそー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーー今まで本当にありがとうー。
 星奈のこと、この先も忘れないからねー」
”遥香”がそんな言葉を口にして、卒業式の会場である体育館に
移動をし始めようとすると、ふと、星奈が”遥香”を呼び止めたー。

「ーーねぇ…”この先”も会えるよねー?」
星奈のその言葉に、”遥香”は、振り返ることができないまま、
表情を曇らせるー。

”もうー、会えないよー…会いたくてもー”
歯軋りをしながら、心の中でそう呟く遥香ー。

「ーーー…本当に”引っ越す”だけーー???」
星奈は、ここ最近の”遥香”の振る舞いにー、
そして、今のまるで”永遠の別れ”のような言葉に強い違和感を感じていたー。

「ーー…何かあるなら、わたしが何でも力になるからー…
 ーーー…だからー」
星奈がそう言葉を口にすると、”遥香”は、喉元まで”男に戻ること”が
口に出そうになったー。

けれど、それを言わずに耐えると「本当に、ありがとうー」と、
今一度そう言葉を口にしたー。

卒業式本番が始まりー、
最後のひと時を過ごすー。

戻りたくないー、戻りたくないー、と、
時間が近付くにつれて、心が悲鳴を上げるー。

卒業式が終わり、教室でクラスメイトたちと会話を交わすー。

”遥香”という存在は、もういなくなるー。
みんなとは、もう会えなくなるー。
この先、会うことがあっても、”目の前にいる春樹”が、”遥香”だと
気付いてくれる人間は、いないー。

そんな思いが強くなってー、
泣き出しそうになって、
”遥香”は、解散になるとすぐに教室から駆け出したー。

友達の女子から、心配するメッセージがたくさん届くー。

でもー、もう会えないー。

”ーーまた、必ず会えるよねー?”
星奈からそんなメッセージが届くー。

”ううんー。絶対会うからー。わたしはあきらめないー”
星奈のそんなメッセージを見て、
遥香は表情を曇らせて立ち止まるー。

「ーーーーーーー」
”遥香”は今一度、自分の気持ちを振り返るー。

”男に戻りたくない”
それがー、今の素直な気持ちだー。

男より女がいい、とか、そういうことではないー。
高校生活3年間を過ごしてー、
大事な時間を過ごした”遥香”としてこの先も生きたいー
そう、思ったー。

たぶん、自分が元々女で、高校生活3年間を男子で過ごした場合ー
”逆”だったとしても、同じことを思ったと思うー。

”わたしはあきらめない”
そんな、親友の星奈から届いたメッセージを見て、
意を決した”遥香”は「ーーー…わたしも諦めない」と、そう言葉を口にすると、
そのまま家に帰宅して、父・龍平の待つ部屋へと向かったー。

「ーー父さんー」
”遥香”がそう言葉を口にすると、
父・龍平は青色の液体ー…
男体化薬を用意した状態で、その場所で待っていたー。

「ーー”遥香”ーいや、”春樹”ー戻ったか
 卒業式はどうだったー?」
龍平がそう言うと、”遥香”は「無事に終わったよー」とだけ答えるー。

「ーーそうかー」
父・龍平はそれだけ言うと、
男体化薬の入ったコップを示したー。

「ー3年間、よく頑張ったなー。
 ”両方の性別”を経験して、色々と視野も広がっただろうー?
 神宮寺家の跡取りとして、大事な経験も積めたはずだ」

父・龍平はそう言うと、男体化薬を飲むように促し、
元に戻るように、そう言葉を口にしたー。

がーー、”遥香”は首を横に振ったー。

「ー父さんー。俺ー、いや、わたしはーー
 ”このまま”生きたい」
とー、そう言葉を口にするー。

「ーーーー…どういうことだ?」
父・龍平が険しい表情を浮かべるー。

しかし、その表情にも臆することなく、
”遥香”は言葉を続けるー。

「ーーーわたし、元に戻りたくないー」
”遥香”は自分の意思をはっきりと伝えるー。

小さい頃から、父の言うことには大体従ってきた気がするー。
特に、”大きな決断”をするときにはー。

けれどー、”遥香”は今日、初めて、父の方針に真っ向から反論したー。

「ー高校生活の中で大事な友達もたくさんできたし、
 それに、大切な3年間を過ごした”遥香”を捨てたくないー
 もちろんー、”春樹”としてのわたしも大事だったけど、
 でも、今はー…今は”遥香”の方が大事ー。

 どっちかしか選べないなら、わたしは”遥香”として生きたいー」

”遥香”が、真っすぐ父・龍平を見つめながらそう言うと、
龍平は言うー。

「ーそれは、”神宮寺家の掟”を破ることになるぞー?
 それに、お前は戸籍上は”春樹”だー。この先、その姿では苦労することも
 出て来るかもしれないー。」
父・龍平がそう言うと、
「掟破りだって言うなら、それでも構わないー。
 それにー、そういう”壁”も覚悟は出来てるー!
 それでも、わたしは”遥香”として生きたいの!」
と、”遥香”はそう叫んだー。

「ーー”掟”になんて縛られて生きるよりも、自分の決断を大事にしたいの!!」
”遥香”のその言葉に、龍平は無言で立ち上がると、
男体化薬の入ったコップを手にしたー。

そして、”遥香”の腕を掴むー。

”無理矢理飲まされるー”
そう思った遥香ー。

がーーー

父・龍平はそのコップの中身を、遥香ではなく
床に向かって放り出したー。

「ーーえ」
”遥香”が表情を歪めると、
父・龍平は少しだけ笑ったー。

「ーーよく言ったー。遥香」
とー。

「ーーえ???」
困惑する遥香ー。

「ーもちろん、そのまま私の言う通りに、元に戻っても、
 それはそれで、”両方の性別を経験”して、視野は広がるだろうし、
 昔から続く神宮寺家のしきたり通り、経験を積む意味はあっただろうー。

 だがー、私はお前がその道を選ぶよりも、
 父である私に真っ向から反論して、家の掟に囚われなかったことの方が
 嬉しいー」

父・龍平はそう言葉を口にすると、
「いいじゃないかー。”遥香”ー。
 確かに、神宮寺家のしきたりは、”視野を広く持つため”だー。
 ただ、私は自分の気持ちをしっかりと吐き出して
 親が相手であっても意見をぶつけることができるー、
 そんなことの方がもっと大事だと思うー」
と、そう続けたー。

その上で言うー。

「ーその”選択”に後悔はないんだなー?
 だったら、堂々とそのまま”神宮寺 遥香”として生きて行けばいい」

父・龍平がそう言うと、
”遥香”は「父さんー…」と、そう言葉を口にしてから、
意を決した様子で父・龍平を見つめるー。

「ーわたし、後悔しないって約束するー。
 わたしは”神宮寺 遥香”として生きるー」

遥香のそんな言葉に、父・龍平は力強く頷くと、
「ーわかったー。」と、そう言葉を口にするー。

その上で、少し間を置いてから龍平は少しだけ笑ったー。

「ー私もお前と同じだったー」
父・龍平はそう言葉を口にすると、どこか懐かしそうに笑うー。

「ーーえ?」
遥香が少し不思議そうにすると、
「ー私も、高校生活3年間”そう”だったというのは、
 お前が女体化するときに説明したなー?」と、父・龍平は言うー。

”「私も高校生活3年間だけだったし、
 それが神宮寺家の決まりだ」

「と、父さんも3年間女子だったのかー」”

そんな会話をしたのを、遥香は思い出すー。

「ーーー私も”最初”はイヤだったー。
 けど、卒業するときには、お前と同じように
 ”元に戻りたくない”と、そう思ったー」

父・龍平はそれだけ言うと、
「ーそして、お前と同じ道を選んだー。
 神宮寺家の”掟”を破って、”そのまま”生きることにしたー」
と、そう言葉を口にしたー。

「ーーえっ……まさか、父さんー…?」
遥香がそう言うと、
父・龍平は「私は3年間女子だった、とは一度も言っていないぞー」と、
そう言葉を口にしてから、「さすが、私の息子、いや、娘だー」
そのまま遥香の肩を叩くー。

そうー、父・龍平は元々”女”で、逆に、高校生になる時に
男体化薬を飲まされて男体化ー、
卒業の時に”女体化薬”を飲む運命だったものの、
遥香と同じように、龍平自身の父に彼は逆らい、
男のまま生きる道を選んだのだー。

確かに”「と、父さんも3年間女子だったのかー」”と、当時遥香が
呟いた時、父・龍平は何も答えなかったー。

「ーーさぁ、友達に連絡してやれー。
 心配してるんだろ?」

今までの”遥香”の悩みっぷりから、その理由も察していた父・龍平は
そう言うと、そのまま部屋の外に立ち去っていくー。

そんな父・龍平に対して、
「ーえっ!?母さんはそのこと知ってるの?」と、持病で入院中の
母のことを口にすると、
父・龍平は「私が元々女だったことかー?」と、そう言いながら、
「ー知ってるのは、お前と母さんだけさー」と、それだけ言葉を口にして、
そのまま立ち去って行ったー。

「ーーーーー」
一人残された遥香は父の思わぬ過去に少し驚きながらも、
”自分も”元の性別とは別の性別で生きることを決めた身ー。
父の気持ちも十分に理解できたし、
なんとなく、親近感も沸いたー。

「ーーー…ーそうだー。星奈に連絡しなくちゃ」
遥香は嬉しそうに部屋を飛び出して、自分の部屋へと戻っていくー。

そして、友達の星奈に対して連絡を入れると
「ーあ、星奈!わたしだけどー!」
と、嬉しそうに言葉を発するー

”ー遥香!?どうしたの?”
永遠の別れみたいな振る舞いをされていた遥香からの連絡に
星奈は少しだけ驚いたような声を出すと、
「ーーわたしーー…まだみんなと一緒にいられることになったよー」と、
遥香は目に涙を浮かべながらそう言葉を口にするー。

電話の向こうからも、そんな遥香の涙を察した星奈は
”ーーホントに!?よかったー!”と、
心底嬉しそうに、そんな返事をしてくれたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれから1年ー。

大学に通う遥香は、”女子大生”として
楽しそうに、友達と大学内で過ごしていたー。

もう”春樹”に戻ることはないー。
自分の中での葛藤も消えて、
高校時代よりもさらに、心の底から女子として
振る舞うことができるようになったー。

父・龍平や、母親も、そんな”遥香”の様子を見守ってくれているー。

そしてー…
”春樹”に戻らずに済んだ”遥香”は、
高校時代の友達との付き合いも、続けることができているー。

今日は、お互いの休日に久しぶりに親友の星奈と会う日ー。

遥香は嬉しそうにしながら、星奈との待ち合わせ場所に向かうと、
先に到着していた星奈の姿を見つけて、
「あ!星奈!」と、嬉しそうに手を振るのだったー。

おわり

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コメント

自分の好きなように生きる道を選ぶことが出来て、
この先も、前向きに過ごしていくことができそうですネ~!

お読み下さりありがとうございました~~!★★!

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