女体化した状態で、
3年間の高校生活を終えようとしていた彼ー。
しかし、3年前、女体化した時とは違い、
彼は”男に戻ること”に乗り気ではなくなっていてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー来週には”卒業式”だなー」
食事中ー。
ふと、父・龍平がそんな言葉を口にしたー。
「ーうんー」
龍平の息子の春樹は、女体化した状態で”遥香”と名乗り、
この3年間高校生活を送って来たー。
3年前ー。
”卒業したら男に戻す”という約束で、
高校入学前の春休みに女体化した春樹ー。
この家ー、神宮寺家の跡取りとなる人間は、
”視野を広く持つため”として、代々、
跡取りが息子の場合は女体化薬を、跡取りが娘の場合は男体化薬を
飲んで、しばらくの間、生活することになっているー。
父・龍平も高校生活3年間は女子として生活したし、
その前の祖父もそうだー。
近代化する前の祖先たちも、それぞれ、その時代ごとに
何年か、女体化・男体化をして過ごし、生活していたのだと言うー。
「ーーー卒業式が終わったら、”男体化薬”を飲むといいー。
男体化薬は、こちらで用意しておく」
父・龍平はそう言葉を口にするー。
男体化薬を飲めば女体化していた春樹は”元通り”となり、
男に戻ることになるー。
「ーーーーーーー」
”遥香”は、少しだけ表情を曇らせるー。
「ーどうした?
浮かない顔だなー?」
父・龍平のそんな言葉に、”遥香”は少しだけ間を置いてから
「いやー」と、そう答えるー。
「ーーごちそうさまー」
そして、誤魔化すようにして食事を終えると、
”遥香”はそのまま部屋へと戻っていくー。
「ーーーー」
一人残された父・龍平は
「ーーーー…私の時と、同じかー」と、
一人静かにそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
自分の部屋に戻った”遥香”はため息をつくー。
「ーわたしはー…」
そう言葉を口にしながら、鏡を見つめる”遥香”ー。
が、すぐに深呼吸をすると、
「ーあれだけ女になりたくなかったはずなのにー」と、
そう言葉を口にしてから、自分の顔を何度か手で叩くと、
「ーーしっかりしろー。”俺は俺に戻るだけ”なんだー」と、
自分に言い聞かせるように言葉を口にするー。
「”元の自分”に戻るだけなのに、悲しそうな顔なんてする必要ないだろー」
自分に言い聞かせるかのように、再度そんな言葉を口にすると、
”遥香”は、「”俺”は男なんだー」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、卒業式のあと、大学に入学するまでに
みんなでどこかに遊びに行かない?」
”遥香”の親友の星奈が、そんな言葉を口にするー。
高校に登校するのも、あと3回ー。
今日と、卒業式の予行練習と、卒業式当日のみー。
今日以外の残り2回は卒業式関連の登校で、
実質上、”普通の”登校は今日が最後ー。
そんなこともあってか、星奈は、”遥香”や
他の友達に、春休みに遊びに行きたい、と
そう言葉を口にしていたー。
がー、
”遥香”は表情を曇らせるー
「ーわ、わたしは、そのー」
”遥香”はそう言葉を口にすると、
「ー卒業したらすぐに、引っ越ししないといけなくてー」
と、そう言葉を口にするー。
「ーーーえ~……春休み中でも、ダメ…?」
親友の星奈が悲しそうにそう言葉を口にするのを見て
”遥香”は心を痛めるー。
引っ越しなどしないー。
本当だったら、星奈や他の友達と遊びに行きたいー。
けれどー……
”「ーーー卒業式が終わったら、”男体化薬”を飲むといいー。
男体化薬は、こちらで用意しておく」”
父・龍平はそう言っていたー。
卒業式のその日、春樹の”遥香”としての人生は終わるー。
たった3年間だけ生きた”遥香”は間もなくいなくなるー。
「ーーー」
”死ぬわけじゃないのに、なんだか、死んじゃうようなー…
不思議な気持ちー”
”遥香”はそんな風に思いながら
「行きたいけどー…いけないー」と、悔しそうに言葉を口にするー。
「ーー遥香ー…」
親友の星奈は”何か訳があるのだと”感じ取ったのか、
それ以上は何も言わずに、
「ーーま、また機会があったら、遥香とも遊びに行きたいなー」と、
そんな言葉を口にするー。
”遥香”は、目に涙が浮かばないように必死に堪えながら
「うんー」と、そう言葉を口にするー。
会えるのは、もう、あとわずかな回数ー。
星奈と”友達”として会えるのは、卒業式の日が最後ー。
「ーーーーー」
そのあとはーーー…。
帰宅してからも、”今”の友達たちと会えないことに辛さが込み上げて来るー。
この気持ちは”2回目”だー。
中学卒業後、女体化したあとにも同じことを感じたー。
中学時代までの友達と”春樹”として会えなくなってしまったからだー。
今度は、男体化することで”また”同じ想いをすることになるー。
もちろん、男に戻れば、中学時代までの友達とはまた”春樹”として
会えるようになるかもしれないー。
けれど、高校生活3年間の間は、メッセージのやり取りを多少しただけだし、
みんなにももう、それぞれ別の高校で友達が出来たのだろうー。
3年間、会いもしないうちにもはや、元々の友達たちは”疎遠”になってしまったー。
「ーーーーーまた、みんなとお別れーー」
星奈たち、友達と撮影した写真を見つめるー
”男に戻れば”
また最初のうちはイヤでも、だんだんと慣れてきて、
大学では新しい友達が出来てー、
次第に”男がいい”に変わっていくのは分かっているー。
女体化する前だって、あんなに嫌がっていたのに、
今はこんな気持ちなのだー。
”今、耐えれば”、そのうち辛くなくなるのは分かっているー。
けれどーーー
高校生活の3年間ー。
思春期の3年間を女子として過ごした春樹はー、
女体化するときよりも、より辛く、苦しい気持ちを消せずにいたー。
「ーーーーーー」
髪飾りを見つめながら、”遥香”は、悔しそうな表情を浮かべると、
「もう、こんなもの使えないー」と、少し苛立った様子で
それをゴミ箱の方に放り投げるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー父さんー」
卒業式予行の前日ー。
父・龍平と食事を摂りながら、
”遥香”は口を開いたー。
「どうした?」
龍平が食事の手を止めて”遥香”を見つめるー。
「ーーーわたし、”男”に戻るのーー…
春休みの後半でいいー?」
とー。
「ーーーー…急にどうした?」
父・龍平はそう言葉を口にしながら、
「ーーあれだけ女体化を嫌がっていたお前なら、
喜んで元に戻ると思ってたがー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーー」
”遥香”は、少し躊躇ってから
「友達がー…春休みに一緒に遊びたいって言ってるからー」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーーーー」
父・龍平は、”遥香”を見つめると、
「ーー残念だが、”家の規則”を破ることはできない」と、
そう言葉を口にしてから
「男体化薬は私が用意しておくー。卒業式が終わったら男に戻るんだー」と、
そんな言葉を続けるー。
「ーーー……」
”遥香”は、いかにも不服そうな雰囲気を見せながらも、
「ーわかったー」とだけ答えると、
後は何も言わずにお互いに黙々と食事を続けるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
卒業式の予行練習が行われるー。
”明日”が卒業式本番ー。
”遥香”は明日、この世からいなくなり、
”遥香”は”春樹”になるー。
「ーーーーー」
ギリッと歯軋りをする”遥香”ー。
そんな”遥香”に対して、友達の星奈が、
「ー卒業式の次の日とかなら、一緒に遊びに行けたりしない?」と、
そう提案してくるー。
がーー
それも、叶わぬ話ー。
何故なら、明日の卒業式のあと、”遥香”は男体化して
”春樹”に戻る運命にあるのだからー。
「ーーーー…行けない」
”遥香”はそう言葉を口にするー。
「ーーー…そ、そんなにすぐに引っ越しするのー?」
友達の星奈は困惑した表情を浮かべるー。
「ーじ、じゃあー、明日の夕方とかはー?
卒業式終わったあとにすぐ、少しぐらいー
ほら…遠くに行っちゃうなら、その前にゆっくりー」
星奈のそんな言葉に
”遥香”は、「行けないって言ってるでしょ!」と、
つい苛立ちをぶつけてしまうー。
「ーーご、ごめんー」
星奈は、普段、そんな風に怒ったりしない”遥香”の苛立ちに
少し驚きの表情を浮かべながら謝罪の言葉を口にすると、
”遥香”も、星奈の悲しそうな表情を見て、
すぐにハッとして「ーー…わ、わたしこそごめんー」と、
そう言葉を口にすると、
「行きたくても、行けないのー」と吐き出すようにして
言葉を口にしたー。
そのまま、気まずい雰囲気の中、
卒業式の予行練習は進んでいき、
結局、その日は星奈とそれ以上話をすることも
できないまま、終わってしまったー。
家に向かって歩きながら、
”わたしがー女子として過ごすのも、あと24時間ぐらいかなー”と、
心の中でそう呟くー。
”違う違うー、わたし、じゃなくて”俺”だー。もう、俺は俺に戻るんだー”
自分にそう言い聞かせながら、星奈は道をゆっくりと歩くー。
帰宅してからも、元気のないままの”遥香”
そんな”遥香”の姿を広い自宅の廊下で見かけた
父・龍平は少しだけ複雑そうな表情を浮かべるー。
”ーー私の時もそうだったー。
ー今は存分に悩むといい”
父・龍平はそんなことを心の中で思いながら
そのまま、息子の…いや、”今”はまだ、娘の”遥香”に
声をかけることなく、自分の部屋へと戻っていくー。
”遥香”は、そんな父・龍平のことには気づかず、
大きくため息をつくと、遥香自身の部屋の中に入って
ため息を吐き出したー。
鏡を見つめる”遥香”ー。
自分自身が、驚くほど悲しそうな表情を浮かべているー。
「ーーーははー…こんな”顔”しちゃってー」
”遥香”は自虐的にそう言葉を口にすると、
「ーーー男に戻れば、きっとまたー…」
と、悲しそうに呟くー。
3年前ー
女体化するのが、あんなに嫌だったのに、
今は”戻りたくない”とそう思ってしまっているー。
でも、裏を返せば、
それはー、きっとまた、男に戻れば
そのうち”女になりたくない”と、気持ちが変わるのかもしれないー。
けれどー、それでもー、
大事な高校生活3年間を女子として過ごした春樹はー、
女体化するときよりも強い、苦痛を感じていたー。
自分が心身ともに成長する一番大事な時期を
女子として過ごしたのだー。
だからこそ、中学を卒業して女体化を告げられたあの時よりもー、
とてもつらく、重く感じたー。
「ーー男に戻れば、またそのうち慣れるよー。慣れるー」
自分に言い聞かせるように、そう言葉を口にした
”遥香”は、目から涙をこぼしながら、その日は眠りについたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
”女”として過ごす最終日がやってきたー。
最終日ー、と言っても
卒業式が終わって、帰宅したら用意された男体化薬を飲んで
男に戻るー。
実質上はもう、あと半日もないー。
数時間後にはー、今日の夜に眠る頃には
遥香から、春樹へと戻るー。
「ーーそういえば、最初はドキドキしたよねー」
朝、鏡を見つめながら女体化した時の頃を思い出す”遥香”ー。
最初に女体化した時には
”女の身体”になった自分にー、”女の声”を出す自分に
ドキドキしたのを今でも覚えているー。
高校に女子の制服を着て向かう初日には
”こんな服、恥ずかしくて着れるわけないだろ!”と騒いだのも覚えているー。
「ーー懐かしいなぁ」
”遥香”は名残惜しそうにそう言葉を口にすると、
時計を確認してから「もう、学校に向かわなくちゃー」と、
そう言葉を口にして、
学校に向かう準備を始めるー。
「ーーー”遥香”ー
卒業式が終わったら、男体化薬を用意しておくー。」
父・龍平のその言葉に、”遥香”は静かに頷くと、
そのまま学校へと向かうー。
男に戻ったら、病気療養中の母のところにも足を運んで、
また、男に戻った姿を見せてあげないといけないー。
そんなことを思いつつ、”遥香”は卒業式が行われる学校に
向かって、歩き出すのだったー。
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!★
どんな結末が待っているかは…
明日のお楽しみデス!!
今日も寒いので、体調を崩さないように気を付けて下さいネ~!!

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