とある研究施設で、
真面目な性格の助手と、変わり者の博士が入れ替わってしまったー。
二人の入れ替わりを前に、
入れ替わった二人だけではなく、研究所内も混乱状態に
陥っていくー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーわ、わたしは、水川なんですー!
ほ、本当なんです!」
矢崎博士が、そう叫ぶー。
矢崎博士の身体になってしまった詩織の言葉に
駆け付けた北島副所長は困惑した表情を浮かべたー。
「ーー…はぁ、博士ー
また、博士は僕たちを振り回そうとするー」
これまで散々、”矢崎博士”に振り回されてきた
北島副所長は困惑の表情を浮かべるー。
がー
「ーーた、た、た、確かに、博士はいつも変なこと言いますし、
しますけど、でも、今度は本当なんですー!」
矢崎博士(詩織)が必死にそう叫ぶー。
「ーーいやぁ、でも博士ー
確かに入れ替わり薬の研究をしていたとはいえ、
まだ入れ替わり薬は開発途上でしたしー、
動物実験での入れ替わりもまだでしたよねー?
いきなり、人間が入れ替わるなんてー」
北島副所長が困惑の表情を浮かべたまま
そう言葉を口にするとー、
突然ーー詩織(矢崎博士)が、蟹股でズカズカと歩きながら
部屋に入って来たー。
ブツブツと何かを呟きながら詩織(矢崎博士)が部屋に入って来るー。
”身体が入れ替わっていること”に気付いて失神してしまった
詩織(矢崎博士)は再び意識を取り戻して、
慌てて”ここ”にやってきたのだー。
「ーーどきたまえ」
詩織(矢崎博士)が、北島副所長にそう言うと、
「ーー君ーー…水川くんかねー?」と、詩織(矢崎博士)が言うー。
「ーーえ……あ………は、博士ですかー?」
矢崎博士(詩織)も、”自分”の姿を見ながらそう言うと、
「そうだともー!」と、そう言いながら、
「ーこれは…すごい!すごいことだぞ!水川くんー!」と、
詩織の身体で興奮した様子で話し始めたー。
”入れ替わり薬”は、まだ開発の初期段階で
一度も入れ替わりを実際に引き起こしたことはなかったし、
動物を使った入れ替わり実験もまだだったー。
それがーー
こうして入れ替わったのだー。
研究者としての血が騒ぎ、興奮した様子で
自分が詩織の身体であることも忘れー、
矢崎博士は嬉しそうに早口でベラベラと喋り始めるー。
「ーあ…あははー」
矢崎博士(詩織)は興奮しているのか顔を赤らめながら
ひたすら喋り続ける詩織(矢崎博士)を見つめて、苦笑いするー。
”こんなに早口で、しかも嬉しそうに話しているわたし”を見るのは
なんだか変な気分だったー。
当然ー、詩織(矢崎博士)が顔を赤くしているのはー、
異性の身体になったからではないー。
それ以上に、入れ替わりが実際に起きたことに
研究者として言いようのない興奮に包まれて
顔を真っ赤にしながら、今の状況を熱弁していたー
「ーーー~~~~~~っ」
その様子を見ていた北島副所長は戸惑うー
”こ、これはー…ホントに入れ替わってるなーー…”
詩織(矢崎博士)の振る舞いに、
本当に入れ替わっていることを確信する北島副所長ー。
「あ、あ、あ、あのー!
お、お二人が本当に入れ替わっていることは分かりましたー
でも、このあとどうするおつもりですかー!?」
北島副所長が不安そうに聞くと、
「ー決まってるじゃないか。北島くんー
こうして、わたしが水川くんになったということは
入れ替わりは実現できるということだよー
研究以外にすることはないじゃないかー」
と、詩織(矢崎博士)はなおも興奮が収まらないという
様子で語るー。
「ーあ、いやー、そのー
身体はーーどうされるおつもりですかー?」
北島副社長が不安そうに言うー。
すると、詩織(矢崎博士)は
「もちろん、入れ替わり薬が完成すれば私と水川くんは
元に戻れるー。
安心したまえー」と、
矢崎博士(詩織)の方も見ながらそう言ったー。
あくまでも”研究”にしか興味が無さすぎる矢崎博士は、
詩織の身体をこのまま奪うつもりは毛頭無さそうでー、
その点は”入れ替わった相手がよかったー”と、
言えるのかもしれないー。
がー
その時だったー
「むっ!」
詩織(矢崎博士)は、突然そう声を上げると、
いきなり奇妙な踊りのようなものを踊り始めたー
「~~~~~」
「~~~…」
北島副所長が呆然とするー。
恥ずかしそうに顔を赤らめながら
目を逸らす矢崎博士(詩織)ー
”変わり者”の矢崎博士の癖のひとつー、
”何かを思いつくと、突然奇妙なダンスを踊り始めるー”
その癖が、今、発動したのだー。
本人曰く、
踊ることで、思いついたことを忘れないように
脳の全体に浸透させているー、のだとかー。
天才にしか分からない、奇妙な行動ー…なのかもしれないー。
が、どこの場所でもやるため、
以前、研究成果の発表の場で急にダンスを踊り始めたり、
街中を歩いている最中に急に踊り始めたりして
問題になったこともあったー。
髪を振り乱しながら激しく踊る詩織(矢崎博士)ー
「ーは、は、博士ーそ、それ、わたしの身体ー」
流石に気まずいのか、矢崎博士(詩織)が指摘するも、
それでも、詩織(矢崎博士)は止まらなかったー。
一度踊り出すと、最後まで止まらないのだー
「ーーい、イイー…」
そんな様子を見ながら、北島副社長は
若くて美人な詩織の身体でダンスを踊っている矢崎博士を見て、
一人でドキドキしていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早速、研究室に舞い戻った詩織(矢崎博士)は
研究に没頭し始めるー。
ダンスで乱れた髪もそのままに、
入れ替わり薬の研究を熱心に再開する詩織(矢崎博士)ー
戸惑いながらも、研究自体には一生懸命で、
矢崎博士のことも研究者として尊敬している
矢崎博士(詩織)はいつも通り、その助手役として、
研究をサポートしていくー。
その様子を見ていたお調子者の研究員・健太郎は、
戸惑うような表情を見せるー。
外から見れば、
20代の若手女性研究員が、中年の博士をこき使っているようなー、
そんな不思議な光景ー
「な、なんか俺のせいですみませんー」
入れ替わりの原因を作ってしまった健太郎は、
そんな二人の光景を見つめながら、
心底申し訳なさそうに言葉を口にするー。
「ーーううんー坂山くんは心配しないでー
こうして、入れ替わりが実際に起きたわけだし、
博士の研究が完成したら、わたしたちもちゃんと元に戻れるからー」
矢崎博士(詩織)が、優しく後輩でもある健太郎に対して
そんな言葉を口にするー。
もちろん、詩織自身にも不安はあったー。
入れ替わり薬を開発していたとは言え、
まだ、実際に入れ替わりが起きたことはなかったし、
自分たちがいきなりその当事者になってしまうとは思わなかったー。
しかも、入れ替わり薬が実際にほぼ完成でもして、
それをテストしている状態なのであればともかく、
今回は不慮の事故による入れ替わりだ。
どうして入れ替わったのかハッキリと解明することもできていないし、
そもそも、もう一度入れ替わりを起こすことができるのかどうかも
ハッキリとは分からないー。
当然、そんな状況であれば詩織(矢崎博士)が強い不安を
感じるのも無理はないことだったー。
けれどー、だからと言って落ち込むような素振りを見せ続けたり、
原因を作ってしまった後輩の健太郎に対して、
ネチネチと何か文句を言ったとしても、
何も始まらないー。
だからこそ、矢崎博士(詩織)は、できるだけ不安を
周囲に見せないようにしていたー。
「ーーーでも、博士が中身になった水川さんー
美人なのに壊れてる感じがしてー
なんかちょっとドキドキしますねー」
苦笑いしながらそう言葉を口にする健太郎ー。
「ーーちょ、ちょっとー
揶揄わないでよー」
矢崎博士(詩織)は、恥ずかしそうにしながら、
パソコンに向かって何かを熱心に入力している
詩織(矢崎博士)のほうを見つめるー。
確かにー
”中身が博士”の”わたし”は、
いつもとはまるで違う雰囲気だったしー、
自分自身が見ていても、なんだか少しドキドキするようなー、
そんな不思議な光景だったー。
「ーーーす、すみませんー
とにかく博士も、水川さんも元に戻れるように
俺も何でもしますからー」
健太郎のその言葉に、矢崎博士(詩織)は、
「うんー。ありがとうー」と、そう言葉を口にしながら
静かに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー…」
ブツブツ呟きながら、実験器具に向かう
詩織(矢崎博士)ー
矢崎博士(詩織)は、
そんな詩織(矢崎博士)のことをサポートしつつ、
作業を進めていくー。
そしてー
夜遅くー
ついに、”それ”は完成したー。
「ーーできた…できたぞ水川くんー!」
心底嬉しそうにそう叫ぶ詩織(矢崎博士)ー
「ーよかったー…これで、元に戻れそうですねー」
矢崎博士(詩織)が嬉しそうにそう言葉を口にすると、
「うむ」と、詩織(矢崎博士)は頷いたー。
そうー
詩織(矢崎博士)は、先ほど、入れ替わりの原因となった
”入れ替わり薬のサンプル”を再び作り上げー、
”同じ状況”を再現することで、身体を元に戻そうとしていたー。
それだけではないー。
先程、矢崎博士と詩織が入れ替わったのと”同じ条件”を再現すれば
入れ替わりが必ず発生することさえ分かればー、
あとはそこを応用することで、一気に入れ替わり薬の完成に近づくかもしれないー。
「ーそれにしてもー……
水川くんって、思ったよりも大きいんだなー」
苦笑いする詩織(矢崎博士)ー
「ーーえ?な、何がですー?」
矢崎博士(詩織)が困惑した様子でそう言葉を口にすると、
「ーー性別の違いというものも実に興味深いー。
入れ替われるようになったら、研究させてもらえないかねー?」と、
自分の胸を指差しながら言葉を口にしたー。
「ーーは、は、は、博士ー!
そ、そういうのセクハラですよ!!」
矢崎博士(詩織)が顔を赤らめながら言うと、
詩織(矢崎博士)は「えっー…いや、私はただ、生物学的な違いが
気になっただけなんだがー」と、そう言葉を口にするー。
矢崎博士に”下心”はまるでなかったー。
ただ単に言葉の通り”生物学的な違い”が気になっているだけー。
詩織の身体に対する性的な興味は全くなくー、
”研究対象としての興味”があるだけだったー。
「ーーーーま、まぁー博士はそうなんでしょうけどー…
博士のこと、良く知らない人に言ったら
大変なことになるので、気を付けて下さいねー」
矢崎博士(詩織)がそう言うと、
詩織(矢崎博士)は「そ、そういうものかー。難しいな人類はー」と、
複雑そうな表情を浮かべながら頷いたー。
ーー気を取り直して、
”さっきと同じ”条件で、”ガスの充満”を引き起こそうとする
詩織(矢崎博士)ー。
「ーー坂山くん、さっきと同じように、頼むよ」
詩織(矢崎博士)からそう言われたお調子者の健太郎は「あ、は、はいっー!」と、
そう言葉を口にするー。
そしてーー…
先程、”事故”が起きた時と同じように、
健太郎が急いで研究室に入って来て、今度はわざと詩織(矢崎博士)にぶつかろうとするー。
がーーー
突然、ぴたっと止まる健太郎ー。
「ど、どうしたのかねー?」
詩織(矢崎博士)が言うと、
「ーそ、そ、そのー、中身が博士でも、女性にぶつかるのはーー
なんだか気が引けてー」と、
健太郎が申し訳なさそうに言葉を口にするー。
「ーーーはぁ……そんなもんかー?
じゃあ、水川くんー
代わりに頼むー」
詩織(矢崎博士)は、矢崎博士(詩織)に
入れ替わり薬のサンプルが入った容器を持ってもらいー、
もう一度最初からやり直すー。
入れ替わりが起きた際と同じように、
健太郎が研究室に入って来て、そのまま矢崎博士(詩織)にぶつかるー。
矢崎博士(詩織)がその衝撃で入れ替わり薬の入った容器を
さっきと同じように床に落としー、
それを健太郎が踏んで、破損させるー。
これで、さっきと同じガスがーーー
ーーー
ーーーー発生、しなかったー。
「ーーあれれ…?」
戸惑う矢崎博士(詩織)ー。
「ーふむ…同じ状況下でも
さっきと同じ現象は起きないのかー」
詩織(矢崎博士)はそう言葉を口にすると、
戸惑いの表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
深夜まで研究を続けた詩織(矢崎博士)は、
時計をチラッと見つめると、
「そろそろ2時間、睡眠をとらないとなー」
と、そう言葉を口にしたー。
「ーーあ、はいー。博士はまだ寝てませんでしたねー」
先にいったん休んだ矢崎博士(詩織)がそう言うとーー
詩織(矢崎博士)は、突然自分の首を絞め始めたー
「ーえっ!?!?」
驚く矢崎博士(詩織)ー
そういえばー、1日2時間で睡眠は十分と豪語している
矢崎博士はいつも、”自分の首を絞めて失神して寝落ちする”という
とんでもない方法で寝ているー。
その方が”早く寝れる”からなのだとかー。
それを、詩織の身体で、矢崎博士はいつものようにやってしまったー。
白目を剥いて失神する詩織(矢崎博士)ー
「ーー…だ…大丈夫かなぁ…わたしの身体ー」
そんな様子に、矢崎博士(詩織)は心配そうな表情を浮かべることしか
できなかったー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回デス~!
変わり者の博士との入れ替わりだと、
なんだか別の意味で怖い部分もありますネ~!笑
今日もお読み下さりありがとうございました~!☆!
コメント