結婚式の前日ー。
彼は、女体化した状態で目を覚ました。
結婚直前、思わぬ事態に直面した彼の運命はー?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”もう明後日だね~なんだかドキドキするー”
電話相手の梅原 千夏(うめはら ちなつ)が、
そんな言葉を口にするー。
「ーー俺も緊張するけどー、
まぁ、うちの親もあんな感じだし、
いつも通りで大丈夫だよー」
笑いながらそう答えるのは、
千夏の”婚約者”であり、明後日に結婚式と入籍を控えている
島野 涼介(しまの りょうすけ)ー。
涼介と千夏は、大学時代から交際を続けていて、
明後日、結婚式と、結婚式の同日に済ませようと
2人で約束した入籍の手続きを役所で行うつもりだったー。
”ーうん!あ~、でもやっぱりドキドキする~
そんな経験始めてだしー”
電話の向こうの千夏の声は心なしか弾んでいるー。
”わたし、ずっと生涯独身だと思ってたし”
千夏のそんな言葉に、涼介も
「ははー、俺もそんな感じー」などと、二人で会話を続けるー。
やがて、しばらく色々と話をすると、
”あ、ごめんーつい長話しちゃった”と、千夏がそう言葉を口にしたー。
「ーははは、そうだなー
じゃ、明日、予定通り、北口で待ち合わせでいいかなー?」
”うん!それで大丈夫!”
結婚式本番は明後日ー。
明日は二人で、結婚後に同居予定の新居の下見と
そのついでにご飯を一緒に食べて帰る約束をしているー。
2人は、明日と明後日の予定を互いに改めて確認すると
”おやすみ”と、挨拶を交わしー、電話を切ったー。
「ーーふぅ」
スマホを置いた涼介は、
「もうすぐ、一人暮らしもおしまいかぁ」などと
自分の部屋の中を見つめるー
もちろん、千夏との同居がイヤなわけではなく、
千夏と同居生活が始まるのはとても楽しみだー。
が、それとは別に”一人暮らしが終わること”への
寂しさのようなものをなんとなく感じていたー。
もうすぐ”義理の親”になる千夏の両親から
先日貰ったお土産を口にしながら、
部屋の中を静かに見回すー。
大学生の頃から世話になっている
このアパートとももうすぐお別れー。
そんなことに、少しだけ名残惜しさを感じながら
涼介はこの日、眠りについたのだったー。
がーーー
”それ”が起きたのは、その翌日だったー。
目覚まし時計代わりにしているスマホのアラーム音が
鳴り響き、涼介はその音を止めるー。
まず、顔を洗って目を覚ますのが日課な涼介は
眠そうにしながら洗面台の方に歩いていき、
顔を洗い始めるー。
だが、ふと”髪”が手に触れて、
涼介は少しだけ表情を歪めるー。
頬のあたりを洗おうとしたら、
髪が手に触れたのだー。
「ーー???」
涼介は長髪ではないし、頬のあたりを触ろうとして、
髪が触れることはないー。
そう思いながら、顔を洗い終えた涼介が鏡を見るとーー
そこにはー、長い黒髪の女が映っていたー。
「ーーー!?!?!?!?!?」
涼介は、いきなり”家の中に知らない女がいる!?”と思って
「うわっ!?ど、どこから入ったんだ!?」と、声を上げるー。
がー、自分の口から発された声が、
20年以上、散々聞き慣れた”自分の声”ではなく、
知らない女の声であることに涼介は心底驚いて、
口元に手を当てるー。
すると、鏡に映っている”知らない女”も、
同じ動きをしたー。
「ーーーえ……」
鏡を見つめながら呆然とする涼介は、
手を動かしたり、瞬きをしたり、表情を変えたりしてみるー。
どの行動を取っても、”鏡に映る女”は、涼介自身と同じ動きを
していることに気付き、涼介は「う…嘘だろ…?」と、困惑の表情を
浮かべながら視線を落とすー。
そこには、あるはずのない膨らみー。
「ーーは…!?えっ!?」
服の中に何かー…
そう、丸っこい何かが入ってしまっているだけだ、と
自分に言い聞かせながら服の中に手を入れるー。
しかしー、そこにあった膨らみはボールでもなんでもなく、
正真正銘、”胸”だったー。
「ーーー…!?!?!?!?!?」
混乱に飲み込まれそうになる涼介ー。
やがてー、混乱した状況の中、
ズボンの方に視線を落とすとー、
”アレ”があるかどうかー。
それを確認したー。
なかったー。
男であることを示すそれが、涼介の身体からは無くなっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー…俺は、女になってるー…
それは、分かったー」
起床してからおよそ30分ー
ようやく気持ちが落ち着いて来た涼介は
そんなことを呟きながら、
現在の自分の置かれた状況を考えていたー。
「ーーーー…どうして急にこんなことになったんだー?
夢じゃないみたいだしー…」
涼介は最初、一瞬夢かとも思ったものの、
夢にしてはリアルすぎるし、残念ながら夢ではなかったー。
しかし、寝ている間に女になってしまう、なんて聞いたことがないし
昨日、何か特別なことをした記憶もないー。
「ーー…分からん…くそっ」
今日は、このあと千夏と合流して新居の見学に行くことになっているし、
明日には結婚式も控えているー。
しかも、このままの状態だと
仕事にも支障が出るー。
入社3年目ー。ようや仕事もすっかり慣れた時期だというのに、
このままだと”女になっちゃったんですけどー、どうすればいいですか?”と
会社に聞かなくてはいけなくなるー。
「ーあぁ、くそっー
もう1回寝たら男に戻ったりしないかな?」
千夏との約束の時間までまだ1時間以上あるー。
女体化した涼介は、戸惑いながら
スマホのアラームを20分後にセットして、再び眠りにつこうとするー
幸い、すぐに眠ることはできたもののー
30分後、やはり変化はないという”現実”を突き付けられて
涼介は頭を抱えたー。
”くそっー…でも、もう千夏との待ち合わせに合流するには
そろそろ時間もギリギリだしー”
そう考えた涼介はやむを得ずスマホを手にすると、
千夏にメッセージを送ったー。
”おはよう千夏ー
朝、起きたら絶対あり得ないことが起きてたんだけどー”
そうメッセージを送ると、
少しして千夏から”おはよ~!え?なになに?”と
困惑したようなメッセージが返って来たー。
”あり得ないって思うかもだし、
俺もあり得ないって思ってるけどー、
そのー、起きたら”女”になっててー…
胸は膨らんでるし、下のアレはなくなってるしでー…
待ち合わせまでに何とかできればッて思ったんだけど
全然元に戻れなくて”
ひと思いにメッセージを送るー。
千夏からのメッセージの返信が怖い、とこれほど思ったことは
今までになかったー。
千夏が、どんな反応を返してくるかー。
それが、全く分からないー。
あまりに現実離れした内容に千夏もさすがに戸惑ったのか
メッセージの返信が届くのがいつもより遅く感じられたー。
いや、あるいはー…
”自分”が緊張からか、いつもより長く感じているだけかもしれないー。
”え?どういうこと?”
”え?まってー意味が分からないけど?え?”
千夏の混乱したようなメッセージが続けて届くー。
”ーーえ?涼介が女の人になったってこと?”
千夏のそんな言葉に、
”ーー起きたら俺が女になってたー…冗談とかじゃなくて本当に”
と、そうメッセージを送るー。
すると、すぐに電話がかかって来たー。
いきなり”女になった声”を聞かせれば動揺させてしまうと思い
最初はメッセージを送ったものの、
あっちから電話がかかってきてしまったー
「ーー…あ……ち、千夏ー…
こ、こんな声だけどー」
涼介が申し訳なさそうに言うと、
”え?本当に涼介ー…???”と、千夏は心底混乱したような声を出したー。
「ーうんー…信じられないと思うけどー…
そうだー…その、俺と千夏しか知らないようなこと何でも聞いてくれれば、
答えられるからー、
そしたら、信じてもらえるだろ?」
女体化した涼介がそう言うと、千夏は涼介の誕生日や、
去年のクリスマスプレゼント、プロポーズはどっちからだったかなどなど、
色々な質問をしてきたー。
それに全て答える涼介ー
”ーーほ、ホントに涼介みたいだねー…え…で、でもー”
戸惑う千夏ー。
やがて、千夏は”今からそっちに行くから待ってて”と、
そんな言葉を口にし、一旦電話を切ったー。
「ーーー…」
千夏を待つ間も”男に戻ることはできないかどうか”
色々考えてみたー。
だがー、そんな方法は見つかるはずもなく、
やがて、30分ほどで千夏が涼介の家の方にやってきたー。
「ーーい、いったいどういうことなのー?!」
千夏が戸惑いながら、家の中に入って来るー。
「あ、いやー…お、俺もよく分からなくてー」
恥ずかしそうにそう言葉を口にする涼介に対して、
千夏は「あのー…ホントに涼介だよねー?」と、
女体化した涼介を、上から下までじーっと凝視していくー。
「ーーーーー……元に戻る方法は?」
千夏が戸惑いながらそう言葉を口にするー。
「ーい、いや、それが、分からなくてー」
心底困惑した表情の亮介ー。
「ーー分からない?でも、どうするのー?
これから新居の見学にも行くんだしー、
明日は結婚式なのにー!?」
千夏が困惑しながらそう言葉を口にすると、
涼介は「い、いやー、ごめんー。分かってるー」と、
そう言葉を口にしながら
「と、とりあえず元に戻る方法を探しながらー…
もしもダメだったら、何とかするからー」と、
そう言い放つー。
「ーな、何とかってー…
女のまま明日の結婚式に出るってことー!?」
千夏は、動揺した様子でそう言い放つー。
「ーーだ、だってー、元に戻れなかったらそうするしかー」
女体化した涼介の言葉に、千夏は首を横に振りながら
「ーどうして、こんなことにー」と、悲しそうな表情を浮かべるー。
どうやら千夏は、涼介が女体化してしまったことには、
あまり良い感情を持っていない様子だったー。
「ーーー…と、とにかくー、今日のうちに元に戻れるように
頑張るからー」
涼介がそう言うと、千夏も少し気持ちを落ち着かせてから
「ーーうんー、わたしも手伝うー」と、そう言葉を口にすると、
「ごめんねー。わたしのほうが動揺しちゃってー。
一番焦ってるのは、きっと涼介のほうなのにー」と、
そんな言葉を口にしたー。
「いや、いいよー…俺こそ、こんな大事な時期にごめんー」
涼介がそう言うと、
「でも、心当たりはないんでしょ?」と、
千夏はそう言葉を口にすると、
「だったら、涼介は悪くないよー」と、そんなフォローの言葉も
口にしてくれたー。
「ーーありがとうー。
それでー…新居の下見はー…?」
涼介がそう言うと、千夏は「あ~~~…」と、そう言葉を口にしながら
涼介の方を見るー。
「ーーどう見ても、女の人にしか見えないよねー」
千夏はそう言葉を口にすると、
「ーーーあ…でも、まぁ”友達”と来たってことにすれば
大丈夫じゃない?
向こうの人からすれば、関係ないことだし、
涼介はその状態のままでも、新居を見学できれば十分でしょ?」と、
そんな言葉を口にしたー。
「そ、そっかー…じゃあ、とりあえずこのままー」
涼介はそう言うと、
「あ、でも服はどうしよう!?」と、そう声を上げるー。
「ーー…えっ!?男女兼用で着れそうなやつ持ってないの?」
千夏の言葉に、涼介は「あるけど!サイズが違くて!」と、
困惑した様子で叫ぶー。
確かに、今、女体化した涼介が着ている服もぶかぶかで
不自然な感じだー。
家の中ならまだしも、このまま外に出るのはちょっと厳しいー。
「ーーそ、それに、アレもないしー」
涼介はそう言うと、千夏は「アレ?」と、表情を歪めるー。
「そ、その…ノーブラのまま出かけていいのかな…って」
涼介の言葉に、千夏は「ーーー…バレなきゃ大丈夫!透けないように
注意して!」と、そう言いかけたものの、
すぐに「あ、でもー…う~ん」と、戸惑い始めるー。
結局ー…
このまま一緒に新居の見学に向かうのは難しいー、という結論になり、
千夏が「わたしが写真とか動画も撮って来るからそれで判断しよ!」と、
そう言い始めて、千夏が一人で新居の見学に向かうことになったー。
「ーーホントにごめん」
申し訳なさそうにする女体化した涼介ー。
千夏は「ううんー!全然!見学終わったらまたここに来るから!」と、
そう言葉を残して立ち去って行ったー。
「ーーーはぁ」
一人残された涼介は、自分の胸を手で引っ込めようと、
意味のないことをし始めるー。
当然、何か起きるはずもなく、
胸はそこに存在しているままー
「くそっ…なんなんだよ」
涼介は、このタイミングでの女体化にうんざりした様子で
ため息をつくことしかできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーーーーーー」
家を出た千夏は、涼介の家の方を振り返ると、
表情を曇らせるー…
「ーーーーーー…涼介ー」
千夏は、心底不安そうな表情を浮かべながら
”明日”入籍する予定の彼氏の名前を静かに呟いたー…
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
結婚式を目前にして女体化…!
大変なことになってしまいそうですネ~!
続きはまた明日デス~~~!
今日もありがとうございました~!☆
コメント