<憑依>いじめ撲滅作戦②~実行~(完)

クラスに蔓延するいじめを撲滅するために
生徒会長と担任の先生が手を結んだー。

しかし、その方法は”憑依”というとんでもない方法で…!?

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「それで、俺に話ってー?」

「ーーえ?」

後輩である生徒会書記・啓太郎から”大事な話がある”と
呼び出された璃奈に憑依している郷原先生ー。

しかし、いきなり”俺”と言ってしまい、啓太郎から
首を傾げられてしまうー。

「ーーあ、ご、ごめんごめんごめんー
 えっとーー
 わ、わたしに何の話かなぁ~?」

ソワソワした様子で、璃奈がそう言うと
啓太郎は璃奈の方を見つめながら
言葉を発したー。

「ーか、会長ー。ぼ、僕ー
 会長のことが、好きですー!」

とー。

「ーーーーーー」
「ーーー!?!?!?!?!?」
「ーーーーーえっ!?」

璃奈に憑依している郷原先生は思わず顔を赤らめるー。

「い、今、なんてー!?」
璃奈がそう言葉を口にすると、
後輩の啓太郎は今一度「好きです!」と、そう叫んだー。

「ーーーー…!?!?!?!?」
璃奈は、困惑の表情を浮かべるー。

”ど、どうすりゃいいんだー?
 まさかこのタイミングで告白されるなんてー”

璃奈に憑依した状態の郷原先生は戸惑いの表情を
浮かべながら、心の中でどうするべきかを
ひたすらに考えるー。

”璃奈の身体から抜け出す方法”は、璃奈から事前に
説明を受けているー。
しかし、その瞬間に璃奈の身体は一度意識を失うし、
ここでそれをするわけにはいかないー。

”いったん、物陰に隠れて本条の身体から出るか?
 いや、でも、それもなー……
 本条に状況を説明することができないし、無理だー”

郷原先生はそう心の中で考えると
「い、一週間…!一週間後に返事っていうのはどうかなー!?」
と、慌ててそう提案したー。

「もちろんです!僕はいくらでも待ちますので」
啓太郎はそう言葉を口にすると、嬉しそうに微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…!」
璃奈と事前の手筈通り、
”ここなら人にバレない”という場所に座りー、
璃奈の身体を解放するー。

「ーーー…ぁ」
意識を取り戻した璃奈は、時計を見つめると
昼休み終了5分前であることを確認しながら立ち上がるー。

「ーー…なんか、寝てたみたいな気分ー…」
璃奈は”自分が憑依される”という初めての経験に
不思議そうな表情を浮かべながらも、
「先生、上手く行ったかなー?」と、
そう言葉を口にするー。

すぐに、自分の身体に戻った郷原先生が
その場にやってくると、
「ー本条ー、すまんー!」
と、そう言葉を口にしたー。

「ーえ…?な、何かあったんですかー?」
璃奈が困惑した表情でそう言うと、
郷原先生は、生徒会書記の啓太郎から告白されたことや、
憑依に戸惑っている間に、約束の
”昼休み終了5分前”になってしまって、
今日は何もできなかったことを告げたー。

「ーーそ、そうだったんですねー」
璃奈が少し戸惑いの表情を浮かべるー。

「そ、それで告白の返事は来週までということに
 しておいたからー、後は頼む」

郷原先生がそう言うと、璃奈は「わ、分かりましたー」と、
少し恥ずかしそうに頷いたー。

結局、明日の昼休みは璃奈に用事があることからー、
”次”のいじめ撲滅作戦は明後日に実行することになったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー宜しくお願いしますー」

2日後ー。
璃奈は再び、郷原先生に憑依されたー。

「ーー今度こそ、ちゃんと役目を果たさないとー」
そう思いながら、教室に向かう璃奈に憑依した郷原先生ー。

教室にたどり着くと、
いじめっ子の男子・東 公夫とその友人が、
今日も璃奈の幼馴染でもある瑛太をいじめていたー。

「今日は、サンドイッチを頼むぜー?
 いつも通りふざけた味を買って来たらぶん殴る」
公夫のその言葉に、
璃奈に憑依した郷原先生は深呼吸をしてから、
言葉を口にしたー。

「ーおいっ!郷原!いい加減にしろ!」
とー。

”璃奈の声”で迫力を出そうと、必死に声を振り絞った結果ー、
想像以上に恐ろしい声が出たー。

「ーー!?」
いじめっ子の公夫も驚いたのか、びっくりしたような表情で
璃奈の方を見つめるー。

「ーーえ…」
いじめられている瑛太も、周囲のクラスメイトたちも同様だー。

ズカズカと公夫の方に歩いて行って、
公夫の腕を掴むと、
「ー自分で買いに行けー…… 行きなよー」と、
璃奈があまり変に思われないように言葉遣いを考えながら、
公夫を睨みつけるー。

「ーーーー……」
がー、思った以上に”璃奈の腕の力”が弱く、
華奢な腕はすぐに振りほどかれてしまいそうなことに
郷原先生は気づくー。

「ーーほ、本条さんー…?」
いじめられている瑛太も、戸惑いながら声を発するー。

「ーこ、こんなやつの言うこと聞かなくていいよ」
璃奈が、強い口調でそう言うと、
いつもとは違う璃奈の雰囲気に瑛太も戸惑った様子だったー。

「ーーーーへへへへーーー…
 ーーー」

ニヤニヤとする公夫ー。

璃奈に睨まれて、腕を掴まれているこの状況を前に、
公夫は「ご褒美じゃねぇかー」と、そう言葉を口にするー。

「ーーは?」
璃奈がさらに公夫を睨むと、
公夫は「悪かったよーへへー」と、そう言葉を口にすると、
瑛太にも「すまなかったなー」とそんな言葉を口にしたー。

公夫は、あっさりと瑛太をいじめないことを約束ー、
そのまま引き下がって行ったー。

がーー
一人になった公夫は、
”いつもと違う璃奈”の様子を思い出しながら
嬉しそうに笑みを浮かべると、
「ーーあぁ…あの目ー…えへへへへー」と、不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

前回と同じように、約束通り
”憑依”を終えると、
この前と同じ部屋で郷原先生は璃奈と合流したー。

「ーーー東のやつは、いじめをやめると約束はしてくれたんだがー」
郷原先生がそう言うと、
璃奈は「ホントですか!?よかったです!」と、そう言葉を口にするー。

「ーーただー…なんか、そのーー…」
郷原先生はそう言うと、
気まずそうに、璃奈に状況を説明したー。

「東のやつーーなんか…本条に怒られて興奮してる感じだったからー
 変な感情が芽生えたかもしれないー」
郷原先生が、公夫の様子を見て感じたことを素直に伝えるー。

「えぇっ!?わたしに怒られて興奮ー!?」
璃奈は戸惑うような表情を見せるもー、
「ま、まぁーでも、いじめが止まったなら良かったですー。
 本当に止まったなら、ですけどー」と、そう言葉を口にしたー。

がー、それから数日後ー、
本当に瑛太いじめは止まり、その代わりに公夫は、
「ーー本条さん!俺を叱ってくれ!」と、度々声をかけて来るようになったー。

璃奈は戸惑いながらも「いじめをしちゃダメでしょ!」などなど、
毎日のように自分なりに公夫を叱ると、公夫はそれだけで満足な様子だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌週ー。

「今日は、水上 瑠理香の方をどうにかしないとな」

水上 瑠理香は”お金持ちのお嬢様”ー。
先生が注意しようものなら親からクレームが入るのは確実だー。

だからこそ、璃奈の身体でー…

「ーーそういや、あの戸塚から告白された件はー
 どうするつもりだー?」

生徒会所属の後輩からの告白ー。
返事は確か昨日までだったはずだー。

「ーーあーー…う~ん…
 昨日、お断りしてきましたー。

 戸塚くんはいい子なんですけどー…
 ーーただ、付き合うことは考えられないかなってー」
璃奈は少し苦笑いしながら申し訳なさそうにそう言うと、
「はは、そっかー」と、郷原先生は
それ以上は何も口にしなかったー。

そして、準備を終えると、璃奈から手渡された憑依薬を飲み、
その場で璃奈に憑依するー。

「ーーよし」
憑依薬の容器を隠し、いつも二人の話し合いで使われている
理科室の鍵を閉めると、
璃奈に憑依した郷原 先生は”水上 瑠理香”を探し始めるー。
理科室を使っているのは、郷原先生が理科の教師であるためだー。

陰険な性格のお嬢様ー。
彼女の方は、どうやっていじめを解決させるべきだろうかー。

「ーーーー」
相変わらず、璃奈の身体に憑依した状態で
歩いているだけでドキドキしてしまう郷原先生ー。

「ーーー教え子の信頼を裏切ってはいけないー」
自分に言い聞かせるようにして、自分の中の煩悩を振り払う
郷原先生ー。

”璃奈”に憑依している状態でドキドキするということは、
つまり、璃奈の身体を勝手にドキドキさせていることを意味するー。

それだけでも、なんだか申し訳ない気持ちになりながら、
郷原先生は璃奈の身体で歩き出すー。

「ーーーー」
教室の近くにたどり着いた璃奈ー。

「ーーー…あははははー
 瑠理香、今頃またあの子に”しつけ”してるんじゃない?」

お金持ちのお嬢様・水上 瑠理香の友達の一人が
そんな言葉を口にするー。

”しつけー”
恐らく、いじめのことだろうー。

そう思いながら、瑠理香の友達に
”水上 瑠理香”は今、どこにいるのかを聞き出そうとするー。

がーーー

「ーーあ、あの!本条さんー」
背後から、”東 公夫”にいじめられていた璃奈の幼馴染・瑛太に
声を掛けられたー。

「あ、瑛太くんー」
璃奈としての反応を心がけながら振り返る郷原先生ー。

特に、特別な用事はなかった様子だったものの、
この前、璃奈が公夫にガツンと言った件の感謝と、
もういじめがなくなったこと、
それと、今度の学校行事に関することなど、
色々雑談されたー。

”ーー悪いな勝井ー。今な、先生が身体を乗っ取ってるんだー
 それに、早く水上を見つけ出して今度はアイツを懲らしめてやらないとー”

そんな風に思いつつ、会話を切り上げると、
今度はその瑛太をいじめていた東 公夫とすれ違ったー。

「へへへー本条さんー、また今度、俺を叱ってほしいなー」
公夫はニヤニヤしながらそう言い放つー。

公夫が瑛太いじめをやめたのは、
”璃奈に怒られて、快感を覚えてしまったことー”が、理由だったー。

つまり、彼は変態だったー。

「ーーそ、そういうのはやめて」
つい不愛想に言ってしまうと、公夫はまた嬉しそうに微笑むー。

そうこうしているうちに、昼休みが残り5分になってしまいー、
郷原先生は仕方がなく、璃奈の身体のまま
理科準備室に戻ったー。

そこで、璃奈から抜け出すー。

璃奈が意識を失い、
郷原先生は”少し離れた場所”で、霊体から実体へと戻り、
璃奈と合流するために
理科室の方に向かうー。

理科室ですぐに元に戻ると、誰かに見られていた場合の
リスクがあるため、
いつも少し離れた男子トイレの個室の中で
実体に戻るようにしているのだー。

理科室の扉を開けると、璃奈が振り返ったー。

「すまん、本条ー
 今日の昼休みは水上と会えなかったー
 またーー」

郷原先生がそう言うと、璃奈はクスッと笑ってから
「ーーもう、大丈夫ですよ。先生ー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーえ…?」
郷原先生が少し戸惑うと、
璃奈は「ーー先生にばかり苦労かけてちゃいけないですしー、
わたし、先生の行動に勇気を貰えたので、水上さんのいじめは、
わたしが何とかします」と、そんな言葉を口にしたー。

「ーーえ…?あ…あぁ…そ、そうかー?」
戸惑う郷原先生ー。

璃奈の急な方針転換に違和感を感じながらも、
「じ、じゃあ、もう憑依は今日で終わりってことか?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーはい。ありがとうございましたー」
ぺこりと頭を下げて立ち去っていく璃奈ー。

「ーー…」
一人残された郷原先生は少し戸惑いながらも、
「ま、まぁ、いいかー」と、頭を掻きながら
「ー今日で本条に憑依するのは最後だったかぁ」と、
少し名残惜しそうにそう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーくくー頼りない馬鹿な先生だなー」
理科室から出た璃奈はにやりと笑みを浮かべるー。

「ーーこれで、会長は僕のものだー」
ニヤニヤしながら、璃奈はそう呟いたー。

璃奈に告白した生徒会の後輩ー、
戸塚 啓太郎ー。
昨日、璃奈に振られたものの、ここ最近、
こっそり璃奈に付き纏っていた啓太郎は、
”郷原先生が璃奈に憑依している”ことを知ってしまったー。

憑依薬の存在も知った啓太郎は、
もはや、璃奈に振られようとどうでもよかったー。

”僕が”会長になるという野望を抱いた彼は、
ずっとチャンスを伺っていたー。

そしてー、
郷原先生が璃奈から抜け出したあと、
郷原先生本人が理科室に来るまでの間に、
璃奈に憑依してしまおうと、そう考えたー。

いつも、郷原先生が璃奈に憑依して行動している間、
璃奈が持ち込んでいる
憑依薬は理科室に置かれているー。

璃奈になって理科室から出たあと、必ず先生は
理科室に鍵をかけているけれど、
璃奈の身体で理科室に戻って璃奈を解放しー、
郷原先生自身が理科室にやってくるまでの間ー、
”その間”なら理科室に鍵はかかっていないー。

理科室に戻ったあと、郷原先生はいつも
鍵を掛けずに璃奈を解放しているー。
恐らく、”璃奈がもしも意識を取り戻さないようなこと”が
起きた場合に、理科室に入れなくなることを恐れているのだろうー。

がーー
啓太郎はその間に理科室に侵入ー、
隠されている憑依薬を飲みーー、
璃奈に憑依したのだーー。

「ーーこれで、会長は僕のものーー

 僕が、本条 璃奈だー

 ふふふふふー」

璃奈になった啓太郎は、不気味な笑みを浮かべながら
そのまま女子トイレへと駆け込むのだったー…。

憑依薬を持ち込んだ璃奈は、
結果的に身体を奪われてしまうことになりー、
どこか抜けている郷原先生は、
そのことに気付かないまま、元の日常へと戻って行ったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

身体を奪われてしまう結果に終わりました~…★!

この作品の先生は…ほとんど役に立ってないですネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!!

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憑依<いじめ撲滅作戦>

コメント

  1. TSマニア より:

    啓太郎にヤられましたね!

    先生も頼りないパターンでしたね(;∀;)

    前にもありましたが憑依薬や入れ替わり薬を大事に保管などしないとダメですよネ!☆

    自分も無名さんのカラダの時に告白されたら、きちんと保留しますネ(*´艸`)笑

    無名さんのカラダでいっぱいオシャレして女の子を演じていっぱい告白されてみたいのデス笑

    告白のお返事や対応は後は無名さんに任せました\(^o^)/笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!☆

      保留~…★!

      先生は、あまり役に立たないまま
      物語が終わってしまいましたネ~笑