女子高に潜む凶悪犯を探るため、
女体化して潜入捜査を続ける男ー。
その先に待ち構えていたのはー?
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”ー特に、異常なしー”
同僚の捜査官・将司がそう言葉を口にすると、
「そうかー。わかったー」と、女体化した武文は
制服姿のまま、専用の無線機でそう返事をしたー。
”ーそれにしても、その声だと、
清田さんだとは分かりにくいなぁ~”
将司が、そんな言葉を口にすると、
「今からでも変わってやるぞー?」と、
武文は冗談を口にするー。
”あははー、僕はできないから…”
将司は、そう言うと、
「いやいや、お前の方が絶対適任だっただろ?
初日なんて、いきなり”おばさんっぽくない?”とか
言われたんだし!」と、
愚痴を口にするー。
”ーははは、まぁ、年齢的には僕の方が適任ではあるけどー…”
将司はそれだけ言うと、
”また何かあれば連絡するのでー”と、そのまま通信を終えたー。
「ーーふぅ…」
”島原先生”の写真を見つめる武文ー。
まだ、彼女が”闇の商人”である証拠は得られていないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
友達になった美優と共に登校していた武文ー。
「それにしても、”静江”ちゃんって
やっぱりちょっと年上に感じるなぁ~」
美優がそんな言葉を口にするー
”ーーーだ~か~ら、俺は30代だから仕方ないんだよ”
心の中でそう呟きながらも、偽りの笑みを浮かべながら
「あはは~よく言われる~」と、そう言葉を口にするー。
「ー実は本当に、わたしたちと同世代じゃなかったりして?」
笑いながら言う美優に対して、
女体化している武文は「そ、そんなことあるわけないでしょ~?」と、
誤魔化すように言葉を口にしたー。
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”ーー早く、こんなこと終わらせて男に戻らせてもらわないとなー”
武文はそう言葉を口にしながら、
放課後の学校で島原先生を尾行していたー。
相変わらず、何のおかしな点もない島原先生ー。
五十嶋班長に今一度確認すると、
”島原先生である確証は今のところは得られていないが、最有力”という
返事だったー。
”まぁ、そういうことなら仕方ないー。
徹底的にー…”
武文がそう思っていると、職員室を出た島原先生が
少し表情を変えて、人目を気にするかのように
キョロキョロしながら歩き始めたー。
”ーーーー”
武文は、そんな島原先生の異変を察知して、
慎重に尾行を続けるー
”先生が動き出したー。普段あまり人がいない体育館の裏側に向かってる感じだー”
武文が無線で、サポート役の捜査官・将司にそう伝えると
将司から”了解”と、そう言葉が返って来るーー。
「ーーーー」
周囲を気にしながら体育館の裏に入っていく島原先生ー。
”ーーー”
がーー
その時だったー
「ーー誰?」
島原先生がいつもとは違う、鋭い口調でそう言葉を口にして
振り返ったー。
咄嗟に身を隠す武文ー。
だがーー
「ーー誰?いるんでしょ?
隠れても無駄よ?」
島原先生のその言葉に、武文は沈黙するー。
がー、
既に姿を見られたのだろうかー。
島原先生が、ゆっくりとこちらに近付いてくるのを見て、
武文は観念した様子で姿を見せたー。
「ーーーせ、先生に相談があって、は、話しかけようとしたんですけどー
なんか、忙しそうだったのでなかなか声を掛けられなくてー」
”静江”として困り果てたような表情を浮かべながら
尾行していたのを誤魔化そうとすると、
「ーなんだーー……清川さんー驚かさないでよー」と、
苦笑いしながら、島原先生が言うー。
「ーーど、どうしてこんな場所にー?」
武文が、素朴な疑問をぶつけるふりをしてそう聞くと、
島原先生は背を向けて、体育館の裏の奥を指差したー。
そこにはーーー
猫の姿があったー。
「ー捨て猫のみーちゃんー。
ここでこっそり飼っててー…。
でもほら、他の先生に気付かれたら処分されちゃうかもしれないでしょ?
だからーこうやって毎日放課後にこっそりとー」
島原先生は悪戯っぽく笑うー。
武文は少し驚いたような表情を浮かべながら猫の方を見つめると、
「ーーそ、そうだったんですねー」と、
そう言葉を口にするー。
島原先生は、学校の近くで見つけた捨て猫をここで飼っていて、
その様子をこっそり見に来ていただけだったー。
”急に大きな声だしてごめんねー。
昔、付き纏いされたことがあって
こういう気配には敏感なの”
と、島原先生に逆に謝られてしまったー。
結局、何の手がかりもないまま、武文はその日を終えたー。
「ーーーー」
しかし、武文は”あること”も感じていたー
”ーーー…プロだな”
島原先生と別れてすぐに
武文は”視線”を感じたー。
島原先生を”露骨に尾行した”のはー、
”闇に紛れる者”をあぶり出すためー。
言われている通り、島原先生がクロなのであれば
ここでカタをつけるつもりだったー。
だが、今、話した感じ島原先生には裏があるようには思えないー。
会話中”目の動き”を注意深く見ていたが、
嘘をついている人間の目ではなかったー。
しかしー
こうして武文が行動を起こすことで、
もしもこの学校に”闇の商人”なる者がいるとすれば
必ず動きを見せるはずー。
そう思っての行動だったー。
そして、さっきから武文は”視線”を感じていたー。
強い殺意に満ちた視線ー。
けれどもその気配は巧妙にカモフラージュされているー。
一般人ではとても気付くことのできない視線ー。
だが、確かに見られているー。
そう察した武文は”あえて”学校を出ると
”え?うそ?わ、わかったー!今すぐ帰るね!”と、
電話をしているフリをしながら慌てて走り出したー。
”急いで帰らないといけないから、
人通りの少ない近道を通って帰ろうとしているー”
そんな演出をしながらー。
そしてーーー
”獲物”は網にかかったー。
「ーーー!」
裏路地に入ったところで、”そいつ”は姿を現したー。
「ーーーわぁ、こんなところで会うなんて奇遇だね」
姿を現したのは、潜入捜査初日から
表向き”転校生”である武文に親切にしてくれていた
クラスメイトの美優だったー。
「ーあ、美優ちゃんー!」
武文が”静江”としてそう返事をすると、
美優はニコニコしながら近づいてきたー。
”注射器”を手にー。
それに気づいた武文は、美優の腕を掴み、
それを叩き落とすと、
スカートの中に隠していたナイフを手に、
それを突き刺そうとしてきた美優を投げ飛ばしたー。
「ーーっ…ぁっ…」
うめき声を上げながら、美優が苦しそうにするー。
武文は”静江”として振る舞うのをやめて、
「ーお前が、裏社会で闇の商品を売り捌いている商人かー」
と、そう言葉を口にしたー。
美優は表情を歪めながら
「く……あんたー…何なのー?」と、言葉を吐き出すー。
武文は、自分が捜査官であることだけ明かすと、
美優は「クソッ!」と、怒りの形相で声を上げたー。
「ー最初からアンター、変だと思ってたのよ!
高校生には見えないし、なんだかコソコソしてるし!」
そう叫ぶ美優ー。
武文は、美優を拘束すると、
すぐに、五十嶋班長に”潜入捜査のターゲットを確保した”ことを告げたー。
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「ーー”本物”はもうとっくに死んでるのー
ふふ…ははははははっ!」
確保された美優の取り調べで、
”本物の美優”は2年前にとっくに殺されていたことー、
”今の美優”は、裏社会の特殊な手術により、美優に成りすましている別人で
あることが判明したー。
「ーーご苦労だったなー」
取り調べが終わり、五十嶋班長がそう言葉を口にすると、
女体化したままの武文は「いえ」と、頭を下げたー。
「しかし、どうして島原先生を最初は容疑者扱いしていたんですか?」
武文はそう言うと、
五十嶋班長は「いや、実はー、最初の時点では”あの学校に関係者が潜んでいる”しか
分かっていなかったんだがー」と、そう言葉を口にしたー。
「ーー誰か一人を探っていれば、仮にあの先生がターゲットでなくても
黒幕が何か動きを見せるハズー
事前に分かっていた情報の範囲内で”一番有力な候補”なのがあの先生だったから
そのままあの先生がターゲットならそれでよし、
もし違った場合はターゲットをあぶり出すことが出来ればよし、
そう判断して、あの先生を容疑者としてお前に伝えたー」
五十嶋班長はそう説明したー。
誰か一人をマークしていれば、それを見た黒幕も何らかの動きを見せ、
結果的に正体を突き止めることができるー、と。
結果的に”美優”として暗躍していた人物は
女体化した武文を始末しようとして墓穴を掘ったー。
「ーーそれにしても、似合ってるなぁ」
隣にいたサポート役の捜査官・将司が揶揄うようにして言葉を口にすると、
「う、うるさいなー」と、恥ずかしそうに女体化した自分の身体を
見つめながら「そうだー、班長。そろそろ元に戻してください」と、
そう言葉を口にする武文ー。
がーー
「ーーー」
五十嶋班長は静かに首を横に振ったー。
「ーーえ?いやいやいや、そこは首を縦に振ってくださいよ。
何で横に振るんですか!?」
武文が思わずそう言葉を口にすると、
「すまんがー例の薬は1回しか使えないんだー」と、そう言葉を口にしたー。
「ーは?」
秘密裏に作られた女体化する薬と男体化する薬ー。
それらは1回しか使うことが出来ず、
2回以上の使用は、人体が変化に耐えられない可能性が高いのだというー。
「ーは??え??いやいやいやいや、じゃ、俺は元に戻れないってことですか?」
女体化した武文がそう言うと、
五十嶋班長は「そういうことになるー」と、頷くー。
「ーー!?!?!?!?
さ、先にそういうことは説明して下さいよ!?」
武文が困惑した様子で言うと、
五十嶋班長は「半年前ー”男体化した捜査官”の噂を聞いたことはあるか?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーえぇ。別の班長にいたチームの捜査官がひとり男体化したという
噂は聞いたことがあります」
武文がそう言葉を口にすると、
五十嶋班長は「それで捜査員の男女比がズレたー。だから、男の捜査官を一人
女体化させる必要があったんだー」と、そう説明するー。
「ーいや、そんな無茶なー」
武文は呆れ顔で声を上げるー。
確かに武文は独身で、結婚の予定もないがだからと言って、そんなー。
そう思いつつ、”そういや、ここはいつも無茶振りばかりするチームだったー”と、
そんなことを心の中で呟くー。
「ーーーーーー…そ、その男体化した捜査官ってのも女に戻れてないんですか?」
武文が言うと、
五十嶋班長が口を開こうとした直後ー、
横にいた、今回の潜入捜査ではサポート役を務めた将司が口を開いたー
「戻れてないよ」
とー。
「え?」
武文がそう言いながら、将司の方を見ると、
将司は笑ったー
「僕がその男体化した女性捜査官ー」
と、自分を指差しながらー。
「ーーえぇぇっ!? えっ!? おま、、お、女だったのか!?」
驚く武文ー。
確かに、将司は妙に女子力が高いし、
このチームにやってきたのは半年前ー時期も一致するー。
そしてー
今回の任務前の会話も思い出すー
”「ーっていうか、藤本!お前、女子力高いしお前の方が適任だろ!?」”
と、武文がそう言った時に
”「僕はダメだよー」”と、そう言われたー。
五十嶋班長も「そうー。お前にしか頼めないんだー」と、言っていたー。
それは、この薬が1回しか使えず、既に将司は女⇒男になった
捜査官だったからだー。
「え…じ、じゃあ、本名はー?」
武文が言うと、将司は「ははー…本名は”雅美(まさみ)”だよー」と、
苦笑いしながら言葉を口にしたー。
「あ、あぁ…それで”まさし”かー」
武文はそう言葉を口にすると、
五十嶋班長が笑いながら、「じゃあ、今日からお前は武美にするか?」と
冗談めいた言葉を口にしたー
「ーいやいやいや、笑い事じゃないですよ!?班長!」
困惑の表情を浮かべる武文ー。
しかしー
彼は元に戻ることは出来ずー、
強引に勢いのまま、女性捜査官として生きることになってしまうのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
女体化で潜入捜査するお話でした~!☆
2話完結だったので、ちょっぴり駆け足だったかもしれませんが
お読み下さりありがとうございました!★
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