<入れ替わり>彼と結ばれるため①~告白~

明美は、健太のことが好きー。
美鈴は、茂雄のことが好きー。

けれど、健太は美鈴が好きで、茂雄は明美が好きだったー。

それを知った二人は、”身体を入れ替えて”
お互いに意中の相手と両想いになろうとするー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーねぇねぇ、健太(けんた)くんは
 好きな子とかいるの~?」

積極的な性格の明るい女子生徒・篠宮 明美(しのみや あけみ)は、
そんな言葉を口にするー。

明美から、”好きな子はいるの?”と聞かれた
男子生徒・倉島 健太(くらしま けんた)は
「え?俺?」と、そんな言葉を口にしながらー、
考え始めるー。

彼女ー…明美は、健太のことが好きだったー。
どうにか1歩を踏み出そうと、健太に”好きな子”がいるのかどうか確認してー、
いないのであれば、近いうちに告白しようー、
そう思っていたー。

しかしー

「ーーーどうかなぁ~」
健太がそんな言葉を口にしながらとぼけるー。

健太も、明美と同じように明るい性格で、
どちらかと言うと、少しお調子者な感じの男子生徒だー。

「え~、教えてよ~!誰にも言わないから~!」
明美がそんな言葉を口にすると、健太は少し迷った様子を見せてから
「仕方ないなぁ」と、”好きな子”の名前を口にしたー。

「ー実は俺、深野(ふかの)さんのことが好きでさー」
小声でそんな言葉を口にする健太ー

「ーーえ…!」
明美は少し表情を歪めるー。

恋愛にあまり興味が無さそうで、
いつも男子とばかり騒いでいる感じの健太に
”好きな人”がいるとは思っていなかったー。

”好きな人はいない”とか、
”恋愛に興味はない”とか、
そんな返事を期待していた明美は動揺しながら言葉を口にするー

「ふ、ふ、深野さんって、あの、いつも本を読んでる子だよねー?」
とー。

深野 美鈴(ふかの みれい)ー
明美とは正反対に大人しい性格の子で、
いつも、休み時間には本を読んでいるー。

明るい明美とは違い、
どことなく”守ってあげたくなるような”弱弱しい雰囲気を持つ子だー。

「ーーそうそう!あ、これは内緒な!」
健太がそう言うと、
明美は「で、でも、深野さんは健太くんみたいな騒がしい男子、苦手でしょ!」と、
美鈴のことを諦めさせようと、咄嗟にそんな言葉を口にするー。

「ーーははー…まぁ、それはそうかもしれないけどさー
 深野さんがダメなら、別に彼女とかいらないかなぁってー」

そんな言葉を口にする健太ー。

その言葉に、明美はショックを受けながらも
「あ、あははーそ、そっかぁ~」と、言葉を口にするー。

”深野 美鈴 以外と付き合うつもりはないー”

その言葉が、深く突き刺さるー。

仮に、健太に告白しても勝算はないー。
健太は、恋愛的な駆け引きができるようなタイプではないー。

”本当は明美のことが好きだけど、わざと他の子の名前を出して
 明美の反応を探っているー”

ーーなんてことは絶対にしないタイプだー。

健太が、”深野さんが好きで、深野さんがダメなら誰とも付き合う気はない”
と言っている以上、それが唯一の事実であり、それ以上の答えはないー

「ーーはぁ…」

”告白する前に、振られた”

そんな気分になりながら、放課後の廊下を
少し落ち込んだ様子で歩く明美ー。

がーー
ちょうど、通りがかった空き教室の中から
声が聞こえて来たー

「ーよ、よければ、わ、わたしと付き合ってくださいー」

その言葉に、明美は”?”と思いつつ、その空き教室の前で
立ち止まるー。
その声は、ついさっき、健太が”好き”と言っていた相手ー、
深野 美鈴の声だったのだー。

”まさか、深野さんから健太に告白をー!?”

そんなことを思いつつ、こっそり教室の中を覗くとー
そこには、いつも大人しくてオドオドしているタイプの男子・
村木 茂雄(むらき しげお)の姿があったー

”あははー流石に、深野さんみたいな子が
 健太くんに告白するわけないよねー”

明美はそう思いつつも、
これはチャンスだと思ったー。

もし、美鈴が茂雄と付き合い始めれば、
”健太”は、美鈴のことを諦めざるを得なくなるー。

そうなれば、明美が健太と付き合うことのできるチャンスも
巡って来るかもしれないー。
そんな風に思ったのだー。

がーー

「ーご、ごめんー……」
美鈴が告白した相手ー、茂雄はそう言葉を口にしたー

”ーーあぁ、もうー…
 深野さんと付き合えばいいのに!”

内心でそんなことを思っていると、
茂雄は「僕ー…好きな人がいるんだー」と、そう言葉を口にしたー

「ーす、好きな人ー…?」
美鈴が悲しそうにそう呟くと、
「ーう、うんー…」と、茂雄は戸惑いながら、
「ぼ、僕ー、クラスに好きな子がいてー…」と、
そう言葉を口にしたー。

”ーーふ~ん…上手くいかないものね…”
盗み聞きしている状態の明美は内心でそう呟くー。

明美は健太が好きー
美鈴は茂雄が好きー。
けれども、二人とも相手に振り向いては貰えないー。

そこまで仲が良いわけではないけれど、
明美は、同じ境遇に陥った美鈴に対して、
少しだけ同情の感情を抱いたー。

がーーー

続けて聞こえて来た言葉に、明美は驚きの表情を浮かべたー。

「僕…篠宮さんがどうしても好きでー…
 も、もちろん、僕なんかが相手にされないことは分かってるけどー」

茂雄が、そう言ったのだー。

”え…わ、わたしー!?”
明美は戸惑うー

”クラスの篠宮さん”と言えば、
篠宮 明美ー つまり明美のことだー。

他に、篠宮という苗字の子はクラスにはいないー。

「ーーーそ、そうなんだー…」
教室の中から美鈴の声が聞こえるー

明美は驚いた表情を浮かべながらも、
盗み聞きしていることが気付かれないように、
そのままその場を後にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わたし ⇒ 健太くん

健太くん ⇒ 深野さん

深野さん ⇒ 村木くん

村木くん ⇒ わたし

帰宅した明美は、ノートにそう書いていたー。

明美が好きな健太は、美鈴のことが好きで、
でもその美鈴は、茂雄のことが好きで、
茂雄は明美のことが好きー。

見事に、すれ違っているー。

「あ~~~…健太くんと村木くんの好きな子が”逆”だったらよかったのにー」
明美は一人、そんな言葉を口にしながら、
どうにか方法はないかと、意味もなくネットの海を彷徨うー。

もちろん、こんな状態を解決する方法がないことぐらい、
よく分かっているー。
それでも、まだ現実を受け入れることが出来ずに、
色々ネットで調べているとー

やがてーー

「ーーーえ…」
明美は、驚いた様子でスマホをいじる手を止めるー。

”好きな相手が、自分以外の子を好きな場合には「入れ替わり」”ー。

そんな文章と共に表示されたサイトー

「い、入れ替わりー…?」

そのサイトには、
”相手が好きな子の身体と、自分の身体を入れ替えれば、
 相手に好きになって貰える”
と、いうようなことが書かれていたー

使用例として、”わたし”が”Aくん”を好きで、
”Aくん”が”Bさん”を好きな場合、
”わたし”と”Bさん”が入れ替われば、
”わたし”は”Bさん”として”Aくん”と付き合うことができるー

と、いうことが挙げられていたー。

「ーーーー」
明美はふと考えるー。

明美のケースの場合、もし、美鈴と入れ替われば
美鈴になった明美と健太は”両想い”になることができるー。

そして、明美になった美鈴もまた、”明美が好きな茂雄”と
両想いになることができるのだー。

「ーーー…」
今のままだと、4人全員、恋愛が成就することはないー。

明美は、仮に茂雄から告白されても、付き合うつもりはないしー、
美鈴は分からないけれど、多分お調子者な健太に告白されても、
いい返事をするとは思えないー。

がー、明美と美鈴が入れ替われば、
4人全員の恋愛が成就するようになるー。

「ーーーー」
明美は少し迷った末に、「わたしが深野さんになって、
深野さんがわたしになればー」と、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後ー。

「ーー篠宮さんー…お話って?」
明美に呼び出された美鈴がやってくると、
明美は、あるものを取り出したー。

”入れ替わり”のために使う互いの身体を入れ替える糸ー。
あのあと、すぐにネットでこの糸を購入ー。
実際に入れ替わることが可能であることを確認した上で、
美鈴を呼び出していたー。

「ーーー…この前…村木くんに告白してたよね?」
そんな明美の言葉に、美鈴は表情を曇らせながら、
「そ…それが何かー…?」と、そう言葉を口にするー。

明るい性格の明美から呼び出されて、他人に告白したことを指摘されたー…
そんな状況に”何か嫌がらせとか、そういう感じなのかもしれない”と、
美鈴は警戒している様子だったー。

「ーーー…あ、ごめんごめんー
 たまたま、あの時廊下を歩いててー
 別に告白したことを悪く言うとか、笑うつもりで呼び出したんじゃないのー

 そもそもわたしもあの日、別の子に告白して振られてるしー」

明美が、美鈴の様子を察してそう言葉を発すると、
美鈴は少し安心したのか、表情を緩めたー。

「それでーわたしが告白した相手が健太くんー
 倉島くんなんだけどー…
 倉島くん…深野さんのこと好きなんだってー」

明美は、告白した健太が、”美鈴のことが好き”と言っていたことを伝えるー

「え…えぇっ…?」
美鈴の反応は良い反応ではないー。
やっぱり、お調子者な健太のことを”好き”ではないようだー。

「ーそれでー、深野さんが告白した、村木くん、
 たしかわたしのことが好きって言ってたよねー?」

明美がそう言うと、美鈴は戸惑いながら「う、うんー」と頷くー。

「だからさー……わたしが深野さんになれば、わたしは健太くんと付き合えるし、
 深野さんがわたしになれば、村木くんと付き合えるー」

明美のそんな言葉に、美鈴は「ど…どういう意味?」と言葉を口にするー。

そこで、”入れ替わり”のことを話す明美ー

美鈴は驚きー、戸惑いの表情を浮かべると
”す、すぐには決められないよー”と、そう言葉を口にし、その日は
そのまま”保留”となったー。

がー、
数日後ー

美鈴は言ったー。

「ーー本当に入れ替わることができるならーやってみるー」

とー。

その返事を聞いた明美は嬉しそうに「うん!やってみよう!」と、
そう言葉を口にしてー、
”入れ替わりの糸”を使いー、お互いの身体を入れ替えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーほ、本当に入れ替わってるー」
いつもより、弱弱しい表情を浮かべながら、明美になった美鈴が
そう言葉を口にするー。

「ーす、すっごいー…わたしが深野さんー!」
美鈴になった明美も、嬉しそうにそう言葉を口にしながら、
”自分の両手”になった美鈴の手を見つめているー。

「ーーこれなら、健太くんと付き合えるー…!
 ふふふふー…」
心底嬉しそうにする美鈴(明美)ー。

健太は、美鈴のことが好きだと言っていたー。
この身体で告白すれば、今度こそー

「ーーー…し、篠宮さんの身体で告白しちゃって、いいんだよねー?」
明美(美鈴)が遠慮がちに言うー。

美鈴が告白した相手・茂雄は”明美”のことが好きだと言っていたー。
明美の身体で告白すれば恐らく成功するだろうー。

「ーうん!お互い頑張ろ!」
美鈴(明美)は、いつもの美鈴が絶対に浮かべないような
明るい笑顔でそう言い放つと、
「あ、でもその前にー」と、
お互いの住所や、生活を送る上で大事なことなど、
入れ替わり生活を送るために、色々なことを
情報交換していくー。

「ーーまぁ、こんなところかなー」
美鈴(明美)が、情報交換を終えると、
髪を触りながら「それにしても、深野さんの髪ってなんだか触り心地がいいなぁ~」と、
ニコニコしながら呟くー。

「ーーえぇ…?」
明美(美鈴)は恥ずかしそうにしながらも、
「ーーし、篠宮さんの身体はな、なんかこうー…わたしなんかより全然可愛いしー」と、
そんな言葉を口にするー。

お互いに、新しい自分の身体になった相手の身体のことを
新鮮に思いつつー、しばらくそんな会話を続けると、
やがて、美鈴になった明美が言葉を口にしたー。

「ーーお互い告白、頑張ろうね!」
とー。

入れ替わった二人はー、
その日の放課後ー
互いに大好きな男子に告白することを決意するのだったー…。

②へ続く

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コメント

好きな男子に振り向いてもらうための
入れ替わり…★

ちゃんと、好きな子に振り向いてもらえるかどうかは、
また次回のお楽しみデス~!!

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