お互い、好きな男子が
”自分じゃなくて相手のこと”が好きだと知り、
入れ替わって告白した女子二人ー。
しかし、その結果はー…?
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入れ替わって、お互いに意中の男子に告白した
明美と美鈴ー。
その結果ー、
美鈴の身体で健太に告白した明美はー、
”美鈴”として振る舞い切れずに失敗ー。
”そもそも、自分の身体で告白してくれればよかったのにー”と
言われてしまい、
やっぱり自分の身体に戻ろうと考え始めるー。
しかし、その一方で明美の身体で茂雄に告白した美鈴は
告白に成功ー。
”明美”として、茂雄と付き合い始めてしまったー。
そんな状況を前にー、
結局、美鈴(明美)は元に戻ろうとは言い出せずに、
そのままの日々を送っていたー。
「ーなぁなぁ、篠宮、元に戻りたいんだろ?
だったら深野さんとちゃんと相談した方がいいんじゃないか?」
告白から数日後ー
心配した健太がそんな言葉を口にするー
「そ、それはそうなんだけどー
でも、入れ替わりはわたしから言い出したことだし、
深野さんも、村木君も楽しそうにしてるから
なかなか言い出せなくてー」
美鈴(明美)がそう言うと、
健太は「でも、このままじゃよくねぇと思うけどなー」と、
そう言葉を口にするー。
今は良くても、この先ずっとこのまま他人の身体で
生きていくつもりなのか?
と、健太はそんな言葉を問いかけて来るー。
確かに、家族も、友達も、
何もかもを一度捨ててしまう状況ー。
ずっとこのままで良いのかどうか、と言われると、
首をすぐに縦に振ることはできないー。
”短絡的だったー”
美鈴(明美)は今になって後悔していたー。
健太は”美鈴(明美)”と付き合うことには難色を示していたー。
周囲に”美鈴と付き合い始めた”と一度言ってしまえば
もう後戻りはできないー
身体が元に戻っても、周囲は”健太と美鈴が付き合っている”と認識していて
色々とややこしくなるー
それにー、健太は”身体と中身が違う状態のままじゃ、付き合うとかはちょっとー”と、
そんな言葉を口にしていたー
何としても、戻りたいー。
そう思った美鈴(明美)は意を決して
明美(美鈴)を呼び出したー
「ーーーやっぱこのままじゃ、この先、
わたしも深野さんも困ると思うしー、だからー元に戻らない?」
美鈴(明美)は、
色々、事情を説明してそう言葉を口にするー
「ーわたしから入れ替わりを持ちかけておいて、
勝手だっていうのは分かってるけどー、
でも、深野さんのためにも…!
入れ替わりのことは、わたしもちゃんと村木くんに説明して
謝るしー、村木くんもきっと分かってくれると思うから!」
そこまで説明を終えた美鈴(明美)ー
明美(美鈴)も
「う、うんー確かにお父さんとかお母さんのこともあるしー、
篠宮さんの言う通りだねー」
と、頷きながら言葉を口にするー。
「ーよかったー…じゃあ、この糸をまた使ってー」
美鈴(明美)がそこまで言うと、
明美(美鈴)は首を横に振ったー。
「戻りたくないー」
と、そう言葉を口にしながらー。
「ーーーえ…?」
美鈴(明美)は表情を歪めるー。
「ーーーーえ…? えぇ…? なんでー?」
美鈴(明美)は、戸惑いながら言葉を続けるー。
「い、今、わたしの言う通りって言ってくれたよねー?」
美鈴(明美)が信じられない、というような表情を
浮かべながらそう言葉を口にすると、
明美(美鈴)は「うんーー…でも、イヤなのー…戻りたくない」と、
そう言葉を口にするー。
明美の言い分は分かったー。
でも、美鈴は元に戻るつもりは毛頭なかったー。
「ーだって、せっかく村木くんの彼女になれたのに!
それにー、わたし、初めて自分に自信を持てたのに!
また、そんな身体に戻るなんて嫌だよ!」
明美(美鈴)が”元自分”である”美鈴”を指差しながら叫ぶー。
「ーー…そ、そんな身体ってー…」
美鈴(明美)は戸惑うー。
美鈴は決して”ブス”とか、そう言われるようなタイプではないー。
世間的には”美少女”で通るであろう、
大人しそうな雰囲気の可愛らしい子だー。
「ーーわたし、自分の顔も、その雰囲気も好きじゃないの!
篠宮さんみたいな、明るい雰囲気の方が好きなの!
だからー、もう戻りたくない!」
明美(美鈴)の言葉に、
美鈴(明美)は戸惑いながら「で、でもー、このまま過ごすわけにもー」と、
そんな言葉を呟きながら、
「ーーわたしから入れ替わりを提案して勝手なのはわかってるけどー、
でもー…!
村木くんにはちゃんと説明するし、深野さんがわたしみたいになりたいなら、
わたし、何でも手伝うからー!」
と、そう必死に言葉を続けたー。
けれどー…
「イヤなの!戻りたくないっ!!!」
明美(美鈴)は目に涙を浮かべながら叫ぶー
「ーそれに、篠宮さんが言ったんだよ!?
ずっと入れ替わったままで生活するって!
急にコロコロ話を変えないでよ!!!」
明美(美鈴)の言葉に、美鈴(明美)は
”自分”の姿を見つめながら
「ーー…ご、ごめんー… でも、お願いだから、返してー」と、
自分の身体を返してくれるように嘆願するー。
手放してみて、初めてわかったー。
”大事な”ものー。
自分の身体は、何よりも大事なものだったー。
”明美”はそう思いながら、
”身体を返してほしい”と、再び嘆願したー。
「ーーーーーーーー…」
必死な姿を見て、なのかー、
明美(美鈴)は表情を曇らせるとー、
「ーーー…そこまで…言うならーーー…」と、そう言葉を口にしたー。
「ーーー…ごめんね…勝手なことばかり言ってー」
美鈴(明美)は、申し訳なさそうにしながら
入れ替わりの糸を用意して、
明美(美鈴)に片側を手渡すー。
お互いの指に糸を巻き付けてーー
それでーー
「ーー!?!?!?!?」
美鈴(明美)は、明美(美鈴)の取った行動に驚くー。
”糸”を奪い取ってーー、
教室の端の方のペン立てに置かれていたハサミを手にするとー、
それをーーー
「ーーだめ!!!!やめて!!!!!!!」
美鈴(明美)が、必死に叫ぶー
明美(美鈴)が”元に戻る”ことに応じるような雰囲気を見せたのはー
このためーー
明美(美鈴)は、必死に叫ぶ美鈴(明美)を無視して、
入れ替わりの糸を”切断”したーー
「ーーそ…そんなー…」
震える美鈴(明美)ー。
先日、何となくもう一度これを売っていたサイトを見に行った明美は、
”そのサイトが閉鎖されていること”を知ったー。
つまりー…
もう、”入れ替わりの糸”は、手に入らないー。
「ーーーー…ーーーー…そんなー」
そう言葉を口にしながら、歯ぎしりをする美鈴(明美)ー
「ーーーもう、わたしが篠宮 明美なの!」
明美(美鈴)は、それだけ吐き捨てると、
「ぜ、絶対に返さないから!」と、それだけ言い放って
その教室から外に出ようとしたー。
がーー
「ーー!?!?!?!?!?」
話をしていた教室の扉を開けると、
そこには、茂雄ー…
村木 茂雄の姿があったー。
「ーーーーー…僕を…騙してたんだねー…?」
茂雄がそう言葉を口にするー。
「ーーぁ…」
明美(美鈴)は呆然としながら、茂雄に押し返される形で、
再び、話をしていた教室の方に戻って来るー。
「ーーあ…む、村木くんー」
美鈴(明美)がそれに気づいて、茂雄の方を見つめると、
茂雄が美鈴(明美)、明美(美鈴)の二人を見つめながら言い放ったー
「僕を…僕を騙したんだな…!」
とー。
「ーー僕…篠宮さんから告白されたと思って
心の底から喜んでたのにー…!
僕を騙したんだな!!」
茂雄が怒りの形相で叫ぶー
「ーーーだ……だって…」
”明美”になって茂雄と付き合っていた明美(美鈴)は
困惑の表情を浮かべながら言葉を口にするー。
「ーーだって、村木くんが、篠宮さんが好きだって言うから!」
明美(美鈴)の言葉に、
茂雄は「二人して、僕を弄んだんだな!」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーち、ちがっ…」
明美(美鈴)は、慌てふためいた様子を見せるー。
元々、性格的には臆病な美鈴は、
この状況をどうにかしようとパニックになりながら、
美鈴(明美)の方を指差したー。
「ーーい、入れ替わろうって言いだしたのは篠宮さんの方なの!
わ、わたしは、そんなに乗り気じゃなくてー!」
明美(美鈴)がそう言うと、
美鈴(明美)は「ふ、深野さん!?深野さんだって、納得してー…!」
と、反論しようとするー。
しかしー、茂雄は「うああああああああ!」と、声を上げると、
「二人して僕を騙して、あざ笑ってー!」と、
涙目で二人を見つめると、
さっき、明美(美鈴)が入れ替わりの糸を切断するために使った
ハサミを手に、二人に向かって来たー。
「ーちょ!お、落ち着いて!」
美鈴(明美)が、窓際に逃げながらそう声を上げるー。
明美(美鈴)は泣きながら「許して!助けて!」と、
命乞いをしているー。
がー、騙されていたと知った茂雄は
ガクガク震えながら「許せないー。許せないー」と、
何度も何度も言葉を繰り返しながら、
そのまま二人に近付いて来たー。
しかしー
その時だったー
「お、おい!何してるんだ!?」
たまたま前を通りがかって異変に気付いた健太が、
その場に乱入してくるー。
「ーー! む、村木ー!馬鹿なことはやめろ!」
健太が、茂雄がハサミを持って、明美と美鈴の二人を
窓際に追い込んでいる状態に気づくと、
茂雄を説得しようと声を上げたー。
「ーーやめるもんか!こいつらは僕を、僕を騙してたんだ!」
そう叫ぶ茂雄ー。
健太は咄嗟に茂雄の方に向かって走ると、
茂雄からハサミを取り上げようとしたー。
「ーー村木!まずは落ち着けって!お前の気持ち分かる!
でも、とにかく落ち着けー!」
そう言葉を口にする健太ー。
がー、次の瞬間ー
「ーーうぉ…」
健太がうめく声が聞こえたー。
「ーー!?!?」
茂雄も、明美(美鈴)も美鈴(明美)も、驚きの表情を浮かべるー。
茂雄と健太が取っ組み合いをしているうちに、
茂雄の持っていたハサミが健太の腹部に刺さってしまったのだー。
「ぉ…」
その場に倒れ込む健太ー。
「ーーう…う… うぅぅぅぅぅ…」
健太にハサミが刺さってしまったのを見て、頭を抱えながら
声を上げる茂雄ー。
明美(美鈴)はその場から逃げ出しー、
美鈴(明美)は慌てて周囲に助けを求めたー。
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健太は一命を取り留めたー。
何度も謝る美鈴(明美)ー。
”わたしが入れ替わりなんて、馬鹿なこと考えなかったらー”と、
そう謝罪を口にするも、
健太は怒っている様子はなく、
”気にすんな”とだけ、そう言葉を口にしたー。
茂雄は、駆け付けた警察に確保されたー。
その際に”入れ替わり”のことを何度も何度も叫びー、
明美(美鈴)と美鈴(明美)は入れ替わりのことを
隠すことができなくなってしまいー、
大騒ぎになってしまったー。
「ーねぇねぇ、中身は明美なんだってー」
「ヤバくないー?」
「ーーそうまでして、健太くんを振り向かせたかったのかな?」
「あり得ないー」
教室では、そんな陰口が叩かれるようになったー。
美鈴(明美)は、暗い表情で自分の座席に座るー。
明美(美鈴)は騒動の後に
すぐに退学ー
両親にも入れ替わりのことは伝わり、
”美鈴自身の家”で、両親から酷く叱られているようだー。
”こんなことになるなんてー”
ぎゅっ、と握りこぶしを作りながら、
美鈴(明美)は、表情を歪めるー。
「ーーねぇねぇ~!人の身体を使うってどんな気持ち~?」
クラスでは”いじめ”が始まっているー。
友達だった女子も含め、美鈴(明美)の元からは人が離れたー。
「ーーーー…」
悔しそうに表情を歪める美鈴(明美)ー
どうして、こんなことになってしまったのだろうー。
”入れ替わって”上手く行くー…なんて言うのは、
ファンタジーの世界だけの出来事なのだろうかー。
現実は、こうやって上手く行かない、ということなのだろうかー。
”ーーーーわたしが上手くやってれば、何も問題はなかったのかもー”
美鈴(明美)は思うー。
もしも、入れ替わった状態のまま、明美がちゃんと”美鈴”に
なっていれば、きっと健太とも付き合えただろうし、
明美になった美鈴は茂雄と付き合えただろうし、
健太が病院送りになったあの騒動も起きず、
周囲に入れ替わりが知れわたることもなく、全ては円満だったのかもしれないー。
明美があっさりと美鈴として生きることを放棄して、
入れ替わりを打ち明けてー、美鈴に元に戻ろうなどと言い出したことが
全ての原因だったのかもしれないー。
あんな風に、覚悟がないのなら、最初から入れ替わらなければよかったのかもしれないー。
”ーーわたしに、入れ替わって生きていく覚悟が足りなかったのかもー…”
美鈴(明美)はそう思いながらも、
もう、後悔しても遅いこの状況に大きくため息をつきながら、
今日も”孤立した教室”で一人寂しく昼休みの時間を過ごすのだったー。
おわり
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コメント
こういう感じのお話は平和的な感じになることが
多い気がするので(私の中のイメージデス…笑)
今回はあえて、”上手く行かない”入れ替わりを描くお話でした~!★
入れ替わって相手の身体で人生を歩む覚悟…★!
自分から入れ替わる時には、ちゃんと覚悟を決めないとダメですネ~笑
お読み下さりありがとうございました~!★!
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