酒と煙草が好きな夫と、
酒を飲まず、煙草も吸わない妻が入れ替わってしまった。
”妻のため”、
夫は元に戻れるまでの間、禁酒と禁煙を徹底しようとするも…?
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結婚2年目の20代の夫婦ー。
倉川 敦彦(くらかわ あつひこ)と、
その妻・茂美(しげみ)は、
特に喧嘩したりすることもなく、平穏な日常を送っていたー。
「ーーーちょっと、煙草吸ってくるー」
仕事が終わって帰宅しー、
のんびりしていた敦彦がそんな言葉を口にしながら
ベランダの方に向かっていくー。
「あ、うんー、でも、外寒くない?
わたし、そんなに気にしないから別にここでもいいよ?
ー煙、直接、フーッ!とかやられたら流石にイヤだけどー、
それ以外はー」
茂美が心配そうに、そして少し笑いながらそんな言葉を口にすると、
敦彦は「いやいや、そういうわけにもいかないよー」と、笑いながら
そのままベランダに向かうー。
敦彦は喫煙者で、茂美は非喫煙者ー。
大学生時代に付き合い始めた時からそうで、
敦彦は当初から、茂美に配慮して、
必ず、煙草を吸う時には、ベランダに出て喫煙するようにしているー。
”相手に対する気配り”
敦彦は、妻である茂美だけではなく、
これまでの人生で、常にそれを忘れないようにしてきたー。
親友からは時々”気配りが重すぎる”なんて言われたこともあったけれど、
茂美は、そんな敦彦の一面が気に入り、交際に至り、
そして今、こうして夫婦となっているー。
「ーーあ、ほら、だったらこれ!」
上着を手渡す茂美に、敦彦は「ありがとう」と、穏やかに笑うと、
そのままベランダの方に出て行くー。
敦彦自身も、茂美に対する気配りを面倒だと思ったこともないし、
イヤだと思ったこともないー。
本人からすれば、当然のことだと思っている。
もちろん、茂美に煙草を勧めたこともない。
煙草に限らず、好みは人それぞれだと思っているし、
する・しないも、個人の自由だと、そう思っているー。
「ーーふぅ」
煙草を吸い終えると、それを携帯用の灰皿に捨てて
そのまま家の中に戻るー。
「ーーーーあ、おかえり~」
家の中にいた茂美が、ベランダから帰って来た敦彦に
そう言葉を掛けるー。
敦彦は「ただいま… って、数分だけどー」と、
笑いながら、煙草を片付けると、
「ーーあ、そうだー昨日買って来たワイン、飲んでみようかな」と、
そんな言葉を口にしながら冷蔵庫の方に向かったー。
いつものような生活を続ける二人ー。
がー、”その生活”に異変が起きたのは翌日のことだったー。
「ーーえ」
翌朝ー……
目を覚ました敦彦は、表情を歪めるー。
”お、お、お、俺が横に寝ているー!?”
そうー
”自分”が、隣のベッドで寝ていたのだー。
”ーーーこれってー…え? 俺、死んだー!?”
そんなことを思う敦彦ー。
自分が起きたのに、隣に自分がいるー。
それはつまり、自分が、自分の身体から抜け出してしまっている
そんな状態ー。
「ーーーお、お、お、俺…幽霊になってるぅ!?!?!?」
敦彦が、そんな風に叫ぶと、
「ってーー…のわあああああ!?声が違う!?」
と、敦彦は自分の喉のあたりを押さえたー。
自分の声が”女”の声になっているー
「ーひ!?!?な、なんだこの膨らみはー!?」
そう叫ぶ敦彦ー。
さらにはーー
「な、な、な、ない!!!!!!!!」と、
ズボンの上から股間のあたりを触りながら叫ぶー。
普段は比較的物静かな敦彦はー…
学生時代から”何かあると”急に取り乱してしまう、
そんな性格だったー。
「ーーーーー…ーーーーーー…ちょっと、なに?」
一人で騒いでいる敦彦に気付いたのかー
”隣で寝ている敦彦”が目を覚ますー。
「ーーー…ひぇっ!?お、俺が起きたー!?」
思わず尻餅をついてしまう”先に起きた敦彦”ー。
”後から起きた敦彦”は、
「ーーーえ!?わ、わ、わたしー…?」
と、”先に起きている敦彦”のほうを指さしながら
困惑の表情を浮かべると、
先に起きていた敦彦は困惑しながら
鏡を見つめたー
「ーげぇぇぇっ!?し、茂美!?
お、俺が、俺が茂美になってる!?
なんだこれはあああああ!?」
悲鳴に似た叫び声を上げると、
”敦彦”は、自分が妻の”茂美”になっていることに気付き、
”自分”の身体のほうを見つめたー。
そうー
隣で”敦彦”が寝ていたのは、
”身体が入れ替わってしまった”からー。
自分が、茂美の身体になっていて、
妻の茂美が、夫である敦彦の身体になってしまっていたのだー。
「ーなにこれ…!?どういうことー?」
敦彦(茂美)も、ようやく状況を飲み込み、困惑の表情でそう言葉を口にすると、
茂美(敦彦)は「わ、分からないー…起きたら急にー」と、
戸惑いの表情を浮かべたー
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「ーいやぁ…今日、休みで本当によかったー」
茂美(敦彦)は、そう呟くと、目隠ししながら服を着替え始めるー。
「ーー…べ、別に目隠ししなくてもいいけどー…
するときとか、普通に見てるでしょー…?」
敦彦(茂美)は苦笑いしながら言うー。
「いや、今はそういう時間じゃないし、
妻の身体になって、ニヤニヤしながら着替える夫なんて、イヤだろ?」
茂美(敦彦)はそう言い放つと、
目隠ししたまま、必死に着替えようとするー
「ーって……ん…難しいー」
茂美(敦彦)は、目隠ししたまま”慣れない身体”での着替えに
かなり苦戦している様子を見せながら、
言葉を続けるー。
「ーえ、え~っと、あ、そこじゃなくて、そこ!」
敦彦(茂美)も着替えを手伝いながら、
ようやくそれを終えると、ひと息ついた茂美(敦彦)は、
いつものように煙草を吸おうとしてー、
「!」と、表情を歪めたー。
「ーど、どうしたの?」
敦彦(茂美)が戸惑いながら言うと、
「ーいや…茂美の身体で吸うわけにはいかねぇなーって」
と、茂美(敦彦)が、戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーーーあ~~~…そ、それは~…そうかも?」
一度も煙草を吸ったことがない”茂美”からすれば、
確かに言われてみれば”わたしの身体で煙草を吸われるのは複雑かも”と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーそうだよなー。大丈夫。元に戻るまでは吸わないよー。」
茂美(敦彦)は笑いながら煙草をしまうー。
「ーーーあはは、なんかごめんねー」
敦彦(茂美)は笑いながら、少し冗談めいた口調で、
「あ、今ならわたし、煙草とか美味しく感じるのかな?ほら、敦彦の口だし」と、
自分の口を指差すー
「ーはは、確かにー俺の身体なら好きなだけ吸ってもいいんじゃないか?」
茂美(敦彦)も、そんな言葉を口にしながら笑うと、
少し間を置いてから
「ーで…どうやって元に戻ればいいんだろうなー?」
と、そんな言葉を口にしたー。
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”入れ替わってしまった 元に戻る方法”
と検索して、ネットで情報を探ってみたー。
しかしー
出て来たのは、
人気の入れ替わり映画の時に書かれたと思われる
”もしも本当に起こったら?”みたいなページに、
質問に診断に小説ー…
流石に、実際の体験談や元に戻る方法が書かれたページは
見つからなかったー
「ーーだよね」
敦彦(茂美)が苦笑いすると、
「まぁ、入れ替わりなんて普通、起きないもんなー」
と、茂美(敦彦)も、戸惑いの表情を浮かべたー。
「ーーとりあえず…SNSで聞いてみるかー」
”妻と入れ替わってしまった マジでヤバい
元に戻る方法、知ってる人いたりしないかな?”
そんなことを書いてみる茂美(敦彦)ー。
敦彦(茂美)はそれを見ながら
「そんなので誰か教えてくれるの?」と笑うー。
がー…そんな敦彦(茂美)の心配は杞憂であると言わんばかりに
その数分後に、返信が届いたー
「おっ!早速!」
茂美(敦彦)が、嬉しそうにその返信を確認するとー…
海外の認証済みのマークがついたアカウントから”WOW”とだけ
返信が届いていたー
「クソッ!収益稼ぎ野郎じゃねぇか!」
茂美(敦彦)は思わず悪態をつくと、
敦彦(茂美)は「どうしたの~?何か教えて貰えたの~?」と、
不思議そうに言葉を口にするー。
「い、いやー…何もー」
茂美(敦彦)は、戸惑いながらため息をつくとー、
「やっぱ、ネットにも特にそういう情報はないみたいだしー…
自分たちで色々試してみるしかなさそうだなー」と、
そんな言葉を口にしたー
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「ーーーーー」
「ーーーーーーー」
「ーーーーーーーーー」
家のことをする以外は、
イスに座ってぼーっとしている
茂美(敦彦)を見て、
「だ、大丈夫ー?」と、少し戸惑う、
敦彦(茂美)ー。
「ーー…ん?あぁ、大丈夫だけどー…」
茂美(敦彦)は、そんな言葉を口にすると、
「ーーー寝たら、元に戻れるかな、とかいろいろ考えてただけだよー」
と、静かに笑うー。
入れ替わってから半日ー。
一応、試せる手は色々と試したー。
しかし、元に戻ることは出来ず、
とりあえず今日1日はこの状況のまま過ごしー、
明日の朝に元に戻っている可能性に賭けることに、
二人で決めていたー。
が、茂美(敦彦)は、先ほどから家のことをやる以外は、
イスに座ったまま、ずっとぼーっとしている状態。
敦彦(茂美)は、少し心配になって、
もう一度確認の言葉を口にしたー。
「ーーー…どこか調子悪いとか、ないよねー…?」
その言葉に、
茂美(敦彦)は「えっ!?いや、いや、そんなことはないけどー」と、
少し慌てた様子で言葉を口にするー。
「ーーえ…でも、どうして?」
茂美(敦彦)が、不思議そうにそう聞き返してくると、
敦彦(茂美)は「さっきからずーっと、ぼーっとしてる感じだからー」と、
不安そうにそんな言葉を口にしたー。
敦彦は普段、家事をはじめ、空き時間には映画やドラマを見たり、
本を読んだり、家の中で何か小道具を作ったり、
茂美とボードゲーム系で遊んだり、
家の中にいても、色々なことをしている。
しかし、今日は家事以外、何もする様子はないー。
「ーー…あぁ、そ、それはー…
茂美の身体を勝手に使うのが申し訳なくてー
できるだけ何もしないようにってー」
茂美(敦彦)が、少し照れくさそうに言うと、
「なんだ~…そんなことだったんだー」と、
敦彦(茂美)は、少し安心した様子で苦笑いすると、
「ーーわたしたち、夫婦なんだし、そんな気を遣いすぎなくていいんだよ?」
と、諭すような口調で言うー。
「ーー大体、いつもみたいにわたしの身体で過ごしても、
別にわたし、何とも思わないよー?」
敦彦(茂美)のそんな言葉に、
茂美(敦彦)は「いやぁ…ほら、茂美の目で本を読んだりして、視力を落としたりー」と、
過剰な気遣いを口にするー
「も~!考えすぎ~!」
敦彦(茂美)が、バシッ!と、茂美(敦彦)を叩くと
「いたっ!」と、茂美(敦彦)が声を上げながら、
「ーし、茂美がそう言うならー」と、立ち上がるー。
そして、ソワソワした様子で
「じゃあ…まず、トイレに行っていい?」
と、申し訳なさそうに言葉を口にしたー
「ーーえぇぇっ!?トイレも我慢してたの!?
わたしの身体で漏らされるほうがよっぽど困っちゃうよ~!?」
敦彦(茂美)のそんな言葉に、
茂美(敦彦)は「あ、あ!トイレを済ませる時の注意点は?!」と、
慣れない身体でのトイレを前に、心配そうにそんな言葉を口にしたー
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翌朝ー。
「ーーーーーーーーーーーー…」
目を覚ました茂美(敦彦)は、鏡を見て、呆然としていたー
「ーー戻ってないー…」
とー。
一晩寝れば、元に戻れるだろう、という考えは
残念ながら、打ち砕かれたー。
そしてー…
”そろそろ煙草吸いたくなってきたなー”
茂美(敦彦)は、だんだんと”己の欲求”が高まっていくのを感じながらもー、
首を横に振って、「茂美の身体では禁酒禁煙!」と、
自分に言い聞かせるように、そう言葉を口にしたー。
②へ続く
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コメント
妻の身体で禁煙と禁酒を頑張る(?)
入れ替わりデス~!★
明日の続きもぜひ楽しんでくださいネ~!
今日もありがとうございました~!
コメント
入れ替わりのワインだったんですネ!
無名さんの作品で夫婦の入れ替わりの作品増えてきましたネ☆
仲良さそうな夫婦ですがこの先どうなるか…
トイレのガマンは膀胱炎になったりしますからね汗
無名さんも自分と入れ替わった時は遠慮せずに行ってくださいネ笑
もちろん目隠ししないでいいですよ笑
自分も無名さんになったらどうどうと女子トイレ行きます笑
無名さんのカラダに慣れて元に戻った時に間違って女子トイレに行かないように気をつけます笑
コメントありがとうございます~!★
夫婦入れ替わりが続いたのは、
たまたまデス~笑
今のところ、仲良しな夫婦ですネ~!笑
入れ替わったあとのトイレ許可は大事デス…!!★