<入れ替わり>耐えられぬ欲求②~我慢~

入れ替わってしまった夫婦ー。

妻の身体になった夫は、
妻のために、禁煙と禁酒を徹底しようとするもー…?

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「結局、元に戻らなかったみたいねー…」
後から起きて来た敦彦(茂美)は、戸惑いの表情を
浮かべながらそんな言葉を口にするー。

「ーーあぁ…なんか、ごめんー」
茂美(敦彦)は「ううんー…敦彦が何かしたわけじゃないんだしー」と、
笑いながらそう答えると、
「でも、どうすれば元に戻れるのかなー?
 このままだと、敦彦もわたしも、仕事も困っちゃうしー」
と、不安そうに言葉を吐き出したー。

「ー確かにな…」

敦彦は正社員として、茂美はパートとして働いているー。
しかし、正社員だろうとパートだろうと、
既に”その職場の仕事方法”を理解している前提で働いているだろうし、
その職場の人間関係は、本人でないと分からないー。

茂美(敦彦)が茂美として、
敦彦(茂美)が敦彦として職場に行くのは、
実際のところ、少し難しかったー。

「ーーそういえば、俺は日曜日だから今日も休みだけど、茂美はー」
心配そうに茂美(敦彦)が言うと、敦彦(茂美)は
「あ、うんー…今日もシフト入ってるけどー…
 今日は人員に余裕もあったから、休めると思うー」
と、少しだけ不安そうに言葉を口にするー

「わ、分かったー…じゃ、お、俺が連絡しておけばいいんだよなー?
 今、”茂美の声”出せるのは俺のほうだしー」

茂美(敦彦)が戸惑いながらそう言うと、
敦彦(茂美)は申し訳なさそうに「うんー…よろしくね」と、だけ言葉を
口にしたー。

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入れ替わった翌日のその日も、
結局、元に戻ることのできない状況が続いたー。

困惑しながらも、茂美(敦彦)は、だんだんとソワソワし始めるー。

「ーー…どうしたの?」
敦彦(茂美)が、そう言葉を口にすると、
茂美(敦彦)は「ん…いや…そのー」と、困惑したような表情を浮かべたー。

「ーいつ、元に戻れるのかなって、考えたら
 だんだん焦っちゃってー。
 茂美にも迷惑をかけるしー」

茂美(敦彦)が申し訳なさそうに、そう言葉を口にするー。

敦彦は”常に自分よりも他人を優先するタイプ”で、
それが、過剰すぎる一面もあるー。

入れ替わったあともそうで、
昨日は、”茂美の身体を勝手に使うのは申し訳ない”という理由で、
ずっと、ぼーっとしていたぐらいだー。

「ー迷惑だなんて思ってないってばー。
 こういう時は、お互い様だし、わたしだって、
 敦彦の身体を勝手に使ってる状態なんだからー」

敦彦(茂美)が、諭すような口調でそう言うと、
「そ、そうだなー。」と、
茂美(敦彦)は、納得した様子で頷いたー。

付き合っている頃から友達には”重い彼氏”と言われたことも
あったけれど、優しいのは事実だし、
こうして、こちらが面倒臭がらずにちゃんと話をすれば、
敦彦は理解してくれるー。

だからこそ、こうして結婚して、上手くやってきたのだー。

「ーーあ、そうそう、元に戻れそうな方法、また色々考えて見たんだけどー」
敦彦(茂美)が、そう言葉を口にすると、
茂美(敦彦)はその話を聞きながら、
心の中で叫んでいたー

”ーーーた、た、煙草吸いたい!酒飲みたい!”
とー。

茂美(敦彦)がソワソワしていたのは、
”入れ替わってしまって申し訳ない”という理由ではなかったー。
そのことに関しては、昨日の時点で茂美から
諭されているため、もう気にしていないー。
一度指摘されたことを、何度も何度も繰り返すほど、
敦彦は愚かではない。
昨日、既に本も読まない、トイレも行かない、みたいなことを
していた時に、たっぷり茂美に指摘されているー。

だから、今、ソワソワしているのはそういう理由ではないー。

茂美の身体で、敦彦がソワソワしている理由はー
単純明快ー。

”酒”と”たばこ”だー。

普段から煙草をよく吸い、酒をよく飲む敦彦は、
昨日からずっと禁煙・禁酒を続けていて、
我慢の限界が近付いてきてソワソワしていたのだー。

酒に関しては、
酔って暴れたりする性格ではなく、
元々心配性な性格がもっと心配性になるぐらいで、
あまり変化はないし、
煙草に関しても、毎日吸ってはいるものの、
極端にその本数が多い、とか、そういうほどではなかったー。

しかしー…
”煙草も吸わない、酒も飲まない妻の身体でいるうちは禁煙・禁酒!”と
決めた敦彦は、2日目にして、早くも我慢の限界が近付いていたー。

”くそっ…茂美の身体で煙草を吸うとか、死罪だぞっ…!
 酒も、普段飲まない茂美の身体に入れるわけにはいかないー!

 っていうか、こういう依存的なやつって
 身体の方に染みつくんじゃないのか?”

茂美(敦彦)は、一人、イスに座りながらそんなことを考えるー。

”俺と茂美が入れ替わったらー
 煙草とか吸いたくなるのは俺の身体ー
 つまり、俺になった茂美の方じゃないのかー?

 なのに、なんで俺がー?
 いや、こういうのって、実は心の方が原因なのかー?
 俺の心が煙草と酒を欲しているのかー?”

茂美(敦彦)は、汗をタラタラ流しながら、一人考え続けるー。

”茂美が俺の身体で煙草を吸ったり、酒を飲むならいいー
 俺の身体はもうとっくに煙草も酒も染みついてるだろうからなー。
 でも、茂美の身体で俺が煙草を吸ったり、酒を飲むことは
 許されないー
 死罪だ死罪だ死罪だー
 そんなことは、許されないー”

「ーーーー…???」
敦彦(茂美)は、黙り込んで何かを考えている
茂美(敦彦)を見つめながら苦笑いするー。

”ーーそうだー我慢しよう。
 俺はアルコール中毒でもないし、煙草だって
 やめようと思えばいつでも辞められるんだー
  
 少なくとも、茂美の身体でいるうちは
 絶対にそんなことできないー

 頑張れ俺。
 負けるな俺。
 ファイトだ敦彦ー”

心の中では妙に喋る敦彦は
茂美の身体のまま、そこまで考えると、
ふと、顔を上げたー

「ーねぇ、敦彦ー」
敦彦(茂美)が、ニコニコと笑っているー

「また何か、”余計なこと”考えてるでしょ?」
敦彦(茂美)の言葉に、
「い、いやぁ~~、べ、別に~」と、
目を逸らす茂美(敦彦)ー

「あ、ほら!目を逸らした!アウト!
 今度は何考えてるの?言ってみて」

敦彦(茂美)の強引な様子に、
茂美(敦彦)は「いやぁ~…その~」と、
言葉を詰まらせるー

まさか”酒を飲みたい 煙草を吸いたい”なんて言えないー。
情けないー、と、敦彦は思うー。

がー

「ーーねぇ、教えてってば♡」
満面の笑みで言う敦彦(茂美)ー

茂美が満面の笑みで、少し甘い声を出す時は
怒っているー
これまでの長年の付き合いで、敦彦が学んだことだー

”俺の身体でやられると余計に怖ぇぇ”

そう思いつつ、意を決して
「じ、じ、じ、実はー」と、
”酒と煙草を我慢するのがつらくなってきた”と、
そう言葉を吐き出したー

「あ~~~…あははーそういうことだったんだねー
 さっきから、何ずっとソワソワしてるんのかと思ってたらー」

敦彦(茂美)はそう言うと、
茂美(敦彦)は「いや、俺の心が弱いからだめなんだー。本当にごめん」と、
今一度頭を下げたー。

がー、敦彦(茂美)は、ふと言葉を口にするー

「煙草はともかくー…お酒ぐらいなら、大丈夫じゃない?
 ちょっと飲むぐらいならー」

とー。

「ーーだって、わたしの身体で少し飲んだぐらいで、
 わたしの健康が損なわれるとは思えないし、
 元に戻ったあと、わたしが”お酒~!”なんてなるとは思えないしー

 煙草はー…よく分からないけどー」

敦彦(茂美)のそんな言葉に、
茂美(敦彦)は「え…え… でも、1回したことないことをするのは、申し訳ないよー」
と、そう言葉を口にするー。

敦彦(茂美)は、苦笑いしながら、
「ーー大丈夫大丈夫!お酒は二十歳を超えたあとに、何回か
 一口二口ぐらい飲んだことあるし!だから初めてじゃないよ!」
と、敦彦が遠慮しないように、そんな言葉を口にするー

「そ、そっかー…じ、じゃあー…」
茂美(敦彦)のそんな言葉に、敦彦(茂美)は
「あんまり我慢しすぎて、ストレス貯めちゃってもよくないしー
 ほら、ストレスで体調崩す人もいるから、
 わたしの身体の体調が崩れちゃうかもだし!」
と、さらに言葉を続けたー

「ーそ、そ、それもそうだなー…
 茂美の体調が崩れちゃったら大変だー」
茂美(敦彦)は申し訳なさそうにそんな言葉を口にするー。

”敦彦”の性格をよく理解しているからこその、
茂美の言葉ー。

”初めてだから申し訳ない”と言っている敦彦に対しては
”初めてじゃないよ”と、言葉を口にすることで、
遠慮する気持ちを消してあげて、
”ストレスで体調崩しちゃうかも”と言うことで、
逆に「我慢しすぎちゃうと茂美に申し訳ない」と、
そんな気持ちを植え付けていくー。

そういう、狙いだー。
友達からは”気配りが重すぎる”なんて言われている敦彦ではあるものの、
上手くサポートしてあげれば、全然そんなことはないし、
悪気のある気配りではないからー、と、茂美は、
そんな敦彦とずっと上手くやり続けていたー

「ーほらほら、ビールでもこっちの…名前は分かんないけど、何かのお酒とか、
 好きなもの飲んじゃって」

敦彦(茂美)が笑いながら、
敦彦のお酒を手にするー。
こうやって、押していくことで、茂美(敦彦)が
遠慮しない環境を作り出すー。

そんな光景に思わず、茂美(敦彦)は
少しだけ笑うと、
「いつも、本当にありがとうー。俺のこと、
 上手くコントロールしてくれてー」と、
言葉を口にするー

「ふふふー」
敦彦(茂美)は、嬉しそうに笑うと、
「こうやって楽しく過ごしていれば、急に元に戻れるかもだし!
 急に入れ替わったんだから、急に元に戻る可能性も、十分あるでしょ?」
と、そんな前向きな言葉を口にしたー。

「ーーー」
久しぶりのお酒ー。

グラスに先日購入したワインを注ぎー、
冷蔵庫に入っていた”おつまみ”になりそうなものを用意すると、
「ーーなんか、茂美をおじさんにしちゃってるみたいでー、
 似合わないなぁ」と、
茂美(敦彦)が笑うー。

そんな茂美(敦彦)を楽しそうに見つめる
敦彦(茂美)ー

「な、な、何笑ってるんだよー…?」
少し照れくさそうに、茂美(敦彦)がそう言葉を口にすると、
敦彦(茂美)は、
「ー普段の自分と違う自分を見れるってよく考えたら
 貴重だと思ってー」と、
楽しそうに笑ったー

「ーーな、なんか恥ずかしいなー
 じーっと見られてるとー」
そう言いながらも、茂美(敦彦)は
久しぶりにお酒ー…ワインを口にしたー。

がー、一口飲んで
茂美(敦彦)は少しだけ表情を歪めるー。

「ーー…?どうかした?」
敦彦(茂美)が少し不思議そうにそう言葉を口にすると、
「いや…なんか味が違うようなー…?」と、
グラスに入ったワインを見つめながら首を傾げるー。

「ーーあ~…それは、当たり前でしょ?
 だって、わたしの味覚と、敦彦の味覚違うんだし!
 ほら、入れ替わったあとのご飯の味とかも違くなかった?」

敦彦(茂美)の言葉に、
茂美(敦彦)は「あぁ、あぁーー…そうかーー確かに」と
納得したように頷くー。

「ーへ~…茂美の口だとこんな味するのか~」
少し驚き、というような口調でそう言葉を口にする
茂美(敦彦)ー。

「ーなんかエッチな言い方!」
冗談めいた口調で、敦彦(茂美)が揶揄うと、
茂美(敦彦)は顔を赤らめながら
「ち、ち、ち、違うよ!そういう意味じゃなくて!」と、
そんな言葉を口にしたー。

久しぶりのお酒ー。
入れ替わってしまった二人は、
未だ、元に戻る方法は分からないままだったけれど、
ここまでは平穏だったー。

がーー…
二人にとって”大きな誤算”があったー。

それはーー

「ーーもっと、もっと飲ませろよぉ」
茂美(敦彦)が、悪い口調で、そう言い放つー。

敦彦(茂美)は「ーだ、大丈夫?の、飲みすぎじゃないー?」と、
心配そうに言葉を口にするー

普段、敦彦はどんなに酒を飲んでも”悪態”をつくことはないー。
心配性が少し悪化するぐらいだー。

しかしー、”茂美”は違うー。
本人が飲まないため、本人すら気付いていなかったが
”茂美の身体”は酔いやすく、そしてーー
”酔うと周囲に絡むようになる”のだー。

「ーーうるせ~ほっとけ!」
茂美の身体で酔ってしまった敦彦は、そう叫ぶと、
いつもとは別人のような態度で、さらにお酒を飲み始めるのだったー

③へ続く

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コメント

ここまで円満な感じだった二人に
トラブルが…!?

どうなってしまうのかは、明日の最終回のお楽しみデス~!★

私も普段あまり飲まないので、酔ってしまったら
どうなるのかは未知数デス…笑

コメント

  1. TSマニア より:

    途中までは仲良し夫婦でしたけどね( ;∀;)

    なんかヤバいことになりそうですネ汗

    ちなみに無名さんはお酒飲みますか?

    お酒は何が好きですか?

    • 無名 より:

      こちらでまとめてお返事デス~!

      なんだか大変なことになっちゃいそうな最終回ですネ~!
      私はお酒はほとんど飲みませんが、
      飲むときはフルーツ系のものが多いですネ~!

      私になってプリクラ…!
      どんな写真が出来上がるか、楽しみですネ~笑

      • TSマニア より:

        はい、楽しみしてます(^o^ゞ

        フルーツ系だと女子っぽくていいですね♪♪

        お気に入りの着こなしてプリクラ楽しみ過ぎですね( *´艸`)

        髪型も細かいところまで確認してそうです笑

        あっ!?

        無名さんの制服いいですね\(^o^)/

        無名さんの制服気になりますっ!☆

        無名さんの学生時代のお気に入りの着こなしどんな感じでした??

        • 無名 より:

          制服~!☆

          学生時代は今よりももうちょっと派手に…★笑

          あ、でも制服は真面目にちゃんと着てました~★笑