店員全員が憑依されているコンビニ。
しかしある日を境に、
その近辺で”奇行に走る子”が、続出するー。
不穏な気配漂う中、コンビニでの日々は続くー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー遊んでるに、決まってるじゃないですか」
京香が笑うー。
「ーーーーーー……なんだと?」
絵里が鋭い目つきで京香を睨みつけると、
「ーえっ?ちょっとちょっと、何怒ってるんです?」
と、京香に憑依している伊崎康雄は戸惑ったー。
「ー最近、このあたりで、”急におかしな行動”をする子が増えてるらしいー
しかも、可愛い子ばかりー。」
絵里がそう言うと、
京香に憑依している康雄は「あぁ、あぁ、それで僕を疑っていると」と、
笑いながら呟くー。
がー、京香は首を横に振ったー。
「誤解がありますねー。
”遊んでる”ってのは、”この身体で”ってことですー。
福園京香の身体で、毎晩コスプレしたり、イったり、
あとはー、そうクラスメイトを誘惑して揶揄ったりー
そういうことを”遊んでる”って言ったんですよ」
京香のそんな言葉に、絵里は少し考えてから
「ーー信じて、いいんだな?」と、そう言葉を口にするー。
「ーーははは 社長が憑依薬を開発した僕のことを
よく思ってないのは分かってますー
でも、仮にその”おかしな行動をしている子”たちが憑依のせいだとしても
僕じゃありませんよー。
僕はー、そう。今のこの環境、気に入ってるんですからー
自分が”可愛いコンビニ店員”なんて、それだけで興奮するじゃないですかー」
顔を赤らめながら、京香が嬉しそうに言うー。
そんな様子を見て、絵里は”伊崎じゃないのかー?”と、
心の中でそう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
配信者の女子大生が、配信中に突然、胸を揉み始めて、
狂ったように服を脱ぎだす事件が起きたー。
その子も”近場”に住んでいる子であることが判明ー、
絵里に憑依している洋一は
”やはり、俺たちの中に、そういうことしてるやつがいるー”
と、確信するー。
そんなことを考えながらも、接客を続ける絵里ー。
「ーーありがとうございました~!」
絵里は、明るい笑顔で、たった今、商品を購入した
お客さんにそんな声を掛けるー。
洋一が憑依している”絵里”は、元々は人前に出るのが
苦手な、大人しい女子大生。
今でも”見た目”はそのままだが、見た目とは正反対の明るい性格に変わっているー。
それもそのはず、中身が違うのだからー
「今のは?」
イケメン男子バイト・慶介がニヤニヤしながら、
”たった今”お客さんから手渡された紙を見つめるー。
「何でしょうね~?」
他のお客さんも店内にいるため、”絵里”として、そう返事をしながら
紙を開くー。
そこには”良ければ友達になれませんか?”と書かれていて、
連絡先が記載されていたー
「うふふふふふふー… あらあらぁ」
慶介の中身は”イケメン好きのおばさん”ー。
時々、”おばさん”っぽさが、前に出てしまうー
「あ、あらあらぁじゃないよー」
絵里は恥ずかしそうにしながら、”大体、中身は男なんだぞ?”と、
小声で呟きながら、その紙を事務所の方に持って行くー。
事務所では、休憩中だったバイトのギャル・菜々美が
「ーーえ~絵里ちゃん、告白されちゃったの~?」と笑うー。
「ー揶揄うなよ!」
絵里がそう言いながら紙を机の上に置くと、
菜々美は「あははは すっご~い」と笑うー。
菜々美の中身は”根暗な男性社員”。
”僕自身が変わるチャンス”と、憑依能力を手に入れたあとに
”あえて”正反対のギャル”に憑依して楽しんでいるー。
「ーーー」
シフト表を見つめる絵里ー。
”中身”は、根暗な男性社員のギャル・菜々美ー
”中身”は、イケメン好きの男子大学生・慶介ー。
”中身”は、30代女性の女子大生・梨花ー。
”中身”は、おばさん好きの男が中身のおばさん・琴子ー。
”中身”は、女として振る舞う気のない男の女性バイト・結衣ー。
”中身”は、真面目な堅物で、最近は体調不良で休んでいる女性バイト・美沙(みさ)ー。
そして、自分と、伊崎康雄が憑依している京香ー。
だがー、慶介と梨花の中身は”女性”だー。
奇行に走っているのは”可愛い子”ばかりで、
少なくとも、”慶介”の中の人はイケメン好きのおばさんである以上、
まず可能性はないー。
”梨花”の中の人ならあり得なくもないがやはり可能性は低いー。
そして、”中の人”は男だが、おばさん好きの鴻上は、
若い子に憑依する可能性は低いと思うー。
そうなるとー
菜々美・結衣・美沙の”中の人”
そして、伊崎康雄ー…
もしも身内に、最近の奇行に関係している人間がいるのであれば、
そのいずれかである可能性は高いと思う。
しかしー…”それ”が誰なのかは分からないー。
「ーーーあぁ、知ってるっすよー。
最近、多いっすよねー」
”女として振る舞う気がない”結衣が面倒臭そうに
そんな言葉を口にするー。
「ーーーやっぱ、憑依が絡んでるんすかね?」
結衣がそんな言葉を口にするー。
絵里は、一人一人のバイトに、
さりげなく”最近、この近辺で急に様子がおかしくなる子が増えている”
ことについて、雑談を持ち掛けー、
その反応を探っていたー。
が、やはり、怪しい子はいないー。
”今度、美沙とも話す機会が欲しいなー”
最近、体調を崩して、バイト先にやってきていない美沙ー。
その”中身”は、社員の中でも一番真面目で堅物だった男だー。
彼は、最後まで”誰かの身体”を奪うことも躊躇していたぐらいだから、
そんなことはないとは思うがー。
「ーあ、そういえば、今度”1周年ですよ!
その時にみんなでお祝いしましょうよ!」
このコンビニをオープンしてからもうすぐ1周年ー。
憑依薬の開発者である伊崎康雄が憑依している京香が
嬉しそうにそんな提案をしてくるー。
「ーーん?そ、そっかーもうあれから1年か」
絵里はそう言いながら、
店内のカレンダーを見つめるー
そうこうしているうちに、
コンビニの店内に”お客さん”がやってくるー。
「ーあ、絵里~!買い物しに来たよ~!」
手を振りながら入って来た二人組の女子大生ー。
”絵里”の大学の友人たちだー
「ーーあ!来てくれたんだ~!ありがと~!」
絵里は”女子大生”として振る舞いながら
楽しそうに雑談を始めるー。
コンビニの仕事も、大学生活も一生懸命ー。
洋一も、何だかんだで”絵里”として充実した生活を送っていたー。
乗っ取った身体の”記憶”は、洋一を含む8人全員が、
持っているため、本人として振る舞うことはたやすいー。
「ーー絵里ってば、コンビニにいると、何だか別人みたいだよね~」
「え~そうかなぁ~」
そんな会話をしながら、絵里は楽しそうに微笑んだー。
望んで憑依したわけではない洋一にとっても、
女子大生ライフはそれなりに楽しいー。
この二人の友達も、今の洋一にとっては”本当の親友”と言える友達だったー。
がーーー
「ーーあはっ…あははははははははは♡」
その翌日ー。
昨日、コンビニに遊びに来てくれた友達の一人が、
大学構内で、服を脱ぎ捨てて、笑いながら痴態を晒したー
「あははははははぁ~♡ この身体で好き放題ぃぃぃぃ♡」
狂ったように笑う”友達”を前に、
絵里は呆然とするー。
ニヤッと笑みを浮かべる友達ー
明らかに”絵里”のほうを見ているー
”こいつ”は、俺を知っているー
いや、それだけじゃないー
やっぱりこいつは”コンビニの中に居る誰か”だと確信したー。
「ーーーこの子の人生、終了~♡ あっははははぁ」
笑いながら、糸が切れたようにその場に倒れ込む友達ー。
”くそっー…”
絵里は、いや、絵里に憑依している洋一は”俺への宣戦布告”だと受け取り、
怒りの形相を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局ー
”誰が憑依を悪用している”のかは分からないまま、
コンビニのオープン1周年を迎えたー。
独身で、お金だけは結構持っている”店長”の家に集まる絵里たちー。
今日だけは、店舗の方は特別に休みにしてあるー。
元々、緩い方針の系列店のため、時々であれば、そういうことも可能だー。
「ーーあれ?美沙ちゃんは?」
絵里がそう確認すると、
「ー美沙ちゃんは体調不良ですからね~」
と、ギャルの菜々美が答えるー。
体調不良でバイトを休み続けて居る”美沙”は、
1周年記念の集まりにも、結局、やっては来なかったー。
「ーーしかし、憑依ってすごいよなー。」
店長と、絵里たちが適当に用意した食事を食べ始めると、
店長がそんな言葉を口にしたー。
「ーはは、まぁ…確かにー」
絵里が笑いながら、ピザを口に運ぶとー、
女として振る舞う気がない”結衣”が「ー太るっすよ、その身体ー」と、
ツッコミを入れるー。
絵里に憑依している洋一の長年の友人である”店長”は、
憑依薬は飲んでいないし、店員が全員憑依された状態の
あのコンビニにおいて”唯一”憑依とは関係のない人物だー。
本人は別の仕事をしているし、
店長というのも表向きだけで、基本的には店にいないことがほとんだ。
「ーーーん~~…美少女で食べるケーキはうまい!」
憑依薬の開発者である”伊崎康雄”が憑依している京香が
嬉しそうにケーキを食べているー。
そんな光景を見つめながら、
”この中に、憑依の力を悪用してるやつがいるー…早く突き止めないと”
と、残りのメンバーの方も見つめるー。
「ほらほら~そんな怖い顔してないで~食べましょ食べましょ」
おばさん好きの男が中身の琴子が、そんな言葉を掛けて来るー
「そ、そうだなー」
絵里は、少しだけ笑うと、
”今日ぐらいは楽しむか”と、飲んだり、食べたりを繰り返すー。
やがてー、
”コンビニOPEN1周年記念”の集まりが終わりに近づく中、
絵里はトイレに向かうー。
”女としてのトイレにも大分慣れたなー…
飲んだりして近い時は、まだ戸惑うけどー”
そう思いながら、トイレを済ませて、
みんながいる部屋に戻った絵里は、目を疑ったー。
「ーーー!?!?!?!?!?」
”全員”が、机の上で白目を剥いて倒れているー。
中には、ピクピクと痙攣しているものもいるー。
いやー、
”全員”ではないー。
”ひとり”を除いてはー。
「ーーー…ーーえ」
絵里が、呆然としながら、その一人を見つめると、
その一人は笑ったー。
「ーーー最初は、楽しかったんですよー
でも、やっぱ、もう飽きちゃいましたからー…
せっかく”好きな時に乗り換えできる”んですからー
ずっと同じ身体に留まる理由もありませんし、
コンビニでバイトをし続ける必要もありませんからねー。
ククー」
その言葉に、
絵里は怒りの形相で叫んだー
「や、やっぱり、お前だったのかー…!
伊崎!!!!」
とー。
憑依薬を開発しー、
こうなるきっかけを作った人物ー。
そして、絵里に憑依している洋一が警戒していた人物ー、
伊崎康雄が憑依している京香ー…
そこに立っていたのは、京香だったー。
店長も、ギャルの菜々美も、女として振る舞う気のない結衣も、
おばさん好きの男が中身の琴子も、梨花、慶介、店長もみんな倒れているー。
一瞬、”違う”と思わせておきながら
やはり、この男が、”憑依”を最近悪用している張本人だったのだー。
「ーーみ、みんなに何をした!?」
絵里が叫ぶと、京香は笑みを浮かべたー。
「ー僕が事前に用意していた毒を全員に飲ませましたー。
ホントはもっと早く、こうしたかったんですけどねー
”憑依している中身”ごと殺す特殊な毒を作るのに、少し時間がかかりましたー。
どうです?凄いでしょう?
もう死んでるやつもいると思いますし、ギリギリ生きてるやつも
あと数分で死ぬでしょうー」
京香はニヤリと笑うー。
絵里がトイレに行ったタイミングで、
他のメンバーに憑依、用意した毒を飲み、次の身体に乗り換えて、
また毒を飲みー、を素早く行い、全員を抹殺したのだー。
「ーあと、病気療養の美沙も、ここに来る前に自殺させておきましたー。
もちろん、憑依でね」
にっこりと笑う京香ー。
「ーーお、お前ー…!」
絵里が叫ぶと、京香は「社長ー…あんたも終わりですよ」と、笑顔で笑うー。
「ーーー!!」
絵里に憑依している洋一は、ゾワッと恐怖すら感じたー
”こいつを止めないと、憑依の被害者が何人、いや、何百人、何千人と出るかもしれないー”
そんな、恐怖をー。
だがーーー
京香はその場に倒れ込みー
黒い煙が噴き出すとー、それが絵里の方に向かって来たー。
「ーーんふっ」
憑依された絵里は、嬉しそうに”毒”を飲み、その場に倒れ込むー。
毒を飲み込む瞬間に、伊崎康雄は絵里の身体から抜け出しー、
京香の身体に戻るー。
「クククククー」
全員の亡骸を間に、笑みを浮かべる京香ー。
「ーこれで”僕の憑依”を知る人間は誰もいなくなったー
これからは好き放題やらせてもらいますよー」
京香はクスッと笑うと、「この身体ももう、必要ないなー」と、
自分で用意した毒を飲んでー、飲み込む瞬間に、
伊崎康雄は、京香の身体から抜け出しー、そのまま闇の中に消えたー。
絵里たちのコンビニは、当然閉店となりー、
”店長の無理心中”ということで、事件は闇に葬られたー
伊崎康雄が、今、どこで、誰の身体を弄んでいるのかー
それは、誰にも分からないー
おわり
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コメント
最終回でした~!☆
犯人は誰?みたいなお話で、
”最初から怪しい人”以外の人が犯人なパターンは
私の作品ではよくあるので、
今回は”あえて”最初から怪しい人がそのまま犯人にしてみました~笑
お読み下さりありがとうございました~!☆
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