近所に住むおばさんに身体を奪われてー
挙句の果てに、身体から追い出された彼女の魂は、
飼い犬のココに憑依させられてしまったー。
”憑依された自分”に飼われる立場になってしまった
彼女の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーね、姉さんー?」
突然、帰宅した姉の克美が
自分を見て”イケメン…!”と、顔を真っ赤にしたことに
戸惑う真守ー
「ーーー…あ、いいえー
な、なんでもないわよ!ふふふ」
克美がニヤニヤしながら咄嗟に、
誤魔化すような振る舞いをするー
だが、その言葉遣いも、なんだかおかしいー
普段の克美とは違うー。
真守は強い違和感を感じながら
姉の克美のほうを見つめるー。
”真守!それ、わたしじゃないよ!!
真守!お願い!気付いて!”
飼い犬のココに憑依させられてしまった克美は
必死に、必死に何度も吠え続けるー。
しかしー
真守は「ココが何か吠えてるけど?」と、
言うだけで異常に気付いてはくれなかったー
”ーーま、真守~…”
気付いてくれないことに落胆するココー。
でも”帰宅したお姉ちゃんが少し変”で
”飼い犬のココが妙に吠えている”だけで
「ーーお前はお姉ちゃんじゃないな!」なんてなる方が
よく考えたらおかしいし、不可能に近いー
ココになってしまった克美は
”なんとかしないとー”と、そう思いながら
”ココも心配だしー…”と、悲しそうに呟くー
自分の身体が、美奈子に憑依されていてー、
ココの身体に、自分がいるということはー
ココはどうなってしまったのかー。
それも、今の克美にとって、”とても心配なこと”の一つだったー。
このままだと、ココがどうなってしまうのかも分からないし、
ココが可愛そうだし、早くどうにかしないとー
「ーほら!わたしの部屋に行くわよ」
いつの間にか弟の真守と会話を終えた克美が
そう言い放つと、乱暴に部屋にココを連れて行くー
普段はリビングにいるココだったがー
それを知らない美奈子は部屋にココを引きずり込むと、
克美の身体で笑みを浮かべたー
「ーーどう?犬になった気分はー?
どう?自分の身体を奪われた気分はー?
聞かせてよ?」
クスクスと笑う克美ー。
「ーーはぁ~~それにしてもやっぱ若いっていいわねぇ~」
鏡を見つめながらうっとりとする克美ー
「ーわたしの方が女として優れてるんだからー
あなたの身体はわたしが有意義に使ってあげるー」
謎の優れている宣言をする克美ー。
ココになってしまった克美は
必死に吠え続けるー
「ーうるさい!」
克美がココを蹴り飛ばすー。
事情を知らない周囲の人が見たら、
もはや驚いてしまう光景だろうー。
蹴られたココは
”何するの!”と心の中で叫ぶー
”ココにそんなことしないで!!!”
自分が蹴られたことよりもー
”ココの身体”が蹴られたことに激しい怒りを感じー、
ココになってしまった克美は、ココの身体で
克美に飛びついたー
「ひっ!?」
犬が怒りの形相で飛びついてきたー
そんな状況に、克美に憑依している美奈子は驚き、悲鳴を上げるー。
「ーーぐるるるるるるるる…」
普段は大人しい犬であるココが、怒りの形相で克美を睨みつけているー
そんな状況ー
「ーーそんなことしても、む、無駄だから!」
克美はそれだけ言うと、
「ーあなたなんて、どうだってできるんだから!」と、叫ぶと、
そのままココを無理やり抱きかかえて、1階のリビングへと降りたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
克美に憑依した美奈子は、ココになった克美から
距離を置くようになったー
距離を置かれてしまうと、何もできないー
必死に吠えたりー”普段のココがしないおかしな行動”をして
真守に、両親に異常を察知してもらおうとしたもののー、
それも、上手くいかないー。
「最近、ココ、変じゃない?」
母親が不安そうに呟くー。
”ーーーー!”
ココに憑依している克美は困惑するー
”異常を察知して貰うために”
必死に吠えたり、おかしな動きをしてみたりー
しかし、その行動が
”ココがおかしい”と、家族に不安を持たせてしまう結果になったー
このままだと”ココの印象”が悪くなったりー
最悪の場合”ココを飼う”ということ自体に影響が出る可能性があるー
仮に”ココが吠えるのを止めなくて、ご近所の迷惑にもなっちゃうから”
という理由で、家から遠ざけられたりしてしまったらー…
克美は身体を取り戻すことも困難になってしまうー。
”吠えすぎ”は、
異変を知らせるどころか、身体を取り戻すチャンスすらー
失くしてしまうかもしれないー
そう思ったココに憑依した克美は、
吠えるのを控えー、
どうにか、自分の身体を取り戻す方法を考え始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほら、エサよ」
”おしゃれになった”克美が、ドッグフードを床にばらまき、
笑みを浮かべるー
「食べなさいー」
見下しながらニヤニヤする克美ー
”憑依された自分”を目の前で見せつけられてー
何もすることが出来ないー
もはやー
地獄ー
だがーー
ココに憑依させられた克美も諦めてはいないー。
”おばさんっぽいセンス”のおしゃれに身を包んだ
自分の姿を見つめながら、
悔しそうに口に咥えたドッグフードで、
床に傷をつけようと試みるー
床に傷で”たすけて”と、でも書くことができればー
ココになってしまった克美は
そんな風に考えたのだー。
髪型もー
化粧もー
服装もー
何だか、おばさん風になってしまっている自分を見てー、
複雑な気持ちを抱く克美ー
だが、克美を支配した美奈子は満面の笑みで
「ーー大学にもイケメンがいっぱいいてー
本当に、毎日毎日楽しいわよー」と、
近況報告をしてきたー
”わたしの人生ー…壊さないでー…
ココを早く元に戻してあげてー”
心の中で悲痛な叫びをあげる克美ー
けれど、ココの身体では人間との意思の疎通もー、
できる行動も限られていたー
やがてー
克美に憑依した美奈子は、克美の身体で”イケメン”を
誘惑し始めて、家に大学のイケメンを連れ込んでは
エッチなことをするようになっていたー。
”自分の喘ぐ姿”を見せ付けられてー
ココになってしまった克美はさらに焦りを感じるー
しかもー
両親がいないときに、
克美に憑依した美奈子は弟の真守に壁ドンをして
突然キスをしたのだー
「ーお姉ちゃんー…真守がイケメンすぎて、我慢できないの♡」
などと、克美は言うー。
ココの身体になった克美は、必死に吠えまくったもののー
やはり、何もすることはできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”たすけてー”
ココになってしまった克美は、
ついにそのメッセージを弟の真守に伝えることに成功したー
散歩中ー
木の枝を咥えて、地面が土になっている場所を
歩いている最中に立ち止まりー
そう言葉を刻んだのだー
床に傷をつけるのは流石に難しかったー
だが、土ならー
そのメッセージを見た真守は驚くー
「た、た、たすけて?」
そう呟く真守ー。
ココの身体で、克美はさらにメッセージを刻もうとするー。
だがー
木の枝が折れてしまい、
それ以上、メッセージを伝えることはできなかったー。
困惑の表情を浮かべる真守ー。
真守は「ーー何か、辛いのか?ココー」
と、だけ言うと、まさか”姉さんがココに憑依させられている”などとは
夢にも思わずー、
そのまま散歩を続けたー。
帰宅後ー
姉の”克美”に、ココが”たすけて”とメッセージを書いたことを伝えると
克美はニヤリとココのほうを見つめてからー
「それはーー
うちで飼われることが、辛いんじゃないかしら?」
それはー
悪魔のような言葉ー
犬になった克美を散々見下しー、
もう満足していた克美になった美奈子は、
ココになった克美が必死になって伝えた”たすけて”のメッセージを
”違う意味”で、真守や両親に伝えてー
”ココ”をこの家から排除しようとしていたー。
「ーー(ち、ちがっ…!違うよ!)」
ココになってしまった克美は悲痛な叫びをあげるー。
「ーーそうなのかなぁ…」
弟の真守が困惑の表情で呟くー
両親も神妙な面持ちだー。
「ーーココのためにも、誰か引き取ってくれる人とか、
探してみたらどうかしら?」
ニヤリとする克美ー。
”家族に異変を知らせるため”
やっとの思いで”たすけて”というメッセージを伝えた
ココになってしまった克美ー。
だがー、克美に憑依した美奈子は
それを逆手にとって、ココを排除しようと動き出していたー
「ーーでも”たすけて”って書いたってことは
ココ、人間の言葉を理解してるってことよね?
他にも何か聞くことができるんじゃない?」
母親がそう呟くー。
ココになってしまった克美はそんな母親の言葉に
”希望”を感じたー。
だがーー
克美は言う。
「ーー確かにそうねー。
じゃあ、わたしがココにもっと聞いてみるわ」
ニヤァ、と笑みを浮かべる克美ー。
後日ー
克美に連れられて、外に出かけることになったココー
”これで、あんたともお別れねー
このイケメン食べ放題な身体はー
わたしのものよ”
ニヤニヤ笑う克美ー
ココになってしまった克美は絶望するー。
そして、帰宅後ー
克美は”ここにいたくない”と、ココが書いた、と、
両親や弟の真守に”嘘”を伝えたことによりー、
ココはー、半月後、”別の家”に引き取られることとなりー、
二度と、この家に帰って来ることはできなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やがてー
時は流れー、
”犬”の寿命は尽きようとしていたー
克美になった美奈子にはめられて、
家から追い出されてしまったココになった克美は
絶望からか、この家に来てからは
犬として”諦め”の生活を送っていたー。
新しい飼い主は、悪い人たちではなかったー
でも、もうどうすることもできないー
そんな諦めが、克美を完全に”犬”にしてしまったー。
そしてー
ココの身体が、犬としての一生を終えるー。
ココの身体が動かなくなってくるー。
けれどーー
もう、諦めていたからだろうかー。
それとも、犬としての一生にも満足だったのだろうかー。
ココの最後の顔は、穏やかな表情だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
克美になった美奈子は
大学を卒業後もー
男遊びを繰り返しー
よりおしゃれに、より派手になっていたー
しかし、どこか若者と感覚がズレているのか、
”おばさんっぽい”おしゃれが多く、
同世代の友達からよく突っ込まれたりもしていたー
たくさんの男に身体を許し、
弟の真守にすら、身体を許そうとして、
真守から拒まれたりもしたもののー
美奈子は克美の身体で欲望の日々を送っていたー
”性格”は、単純に言えば”劣化”したー。
誰からも可愛がられるような”克美”の性格は
見る影もなく、
強引で、自分勝手でワガママなそんな”美奈子”の性格に
染まった克美は、
かつてのように”誰からも可愛がられるような”人間では
なくなってしまったー
けれど、美貌と”身体”を武器に
男には困らなかったー
「ーふふふふ…明日はー」
バイト帰りー
克美は笑みを浮かべながら
明日のことを思い浮かべるー
明日は、”そういうことをする”ためだけの男と会うー。
どんなに風にイかせてくれるのかー
そんな風に思いながら
笑みを浮かべているとー
突然ーーー
ズキッと、今まで感じたことのない感触を覚えてーーー
突然、身体の自由が失われたー
”!?”
驚く美奈子ー
追い出された克美の魂はー
無理矢理憑依させられたココの身体が死んだことでー
ココの身体から追い出されていたー。
身体を失った魂ー
本来であれば、そのまま昇天するー。
しかし、克美にはまだ”自分の身体”が残っているー。
それ故だろうかー。
克美の意思に関係なく、克美の魂はー
克美の身体に自然と、戻ってきたのだ。
美奈子の使った憑依薬自体が、
そういう作用なのかもしれないー。
「ーーおえっ… うぷっ…」
路上で突然、光の玉のようなものー
”魂”を吐き出す克美ー
克美の魂が戻ってきたことでー
美奈子の魂が、克美の身体から吐き出されたー
”ーーー!?!?!?!?”
美奈子は呆然とするー。
”え…”
何もできないー。
吐き出された魂になってしまった美奈子には、何もー
「ーーーわん…!?ワン!?」
克美が突然四つん這いの状態で吠え始めるー。
”何年も”
ココとしてー
犬として過ごしてきた克美は、
心の底まで犬に染まってしまっていたー
自分の身体に戻っても、
犬として吠える克美ー
そしてーーー
「わん!!!!」
突然、そのまま走り出した克美はー
”美奈子の魂”を踏みつぶしたー
砕け散る美奈子の魂ーーーー
「わん!!!わん!!!わん!!!」
繁華街で犬のように走り、吠える克美ー。
美奈子は、失敗したー。
克美の魂を吐き出した時、ココに憑依などさせずー
その場で踏みつぶしていればーー
だが、もう遅いー
美奈子は戻って来た克美の魂に身体から追い出されて
踏みつぶされ、この世から消えたー。
そして、克美にとってもー
もう、遅いーーー
「わん!!わん!!!!!!」
周囲が騒然とする中、犬のように吠える克美ー。
もうー
克美が、元の克美に戻ることは、できなかったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
犬に憑依させられてしまうお話でした~!★
明日は前編と中編を土曜日に掲載していた
「悪魔の信号」の後編を掲載します~!
(※土曜日のみ、その日に書く時間がなく、予約投稿しているのですが
今週はクリスマスに合わせて(クリスマスモノを24日・25日になるようにするため)
事前に書いたものを金曜日に載せて
明日金曜日に書くお話を土曜日に載せる形で調整します~!
そのため、毎週土曜日に連載していた「悪魔の信号」が1日前倒しになります)
…何を言ってるかよくわからない!という人は
気にしなくても大丈夫デス~!
毎日更新であることには変わりありません~笑
お読み下さりありがとうございました~!
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