強引な入れ替わりで
幼馴染の身体を奪った後輩ー。
暴走した後輩を前に、
振り回される二人の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・
「ー先輩!」
ーー!?
帰宅しようと自分のアパートの前まで
やってきていた修吾の背後から、
突然声がしたー
そこにはー、
幼馴染の香織の姿があったー。
帰宅直前に、香織に声を掛けられたのであれば
どんなに嬉しかっただろうかー。
しかし、今の香織は、香織であって香織ではないー。
身体は香織のものでも、
中身は後輩の月菜だー。
「ーーな、なんでここにー?」
修吾がそう言うと、香織(月菜)はクスクスと笑いながらー
「ー先輩の家にお邪魔してもいいですか~?」と、修吾に
身体を密着させてくるー
「ーお、俺を尾けてきたのかー?」
修吾は困惑しながらそう言い返すー。
しかし、それを無視して香織(月菜)は
「ーわたし、修吾の家に上がったことなかったなぁ~って思って!
ダメかな?」
と、”香織のフリ”の口調でお願いしてきたー。
「ーうっ……」
修吾は、頭では中身が月菜だと分かりつつも、
どうしても本物の香織に頼み込まれているような気がしてしまって、
戸惑いの表情を浮かべるー。
あまりにも香織(月菜)が身体をくっつけてくるので、
ドキドキで心臓が破裂しそうになりながら
次第に周囲の視線も気になるー
”ここで騒がれても面倒だしー、
香織が元に戻った時、俺とこんな風にしてたなんて
近所で騒がれても香織もイヤだろうしー”
そう思いながら、
修吾は、仕方がなく「変なことは、絶対にしないって約束するか?」と
確認すると、香織(月菜)はクスクスと笑いながら静かに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
修吾は、香織(月菜)に翻弄されながらも
”香織と月菜を元に戻す方法”はないのかどうか、
自分なりに調べていたー
”このままじゃ、ホント、頭がおかしくなりそうだー”
そんなことを思いながら
今日も、月菜(香織)に会いに行くー。
同じ大学にいるため、二人が入れ替わっても
会おうと思えば会うこともできるー。
何とか時間を確保して貰いー、
お昼の時間に、月菜(香織)と合流するー。
月菜になった香織は
普段の月菜とは違い、優しそうな穏やかな雰囲気を出していて
”同じ身体でも中身によってこんなに変わるんだな…”ということを
イヤでも感じさせてくれたー
「ーー…後輩に、わたしの身体を奪わせて、それで満足ー?」
月菜(香織)が不機嫌そうに言うー。
「ち、違うんだってば!
俺はー…俺は、瀬村さんに何も頼んでないー
「でも、キスしたって言ってたー。
わたしの身体に、勝手にそんなことー」
月菜(香織)が不満そうに言うー。
「ーーーーー」
そう言いながらも、
月菜(香織)は”まだー、見られてるー”と、
視線を少し横に逸らすー。
修吾の行動を、”まるでストーカーのように”
香織(月菜)が監視しているー
そのことに月菜(香織)は気づいていたため、
あえて、月菜の”嘘”に乗って修吾と仲違いしているような
”演技”を、修吾にも伝えずにしているー
”月菜が油断するその日までー”
チャンスを待つ必要があるー。
”修吾のこと”は
よく分かっているー。
最初から、香織になった月菜が言っていた
”入れ替わりに協力してくれた”とか、
”入れ替わったわたしとキスをした”とか、
そんなの嘘だということは分かってたー
でもー
”大好きな先輩と付き合うために、自分の身体を捨てるような月菜”は
何をしでかすか分からないー。
だから、慎重な香織は、
慎重に自分の身体を取り戻す計画を練っていたー
「ーもう、二度とわたしに近付かないで」
月菜(香織)がそう言い放ちながら
修吾の前から立ち去るー
その様子を物陰から見つめていた
香織(月菜)は、
”仲違い”を確信して、邪悪な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから2週間ー
月菜(香織)は、”香織(月菜)”が、
修吾の行動の監視をやめたことを察したー。
この1週間ー
香織(月菜)は修吾の行動を見張るようなことがなくなったー。
恐らく”勝ち”を確信したのだろうー。
月菜が油断しきるのを待っていた香織は
ただちに行動を実行に移したー。
深夜ー
香織(月菜)が、修吾の連絡先に連絡を入れるー
”ーー瀬村さー、いや、香織ー…?”
修吾の言葉に、香織(月菜)は
「今まできつく当たっちゃってごめんねー
修吾がわたしのこと…その、好きだっていうのは驚いたけどー
でも、他のことは全部嘘だって言うのは分かってたからー」
と、言葉を口にするー
修吾が月菜と一緒に入れ替わりを企てただとか、
修吾が香織になった月菜とキスをしただとか、
それは全部嘘だと理解していたことやー
香織(月菜)が修吾を見張るのをやめるまで、
あえてきつく当たってきたことー、
香織(月菜)が油断するタイミングを見計らっていたことー
それらを月菜(香織)は全て説明したー。
「ーお願いがあるんだけどー…」
月菜(香織)そう言うと、
修吾に対して”お願い”を口にしたー。
それを聞いた
修吾は”わかったー”と、すぐに答えてくれたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
修吾と月菜(香織)は合流したー
「ごめんねー。もう近寄らないでとか言ったりしてー…
瀬村さんが修吾のこと見張ってたから、ああするしかなくてー」
月菜(香織)がそう言うと、
修吾は「俺…」と、申し訳なさそうに言うー
「ー…気にしないでー
修吾は今までもこれからも大切な幼馴染ー
好きだって思われてても気にしないし、
こんなことに巻き込まれても気にしてないからー
だってほら、わたしたち、小さい頃から
結構色々なこと、乗り越えて来たでしょ?」
微笑む月菜(香織)ー
「幼馴染すぎて、恋人っていうのはやっぱり考えられないけどー
でもー、わたしたち、別の方向だけどそれ以上の関係ー
切っても切れない幼馴染みたいなものだしー」
そんな言葉に、修吾は少し寂しそうに笑うと、
「それで、例のものはー?」
と、確認するー
月菜(香織)が「入れ替わりの粉」を修吾に見せるー
「瀬村さん、何をするか分からないから、
確実に身体を取り戻したくてー…
あとは、これを手に入れるまでの時間も必要でー
結構、なかなか見つからなくて苦労したし
届いたのも、一昨日だしー。」
月菜が香織の身体を使っている以上ー
変なことをされてしまっても困るー。
そのため、入れ替わりの粉を入手できるまでは、
月菜にそのことを悟らせずー、
油断させる必要があったのだー。
「ーーじゃあ打ち合わせ通りにやればいいんだな?」
修吾が言うと、月菜(香織)が頷くー
昨日ー
電話で打ち合わせた内容ー
それは、香織(月菜)を修吾がここに呼び出してー
修吾が香織(月菜)を力づくで取り押さえー、
その上で、隠れていた月菜(香織)が捕らえた香織(月菜)に
入れ替わりの粉を使い、身体を取り戻すー。
そういう、計画だー。
月菜の身体はとても華奢で、
香織以上に弱弱しい感じのため、
月菜(香織)が一人で入れ替わりの粉を使おうとしても
逃げられる可能性があるー。
だからー、こうして修吾にも手伝ってもらうことにしたー
「元に戻ったら、いっぱいお礼しなくちゃね!
何食べに行きたい?
修吾が好きなのはー…お寿司だったっけ?
あ、焼き肉ー?」
”元に戻れたあと”のことを口にしながら
月菜(香織)が笑いながら言うと、
修吾は「う~ん…焼肉の方が食べたいかなぁ」と、笑ったー
そしてー
修吾は香織(月菜)を呼び出すー。
何も知らずにやってきたであろう香織(月菜)を
修吾は、腕を掴み、取り押さえて椅子に座らせたー。
「せ、先輩ー!?」
香織(月菜)が驚いた様子で言葉を口にするー。
「ーー手荒な真似してごめんなー」
修吾が、そう言いながら月菜(香織)の身体を椅子に拘束するー
隠れていた香織(月菜)が姿を現すー。
月菜(香織)は、それを見てー
「え、江崎先輩ー!?先輩とはもう仲違いしたはずじゃ!?」
と、月菜(香織)のほうを見つめたー。
「ーわたし、最初から瀬村さんの嘘に気付いてたのー
修吾が入れ替わりなんて提案するわけないし、
修吾が勝手にわたしの身体にキスなんて自分からするわけないってー
ーーーわたし、何年修吾の幼馴染やってると思ってるの?
修吾のことぐらい、何でも分かるんだから!」
月菜(香織)の言葉に、
香織(月菜)は悔しそうな表情を浮かべたー
入れ替わりの粉が入ったカプセルを取り出す月菜(香織)ー
「ーー瀬村さんー
わたしの身体、返してもらうねー」
月菜(香織)がそう言い放ちながら、
拘束された香織(月菜)の方に近付いていくー。
しかしーー
その時だったー
「ー!?」
月菜(香織)が手に持っていた”入れ替わりの粉が入ったカプセル”が、
思わぬ方向から奪われたのだー
月菜(香織)が驚くー。
そして、”入れ替わりのカプセル”が奪われた方向を見つめるとー
困惑しながら言葉を口にしたー
「し、修吾ー…?」
とー。
月菜(香織)の持っていた入れ替わりの粉が入った
小さなカプセルを奪ったのは、幼馴染の修吾だったー
「ーーふふふ…あはははははははっ!」
”拘束されたフリ”をしていた香織(月菜)が笑うー。
「ー江崎先輩!残念でした~!
何年幼馴染をやってても、気付けないこともあるんですね~」
そう言うと、香織(月菜)が修吾の方に寄っていくー。
そして、
「ー修吾、それ、わたしに渡して♡」と、
香織(月菜)が甘い声を出して、
入れ替わりの粉が入ったカプセルを奪い取り、
それを少し離れた場所に放り投げたー
粉はその場で舞い散り、近くに誰もいなかったため、
何の効果も出さないまま、そのまま消えていったー
「ーーし、修吾…!ど、どういうことなの!?」
月菜(香織)が叫ぶと、
修吾は「ごめん…でも、俺、決めたんだー」と、
目を逸らしながら言うー
「ふふふー先輩はー
いいえ、修吾はー
わたしを彼女にすることに決めたんですよ~!
ね、修吾?」
香織(月菜)が笑顔で言うと、
修吾が顔を赤らめながら頷くー
「ーー最初は先輩、いいえ、修吾もわたしのこと、
受け入れてくれなかったんですけど、
わたしが一生懸命修吾に尽くしたら
ついに先輩も、わたしを彼女にする決意を
してくれたんです!
わたしを、”後輩の月菜”じゃなくて
”幼馴染の香織”として見てくれるようになったんです!」
香織(月菜)が演説するかのようにそう言うと、
月菜(香織)は表情を曇らせながら
「修吾に、何をしたのー?」と、
香織(月菜)を睨みつけるー
「ーー何をって?
別に悪いことはしてないですよ~!
家に行ったり、手料理を作ったり、
コスプレを披露したり、キスをしたり、
デートをしたり、それにー…エッチなことをしたりー」
香織(月菜)はそこまで言うとー
「ー”大好きな幼馴染”にそんなことされたらー
人の心のなんて、”中身が違う”って分かってても、持たないですからー」
と、月菜(香織)に近付いて小声で囁いたー
”ーわたしから身体を取り戻すために、慎重に時間をかけてたみたいですけどー
わたしはその間に、この身体で修吾をわたしのものにしたんですー”
月菜が”修吾の見張り”をやめたのはー
修吾と月菜になった香織が仲違いしたからでも、油断したからでもなくー
”修吾を完全に落とした”事を確信したからー。
修吾は、月菜になった香織が身体を取り戻す準備を終えた時には
既に、香織(月菜)に完全に誘惑されてしまっていてー、
月菜(香織)から今日の計画を相談された直後、
香織(月菜)にすぐに相談してしまっているほどだったー
「ーーー…ごめん」
修吾がそう言うと、
香織(月菜)は
「修吾~!今日も修吾のリクエストの服、着てあげる~♡」
と、修吾にくっつきながら微笑むー
修吾は顔を赤らめながら
「じ、じゃあー…今日は巫女服をー」
と、呟くー
「ふふふ…香織、巫女さんになっちゃう~♡」
香織(月菜)はそれだけ言うと、
「ーー…江崎先輩には、わたしの身体あげますから!
それで、我慢してください!
ほら、わたしもこう見えてなかなか可愛いと思いますし、
江崎先輩なら、わたしの身体、使いこなせますよ! それじゃ!」
と、修吾の腕を引っ張ってそのまま立ち去っていくー
「し、修吾!」
月菜(香織)が叫ぶー。
「ーーー」
修吾が振り返るー。
「ーー何が”俺、決めたんだ” よー。
何が”今日は巫女服で” よー!
信じてたのに…!
……裏切者!」
月菜(香織)が泣きながら言うと、
修吾は、表情を曇らせたあとにー
隣にいる香織(月菜)を見てからー
欲望に負けた己を恥じながらもー
もう、後戻りはできない、と、
月菜(香織)に向かって冷たい言葉を口にしたー
「ーーーーー何と言われようと、
俺、もう決めたんだー
ーーー”瀬村さん”ー」
月菜の中身は”幼馴染の香織”
そう分かっていながらー
あえて、月菜の名前を呼んだー
”瀬村さん”と呼んだー
月菜扱いされた月菜(香織)は
強くショックを受けてその場で蹲ったまま泣き出すー
けれどー
声を掛けることなく、修吾は香織(月菜)と共に立ち去っていくー
修吾の頭の中はもうー
”今夜、巫女服を着て楽しませてくれる”香織”のこと”
で、頭がいっぱいだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
元に戻るための準備に時間を掛けすぎた結果、
幼馴染の修吾はいつの間にか完全に
誘惑されて堕とされてしまっていました~!☆
”それから2週間”の、
サラっと流れた部分で、
執拗に誘惑されて、ついに欲望に飲み込まれてしまった
感じですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
欲望から偽物の方を選んだ修吾は最低ですね。中身が別人でもいいだなんて、本当の意味で香織が好きな訳ではなかったんじゃないでしょうか?
本物の香織は自分の身体を失ったのは気の毒ですけど、別に修吾が幼馴染以上に好きだったわけでも、恋人でもなかったわけですし、おじさんとかおばさんとかに入れ換えられたわけでもなく、月菜の身体は同年代の可愛い女の子なんだから、前向きになれば、十分幸せになれそうなので、そこまで嘆かなくてもいい気もしますね。そんなに自分の身体に愛着とかがあったのでしょうか?
コメントありがとうございます~!☆
年齢・立場的には確かに影響は最小限ですネ~!
香織は特に自分大好き!な子ではありませんが
他人の身体になると、家族とか友達とか
色々な場所に支障が出てきますからネ~…!