<入れ替わり>振ったあの子の暴走①~告白~

大学内で告白された彼ー。

しかし、彼は同じ大学に通う幼馴染の子が好きで、
告白してきた後輩を振るー。

がー、振られた後輩はとんでもない行動を実行に移してしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー杉原(すぎはら)先輩!」

そんな風に呼ばれて
修吾(しゅうご)は振り返るー

そこにいたのは、幼馴染の江崎 香織(えざき かおり)ー。

修吾が長年、密かに好意を抱き続けて来た相手だー。

しかし、その香織が、修吾のことを”先輩”と、呼んだー。

「ーー…な、なんだよ急にー?」
修吾が困惑しながらそう呟くと、
香織は、信じられない言葉を口にしたー。

「ーー先輩が、江崎(えざき)先輩のこと好きだって
 言ってたのでー
 わたしが、江崎先輩になっちゃいました!」

「ーーは?」

修吾は、香織の意味不明な言葉に、困惑の表情を浮かべるー

「わたしが江崎先輩になれば、
 先輩は大好きな江崎先輩と付き合うことができますし、
 わたしは、先輩と付き合うことができます!」

香織のそんな言葉に、
さらに困惑する修吾ー

香織は真面目な性格でー、
正直、こういうことを言うタイプではないー。

「な、何を言ってるんだー?
 ちょっとよく意味が分からないけどー」

修吾がそう言い返すと、
「だ~か~ら~」と、香織が「先輩ってば鈍いんだから!」と
笑いながら、衝撃の言葉を口にしたー。

「ーわたしですよ!月菜(るな)ですよ~!
 身体は江崎先輩ですけど、中身は、わたしなんです!」

ドヤ顔で言い放つ香織ー。

「ーえ…???え????」
余計に意味が分からなくなるー。

月菜とは、
後輩の瀬村 月菜(せむら るな)のことでー、
先日、修吾はこの月菜に告白されて、
それを断っているー。

「先輩、言いましたよね?
 この女のことが好きだって!

 だから、わたしがこの女になっちゃいました!

 これで、わたしも先輩も好きな人と付き合うことができて
 Win-Win!

 わぁすごい!パチパチパチ!」

嬉しそうに言い放つ”月菜を名乗る”香織ー。

修吾が、呆然としているとー
「ーーわたし、身体を”交換”したんです!」と、
修吾の幼馴染・香織の身体を”入れ替わり”で奪ったことを宣言したー。

「ーな、なんだって…!?え…?入れ替わりー…?
 じ、じゃあ、か、香織はー!?」

修吾が困惑して言うと、
香織(月菜)は、嬉しそうに舌を出して微笑んだー。

「今は医務室で寝てますよ~~」

とー。

修吾は激しく動揺したー

”な、なんだこの子ー”

”って、ていうかー…何でこんなことにー…!?”

修吾はーーー
”こうなるまで”のことを、頭の中で思い浮かべ始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間前ー

「先輩のことが、好きですー
 毎日毎日好きでたまらなくてー
 夜しか眠れないんですー」

そんな風に、月菜から告白されたー。

月菜はとても可愛らしく、愛嬌のある子で、
頑張り屋さんではあるもののー
”目標を達成するために、頑張りすぎてしまう”タイプの子で
大学受験の時にも、徹夜で勉強しすぎて、
高校の授業中に突然倒れ込んで救急搬送されてしまったことがあるー、
と、本人から聞いているー。

月菜とはサークル活動などで知り合い、
それなりに親しくはしていたものの、
恋愛感情は全くなかったし、
二人で食事に行ったりだとか、
そういう”勘違い”されるようなことは
一切していなかったー。

修吾からすれば、単純に先輩と後輩の関係でしかなく、
後輩としては可愛がっているし、月菜が困っていれば
助けてあげるようなこともあったが
それ以上でもそれ以下でもなかったし、
修吾が親切にしているのは、別に相手が女子だからではないー

月菜が、仮に男子だったとしても
全く同じことをしていただろうー。

がー、月菜の側はそうではなかったのだろうー
月菜に告白された修吾はー、人生で2度目の告白に驚きながらも
「…夜しか眠れないってー…ちゃんと寝てるじゃんー」と、
いつも月菜と雑談するときのトーンで、冗談交じりの言葉を口にするー

「あ、そうですね!てへっ」
月菜が笑うー。

修吾は、少し緊張した様子を浮かべながらも、
やがて、”返事”を口にしたー。

「ーー瀬村さんのことは、嫌いじゃないんだけどー
 …ごめん…俺、他に好きな人がいてさー…
 瀬村さんだからじゃなくて、
 他の誰に告白されても、返事は「ごめん」なんだー」

修吾は申し訳なさそうにそう言葉を口にするー

「ーーそ、そんなに好きな人がいるんですかー?」
月菜は少し悲しそうにそう呟くー

「まぁー…」
修吾がそう言うと、
月菜は「わたしがアイドルみたいに可愛かったらどうですか!?」と、
聞いてくるー。

”今でも十分可愛い気がするけどー”と、思いながらも
修吾は「相手が人気アイドルでも返事は「ごめん」だよ」と、苦笑いするー

「ーわたしが億万長者でも!?」
月菜の言葉に、修吾は「ノーだなぁ…」と呟くー。

「ーわたしが火星人でも!?」
月菜がさらに続けるー

修吾は「それはそもそも嫌だ!」と、ツッコミのような返事をすると、
月菜は「そうですかぁ…」と、残念そうに、呟いたー

可愛そうになってしまった修吾は、
「ーたまに俺と一緒にいる香織ー知ってるだろ?」と、
月菜に言うと、月菜は「あ~江崎先輩ですね!」と頷くー。

「ーそうー
 香織とは小さい頃からよく遊んでさー
 中学…になったぐらいからだったかなー
 
 ず~っと、好きだからさー
 だから、瀬村さんだけじゃなくて、誰から告白されても、
 付き合うことはできないんだー

 ごめんなー」

修吾がそう言うと、
月菜は「ーーもう付き合ってるんですか?」と、質問してくるー。

「いやー…香織は俺のこと”幼馴染”としか思ってないしー
 告白してもダメだと思うから
 まぁでも、それでも幼馴染としていられるだけで満足っていうかー」

修吾のそんな言葉に、
「ーじゃあ脈無しなのに、ずっと江崎先輩のために彼女を作らずに
 いるんですか!?」
と、月菜が不思議そうに言うー。

「ーー…まぁ…
 ほら、いつか告白できるかもしれないしー
 奇跡が起きて告白されるかもしれないしー

 とにかくー、香織のことが好きだから
 他の誰とも付き合うことはできないんだー」

修吾はそう言うと、
「脈はー…まぁ…1パーセントぐらいかな」と、
困惑の表情を浮かべたー

香織はー
”修吾に恋愛感情はない”ー。
修吾は、それを良く理解しているー。

香織に彼氏は現在、いないものの、
香織の好きな異性のタイプは全然違うし、
仲良しとは言えー、
いや、”幼馴染すぎて”恋人になることはできない
状態に陥っているー

高校時代、一度遠回しに告白してみたものの
「修吾は、幼馴染すぎて~」と、笑って
流されてしまったー

”幼馴染すぎる”
そう言われてしまった以上、
もう、香織と付き合うことはたぶんできないー

そうは思いつつも、修吾は香織への想いを断ち切ることが出来ず、
彼女を作ろうとはしていなかったし、
何なら、このまま生涯独身でも構わないとさえ、思っていたー

高校時代も一度、文化祭実行委員で一緒になった先輩に
告白されたことがあったものの
同様の理由で、修吾は断っているー。

「ーーー急に告白しちゃってすみませんでしたー
 でも、おかげでスッキリしましたー」

振られた月菜がそう呟くー。

「ーー本当に、ごめんなー。
 でも、全然気にしてないから、
 これからも変に気を遣わなくていいからな?」

修吾が、月菜がサークルに参加しにくくなったり
してしまわないように、そんな配慮の言葉を口にすると、
月菜は「はいー。わたし、頑張ります!」と、
何故だか、目を輝かせながらそう呟いたー。

・・・

「へ~ 告白されたんだ?すごいじゃん!」

幼馴染の香織と、翌日会った時に、
後輩から告白されたことを告げたー。

何となくー
”少しでも香織に嫉妬してほしいー”
なんて、そんな邪な気持ちがなかったのかと
言われればあったかもしれないー

「ーで、その子と付き合うことにしたの?
 瀬村さんって確か、修吾のサークルにいる
 可愛い感じの子だよね?」

香織が笑いながら言うと、
「ーあぁ~…いや、断ったよ」と、
修吾は苦笑いしながら言うー

「ーえぇっ!?断ったの?」
香織が少し驚いた様子で言うと、
修吾は「まぁ…うんー」と、頷くー

香織の言動からは
”ホッとしている様子”もないし
”ただ驚いている様子”しか見えないー

香織が、修吾に対して
少しでも異性としての好意を抱いていれば、
”後輩から告白された修吾”が
その後輩を振ったと知ったら
少しはホッとしたり、喜んだりー、という部分が
見えてくるような気がするー。

だが、それがなかったということは、
残念ながらー、
香織は修吾に対して”全くそういう感情はない”のだろうー。

そんなようなことを思いながら修吾が
「他に好きな子がいてさー」と、
修吾にしてはかなり攻めることを口すると、
香織は「え!?嘘!?そうなんだ~?」と、
なおも驚いた様子で言い放ったー

「わたしに手伝えることがあったら何でも言ってね!
 わたしと修吾の仲だから、
 手伝えることは全力で手伝えるし、
 応援もするから!」

香織が満面の笑みでそう言い放つー

悪気はないのだろうー
香織からすれば修吾は”大切な幼馴染”であり、
前に”幼馴染すぎる”と言われている通り、
幼馴染すぎて、恋人としては見ることができないのだろうー

「あぁ、うんーありがとう」
修吾は寂しそうにしながらも、
”全力で応援”と言ってくれたことに対しては
お礼の言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、今ー

その、香織がーー
振った月菜と入れ替わったー!?

修吾はー
1週間前の出来事を思い浮かべ終わると、
目の前にいる香織(月菜)のほうを見つめたー

確かに見た目は香織だが
その振る舞いには強い違和感を感じるー

「ーどうしたんですか~?先輩!
 わたしなら、デートだってキスだって
 なんだってできますよぉ~?」
香織(月菜)はそれだけ言うと、
「ー今度こそ、告白、オーケーしてくれますよね?」と
嬉しそうに笑うー。

「ーあ、何なら!わたしのこと、
 ”瀬村さん”とか”月菜”じゃなくて
 ”香織”って呼んでもいいですよ!」

香織(月菜)が笑いながら言うー

「本当は”月菜”って呼んでほしいですけどー
 でもでも、
 先輩は、この女が好きなんですから、
 仕方ないです!

 やっぱ、”香織”って呼びたいですよね?

 わたしは先輩と付き合うことができれば
 それで満足なので、
 そのためなら、”香織”になりますから!」

香織(月菜)の強引な主張に、
「ーーい、いや、ちょ、ちょっと待ってー」
と、修吾は戸惑いを隠せない様子で叫んだー

「か、か、香織はー?
 香織は、そのー身体の交換ってやつ、
 ”いいよ”って言ったのか?」

修吾が困惑しながら言うと、
香織(月菜)は「ーうん!わたし、瀬村さんと入れ替わることにしたの!」
と、香織の身体で香織っぽい言葉を口にするー

「ーーーーー」
修吾は、頭がバグりそうになりながら、
一瞬ぽかんとすると、
「い、いや、違う!か、香織のフリをするとかじゃなくて、
 香織本人は、瀬村さんと入れ替わること、納得してたのかって話ー」
と、修吾が、香織(月菜)に対して再度確認するー。

その言葉に、香織(月菜)は少しだけ笑うとー

「ーーあぁー…それはー……
 無理やり、入れ替わっちゃいました!
 許可はこれから取ります!」

と、無邪気な笑顔で言い放ったー

普段の香織とは違う笑顔ー。
修吾が、無邪気な狂気のようなものを感じているとー、
香織(月菜)は修吾の腕を掴んで
「ほ~ら!修吾!わたしたち、付き合っちゃお!」と、
身体を密着させてきたー

”中身が後輩の月菜”だとは分かりつつも、
そんな”香織”の積極さに、ドキドキしながら
顔を赤らめたー

「ーーちょっと!!!ど、どういうことなのー!?」

その時だったー

背後から、
月菜になった香織の声が響き渡ったー。

②へ続く

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コメント

後輩の女子と幼馴染の女子の入れ替わりデス~!

ちょっと危険なオーラも漂う後輩の暴走に、
彼は耐えられるのでしょうか~?

続きはまた明日のお楽しみデス~!
今日もありがとうございました~!

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