彼は、己の欲望のために憑依薬を使ったー。
しかし、憑依後に彼は改心ー…
もう、”取り戻すことのできない”状況の中、
彼は償いの道を模索し始めるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーへへへへへへー…」
松坂 俊吾(まつざか しゅんご)は、
ニヤニヤしながら”それ”を見つめていたー。
彼が見つめていたのは”憑依薬”ー。
「ーへへへへ…これを使えばー、
俺の人生大逆転だぜー」
そう言葉を口にすると、
俊吾は自分の家の中を見つめながら静かに呟くー。
「もうすぐ、俺のこんなクソみたいな人生とはお別れだー」
とー。
松坂 俊吾は、
40代中盤の独身男性。
一応、会社勤めはしているものの、
正直なところ、会社に居場所と言う居場所は
あまりないー。
彼自身ー、人生をかなり”いい加減”に生きてきた人間で、
学生時代は遊びまくっていて、勉強は全然だったし、
その流れで受験や就職もあまりうまくいかず、
就職してからも適当に生きてきた。
彼は昔から、将来のことを何も考えず
行き当たりばっかりで、何かのために努力をしようともしないタイプー。
そして、40代中盤までそのままズルズルと
過ごしてしまっていたー。
がー、そんな俊吾に転機が訪れた。
それが”憑依薬”との出会いだ。
憑依薬ー。
それは文字通り、飲むと他人に憑依することができるようになるー。
そんな薬だ。
ネットで偶然そんなものを見つけた彼は、
その月の給料をほぼ全て使って、それを購入したー。
40代独身で、一応正社員として働き続けてきた彼。
しかし、彼に貯金など1円たりともない。
何故なら、彼はその性格故に無計画にお金を
使ってしまうからだ。
そして、彼は今も”そう”していたー。
憑依薬が手に入れば、
もう俺自身にお金は不要、と言わんばかりに
振り込まれたばかりの給料をほぼ全額使い、
憑依薬を購入していたー。
その憑依薬が本当に”他人に憑依できるのか”など、
分からないと言うのに、給料のほぼ全額を使ってしまった。
これでは、もしも憑依薬が偽物だったり、嘘であった場合、
貯金も0の彼は、今月の生活が成り立たなくなる。
それでもー、
そんな行動をしてしまう。
それが、俊吾という人間だったー。
そして、翌日。
「ーーさ~て、誰に憑依するかなー…?」
俊吾は早速”奪う身体”を物色するために
近くの高校にまでやってきていたー。
何故、高校生なのかー。
あまり年老いた身体には憑依したくないー、
という考えはあったものの、
逆に若過ぎれば、親の影響力が強すぎて
あまり自由にすることは出来ないー。
そんな風に考えて、
彼自身の好みと、そのバランスを考慮ー、
彼は”女子高生”に憑依することに決めていたー。
「ーへへへへー女子高生は俺と違って
キラキラしてやがるからなー
俺って、美少女に生まれてりゃ
こんなクソみたいな人生にはならなかったんだー」
俊吾はそれだけ言葉を口にすると、
笑みを浮かべながら”物色”を続けたー。
少し離れた場所にはいるものの、
高校の正門から出て来る下校中の生徒たちを
物色している俊吾は、完全に”不審者”だー。
しかし、俊吾はもはや
”どう思われようと”関係なかったー。
どうせ、松坂 俊吾としての人生は
今日で終わりにするのだからー。
「ーーー!」
物色を続けていた俊吾が目を見開くー。
友達と楽しそうに話をしている
ボブカットの美少女を見つけた俊吾は
「アイツだー…俺の新しい人生はアイツで始めるぞー」と、
ニヤニヤしながら”憑依薬”の入った容器を手にするー。
真面目そうな雰囲気に、整った顔立ち、
そして、友達と楽しそうに話をしている笑顔ー。
「ーーへへへへー俺の新しい身体にふさわしいぜ」
俊吾はそう言葉を口にすると、
ソワソワした様子で”憑依薬”を見つけるー。
この憑依薬は自分の身体を瞬時に”消滅”させることで、
その場でその人物を霊体に変換させる力を持っているー。
つまり、飲んだ時点で
自分自身は肉体を失うー…
肉体が”死ぬ”ということを意味しているー。
が、俊吾はそんなことお構いなしで憑依薬を飲み干すと、
瞬時に自分の身体が砕け散るようにして光の雫となって消滅ー。
俊吾はそのまま”霊体”となったー。
”す、スゲェー
……って、霊体だから声は発せないのかー”
霊体になった俊吾は発しようと思った声が
発されなかったことに
改めて”霊体”の状態であることを実感するー。
そうこうしているうちに、
”ターゲット”に定めたボブカットの美少女が
友達と別れて一人になったー。
”よしよしー、今が絶好の憑依チャンスだぜ”
ニヤッと笑みを浮かべる俊吾ー。
別に自分自身が霊体であるため、
誰かと一緒にいる相手に憑依しても問題はないー。
ただ、相手に憑依したその瞬間ー、
”憑依”された側の身体がどんな反応をするのか分からないため、
できればターゲットが一人のタイミングで憑依したかったー。
その絶好のタイミングがやってきたのだー。
俊吾は満足そうに、ニヤリと笑みを浮かべると、
そのままボブカットの美少女に向かって
自分の”霊体”を突進させたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
柚木 美空(ゆずき みそら)ー。
それがー、
俊吾が乗っ取った相手ー、
ボブカットの美少女の名前だったー。
美空になってから3日ー。
俊吾は、美空の部屋ー、
いや、今は”わたしの部屋”になったその場所で
夢中になって胸を揉みまくっていたー。
「ふぅぅぅぅぅ♡
ずっと揉んでても飽きねぇやー」
本人が絶対にしないであろうことをしながら、
美空は嬉しそうに笑みを浮かべるー。
「ーあぁぁあ…ゾクゾクするし、ムラムラするー
へへっへへへへっ」
美空が浮かべるには、あまりに下品な表情ー。
しかし、憑依されてしまった美空には、
それに抗うことは出来ないー。
身も、心も完全に俊吾に支配されてしまったのだからー…。
「ーーー!」
が、胸を揉んでいた美空が少しだけ表情を歪めると、
「チッ」と、思わず舌打ちをしたー。
誰かが階段を上って美空の部屋にやってくる音に
気付いたからだー。
胸を揉むのをやめて、服を雑に整えると、
部屋に入ってきた美空の母・麗子(れいこ)のほうを見て
美空は笑みを浮かべたー。
「ーーお母さんーどうしたのー?」
とー。
「ーー…ううんー。特に用はないんだけどー…
体調は大丈夫ー?」
母・麗子は心底心配そうにそう言葉を口にするー。
そんな様子に、美空は「あははー大丈夫大丈夫ー。心配しないで」と、
そう言葉を口にすると、
「ー”記憶”は少しずつ取り戻していけるように頑張るから」と、
そんな言葉を付け加えたー。
俊吾が憑依したあの日、
”憑依した”直後に、美空は気を失ったー。
そのまま病院に搬送されて、
意識を取り戻した時には、病院だったー。
憑依薬の”説明書”にも、
憑依時には憑依された側の身体が色々な反応を起こすことがあり、
予期せぬ反応が起きる場合についても記載されていて、
恐らくはそれが起きたのだろうー。
そしてー、病院で目を覚ました美空の元には
両親をはじめ、友達や関係者がたくさん訪れたー。
もちろん、俊吾からすれば”美空の両親”も”友達”も
知らない人間ばかりー。
しかし、”憑依された際に気を失って倒れて病院に搬送された”
と、言うのは俊吾からしたら”ラッキー”な出来事でもあった。
”記憶を思い出せないー”
咄嗟に、俊吾は美空の両親に対してそう言葉を口にしたー。
”急に倒れて病院に搬送された”という状況は
”記憶喪失”を演じるのにピッタリだったー。
これで、美空のフリをしなくてはいけないだとか、
そういうことを考える必要もなくなりー、
”友達”に、「え~っと、誰だっけ?」と自然なカタチで
聞くこともできるようになったー。
がー、そうしていくうちに、美空に憑依した俊吾は、
あることも感じるようになったー。
それはー、”周囲の人々の温かみ”だったー。
俊吾は、自分の性格も災いして、
周囲に友達もおらず、
適当に生き続けていたために
信頼できるような人間も身の回りにいなかったー。
だからだろうかー。
美空に憑依して、美空のことを心の底から心配している
両親や友達、倒れたと聞いてすぐにお見舞いに来てくれた人々に触れて、
戸惑いを覚えていたー。
「ーーーーーーとにかく、大丈夫だから」
美空のことを心配して、部屋にやってきた母親・麗子に
対してそう言葉を返すと、
母・麗子は心配そうにしながらも静かに頷くー。
そして「ーでも、調子が悪いところがあったり、
不安なところがあったら、すぐに言ってねー?
…記憶のことは、すぐに元に戻したりしてあげられないけどー…
でも、何でも力になるからー」と、
母・麗子は心の底から心配している表情で
美空を見つめるー
”おいおいー、こんなクソみたいな俺をそんな目で見るなよー”
美空に憑依している俊吾は、内心でそう思いつつ、
思わず、母・麗子から目を逸らすと、
そんな仕草に、麗子はさらに心配そうな表情を浮かべたー。
「とにかく、わたしは大丈夫。心配しないでー」
美空は改めてそう言葉を口にすると、
「記憶は、のんびり思い出していくしー、
記憶がなくても、お母さんはお母さんだからー」と、
そう言葉を口にすると、
美空の母・麗子は寂しそうに頷いたー。
話が終わると、麗子は部屋から立ち去っていくー。
”お母さんー”
麗子は、美空のその言葉を思い出しながら
悲しそうな表情を浮かべるー。
美空は、両親のことを”パパ” ”ママ”と呼んでいたー。
それが、今は”お母さん”と呼んでいるー。
美空本人は”少しずつ思い出してきてるところもあるから!”と、
そう言っていたものの、
呼び方が”お母さん”のままであることを
悲しく思いながら、麗子はため息を吐き出したー。
娘の美空は記憶喪失などではないー。
私利私欲のために、男によって”憑依”されてしまったのだと、
そのことを母・麗子は、いや、他の誰も知らない。
ただー、”記憶喪失”だと思っていられるほうが、
まだ、幸せなのかもしれない…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーはぁ」
ゾクゾクしてムラムラしていた美空は、
母・麗子の心配そうな表情を思い出しながら
「興ざめしちまった」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーー」
鏡を見つめる美空ー。
美空は、色々な人々に愛されているー。
表向き、”記憶喪失”などという状況になっても、
みんなが美空のことを心配し、
言葉をかけてくれているー。
「ーーケッ、俺のクソみたいな人生じゃ、考えられないことだな」
美空はそう吐き捨てると、ベッドにそのまま寝転ぶー。
”周囲から心配されるー。
そんな立場の美空に対して
嫉妬するような感情を抱くと同時に
「お前らが心配している柚木 美空はもういねぇよ」
と、美空の手を見つめながらそう言葉を口にすると、
「あ~~あ…」と、どこか苦し気な言葉を吐き出して、
そのまま大きくため息を吐き出すのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”美空”として学校生活を送る俊吾ー。
”可愛い女子高生”は、学校でも常にキラキラしているのだろうと、
イージーモードだろう、と、そう思っていた俊吾は、
美空として生活を始めて、決してそうとも限らないことに気付いたー。
「ーーーーー」
とにかく、話しかけられるー。
その一つ一つに、明るく対応しないといけないー。
少しでも、俊吾の”適当な感じ”で返事をすると、
”記憶喪失”を心配する周囲が、心底不安そうな表情を浮かべるー。
自分の時のように、大口を開けてあくびをすることもできないし、
居眠りをするようなキャラでもないー。
もちろん、開き直って、大口であくびをする美空になっても、
教室で堂々と居眠りする美空になっても、
身体を乗っ取った以上、それは俊吾の自由だ。
俊吾さえそう思えば、美空には意のままにそうさせることができるー。
ただーーーー
それをしてしまえば、”女”になっただけで、
また、自分と同じことの繰り返しになるー。
女の身体は確かに興奮するし、ゾクゾクするー。
しかし、美空になってから今日で1週間ー。
”それはいずれ飽きるだろう”と、俊吾は思っていたー。
俊吾は元々飽きっぽいし、
乗っ取った身体でずっと過ごしていれば、そのうち”これが自分の身体”という
感覚になるのは間違いないー。
新鮮味は失われ、自分の身体で楽しんでいるのと同じになるー。
俊吾はそう思ったー。
「ーーーー」
だから、無理に笑顔を振りまき、
”美空”としての人生をある程度維持しようとする俊吾ー
もう一度、”クソみたいな人生”に戻らないようにー。
がー、美空として振る舞えば振る舞うほど、
彼の中に”罪悪感”が次第に膨らみ始めていたー…
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依で欲望の人生を…!と、思ったら、
憑依後に心境が少しずつ変わって来てしまった…!
そんなお話ですネ~!!!!
何の罪悪感も感じないぐらいのタイプの憑依人の方が
こういう憑依は上手く行くのかもしれませんネ~!!
続きはまた明日デス~!!

コメント