ある日、彼女が異世界の”姫”の魂に憑依されてしまったー。
ワガママで高飛車な行動を繰り返すようになってしまった彼女を前に、
同居している彼氏は次第に疲弊していくー…。
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「ーー今日はわたし、バイト休みだから、
わたしが買い物しておくねー」
同じ大学に通う女子大生・森藤 希海(もりふじ のぞみ)が、
そう言葉を口にすると、
「ーー分かった!助かるよー」と、
男子大学生の福本 輝夫(ふくもと てるお)が、
そんな返事を返すー。
「ー前に二人して買い物しちゃったことあったもんねー」
希海が苦笑いしながら言うー。
「はははー、あの日はたくさん食べることになって
大変だったなぁ」
輝夫が当時のことを思い出しながら笑うと、
希海は「じゃ、またあとで」と、次の授業を受けるために移動を始める。
「頑張って」
輝夫は手をあげながらそう言葉を返すと、
「さて、とー」と、自分も次の授業に向かおうとする。
すると、ちょうど通りがかりに今の会話を見ていた
友人の黒木 孝信(くろき たかのぶ)が笑いながら
輝夫に声を掛けて来たー。
「へへへーまるで夫婦みたいだなー」
とー。
「ーーはは…まぁ、一緒に住んでるから、似たようなもんかもなー」
輝夫は少し恥ずかしそうにしながらそう笑うと、
「ー同居はじめてどのぐらいだったっけ?」と、孝信は
そんな言葉を口にする。
輝夫は、少し頭の中で計算してから
「もう半年ちょっとだなー」と、そう返すー。
孝信は「しかし羨ましいぜ」などと言いながら、
「俺はてっきりー、同棲し始めてから色々ボロが出ると思ってたんだけどなぁ」と、
冗談めいた口調で輝夫を見る。
「おいおいおい、俺が希海と別れるのを期待してたような言い草だな」
輝夫はそう言うと、
「ーまぁ、でも、同棲してからもびっくりするほど順調なのは
希海のおかげかな」と、希海に感謝の言葉を口にする。
希海はとても優しい性格で、気配りもとても上手だ。
そして輝夫はそんな希海に負担をかけ過ぎないようにと、
輝夫自身も希海に対する気配りがどんどん上手になって
お互いに”良い効果”を出し合っているー、
そんな状態だったー。
「ーーで、あれはいつだよ?」
「あれ?」
孝信の言葉に対して、首を傾げる輝夫。
「ーーほら、結婚ー」
孝信がニヤニヤしながら、そう呟くのを見て
輝夫は「け、け、け、結婚ー!?いやいやいやー」と、
心底照れ臭そうにしながら首を横に振る。
「なんだよ、したくないのか?」
孝信が揶揄うようにして、輝夫を見つめると、
輝夫は「いや、そういうことじゃなくてさ」と、そう言いながら
「お互いに大学を卒業したらって、そういう話をしてるから」と、
理由を説明した。
「ははは、それじゃもう、結婚も約束してるようなもんじゃないか」
孝信が愉快そうに笑うー。
「ーいやいや、これからが大事だろー?
俺がどうしようもない態度をすれば、希海だって
別れたいって思うだろうし、
付き合ったら、同棲したら、結婚したらゴール、
ってわけじゃないからな」
輝夫がそう言うと「それは確かにな」と、孝信はそう言いながら、
「まぁでも、そういう風に考えられるなら大丈夫だろ」と、
そんな言葉を口にするのだった。
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バイトを終えて帰宅した輝夫は、
「ーーあれ?希海はまだ帰ってないのかー」と、
そう言葉を口にしながら、家の玄関の鍵を開けるー。
今日は希海はバイトが休みであったため、
先に買い物を済ませて帰っているー…
そんなはずだったー。
が、輝夫がバイトを終えて帰宅した時間でも、
まだ希海は帰って来ていなかったー。
とは言えー、
束縛するつもりはない。
希海には希海の人生があることは理解しているし、
帰りが遅くなったぐらいでムッとしたりすることも、
輝夫はしない。
「ーーよ~し、じゃあ、俺が洗濯物を片付けておくか」
輝夫は、希海が帰って来るまでの間に
できることを済ませてしまおう、と、
そう考えながら立ち上がるー。
が、その時だったー。
スマホが鳴ったのに気付いた輝夫は、
スマホを手にするー。
”希海のお母さんー?”
輝夫は少しだけ表情を歪めるー。
電話の相手は、同棲中の彼女の”母親”だったからだ。
「ーーもしもし?お久しぶりですー。どうかされましたか?」
輝夫がそう言葉を口にすると、
希海の母は困惑した様子で言葉を口にしたー。
”実は、希海がスーパーで万引きしたらしくてー
こっちに電話がかかってきたんだけどー…”
希海の母とは、輝夫も面識があり、
同棲のことも知っていて、父共々応援してくれているー。
「ーーーはい???え???万引き???」
輝夫は思わず変な声を出してしまうー。
すると、希海の母親にとっても寝耳に水の状態だったのか
動揺した様子で、
”わたしたち、そっちに向かうのは大変だから、輝夫くんに
連絡しておこうと思ってー”
と、そう言葉を付け加えたー。
希海の両親は、希海が一人暮らしを始めたあと、
地方にいる母親側の父親ー、希海からすると”おじいちゃん”に
あたる人物の介護のために地方に一時的に引っ越しをしていて
今からこっちに向かってくるのは難しいー。
そのため、輝夫に電話をかけてきたようだったー。
「分かりましたー。すぐにそのスーパーに向かいますー
場所はどこですか?」
輝夫は嫌な顔を一つせずに、”希海のためなら”と、
そう思いながら、希海の母親から
”希海が万引きした”のだというスーパーの場所を聞き出すー。
希海の母親に”また何か分かったら電話します”と、
そう告げると、そのまま電話を切って、
輝夫は慌てて、希海が万引きしたのだという
スーパーに向かって移動を始める。
”きっと何かの誤解だよなー?”
そう思いつつ、そのスーパーに向かう輝夫。
ようやく、スーパーに到着して、
同棲している彼氏だと伝えると、
奥の事務所で、希海が偉そうに椅子に座りながら
待ち構えていたー。
その”態度”を見ただけで強い違和感を感じる輝夫。
「ーーの、希海ーこ、これはいったいー」
輝夫がそう言うと、
「ーーまた無礼な男を呼んでー
どういうつもりなの?」と、
不満そうに、希海が顔を背けるー。
スーパーの店長を名乗る男が、
「ー彼女さんが、店の中で平気で商品を食べたり、
最後には会計もせずに外に出たりしましてねー…。
事務所でお話をしていたんですが、この調子で困ってるんです」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーの、希海ー?」
輝夫が戸惑いながら、希海に声を掛けるー。
すると希海は
「のぞみ??わたしはエミリーよ!」
と、そう言葉を返して来たー。
「ーーえみり??
え??なに???」
輝夫は心底困惑した表情を浮かべると、
「あなたたち全員ー」と、希海が、
輝夫と店長、そして同席していたスーパーのスタッフを指差すと、
「全員、あとでどうなっても知らないんだから!」と、
そう不満そうに言葉を口にするー。
「ーー…お、おい、何の冗談だよ希海ー」
輝夫は戸惑いを隠せない様子のまま、
希海の方を見つめつつ、そう言葉を口にするー。
「希海のお母さんも心配してたぞー。
どうしてこんなことをー?」
輝夫は、目の前にいるのが”本当に希海なのか?”という
疑問まで感じつつも、腕のところにあるほくろの位置が
同じであることを目視で確認して、
残念ながら、今、目の前にいるのは希海本人であることを悟るー。
他人の空似で、輝夫の知る希海は今頃家に帰宅しているー
それだったら、どんなによかったことかー。
けれど、現実はそうではないー。
希海は、訳の分からないことを口にしながら
万引きしたことを何も反省していない様子を見せー、
露骨に悪態をついているー。
「ーー失礼ね。あんた誰なのよ?」
希海は、なおもそんな態度を示すー。
「い、いやー…えっ…?」
輝夫は心底困惑したような表情を浮かべながら希海を見つめるー。
あまりにも自然な形で”あんた誰よ?”と言われてしまったために
”本当に希海なのか?”という思いが再び強まって来るー。
「ーい…いや、の、希海…だよな?」
輝夫はそう言葉を口にすると、
同じく困惑しているスーパーの店長の方を見つめるー。
「ーー…彼女、何か持ってませんでしたか?」
輝夫がそう言うと、スーパーの店長は
「あちらのバッグは持ってましたが」と、そう言葉を口にして
それを指差すー。
「ーー希海じゃなくて、エミリーだって言ってるでしょ!」
希海が腕組みをしながら、偉そうな態度でそう叫ぶー。
輝夫はそれを無視して、希海の持っていたというバッグを見つめると、
確かにそれは希海がいつも使っているもので、
その中身も店長に一声かけた上で確認させてもらうと、
中には希海の私物が入っていたー。
やはり、ここにいるのは希海で間違いない。
「ーーー~~~の、希海ーいったい、どういうことなんだー?」
輝夫は混乱しながら、希海にどういうつもりなのかを
改めて確認するー。
しかし、希海は
「ー大体、ここはどこなのよ?」と、うんざりした様子で叫ぶと、
「早くカイルを呼んでくれる?」と、意味不明な言葉を口にした。
「カイル?…誰?」
輝夫が心底困惑した様子で首を傾げるー。
カイルとは誰か。
そんな知り合い、大学にはいないし、
希海の人間関係でも聞いたことがない。
「ーーーーー」
輝夫は正直なところ、どうしたらいいのか分からなくなってしまい、
スーパーの店長の方を見つめると、
ひたすら謝罪しながら、
「い、いつもはこんなじゃないのですがー…
言ってることの意味も、分からないですしー」
と、ありのままを説明するー。
「そうは言っても、万引きされちゃってますからね」
スーパーの店長が、不満そうに言うと、
輝夫も”もちろんそれは許されないことです”と、言いながら
謝罪をするー。
スーパーの店長と”警察を呼ぶしかない”という話をした後に、
輝夫は「警察の方が来るまで、もう少し話をしてもいいですか?」と
確認した上で許可を貰うと、希海の方を見てから
希海の前に座ったー。
「ーー色々、聞かせてほしい」
輝夫はそう言うと、希海は「無礼な男ねーまぁいいわ」と、
不満そうに腕組みしながら椅子に寄りかかるー。
とても、希海には見えないー。
顔も、見た目も、声も、確かに希海だし、
所持品も希海だー。
なのに、目の前にいる人間が、とても希海とは思えない。
そう思いつつ、
「君は”希海”だよなー?」と、そう言葉を口にする輝夫。
がー
「ーはぁ?だからわたしはエミリーだって言ってるでしょ!」と、
不満そうな声を上げる希海ー。
「ーーー…」
輝夫は険しい表情を浮かべながら
「じゃあ、普段は”何”をしてるんだー?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーはぁ?あなた、わたしのことを知らないの?
父上は、この国の国王でー」
希海がそう言うと、
輝夫は思わず戸惑いの表情を浮かべながら
スーパーの店長の方を見つめるー。
スーパーの店長も混乱したような表情を浮かべているー。
「ーー…じ、じゃあ、何で”万引き”なんかしたんだ?」
輝夫がそう続けると、
「まんびき?」と、希海は聞き返してくるー。
輝夫が万引きについて説明すると、
希海は「わたしはエミリーよ!わたしにお金を払えって言うの?」と、
声を荒げるー。
「ー~~~~~」
輝夫は、希海の表情を見て
”とてもふざけているようには見えない”と、
そう考えると、少し考えてから
「あの、店長さんー…”鏡”ってありますか?」とそう確認するー。
「鏡…ですか?」
店長は”鏡を一体何に使うんだ?”と言わんばかりの表情を
浮かべていたものの
「ありますよー」と、そう言葉を口にすると、
店の事務所の奥から、手鏡を持ってきてくれたー。
「ありがとうございます」
輝夫はそうお礼を口にしてから、
希海の方に鏡を向けるー。
「ーこれは、”君”かー?」
とー。
「ーー!?」
高飛車な態度を取っていた希海が、突然驚きの表情を浮かべるー
「ーー…な…な…ど、どういうことー!?」
希海が声を上げる。
「ーこれが君の姿だー。
これは、君なのか?」
輝夫がそう確認すると、
希海は「い、いったいどうなってるのー?こ、この女は誰!?」と、
鏡を指さしながら動揺した様子を見せる。
その反応に、輝夫もスーパーの店長も困惑の表情を浮かべることしか
できなかったー
②へ続く
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コメント
今月最初のお話は、異世界の姫に彼女が憑依されちゃうお話デス~!!
まだ、輝夫くんたちは”憑依”の事実にたどり着いてないですケド、
それはこの先のお楽しみデス~!!
今月も、改めてよろしくお願いします~!!☆

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