チア部に所属する憧れの子に憑依した男ー。
彼は”いつも見ている通り”真似をすれば
簡単に踊れるだろう、と、
そう考えていたものの…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー杉森(すぎもり)さんー、いいよなぁー」
隣にいた親友の勝谷 将輝(かつや しょうき)が
そう言葉を口にしたー。
「ーーえっ」
将輝の突然の言葉に、思わずそんな反応をしてしまった
三浦 周平(みうら しゅうへい)ー。
「ーーえっ、ってなんだよー?」
将輝は笑いながらそう言うと、
視線を今一度、”その子”ー、”杉森さん”の方に向けながら言うー。
「ー可愛いしー、優しいしー、
踊りも上手いしー」
とー。
将輝の視線の先にいるクラスメイトー、
杉森 真綾(すぎもり まあや)はー、
学校のチア部に所属する女子生徒ー。
見た目も、優しさも、そして運動も得意と
色々なものを兼ね備えた子だー。
「ーは、ははははー杉森さんかぁー。
でも、チアなんて誰でも踊れるだろ?」
周平が笑いながらそう言うと、
「ーいやいや、アレ、絶対そう簡単じゃないぜー?」
と、将輝がそう反論するー。
「いやいやー、簡単だねー。
そりゃー、ビジュアル的に微妙な
俺みたいなやつには無理だけどさー
杉森さんぐらい、可愛けりゃ余裕でしょ」
周平が、なおもそう言い放つと、
将輝は少しだけ不満そうに
「ー可愛けりゃ誰でも踊れるって言うのかー?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーあぁー。だってそうだろー?
あんなのちょっとほら、こうやって身体を動かしてー」
ふざけた様子で身体を動かしながら周平がそう言うと、
「お前なぁ」と、呆れた様子で、
「チアリーダーとか、そんな簡単なもんじゃないからな?」
と、将輝はそう反論を続けるー。
「ーーいやいやいや、簡単だねー」
周平が少しムキになってそう言うと、
将輝は「じゃあ、お前やれよー」と、呆れ笑いを浮かべながら言うー。
「ーーいやいや、俺の話、聞いてたかー?
”杉森さんぐらい可愛けりゃ余裕”ってそう言っただろー?
ーー俺は全然可愛くないし、ついでにイケメンでもないー
どこにでもいそうなモブキャラだぞー?」
周平は真顔でそう言い放つー。
「ーーー自分のこと、モブキャラとか言うなよー。
人生の主人公は自分自身だろ?」
将輝は呆れ顔でそう返すと、
周平は「とにかく」と、言葉を口にしながら立ち上がるー。
「ーチアは簡単だけど、俺みたいなモブキャラには無理ってことだよー」
と、そう言いながら、”じゃ、俺は昼食買って来るー”と、
そのまま教室の外に向かって行くー。
「ーーふ~~~~…」
教室の外に出た周平は少しだけ溜息を吐き出すと、
汗をタラタラと流しながら
「マジかよー」と、呟くー。
周平が驚いていたこと、それは…
”親友の将輝も、”杉森さん”のことが好き”と、
言うことだったー。
「ーーくそっー、アイツも杉森さんが好きだなんてー」
周平は困惑の表情を浮かべながら、
廊下を歩くー。
周平は、以前からチア部で活躍する真綾のことが好きだったー。
親友の将輝からは今までそんな話を聞いたことがなかったため、
”将輝も真綾が好き”だとは思っていなかったー。
が、今日ー、将輝が突然そんなことを言い出したために、
咄嗟に、将輝の気持ちを真綾から引き離すために
”チアなんて簡単だろ”と、そう言ってしまったー。
”あ~くそっ…教室に杉森さんもいたしなぁー……
杉森さんに聞こえてなきゃいいけどー…”
不安そうな表情を浮かべる周平ー。
”チアなんて簡単”ー
そんな言葉が、もしも真綾本人に聞こえてしまっていたら
きっと嫌われてしまう…。
そうなったら、終わりだ…
と、ブルーな気持ちになりながら、
周平はこの日の午後、いつもより少し暗い表情を浮かべながら
授業を受けることになってしまうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーえっ…」
朝、学校にやってくると、
自分の下駄箱に”何か”メモ用紙のようなものが
置かれていることに気付いたー。
恐る恐る、そのメモを開くと、
”昨日の言ってたこと、許せないー
話があるから、放課後に理科室の隣の空き教室に来て”
と、そう書かれていたー。
「ーーー…~~~~~~…」
そのメモ用紙を見つめながら、汗をタラタラと流し始める周平ー。
やっぱー、昨日、チアなんて簡単だと
言ってしまったことを聞かれてしまったのかもしれないー。
そう思いつつ、青ざめていると
「よぅ三浦ー。どうしたー?」と、親友の将輝が
何も知らずに声をかけて来たー。
将輝は平然と下駄箱から上履きを取り出して、
そのまま中へと入っていくー
”お、俺だけー…?”
周平は心の中でそう呟くー。
昨日、チアがどうとか、話をしていたのは
周平だけではなく、将輝も同じはずだー、と
心の中で思う。
けれど、よく考えて見れば
”チア部なんて簡単だろ!”と騒いでいたのは自分だけだー。
それで、怒りを買ってしまったのかもしれない。
そう思いつつ、周平は”とにかく謝ろう”と、
放課後まで生きた心地がしない様子で
授業を受けることになってしまったー…。
そして、ついに放課後の時間がやってくるー。
緊張した様子で指定された部屋に向かうと、
そこにはチアの格好をした女子生徒が待ち構えていたー。
がー…真綾ではないー。
「ーーあ、来た来たー」
振り返ったのは、真綾より髪の短いショートヘアーの子で、
同じくチア部に所属している藤堂 涼花(とうどう りょうか)だったー。
「ーー昨日、あたしたちチア部のこと、馬鹿にしたよね?
許せないー!」
涼花がそう言い放つと、
しばらく、驚いたような表情を浮かべていた周平が、
やがて、口を開いたー。
「ーーーーな、なんだー藤堂さんかー…
杉森さんに聞かれたのかと思ったぁ…」
と、心底安心した様子で、言葉を口にする。
涼花も、同じクラスの一員で、
真綾より座席が近いー。
そのため、昨日の将輝との会話を聞かれてしまったのだろうー。
「な、なんだとは何よ!?」
不満そうにそう言葉を口にする涼花。
「ーいや、別にー」
周平はそう言葉を口にすると、
涼花は、チア部のことを誰にでもできるみたいに言ったことは
許せない、と散々文句を言い始めるー。
そんな涼花に対して、別にムキになる必要もないのに、
負けず嫌いの周平は「い~や、簡単だね!!」と、そう反論してしまうー。
「ーーーーーはぁ?じゃあ、あんたがやってみなよー」
涼花のその言葉に、周平は
「昨日の話”盗み聞き”してたんだろ?」と呆れ顔で言うと、
「だったら、”俺は全然可愛くないし、イケメンでもないモブキャラ”だから、
無理って話も聞いてただろ?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーーー」
涼花は、悔しそうに周平のほうを見つめているー。
周平は「藤堂さんには嫌われてもいいけど、
杉森さんには嫌われたくないからー、杉森さんには言うなよ?」と、
そう言葉を口にした上で、
そのまま立ち去って行こうとするー。
がー、
涼花はそんな周平を呼び止めると、
言葉を口にしたー。
「ーー…可愛かったら、簡単にできるのね?」
とー。
「ーーー…?」
周平は振り返ると、
「あぁー、余裕だろ」と、そう返すー。
するとー、涼花は突然、スマホを取り出して
「だったらー」と、そう言葉を続けたー。
それと同時に、身体から急に力が抜けていくような
何とも言えない不思議な感触を覚えて、
周平は表情を変えるー。
何かが、おかしいー
身体に力が入らないー。
「ーだったら、可愛くしてあげるから、
やってみなよー。
ちゃんと踊れるものなら、踊ってみてよー」
そんな涼花の言葉が聞こえて来るー。
しかし、それに返事をすることもできないまま
力が抜けて、そのまま意識も飛んでしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー!?!?!?!?」
目を覚ますと、そこは保健室だった。
驚きのあまり、周囲を見渡す周平。
”いったい、何をされたー!?”
そう思わずにはいられない。
周平が困惑しながら
周囲を見渡していると、
そこに、チア部に所属する涼花がやってきたー。
「ー思ったより長く寝てたね~
さ、早速準備して」
涼花の言葉に、周平は首を傾げる。
”準備”
一体何の準備をしろと言うのか。
「ー早く着替えて。もうチアの練習始まるから」
涼花のその言葉に、周平は思わず叫ぶー。
「はぁ!?だから、俺は全然可愛くないし、
イケメンでもないモブーーー ぅ????」
ーー言葉が途中で止まった。
”自分の声”に違和感ー…
違和感どころではない”異変”を感じたからだ。
「ーって、な、なんだこの声ー」
周平は自分の口から、”女”の声が出ていることに気付くー。
しかも、よく考えるとこの声はー…
「ーーえっ、あ、まだ気づいてなかったの?
あははー、思ったより鈍いんだね」
揶揄うようにして笑う涼花。
思わず、「うるせー!」と、そう叫ぶと、
「っていうか…この声ーす、杉森さんのー?」と、
周平は困惑した様子で言うー。
「ーそうそう、ほら、自分の姿見てごらんー」
涼花は保健室の鏡を指差すー。
周平は困惑の表情を浮かべながらも、
鏡の方に向かうー。
そこにはー…
「ーうっ、うわっ!?な、な、なんだこれ!?どうして
俺が杉森さんに!?」
自分が”真綾”になっているのを見て
驚いた様子で慌てふためく周平。
「あははー、いい反応だねー!
だって、”杉森さんぐらい可愛ければ余裕”なんでしょ?
これで、あんたがバカにしてたチアも余裕じゃん」
涼花のそんな言葉に、
真綾になってしまった周平は驚きの表情を浮かべながら
涼花のほうを見つめるー。
「ーーい、いやー…え…
す、杉森さんはー…?杉森さんはどうしてるんだー?
どうして、俺が杉森さんの姿に!?」
狼狽えながらそう叫ぶ真綾。
「ーーあ~、真綾の姿になってるっていうかー、
あんたが真綾そのものになってるの」
涼花はそう言いながら笑うー。
「ー杉森さんそのものになってる!?
ま、ますます意味が分からないぞー!?」
真綾になった周平が叫ぶー。
周平はどうやら”真綾そっくりの姿に変えられてしまった”と
そう認識していた様子で、
”そのものになってる”と言われて、
より驚いた表情を浮かべて見せた。
「ーえっ!?そ、それはどういうー…
す、杉森さんはど、どうなってるんだー!?」
真綾の身体で叫ぶ周平。
涼花は笑いながら
「大丈夫大丈夫ー。真綾の身体をあんたが一時的に借りてるだけだから」
と、そう説明すると、さらに付け加えるー。
「あたしが、あんたを真綾に憑依させたのー。
今、真綾の意識は眠ってて、あんたがその身体を自由に動かせる状態ー」
「ーーーーー」
そんな説明をされても”はいそうですか”とは言えないー。
「お、俺の身体はどうなってるんだ!?
っていうか、杉森さんの許可は取ってるのか?!」
真綾の身体で必死に色々質問する周平。
「ーーあんたの身体は”霊体”の状態になってるから大丈夫ー。
身体がどこかに放置されたりはしてないから心配しないで。
真綾の身体から抜けたとき、あんたはちゃんと元の身体に戻るから」
涼花はそれだけ説明すると
”杉森さんの許可は取ってるのか?”の質問の方には答えずに
「さぁ、着替えて。チア部の練習、始まるよ」と、
そう言い放ち、着替えるように促してくるー。
「い、いや、ま、待ってくれー」
真綾が狼狽えながら、やっとの思いで言葉を吐き出すー。
けれど、涼花は真綾に憑依した周平を
逃がそうとはしてくれなかったー。
「ーーチアなんて簡単なんでしょ?」
涼花が脅すような口調で言うー。
「ーーい、いや、だから、それは杉森さんぐらい可愛い人ならの話でー、
俺は…」
青ざめながらそう答える真綾。
「ーー今は杉森 真綾だよ?
今のあんたは”モブキャラみたいな男”じゃないー。
ーー可愛ければ、簡単なんでしょ?」
涼花にそう言われた真綾に憑依している周平は
もう言い逃れすることができなくなって、
そのままチア部の練習に参加することになってしまうのだったー…。
②へ続く
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コメント
簡単だろうと甘く見ていたら
実際にやることになってしまって…★!
そんなお話デス~!!!
色々な意味で大変そうですネ~!
今日もとっても暑いので、皆様もお気をつけて~!!

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