<他者変身>もう思い出せない元の自分②~わたしは誰?~(完)

①にもどる!

変身能力の使い過ぎで
”自分”のことが分からなくなってしまった彼ー。

やがて、彼は”自分の姿かもしれない”姿の
名前を突き止めることに成功したものの…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

眼鏡の美少女ー
千代田 美咲の姿で、笑みを浮かべる変身能力を持つ彼ー。

”変身を解除”すると、
必ずこの姿に戻ることから、
彼は自分自身が千代田 美咲であると思い始めていたー。

「ーしかしー…」
鏡で自分の姿を見つめる美咲ー。

「ー俺、本当に女だったのかー?
 今でも信じられねぇなー
 気持ち的には完全に男なんだけどー」
美咲はそう呟きながら、自分の顔をトイレの鏡で見つめると、
自分の胸を服の上から揉みながら
「へへっー…こういう感じも男に感じるしなー」と、
胸を揉むと、ドキドキしてたまらない自分は
やはり、男なのではないか、と、そんな風に思うー。

しかし、OLに変身して
変身を解除したときも、
家電量販店の前で逃亡犯・小野沢 和哉のニュースを
見ていた青年に変身して
変身を解除したときにも
”この姿”になったー。

つまりはー、自分自身は千代田 美咲であるに違いないー。

そう思いつつ、
美咲は「ーへへー…まさか俺が女だったなんてー」と
記憶を失って、”元の自分”が分からないからこそ、
今の彼にとってあまりにも意外な答えに驚きを隠せないー。

「ーそうだー…コイツー…いや、”俺”かー?
 俺の家がどこだか分からないと
 このままずっとふらふらすることになるし、
 ホームレスになっちまうー」

そう思いつつ、”千代田 美咲”の家はどこなのかを
必死に調べ始めるー。

その日のうちには見つからず、
ようやく、千代田 美咲の家を見つけることに成功したのはー、
3日後のことだったー。

”千代田 美咲”は実家暮らしの女子大生であることが判明し、
その場所も突き止めたー。

がー、”彼”にはやはり、その記憶もなかったー

「ーーー実家暮らしってことはコイツー…
 いや、”俺の親”がいるってことなんだろうけどー
 全然覚えてねぇぞー…?」
美咲はブツブツと独り言を呟きながらも、
とりあえずそろそろお風呂に入りたいし、
のんびりしたいということで、家に向かうー。

”家の中”がどうなっているのかも正直、思い出せないし、
自分が女子大生だったと知ってもピンと来ないー。

家に近付けば近づくほど、
自分は本当に”千代田 美咲”なのではないかと、
そんな不安を抱いてしまうー。

「ーーーー」
がー、そうこうしているうちに、”美咲”の家に到着した
彼は、インターホンを鳴らしたー。

”ーーあ、美咲ー
 待ってて、今、開けるねー”

母親らしき人物が、玄関の扉を開けるー。

”美咲”は「た、ただいま~」と、そう言葉を口にすると、
母親は「随分早かったじゃない」と、そう言葉を返して来たー。

”早かったー?”
彼は少し戸惑いを覚えるー。

記憶を失ってから、この数日、ずっとふらふらとしていたのだー。
絶対に”どこ行ってたの!?”とか、
そんなことを聞かれる覚悟をして、言い訳を考えていたために
予想外であったものの、”まぁ、いいか”と、
内心でそう思いつつ、自分の部屋らしき場所に向かうー。

「ーーここ…か?」
勘で見つけた美咲の部屋らしき場所に到着すると、
そこにはアイドルのグッズらしきものや、
おしゃれな小物類、そして少女漫画が置かれた本棚などが
目に入ったー。

「~~~~~~~~」
それらを見ても、美咲は記憶を取り戻すことができないー。

”本当に、俺は千代田 美咲なのか?”という思いが
さらに強まってしまうー。

が、とにかく今はお風呂に入りたい、と、
そう思いつつ、
あとで、部屋の中でゆっくりと自分のことを考えることにして、
ひとまずお風呂の方に向かったー。

お風呂に入ると、髪に、身体に、
ずっとドキドキしっぱなしだったー。

自分が、千代田 美咲なら
記憶を失ったとしても、
こんなにドキドキするものなのだろうかー。

そう思いつつ、髪を洗っていると、
浴室の外が何やら騒がしくなり始めたー。

「?」
美咲が表情を歪めながら、”何かあったのか?”と
そう思っていると、
突然、浴室の扉が開いたー。

「うわっー!?」
美咲がそう叫びながら、
浴室の扉を開けた人物を見つめるとー、
そこにはー、”千代田 美咲”がいたー。

「ーーえ」
”彼”はー、美咲の姿をしている彼は戸惑いの表情を
浮かべると、
「ーあなた一体誰!?どういうつもり!?」と、
”本物の美咲”が、困惑した様子で叫んだー。

「ーーお母さん!わたし、大学に行って途中で帰って来るわけないのにー!」
美咲が、母親に対してそう言い放っているー。

お風呂に入っていた”美咲の姿をした彼”はー、
そんな光景を見つめつつ、確信したー

”俺は、やっぱり千代田 美咲じゃない”
とー。

残念に思うと同時に、どこかホッとしたー。

自分が千代田 美咲だと思っても、
どうしてもその実感が沸かなかったし、
こうして家に帰って来ても、
どうしても、”この家が自分の家”だと思うことはできなかったー。

やはりー、自分は千代田 美咲ではなかったのだー。

「ーーーーお、お母さん!警察呼んで!」
本物の美咲がそう叫ぶー。

そんな状況に、彼は慌ててお風呂から飛び出すと、
自分が元々着ていた服を回収して、
そのまま逃げ出すー。

母親が”随分早かったじゃない”と言ったのも、
”本物の娘”が大学から帰る時間ではなかったから、
そういう発言をしたのだろうー。

「ーーはぁ…はぁー」
髪を振り乱しながら逃げて来た美咲の姿をした彼は、
慌てて自転車を手に歩いていた女子高生の姿に変身して、
そのままその場から立ち去ったー。

”変身”の力があれば、逃げることはいくらでもできるー。
逃げることはー。

「ーまるで、逃亡犯みたいだなー」
女子高生の姿で、彼は自虐的にそう呟くと、
ふと、ここ数日で、”逃亡してから1年が経過した”と、
ニュースで何度か報じられていた逃亡犯・小野沢 和哉のことを思い出すー。

「ーーお…小野沢 和哉ー…」
険しい表情を浮かべる彼ー。

”和哉ー”
そんな風に呼ばれることを、どこか懐かしく思ってしまうー。

自分が”千代田 美咲なのではないか?”と思ったときー、
そして”美咲”と呼ばれたときとは違うー。

妙に懐かしい感じを覚えるー。

「ーーー…」

”ま、まさかー、そんなはずはねぇー”
変身能力を持つ”彼”は、イヤな予感を覚えるー。

”変身能力”を持っていれば事件を起こしたあと
1年以上逃亡することなど、容易なことだー。

何故ならさっきー、
美咲の家に入ってしまった彼は実際、
変身能力を使って逃げたのだからー。

「ーそ、そんなはずはーー…くそっー」
女子高生の姿のまま、不安になって
人目につかない場所で変身を”解除”する彼ー。

するとまた、眼鏡の美少女ー、
千代田 美咲の姿に戻るー。

”くそっー俺は千代田 美咲じゃないのに
 なんで千代田 美咲の姿に戻るんだー”

そう思いつつ、ふと、”もう一度”
変身を解除する手順を踏んでみる彼ー。

するとーー
自分の姿が変異して、
今度はショートヘアーの活発そうな女になったー

「ーーー!」
彼は気づいたー。

変身した状態で、”さらに別の姿に変身できる”のだとー。

恐らくは、記憶を失くした時点で変身していた”麻紀”の前に
変身していたのが、この千代田 美咲なのだろうー。

そうとは気づかず、麻紀への変身を解除し、”1個前に変身していた姿”と
なった状態で、また変身してー、を繰り返していたため、
いつも変身を解除すると、”1個前”の美咲の姿に戻っていたのだー。

「ーーってことはー…」
彼は思うー。

”千代田 美咲”の姿の状態で
もう一度変身解除の手順を踏めば、”美咲の前に変身していた人間”の姿に
戻るのではないかと、そう考えたー

今まで、美咲が自分の姿だと勘違いしてしまっていた彼は
”美咲の姿に戻ったあと”もう一度変身を解除する、ということは
試さなかったー。

が、これを試せば、恐らくはー…

そう思った美咲の姿をした彼は、名残惜しそうに、
一時は”これが俺か”と勘違いしたその身体を少しだけ触るー。

ここで”変身を解除”したら、本物の美咲の近くに行かない限り、
もう美咲に変身することはできないー。

今までは美咲の姿で、また次の相手に変身…を繰り返していたため、
解除すれば美咲の姿に戻っていたものの、
美咲の”1個前”に戻ったら、また、美咲本人の近くに行って変身能力を
使わない限り、美咲の姿に戻れなくなってしまうー。

「ーーーーじゃあなー」
美咲の姿に何となく名残惜しさを感じて、意を決して変身を解除すると、
女医のような姿に変化したー。

やはりー、
”変身した状態でも、さらにその上から変身できる”ようで、
女医の姿に変身したあと、そのままの状態で美咲の姿に変身したのだろうー。

と、いうことは
変身を解除し続ければ最後には
”自分本来の姿”に戻るはずだー。

変身解除の手順を踏んでも”何も変わらない”状態になれば
それが、”自分自身である”と、いうことなのだからー。

ゴクリ、と唾を飲み込む彼ー
女医の姿で、さらに変身解除の手順を踏むと、
次は、ぽっちゃり系の女子高生の姿になったー

「へへーたまにはこういのもいいかもなー」

そう呟きながら、さらに変身を解除すると、
今度は40代ぐらいのおばさんの姿にー。

そしてまた、変身を解除すると、
いかにもギャルな女の姿になったー。

「ーいったい俺は何重に変身してたんだー?」
彼は自分で自分に呆れながらも
”俺は何者なのか”を知るために
変身解除できなくなるまで、変身の解除を続けるー。

その最中にも、逃亡犯の小野沢 和哉のニュースを思い出すー。

逃亡後、1年間も行方不明になっているという
小野沢 和哉ー。
記憶を失っている自分が、その小野沢 和哉なのではないか、
とー。

優しそうな雰囲気の看護師の姿になりー、
さらに変身解除をすると、三つ編みの女子大生の姿になるー。

「ーー俺はー…俺はー…」
一体誰なんだ!?と思いつつ、
さらに変身解除を続けていくー。

”解除できなくなったとき”
それが、自分の姿だー。

何十、いや、もう100を超えたかもしれないー。
とにかく変身解除を続けていくとー、
やがてー

変身解除の手順を踏んでもー
”姿”が変わらなくなったー

つまり、これがーーー

「ーーえっ!?」
思わず、彼は唖然としてしまうー。

変身解除を続けた末に、たどり着いたのはー、
少し陰険そうな雰囲気ながら、美人と言えば美人な雰囲気の
20代ぐらいのOLの姿だったからだー

がー、どんなに変身を解除しようとしても、
今までとは違い、変身を解除することはできないー。

つまりー…

「ーーこ、これが、俺ー…?」

やはり、思い出せないー。
がー、立派な胸もあってー、肌も綺麗だー。

「ーー…え……お、俺…女ー?」
戸惑いながらも、彼は笑うー。

自分は逃亡犯の小野沢 和哉じゃなかったー。

そしてーー…
男ですらなかったー。

「ははっ!ははははっ!
 なんだ、俺、女だったのかー!
 全然、そんな実感はないけどー はははっ!」

変身能力を使う彼は、20代OLの姿で嬉しそうに
そう言葉を口にすると、
そのまま「早速ー、俺の身体でも色々試してみるかー」と、
嬉々として走り去っていくのだったー

ーーー

”彼”は、知らないー。
確かに彼は小野沢 和哉ではないー。

ただー、女ではないー。
50代独身の肥満体系の冴えないおじさんー、
それが彼の正体だー。

彼の変身能力は
変身した状態で、さらに次の姿に変身できるもののー、
”100件”が限度ー。
100件目の姿のまま、変身を解除せずにさらに変身すると、
”一番古い姿”から、記録が消えてしまうー。

そう、彼は何百もの人間に、変身したまま変身を繰り返した結果ー、
自分本来の姿にもう戻れなくなっていたー。

変身解除できなくなった20代OLの姿は、
ちょうど”100人前”に変身していた女の姿で、
記録できている”一番古い姿”なだけで、彼本来の姿ではなかったのだー。

彼はもう、自分の姿に戻れないー。
そして、自分を思い出すことも、ないかもしれないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー小野沢 和哉だな?」
警察官が警察手帳を示すー。

「ん??? あ~~~~~……」
小野沢 和哉本人ーーー

変身能力を持つ男が見かけた
”家電量販店の前でテレビを見ていた青年”が、
残念そうに言葉を口にするー

「1年の逃亡生活も終わりかー」
残念そうにそう言葉を口にした彼は
そのまま警察官に連行されていくのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

変身のしすぎで自分が誰なのか
分からなくなってしまうお話でした~!☆

変身能力を使うときには、
ちゃんと自分が誰なのか
忘れないようにしましょうネ~笑

お読み下さり、ありがとうございました~!

「もう思い出せない元の自分」目次

作品一覧

コメント