<憑依>繰り返すごとに壊れていく②~不穏な時間~

①にもどる!

彼女からお願いされて、
彼女のために彼女に憑依することになった彼氏ー。

しかし、”憑依”を繰り返すたびに、彼女の脳と身体が
壊れていくことを、二人はまだ知らないー。

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今日は美咲が嫌がっていた”バイト先の”歓迎会当日ー。

”美咲の苦手な人”というのは、
確かにデリカシーもなく色々なことを質問攻めしてくるような
面倒な相手だったー。

「ーー~~~~」
美咲の身体で、そんな質問の数々を適当に受け流しながら、
美咲として、直人はそれを乗り越えていくー。

美咲本人の意識は、先ほど、歓迎会が始まる前に
”じゃあ、わたしは寝てるからー…よろしくねー”と、
そう言葉を口にして以降、喋らなくなったー。

自分自身が嫌なことを、彼氏の直人に代わって貰うのに
意識がそのまま残っていたら、確かにあまり意味はないー。

本番の今日を迎える前に、事前練習で
美咲は”憑依された状態のまま、内側で眠れるのかどうか”を
試していて、既に”それが可能”であることは分かっているー。

”美咲の身体だから、飲み過ぎないようにしないよなー”
既に成人はしている美咲と直人ー。

直人自身も別にお酒が得意なわけではないものの、
美咲の身体となれば、いつも以上に気を付けなければならないー。

美咲の身体で酔っ払ってしまって、醜態を晒してしまっては
本末転倒だー。

そう思いつつ、色々な食事を口につけながら、
できる限り飲まないように振る舞っていくー。

「ーーー?」
一瞬、飲食店の肉料理が腐っているような気がして表情を歪める美咲ー。

が、周囲のメンバーたちは普通に肉料理も含めて
口に運んでいるー。

”ーーあぁ、そうかー…味覚が違うのかー”

よくよく考えれば、腐っているような”変な味”ではなく、
”いつもと味が違う”と感じただけー。
腐っている味ではないー。

”俺と美咲の身体では、味覚が違うってことだなー”
改めて、味が違うと感じた理由に、自分の中で答えを見つけて
納得すると、美咲に憑依している直人は静かに頷いたー。

美咲の身体に憑依するのは、これでもう数回目であるものの、
”食事”をしたのはこれが初めてであったため、
味覚の変化をこうして実感するのも初めてだったー。

「ーーよしーせっかくだし、美咲の身体だとどんな味がするのか
 一通り食べてみるかー」

”もちろん、太らないように程々に”と、思いつつ、
美咲の身体で、直人自身も”身代わりになるだけではなく、
楽しめる部分は楽しもう”と、そう思うのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「ねぇ、直人ーお願いがあるんだけどー」
美咲のその言葉に、直人は「んー?どうかしたー?」と、
そう言葉を口にすると、
美咲は「ちょっと今日ー、体調が悪くてー…
もしよかったら、また”憑依”してくれないー?」
と、そんなお願いをしてきたー。

「ー体調が悪い?大丈夫かー?」
直人は、”憑依のお願い”をされたことよりも、
そのことを心配するー。

「あ~うん、首と肩が痛くて、
 あとちょっとふらふらするだけだからー
 ただ、ちょっと辛くて」
美咲のそんな言葉に、
直人はすぐに「分かった。いいよ」と、そう返事をすると、
美咲に憑依をするー。

憑依すると、確かに美咲の身体は首の痛みと肩の痛みがしていて、
ちょっとふらふらするような感じだったー。

元々、美咲は天気が悪い日に、気圧云々で体調を崩すことがあって
今回もそれだと思うものの、確かに定期的にこんな状態になってるなら
辛いだろうな、と、直人も思わずにはいられないぐらいには、
結構きつい感じではあったー。

「じゃあ、美咲ー、憑依を終えて欲しい時はいつでも言ってくれれば、
 抜けるからー」
美咲の身体で直人がそう言うも、美咲の意識から返事はなかったー。

「ーーー?」
”もう寝てしまったのか?”と、そう思いながらも
少しだけ笑うと、「彼女のためなら、このぐらいどうってことないさー」と、
そう言葉を口にしたー。

やがてー、
美咲は体調不良になる度に、それを直人に押し付けるようになったー。

当初、憑依を始めた頃には、
美咲は”直人にイヤなことを押し付けちゃってごめんねー”という
振る舞いであったものの、
最近ではそれが変わって来ていて、何でも直人に押し付けるように
なり始めていたー。

「ーーなぁ、美咲ー、最近、憑依している間、
 いつもすぐに寝てる気がするけどー、大丈夫かー?」
直人がそう言うと、
美咲は「え?あ~…最近ねー、憑依されるとすぐに意識が飛ぶようになってー」と、笑うー。

「ーえ?」
直人が不思議そうに首を傾げるー。

最初の頃は、美咲に憑依しても、美咲本人の意識は残っていて、
内側の美咲と意思疎通が可能になっていたー。

が、最近では”寝ている”のではなく、憑依されるとそのまま意識が
飛ぶのだと、美咲はそう説明したー。

「ーーそ、そっかー…何か、最初の頃と変わったのかなー?」
直人は少し心配そうに言うー。

憑依の仕方も、特には変えていないー。
だからこそ、”状況の変化”が少し心配だったー。

「ーふふー大丈夫。心配ないよー
 最初、わたしはそうなるって思ってたしー、
 ”直人にイヤなことを押し付けて”楽できるならそれでいいしー」
美咲は笑うー。

少しその言い回しにも違和感を感じながら、
直人が心配そうに美咲のほうを見つめるも、
美咲は「あ、そうだー今度、直人が休みの日、わたし、面倒な日に
シフト入っちゃってて~」と、笑いながら言葉を口にするー。

「ーバイト、代わって貰えるー?」
美咲がそう言葉を口にすると、直人は
「えっー?バイトをー?それは流石にまずいんじゃー?
 俺、美咲のバイト先の仕事内容知らないしー」と、
そう言葉を口にするー。

美咲は少しだけ不思議そうな、何とも言えない表情を浮かべたあとに
少しだけ微笑むと、
「そっかそっかーうん、そうだねーごめんねー」と、そう言葉を口にして、
「今のは忘れて」と、それだけ言葉を口にしたー。

「ーははー、びっくりしたー。本気かと思ったよー」
直人はそう言葉を口にすると、美咲のほうを見て笑うー。

やがて、美咲は「あ、そろそろ寝る準備しなくちゃー」と、
自分の部屋の方に向かって行くー。

”ーーーーー”
直人は、最近、美咲に”違和感”を感じるようになって、
不安を覚えつつあったー。

なんだか、美咲の振る舞いや言動が少しおかしくなっている気がするのだー。

今もそうー。
”バイトを代わって”などと、
美咲が言い出すのは、少し意外だったー

がー
そんな風に思っていたその時だったー。

美咲の部屋から、何かを投げるような物音が聞こえて来たー。

「ーー美咲ー?」
直人は少し驚きながら、美咲の部屋に近付いていくと、
中から美咲が、怒りを露わにしたような言葉にならない声を上げたー。

”ーー何で変わってくれないの!”
やがて、そんな言葉も聞こえてきて、壁を叩くような音が聞こえたー。

直人は驚いた様子で美咲の部屋を見つめるも、
”今はそっとしておいた方がいい気がするー”と、そう思い、
そのまま声はかけずに、部屋の側から離れて行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「ーは~今日はバイト面倒な日かぁ~」
美咲はそう言葉を口にすると、
「直人、代わってくれないからなぁ~」と、
嫌味っぽく言葉を口にしたー。

ピリピリしたムードが漂う中、直人は
「わ、分かったよー。ごめんー」と、そう言葉を口にすると
「でも、バイトを代わるのは今回だけにしようー
 美咲のためにも」と、そう言い放つー

「ー今回だけ?」
美咲は不機嫌そうな表情を浮かべたものの、
「ーーうんーそうだねー。わかったー」と、ようやくそれに納得すると、
直人はやむを得ず、この日も美咲に憑依ー、
美咲として、美咲の代わりにアルバイトをこなしていくー。

「す、すみませんー」
がー、美咲のバイト内容を全て知っているわけではない直人は、
ミスも連発したー。

「羽村さん、今日、何か変じゃないかー?」
「確かにー。どうしちゃったんだろうー?」
そんな会話も聞こえて来る中、
美咲に憑依している直人は、困惑の表情を浮かべるー。

がー、それでもなんとか美咲としてバイトをやりきって、
ようやく帰宅すると、
美咲の身体のまま、直人は大きくため息をついたー。

そしてー…

「ーーーー!」
美咲の目が少しだけ充血しているように見えた直人は
心配そうに顔を何度か洗うー。

「ーーーーー」
顔を洗い終えると、心配そうな表情を浮かべたまま
”憑依薬”の錠剤が入っている容器を見つめる直人ー。

”本当に”
このままで良いのだろうかー。
そんな考えが頭の中をよぎってしまうー。

このまま、”憑依薬”を捨ててしまった方が良いのではないだろうかー。
そんな風に思ってしまうー。

けれど、この憑依薬は美咲が持って来たものー。
勝手に捨てたら、美咲も悲しむだろうし、
”祖父の家にあったもの”となれば、
美咲にとっては形見のようなものなのかもしれないー。

そう思ったらー、捨てることはできなかったー。

そしてー
”この時捨てていれば”ーーー
まだ、間に合ったのかもしれないと
そう思うのは、もう少し先のことだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー直人!!直人!!! いる!?」

数日後ー
美咲が血相を変えて帰宅したー。

大学から先に帰宅していた直人が、
不思議そうに「美咲?」と、
そう言葉を口にすると、
美咲は持っていた鞄を叩きつけてから
声をあげたー

「どういうつもり!?!?ふざけないで!」
とー。

「ーみ、美咲ー?」
何を怒っているのか分からず、直人がそう返すと、
美咲は机をバンバンと叩きながら、
「バイト先で、色々言われたじゃない!!
 わたしの身体で、ミスをいっぱいやらかすとか、何考えてるの!?」
と、そう言葉を口にする美咲ー。

「ーそ、それはー…
 い、いきなり普段行ってないバイト先で、代わりをやるのは限界がー」

憑依する前にも、それは言ったことだー
直人が戸惑いながらそう言葉を口にすると、
美咲は「ふざけないでよ!!!もう!!」と、言いながら
机を何度も何度も叩くー。

「美咲ー落ち着いてくれー悪かったー」
直人はそう言葉を口にしながら、美咲に近寄るも、
美咲は不満そうに直人を振り払うー。

物凄い怒りを見せながら、乱暴に部屋の中に入っていく美咲を見て、
直人は”憑依薬が何か悪影響を与えているー”と、
そう思ったー。

そして、すぐに憑依薬を処分しようとするもー、
最悪のタイミングで美咲が部屋から出て来てしまったー

「ーねぇ!!!何してんの!?」
美咲が声を上げるー。

「ーーー…いや、ーーー」
直人は慌てた様子で憑依薬の容器から手を離すと、
美咲はそれを奪い取るようにして、容器を握りしめるー。

「ーー美咲ーー
 最近、変だよー
 憑依するようになってからー

 何か、”これ”が美咲に影響を与えてるのかもー」

直人がそう言葉を口にするも、
美咲は「はぁ!?おじいちゃんの悪口を言うの!?」と、
声を荒げるー

怒り狂っている美咲ー
その目は、血走っているようにも見えるー。

「ーー美咲ーーなぁ、これ以上、憑依は続けちゃだめだー」
直人は説得するような口調で、そう言い放つー。

けれど、美咲は聞く耳を持たず、
憑依薬を持ったまま、そのまま部屋の中へと戻って行ってしまったー。

「ーーー美咲ーーー」

美咲はあんな子じゃないー。
それは、直人が一番良く知っているー。

急にワガママになったり、キレやすくなるなんて
あり得ないー。
既に、同棲してからも1年以上経過してー
これまで、穏やかに過ごして来たのだからー。

考えられるとすれば、やはりー

そう思いながら、直人は後日、改めて美咲を説得することに
決めて、ため息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーねぇ、今日もバイト、よろしくー」

翌日ー
美咲が笑いながらそう言葉を口にするー。

「ーーいや、ごめんー
 もう憑依はー」
直人がそう言い放つと、
”事情”を説明するー。

憑依薬を使い始めてから、美咲がどんどん変になっていると、
できるだけ、本人も理解できるように、
丁寧に説明をしていくー

「そっかーーーー」
美咲はそう言葉を口にすると、
残念そうに部屋に戻っていくー。

理解してくれたのだろうかー。

そう思っていると、
今度は、部屋から子供のように大泣きする美咲の声が聞こえて来たー

「ーーーみ、美咲ー…」
そんな状況を前に、呆然とする直人ー。

”憑依”が、確実に美咲を”破壊”しつつあったー…

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!!!

次第に、身も心も蝕んでしまう恐ろしいタイプの憑依…!

ぶるぶるデス…!

今日もお読み下さりありがとうございました~~!

続けて③をみる!

「繰り返すごとに壊れていく」目次

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