彼女の様子が日に日におかしくなっていくー。
”憑依薬が原因”だと
彼氏は気づいたものの、
既に、”異変”は、手遅れな段階まで進行しつつあってー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーあはははは!昨日はごめんねー!
ははっ!あはははははー
わたしってば、何で泣いてたんだろう~?あはははっ!」
翌日ー
美咲は狂ったようにハイテンションだったー。
直人は、そんな美咲を前に困惑しながらも、
「憑依薬、処分しようー」と、そう提案するー。
美咲は、確実に”壊れて”行っているー
横暴な態度が目立つようになったし、
イライラしたり、急に泣き出したり、今日は一人でずっと笑っていたりー…
確実に”憑依薬”による悪影響が出ているー。
そう、思わざるを得ない状態だー。
「ーーーえ??あはっー何言ってるのー?」
美咲が笑いながら、直人のほうを見つめると、
「わたし、直人にはいつも感謝してるんだよぉ~ふふーふふふふふー
直人のこと大好き!大好き大好き大好き!」と、
美咲が突然直人に抱き着いて来たー。
「ーー美咲ーーー…」
そんな美咲の姿を見ながら、直人は悔しそうに歯ぎしりをするー。
最初に憑依薬を美咲が持って来たときー
”止めれば”よかったー。
もっと、ちゃんと止めていればー
「ー今からでも遅くないー
美咲ー、憑依薬は、もう処分しようー
それで、ーー美咲のこともちゃんとー」
直人がそこまで言いかけると、
それまで笑っていた美咲が突然、
「うあああああああああああああ!!!」と、
怒りの雄たけびをあげたー。
「ー!?」
直人が思わず驚くー
「ー憑依、して???」
怒りの雄たけびをあげたと思ったら、
笑顔で笑う美咲ー。
「今日も、イヤな事があるのー
だから、憑依してー
憑依憑依憑依憑依憑依ーあははははっ!!あはっ!」
来るったように笑いながら一人で飛び跳ね始める美咲ー。
「美咲ーー!美咲ッ!」
そんな美咲を見て、耐えられなくなった直人は
美咲を抱きしめて落ち着かせようとするー。
けれど、美咲は恐ろしいことを口走ったー。
「ー憑依してくれないなら、わたしが憑依薬を使ってー
直人の周りの人、滅茶苦茶にするからー」
とー、恐ろしい形相でー。
「ーーーー!!」
直人は、震えながら「わ、分かったよー。だからーーだから
落ち着いてくれー」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
言われた通り、美咲に憑依した直人ー。
本当であれば、もうこれ以上ー、
1回たりとも、美咲に憑依することは避けたいー。
これ以上、憑依を続ければ美咲は
本当に壊れてしまうー。
いや、もう既に手遅れかもしれないー。
でも、美咲を止めるためにも
今回は仕方がなかったー
あのまま、美咲を放置していたら
本当に美咲自身が憑依薬を使って
直人の身の周りの人間を傷つける可能性もあったー。
だから、こうするしかなかったー。
美咲に憑依した直人は、
意を決して、”大学で面倒な授業を代わりに受けて欲しい”と
言って来た美咲の願いを無視して、
美咲の部屋を漁り始めたー。
まるで、空き巣にでも入っているような背徳感を感じながらも、
直人は、”あれを見つけないと”と、そう言葉を口にしながら、
美咲の身体で、美咲の部屋を漁っていくー。
目当ては”憑依薬”ー
最初は普通に家の中に置かれていたものの、
最近は、美咲が自分の部屋に移動させて、
どこかに隠しているー。
必要な時に、美咲が1錠だけ憑依薬を出してきて、
直人に手渡す形で使っている状態で、
”憑依薬の錠剤が入った容器の本体”は、
美咲がどこかに隠し持っているー。
それを、見つけ出して処分すればー、
美咲を何とか救うことができるかもしれないー。
そう思いつつ、憑依薬の容器を必死に探したー
「ーーーー…どこだーー…どこだーー…どこだー!?」
次第に焦りを感じていく、美咲に憑依している直人ー。
”憑依薬の入った容器を見つけ出して処分するー”
もし、それに失敗したらー、
”大変なこと”になるー。
恐らく”今の状態の美咲”は怒り狂うだろうー。
そして、何をするかも分からないー。
だから、何としても”憑依しているうちに”
美咲の部屋に隠されているであろう、憑依薬の錠剤を
見つけ出さなければならなかったー。
けれどーーー
「ーーーー!」
美咲に憑依している直人は、表情を歪めたー
美咲の部屋に隠されていたのはーー
”小さなケースに入った憑依薬の錠剤”だけー。
確か、100錠以上、容器に入っていたはずー。
数が少なすぎるー。
「ーまさか、美咲ーー別の場所にー…」
美咲に憑依している直人は青ざめるー。
そうー
美咲は、直人が憑依薬を処分しようとしていることを警戒し、
”一部”だけを自分の部屋に隠し持っていて、
憑依薬の錠剤が入った容器は、とある場所の
コインロッカーに隠していたー。
「ーーーくそっーー
こ、これじゃーー…」
美咲に憑依している直人は、”残りの憑依薬”を見つけることが出来ずに
慌て始めるー。
翌朝になっても、必死に憑依薬を探し続けた美咲に憑依した直人ー
がー、やがてー、”美咲の身体”からはじき出されてしまいー、
直人は呆然としたーー
美咲の祖父が残した憑依薬は、
”丸1日以上”続けて憑依できないようになっていたのだー。
美咲の身体からはじき出されて、
直人が困惑していると、美咲は周囲を見渡してから叫んだー
「ーいったい、わたしの身体で何をしてたの!!!!」
とー。
怒り狂った様子で近付いて来る美咲ー。
がー、その美咲の目は酷く充血していて、
唇も青白く見えるー。
「ーーーーー美咲がーーー」
直人は、美咲のほうを真っすぐと見つめながら言ったー。
「美咲が心配なんだー!」
とー。
すぐに、美咲の部屋にある手鏡を手にすると、
「自分の顔を見てくれよ!美咲!」と、そう叫ぶー。
美咲は、最初は”誤魔化さないで!”と、そう言っていたものの、
自分の充血した目や、青白い唇ー、
さらには、首筋に痣のようなものが出来ている状態を見て
表情を歪めるー
「ーーーこれ、わたしーーー…?
ははーーあははははは」
美咲はしばらく笑っていたものの、
その場に座り込むと、
「ーーわたしーーーーーー」と、今度は急に泣き始めるー。
そんな美咲に駆け寄ると、
「ー大丈夫ー今からでも間に合うー病院に行こうー」と、
直人はそう言葉を口にするー。
美咲はそれでも突然、笑い出したりしていたものの、
直人が必死に、目に涙を浮かべながら美咲に病院に行くように
願い出ると、美咲はようやく「ーーーーわかったーー」と、
直人の言葉に素直に従うのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美咲の祖父が残した”憑依薬”を手に、
二人は病院へと駆け込んだー
病院で待っている最中、
美咲は突然、身体を震わせたり、
奇声を上げたりー、歌を歌い出したりしてしまいー、
直人は困惑するー
”丸1日の憑依”が、
美咲の脳をー、精神をさらに破壊していたー。
ようやく、病室に入ると、直人は医師に対し、
必死に事情を説明するー。
が、医師はそれを信じようとしないー。
やむを得ず、直人は「ここで憑依すれば信じて貰えますか?」と、
そう言葉を口にすると、
”もうこれ以上、美咲に負担を掛けたくない”とは思いつつも、
医師に信じて貰えなければ、話は始まらないー。
「ごめん、美咲ーもう1回だけ憑依するよー」と、
美咲に断りを入れた上で、その場で美咲に憑依してみせたー。
それでも、”二人の自作自演”を医師は疑っていたものの、
直人が必死に説得を続けー、
ようやく、”では、ーー脳の検査をしてみましょうー”と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー脳が、変形しているーーー?」
検査結果を聞かされた直人は、表情を歪めたー。
「ーーーーえぇ…」
戸惑いの表情を浮かべながら医師がそう言うと、
美咲は笑いながら、脳のMRI画像を見つめているー。
「ーーそ、それでー、み、美咲はー?」
直人が深刻そうな表情を浮かべると、
医師は「見たことのない症状でー」と、そう言葉を口にした上で、
恐らくはその”憑依薬”と呼ばれるものが原因であると説明したー。
「ーーみ、美咲の命に関わるような状況ーってことですかー?」
直人が心底不安そうに、そう言葉を口にするー。
すると、医師は少しだけ戸惑うような表情を浮かべてからー、
「正直なところ、良い状況ではありませんがー
この状況が、どのような作用をもたらすのかは、未知数ですー」
と、そう言葉を口にしたー。
「ーすぐにその”憑依薬”とやらの使用を中止して、
それでー…厳重に注意しながら経過観察をしていくしかありませんー。」
医師はそこまで言うと、美咲の目が充血していることや、
唇が青白くなっているのも、それが原因だと指摘したー。
”憑依薬の使用を停止して、回復するかどうか”
それを入院しながら見ていくー。
それしかないと、医師はそう告げたー。
「ーー入院~~?なんで~~~?やだ~~~!」
美咲が足をばたばたさせながら叫ぶー。
「ー美咲ー頼むー。後でいくらでも文句は聞くからー。だからー」
直人が美咲を必死に説得するー。
美咲は、そんな直人の表情を見て、
まだ、残っている直人への愛情を思い出したのか、
表情を曇らせると、静かに頷いたー。
早速入院の手続きが始まるー。
脳の変形が、どのような作用をもたらすのかは分からないー。
元に戻るのかも分からないー。
が、”いつ”何が起きるかもはや分からない状況で、
ただちに入院が必要とのことだったー。
美咲は、果たして無事に元に戻ることができるのかー
それさえも、分からないー。
「ーーーー」
直人は、少しだけ不安そうな美咲を見つめるー。
美咲の祖父はー、”こうなること”を予期していたわけではないし、
脳が変形するような薬を作ったつもりもなかったー。
ただ、”何度も憑依する”ということを想定して作られていなかったこと、
そして、美咲の祖父が晩年に作った薬で、
調整などが不十分なまま、美咲の祖父が亡くなってしまったことで
結果的には重大な副作用が生じる状態のまま、放置されてしまっていたー。
その結果、このようなことになってしまったー。
「ーーーーー大丈夫ー。きっとよくなるー」
直人がそれだけ言うと、
美咲は笑いながら「よくなったら、また憑依してねー」と、笑うー。
今の美咲には、これ以上何を言っても無駄だー。
けれど、回復すれば、ちゃんと話をすれば
理解して貰えるはずだー。
美咲は、きっと大丈夫ー。
直人は、担当医に「よろしくお願いしますー」と、
深々と頭を下げると、美咲から”憑依薬”を隠している
コインロッカーの居場所を確認して、
ようやく美咲がそれを教えてくれたため、
それの処分をするために、そのコインロッカーがある場所へと赴き、
それを処分したー。
美咲の入院から数日ー。
心なしか美咲も少しずつ穏やかになってきた気がするー。
まだ、脳の状況に変化は見られないとは言われているものの、
少しずつ、回復しているのかもしれないと、
そんな風に思い始めていたー。
「ーまた明日来るよー」
直人は優しく美咲にそう言葉を口にすると、
そのまま病院を後にするー。
病院から出て、家に向かって歩き始めた直人は
夕日を見つめるー。
”希望はあるー”
直人は、そう思いながら、
いつの日か美咲が元通り、元気になってくれることを
心の底から、望むのだったー。
・・・・・・・・・・・・・
ドサッー
直人は、希望に満ちた表情のまま、路上に倒れたー。
ーー憑依薬が影響を与えていたのは、
”憑依される側”だけではないー。
”憑依している側”にも、影響を与えていたー
影響には個人差があるために、
美咲のように、考え方や行動に異変は起きていなかったものの、
直人の脳も、また変形していたー。
がー、
直人には、表に出て来る症状がなかったため、
それに気づくことはできないまま、
身体が”限界”を迎えたー。
最後に”希望”を感じたままだったのはー、
せめてもの救いだったのかもしれないー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
希望を感じるエンド…と、思わせてからの
転落…
そんな結末でした~!★
最後の最後まで、物語は油断できないのデス…!
お読み下さりありがとうございました~~~!
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