<憑依>共に栄光へ②~表彰台~(完)

レーサーとして活躍する兄と妹…。

しかし、極度の緊張と、”ある事情”から
本番前になると身体が震えてしまうようになってしまった妹ー。

そんな彼女のために、兄はレース本番だけ
”憑依”で妹の代わりにレースに臨んでいたもののー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーいつか、一緒の表彰台に乗れたらいいなー」
兄・雅哉が笑いながら言うー。

「ーふふー
 その時は、私が真ん中で、お兄ちゃんはその横ね!」
妹の麻耶は冗談めいた口調でそう言葉を口にすると、
兄の雅哉は「はははー優勝する麻耶を横で見つめるのもいいなぁ」と、笑うー。

「ーー2位なら、俺だって嬉しいし、
 優勝した妹を真横で祝福できるなんて、最高じゃないかー」
笑いながら、そんな言葉を口にする雅哉ー。

「ーーえへへへー
 そうなれるように、頑張る!

 でもー、お兄ちゃんもレース中にわたしに遠慮したりしなくていいからね?」

麻耶がそう言葉を口にすると、
雅哉は「ははーそりゃもちろんー」と、力強く頷くー。

「手加減されて優勝したって、麻耶だってつまらないだろうし、
 レース中は俺も全力で勝負するさー」

雅哉はそこまで言うと、
「お互い、栄光を手にできるように頑張ろうー」と、
そう言葉を口にして、穏やかな笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」
けれど、それは遠い夢ー

今はー、
その夢は叶わないー

だってー、”わたし”はもうー…

「ーーー」
レース本番前ー

麻耶は再び、手を震わせていたー。

元々、麻耶が小さい頃から
緊張しやすい性格だったー。

レーサーになってからも本番前になると、
どうしても緊張してしまう癖は直らなかったー。

けれどー…
それでも、レースには出場することが出来ていたし
今のような状況ではなかったー

”お待たせ”
今日も、麻耶に兄の雅哉が憑依すると、
麻耶の身体を”支配”して雅哉がそのまま麻耶の身体を動かすー。

「ん?少し髪切ったんだなー?」
麻耶に憑依した雅哉は、麻耶の身体で自分の髪を
触りながらそう言葉を口にすると、
麻耶本人の意識は”あ、分かるー? お兄ちゃん、気付かないと思った”と、
そう言葉を口にするー。

「ーははは、いやぁー…気付くだろー
 こうして憑依してるんだしー」
麻耶の身体で、雅哉がそう答えると、
続けて「あ、でも、憑依しなかったら気付かないかも」と、
そんな言葉を冗談めいた口調で言うー。

「ーーさて…また車に乗り込むまでは
 返事しないからー、
 詳しい話は車に乗ってから、なー」
と、麻耶の身体で、雅哉はそう言葉を口にしてから
控室の外に出るー。

”もう”夢は叶わないー。
二人で表彰台に乗る夢は、叶わないー

麻耶が、こうなってしまったからー

そしてーーー…

「ーーー今日は雨だからなー。事故らないように気を付けないと」
麻耶の身体で、雅哉が言うと、
麻耶は”ーーお兄ちゃんなら大丈夫”と、そんな言葉を”内側”から
口にするー。

「ーーーーはは、ありがとなー」
麻耶の身体でそう言葉を口にしながら、雅哉は今日もレースに臨むー。

がー雅哉にとっても、
麻耶が”いつまでもこの状態”なのは、
どうにかしてあげたいー、とそう思っていたー。

本当は、麻耶自身が一番、レースに挑みたいだろうしー、
それにーー

”いつまでも”こうしていられないことは
”自分が一番よく”分かっているからー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

麻耶は”ある場所”を訪れていたー
それは、兄の雅哉がいる場所ー。

「ーーお兄ちゃんー」
麻耶がそう言葉を口にしながら
やってきたその場所はーーー

ーー”病院”だったー。

「ーーー麻耶ー」
雅哉が穏やかに笑うー。

その”足”は、既に使い物にならない状況になっていて、
今の雅哉は立つことすらできない状態だったー。
雅哉はいつもレースの時間が近くなると、病室で憑依薬を飲み、
そして、麻耶に憑依しているー。

”抜け殻”になっている間はー、
この病院で勤務している”彼女”の、梨沙(りさ)が上手くやってくれているー。

「ーー珍しいなーわざわざ来なくても、”憑依”してる時に
 話せるのにー」
雅哉がそう言葉を口にすると、
麻耶は少しだけ笑うー。

「ーー実際に会うのと、わたしの身体で会話するのは
 やっぱ違うでしょ」
とー。

「ーーははー、まぁ、そうだなー
 でも、忙しいだろ?無理しなくてもいいのにー」
雅哉はそんな風に言葉を口にすると、
麻耶は悲しそうな表情を浮かべるー。

「ーーーそんな顔するなよー」
雅哉がなだめるようにして言うー。

「ーーー…でもーーー」
麻耶がそう呟くと、
「ーー”お兄ちゃんの事故”はわたしのせいだからー」と
そう言葉を続けるー。

それを聞いた雅哉は「いつも言ってるだろ?
そんな風に背負い込むなってー」と、優しく言葉を口にするー。

「ーーでも、わたしがお兄ちゃんを呼んだりしなかったらー」
麻耶が悲しそうにそう言葉を口にすると、
「ーそれは違うー。事故は麻耶のせいじゃない」と、雅哉は
改めてそう言葉を口にするー

兄・雅哉は”事故”に巻き込まれたー。

あの日ーー
麻耶は、インフルエンザで高熱を出して、
一人で苦しんでいたー。

麻耶も、兄の雅哉も一人暮らしー。
高熱で買い物にも行けず、家にも何もなく
困り果てた麻耶は、兄の雅哉に助けを求めたー。

兄・雅哉は妹のためにと、すぐに車を走らせて
麻耶に食べ物や、薬、必要なものを色々と届けてくれたー。

がー、その帰り道ー、
雅哉は、飲酒運転をしていた車に追突されて、
運転していた車は大破ーー
大怪我をしてー、結果ー、歩くこともできなくなってしまったのだったー。

「ーー事故は、飲酒運転していた車の運転手が悪いんだー。
 ーーそれと、強いて言えば俺がそれに気づいて避けられなかったことー。

 麻耶は、何も悪くないー」

雅哉はベッドに横たわった状態のまま、
そう言葉を口にすると、
麻耶は「でもー、わたしがお兄ちゃんを呼ばなかったら、あの時、
お兄ちゃんはー、あの場所にいなかったー」と、そう言い放つー。

「ーーーお兄ちゃんの”レーサー”としての夢を奪っちゃってー
 わたしー」

麻耶が悲しそうに言うと、雅哉は言ったー。

「ーーー大丈夫ー。”俺の分まで”がんばってる麻耶を見るのが
 今の俺の夢だからー。
 
 だから、まだ、その夢は叶うー」

雅哉がそう言葉を口にすると、
病室の扉が開くー

「ーーあ… 麻耶ちゃんー」
そこにやってきたのは、この病院で働く看護師の梨沙ー。
雅哉の彼女だー。

「ーーあ…こ、こんにちはー、 ご、ごめんなさいー」
目の涙を慌てて吹きながらそう言葉を口にする麻耶ー。

やがて、麻耶と梨沙、そして雅哉が少し話を交わすとー、
麻耶は「次のレースも、よろしくねー」と、申し訳なさそうに
言葉を口にしてから、梨沙にも挨拶をして
病室から去っていくー。

麻耶が立ち去ると、雅哉は少しだけ溜息を吐き出すー。

”麻耶が、レース前になると走れなくなってしまうようになったのはー
 俺のせいだー”

雅哉は、そんな風に思っていたー。

麻耶は、兄の事故直後の悲惨な状況を思い出しー、
そして、”わたしのせいで、お兄ちゃんが”という自責の念から、
本番前になると震えて、走れなくなってしまったのだー。

ただ、緊張しやすいという理由ではなくー、
そこにトラウマが加わって、走れなくなってしまったー。

「ーーーねぇ、言わなくていいのー?」
梨沙がそう言うと、雅哉は少しだけ笑うー。

「ーーいいんだー」
雅哉はそう言葉を口にすると、
大きく息を吐き出すー。

妹・麻耶の前では元気にしていたものの、
雅哉は調子が悪そうだー。

何故ならーーー
雅哉が、走れなくなってしまった妹のために
”どうにか方法はないか”と、探し出した憑依薬はー…
雅哉の使っている憑依薬は、”使うたびに使用者の身体に負担がかかる”ものだったからー。

雅哉の身体は、憑依する度に、蝕まれていたー。

それでもーーー

「ーーー麻耶のためだからー」
雅哉はそう言葉を口にすると、
悲しそうに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

がーーー

それから数日後のことだったー。

病室でスマホを見つめていた雅哉は
表情を歪めたー

「ーえっ!?」
麻耶から聞いていたスケジュールとは異なる日程で、
麻耶がレースに出場していたのだー

しかも、レースのスタート時間は間もなくー。

「ーーー…お、おいー…麻耶ー」
雅哉は困惑するー。

”次のレースもよろしくねー”と言われて渡された日程とは違うー。

今日は走る予定はなかったはずー。

そう思って、雅哉は”今からでも間に合うかー?”と、
困惑した表情を浮かべるー。

看護師である彼女の梨沙に相談している時間もないー。

憑依薬を引き出しから取り出すと、
布団にもぐって寝ているフリをして、憑依薬を飲み込むー。

そして、慌てて雅哉はレースが行われているサーキットに向かって
霊体のまま移動を始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー~~~~」
震える手を押さえながら、麻耶はレースに集中しようとするー。

既に、レースはスタートしていたー。
青ざめながらも、なんとか最初の周をこなす麻耶ー。

が、2周目に入ろうとしたときー、
麻耶の脳裏に、事故でボロボロになった雅哉がフラッシュバックしたー。

”お兄ちゃんの夢を壊したのに、わたしだけー”と、
そんな思いが強まり、呼吸が乱れるー。

しかし、その時だったー

”麻耶ー”
兄・雅哉が、麻耶に憑依して”内側”から声をかけたー

「ーお、お兄ちゃんー?」
走りながらそう言葉を口にすると、
”ー急に予定が変わったのかー?”と、心配そうに呟くー。

が、麻耶は答えないー。

”麻耶ー?”
雅哉が心配そうに言うと、
麻耶は「わたし、気付いたのー」と、レースを続けながら呟くー

「ーーわたしに憑依してるお兄ちゃんー
 どんどん、調子悪くなってるってことにー

 ーーー…それで、この前病院にお見舞いに行った時
 確信したのー
 
 ーー”お兄ちゃんは、無理してる”ってー」

麻耶がそう呟くー。

そしてあの日ー、帰るフリをして、後から
兄・雅哉の彼女・梨沙を呼び出して、
何度も何度も頼み込んで聞いたのだー。

”憑依で身体に負担がかかっている”
とー。

”ーー麻耶ー”
雅哉は表情を曇らせるー

「ーお兄ちゃんをずっと頼ってたら
 もっとお兄ちゃんを苦しめちゃうーだからー」

麻耶がそう言葉を口にすると、
雅哉は”いいんだー。麻耶のためならー!”と、
そう言葉を返すー。

”これ以上は危険だー。手も震えてるしー俺がー”
雅哉がそう言うと、
麻耶は首を振ったー

「ーううんーお兄ちゃんー
 わたしもー…わたしも一人で走れるようにならなくちゃー

 だからー」

”けどー”
雅哉がそう言いかけると、麻耶は少しだけ息を吐き出したー。

「ーー…じゃあー……
 お兄ちゃん、今日はわたしがちゃんと走れるか、わたしの中で見ててー

 ーーほら、教習所の指導員さんみたいにー
 もし、事故を起こしそうになったらーわたしを止めてー」

麻耶がそう言うと、雅哉は少しだけ考えてから”わかったー”と、
そう呟くー。

いつまでもこれじゃいけないー。
麻耶はそう思いながら、
”お兄ちゃんが中にいる”安心感から、少し立ち直ってレースを続けるー

今日、これ以上無理に”わたしは大丈夫だから”では、
また心配をかけてしまうー。

そう思った麻耶は、”身体”の主導権は自分が握ったまま、
”お兄ちゃん”に中にいてもらうことにしたー。

そしてーー
レースは無事に終わったー。
3位だったけれど、十分な成績だー

”おめでとう”
雅哉がそう言うと、麻耶は「ーお兄ちゃんー。いつも本当にありがとうー」と、
そう言葉を口にした上で、
「ーーお兄ちゃんのおかげで、わたし、またちゃんと走れる気がしてきたー」と、
そんな風に言い放ったー。

”ーーははー、役に立てたならよかったー
 でも、無理はするなよー?”
雅哉がそう言うと、麻耶は
「うんー。でも、お兄ちゃんこそー」と、そう言い放つと
雅哉は”ーーあぁ…そうだなー”と、静かに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それ以降ー、雅哉は、麻耶に憑依する回数を徐々に減らしていき、
”憑依”による身体への負担は徐々に和らいでいったー。

もちろん、事故によってレースに出られない身体になったのは
もう直らないけれど、憑依による負担はなくなり、
雅哉は、少しずつ体調を回復させていったー。

そんなある日ー

雅哉の病室に妹の麻耶と、雅哉の彼女・梨沙が集まっていたー。

「ーーすっかり自分で走れるようになったよー
 本当にお兄ちゃんのおかげー。ありがとうー」
麻耶がそう報告をしに来ると、
雅哉も梨沙も嬉しそうに笑うー。

「ーーよかったー。麻耶が活躍していて何よりだよー」
スマホを手に笑う雅哉ー。

「ー雅哉、麻耶ちゃんがレースに出場する度に
 スマホに釘付けでー」

彼女の梨沙が笑うと、麻耶も嬉しそうに笑うー。

「ーーあ、でも、お兄ちゃんも
 たまにはレースしたくなったら、わたしの身体使っていいからねー?
 わたしだけ走るのも申し訳ないしー

 ーーもちろん、身体に無理のない範囲でー。
 梨沙さんに、健康状態確認してもらいながら、ねー?」

麻耶が言うと、
雅哉は「はははーありがとうー。そのうちまた走るよ」と、
少し嬉しそうに笑うー。

そんな兄・雅哉を見つめながら麻耶は改めてお礼の言葉を口にすると、
「ーーそれと、表彰台の頂上に立つときはーー
 お兄ちゃんと一緒にー」と、そう言葉を口にするー。

兄・雅哉はもう、自分の身体では走れないー。

表彰台で並ぶ夢は叶えられなくなってしまったけれどー、
それでもーー
まだ、夢は続いているー。

「ーーわたしの身体でー…だけど、お兄ちゃんにも
 一緒に表彰台に乗ってほしくてー」
麻耶がそう言い放つと、雅哉は穏やかに笑いながら
「ははー、一緒に真ん中に乗るのも悪くないなー」
と、そんな言葉を口にするのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

レーサー兄妹のお話でした~~!★

何のレースに出場しているのかは、
ご想像にお任せ…★ということで~笑
(架空のレースっぽい感じでイメージしてます~笑)

お読み下さりありがとうございました~~!★

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憑依<共に栄光へ>

コメント

  1. TSマニア より:

    確かにいろんなレースで捉えられますよネ!!

    いい兄妹のお話でした!☆

    麻耶は緊張しなくて自分の走りできるようになって良かったデス(´∀`)b☆

    信頼し合ってステキな関係ですよネ!☆

    無名さんも弟さんとステキな姉弟ですネ☆\(^o^)/☆

    カラダに負担ある憑依薬…(;∀;)泣

    カラダに負担があるのもキツイので…

    坂島副校長に進化した入れ替わりライトで

    無名さんのカラダと自分のカラダを入れ替えてもらうのデス~(*´艸`)笑

    無名さんのカラダと自分のカラダが入れ替わりライトで繋がってお互いのカラダから抜け出した魂が入れ替わりライトに乗って

    無名さんのカラダに自分の魂が入って自分のカラダに無名さんの魂が入って

    負担少なく入れ替わり完了なのデスd=(^o^)=b笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!★

      憑依薬を使うなら、
      やっぱり身体に負担がないものがいいですネ~~!!!

      お互いに負担がなければ、
      安心して憑依も入れ替わりもし放題(?)デス~!!