<FANBOX試し読み>「雨宮さんの家は狂っている」①~⑤

☆こちらは「試し読み」コーナーデス
 本コーナー以外の憑依空間内の作品は、憑依空間内で”必ず”完結します
<試し読み>と明記していない作品で、(試し読みコーナー以外では絶対にやりません)
「続きはFANBOXで」は絶対にやらないのでご安心ください!

「試し読み」は↓を全てご納得の上でお読みください☆!
(料金が掛かったりすることはないので、安心してください~!)

※こちらの小説はFANBOXご案内用の「試し読み」です。
(試し読みが欲しいというご要望にお応えして、試し読みをご用意しました)

pixivFANBOXで連載している長編「雨宮さんの家は狂っている」の
第5話までを公開していきます!
※「試し読み」では、最後まで完結しません。ご注意下さい
(※FANBOXで現在連載中)

・試し読みコーナーでも、事前に<試し読み>と明記、どこまで読めるかを
明記した上で掲載しています。途中までであることをご納得の上でお読みください!

※1話あたりの長さは通常のと私の作品と同じで、
FANBOXでは1話ごとに公開していますが、
試し読み版では①~⑤を全部まとめてあります。

主な登場人物

・沼岡 克哉(ぬまおか かつや)
人を皮にする注射器を手に入れた男。その力で杏奈を乗っ取った。

・雨宮 杏奈(あめみや あんな)
雨宮家三女。自ら命を絶とうとしていたところ、克哉に乗っ取られる。

・雨宮 琴葉(あめみや ことは)
雨宮家長女。一見優しいものの、異様なまでに家族に執着している。

・雨宮 雅人(あめみや まさと)
雨宮家長男。問題ばかり起こしている。動画配信者。

・雨宮 優吾(あめみや ゆうご)
雨宮家次男。男の娘。嫉妬深い性格の持ち主。

・雨宮 姫香(あみめや ひめか)
雨宮家次女。天然な振る舞いや爆弾発言を繰り返す

・雨宮 樹里(あめみや じゅり)
雨宮家の母。酒に溺れて、男遊びを繰り返している。

・雨宮 隆介(あめみや りゅうすけ)
雨宮家の父。妻の浮気を聞かされても笑って流す底知れない人物。

第1話「出会い」

小雨の降る中ー、
男は、ゆっくりと夜道を歩いていたー。

「ーーようやく、クソみたいな俺の人生とおさらばできるぜー」
彼は、ニヤリと笑みを浮かべると、
そう言葉を口にしながら、ポケットからあるものを取り出して
笑みを浮かべるー。

それはー
”人を皮にする注射器”ー。

他人に打ち込むことで、その人間をまるで”着ぐるみ”のように
ペラペラにしてしまいー、
それを”着る”ことで、その人間を乗っ取ることができるー、という
夢のようなアイテムだったー。

自分の”クソみたいな人生”を終わらせるために、
彼は、大金を払い、この”人を皮にする注射器”を手に入れた。

人を皮にする注射器を手に入れた彼は、今日ー、
”好みの子”を見つけたら、その身体を乗っ取りー、
新しい人生をスタートさせるつもりだったー。

「ーへへーどうせ乗っ取るなら、やっぱ女だろー」
下心からだろうかー。
ニヤリと笑みを浮かべながら、
彼ー…沼岡 克哉(ぬまおか かつや)は、
周囲を見渡すー。

先程から克哉は”乗っ取る身体”を探し求めて
夜の街を徘徊していたー。

そしてーー

「ーーーー」
ニヤッと笑みを浮かべる克哉ー。

ようやく、見つけたー。

長い黒髪にー、可愛らしい顔立ちの子ー…
大人しそうで、華奢な体格もいいー。

「ーーあの女にするかー」
克哉はニヤッと笑いながら、
その子の尾行を始めるー。

”これじゃ、完全に不審者ー…っていうかストーカーだなー
 まー…これから俺があの子になるんだからー…
 何とでもできるけどなー”

克哉がそんなことを考えながら、
”皮にして乗っ取る瞬間”を見られないように、
タイミングを見計らいつつ、尾行を続けるー。

がーー
そうこうしているうちに、その子はどんどん人通りの
少ない道に進んでいくー

「おいおいー…
 ああいう感じの子が夜にこんな道を歩くなんてー…」

克哉は少し呆れ顔で呟くー。

しかしー
驚くのは、まだ早かったー。

その子は、雑居ビルの非常階段を上り始めー
そのままどんどん上に上がり始めるー。

”ーーなんだぁ?ここに住んでるのかー?
 いやーこのビルは住宅じゃねぇよなー…?”

戸惑いながらも、
「まぁ、ここなら人に見られる心配もねぇかー」と、
その子の後を追って、非常階段をゆっくりと昇り始めるー。

「ーーー…!?」

がーー
屋上にたどり着いた克哉は、驚いた表情を浮かべたー。

”乗っ取ろうとしていた子”がー、
ビルの屋上から飛び降りようとしていたからだー

「ーーーお、おいー何してるー?」
克哉が思わず声をかけるー。

雨が少し強まるー。
どこか、寂し気な夜の雨ー。

「ーーーー…あなたはー?」
克哉の声に、振り返ったその子が振り返るー。
制服を着ているから、恐らく高校生だろうかー。

「ー…ーー…いや、俺は、そのー」
つい声をかけてしまった克哉が戸惑うと、
その子は答えたー。

「ーーー…わたしが飛び降りるの、止めに来たんですかー?
 だったら、邪魔しないでくださいー」

どこか、冷たい感じを漂わせる少女ー。

がー、克哉は
「別に止めに来たわけじゃねぇけどー…」と、そう言葉を口にするー。

「ーそうですかー」
克哉の言葉を聞いたその子は、「じゃあ、わたしここから飛ぶんで」と、
そのまま飛び降りようとするー。

「ーあ、いやいや、待て!」
克哉はそう言いながら、
”なんだこの女ー…”と、心の中で呟くー。

この世の全てに絶望したようなー”瞳”ー。
可愛らしい雰囲気と、絶望がトッピングしたような、
狂気のブレンドを感じるー。

「ーー…何ですか?やっぱりわたしが死ぬのを止めに来たんですか?」
不満そうに呟く少女ー。

「ーーいやーそうじゃないー。」
克哉は、すぐに否定の言葉を口にすると、
少し考えてから言葉を続けたー。

「ーどうせ死ぬならー、
 俺に”その身体”使わせてくれないかー?」
ニヤリと笑みを浮かべる克哉ー。

どうせ自殺するつもりなら、
乗っ取られるのも、死ぬのも同じようなもんだろうー、と
克哉はそう思ったのだー。

仮に断られても、だったら勝手に飛び降りて貰えばいいし、
交渉が決裂しても問題はないー。
克哉はそう考えつつ、相手の方を見つめるー。

雨に濡れた髪を少し触りながら、
その子は少しため息をつくとー、
「ーーはぁ…そうですかー。変質者ってことですかー」と、
違う意味で受け取ったのか、そう言葉を口にするー。

「ーーは?
 い、いや、違うー。

 んー…?いやー…身体を乗っ取って好き放題したいってのはー
 それはそれで変質者かー…?」

ボソボソと呟きながら、克哉は
”人を皮にする注射器”を手にすると、
「これで、お前を”皮”にして、その身体を乗っ取りたいー」と、
素直に口にしてしまうー。

どこか馬鹿正直な性格の克哉は、
昔から、それで何度も痛い目を見ているー。

「ー身体を、乗っ取るー?」
克哉の言葉を聞いたその子は、驚いたような表情を浮かべると、
「そんなこと、できるんですかー?」と、不思議そうに呟くー。

「あぁ」
克哉が即答すると、
その子は、突然、雨が降り注ぐ空を見上げて
少しだけ笑ったー。

「ーわたしなんかの身体を、使いたいんですかー?」
面白そうに笑う女ー。

「ーーあぁ。お前は俺の好みだー。
 可愛いしー、髪型も、雰囲気もー
 俺の理想にピッタリだー」

雨に濡れたまま、克哉がそう言うと、
その子はクスクスと笑いながら、
続けたーーー

「ーーいいですよー」
とー

「ーーーへへー…そうこなくちゃなー」
まさか、即答されるとは思ってなかったのか、
克哉がそう言うと、
その子は笑ったー。

「ーあなたの言う通り、わたしはどうせ死ぬつもりなんでー。
 だったらー、別に変らないですしー」

妙に淡々としている女ー。

「ーーククーー
 本当にいいんだな?
 お前の身体で好き放題したりー、
 大事な人を傷つけるかもしれないぞ?」

克哉の言葉に、その子は
”今までに見たどんな人間の目”よりも死んだ目で、
笑みを浮かべながら言ったー

「ーーーわたしに”大切な人”なんていないんでーー」
とーー

「ーー~~~~~!」
ゾワッ、と恐怖を感じる克哉ー。

「ーー…へへ…親は…家族はいないのかー?」
克哉が言うー。

すると、その子は言ったー。

「ーー”わたしの家族”は狂ってるんでーー
 どいつも、こいつもーーー」

とーーー

「ーーーーー」
克哉は、そんな言葉を聞くと、
笑みを浮かべながら言ったー

「ーへへー気に入ったぜー…
 ますますお前を乗っ取りたくなったー」

さらに雨が強まりー、雷鳴が轟き始めるー。

濡れた髪を揺らしながら、その子は顔を上げるとー、
「ーーわたしは雨宮 杏奈(あめみや あんなー)
 あなたはー?」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーーへへー
 沼岡 克哉ー
 ーーーよろしくなー」

その言葉と同時に、克哉はその子ー…杏奈の首筋に
注射器を打ち込むと、
杏奈の身体から、みるみる力が抜けて、
その場に崩れ落ちていくー。

「ーーふふ… ふふふふふ… ふふふー
 これでやっとーー楽になれるー」

皮になって、身体から力が抜けていく中ー、
杏奈は一人で笑っていたー。

「ーー”わたしの家族”ーー
 狂ってるからーーー…あなたも気を付けてーー ね?」

不気味な笑みを浮かべる杏奈ー。

そのまま、杏奈は”皮”になって動かなくなったー。

ずぶ濡れのまま、皮になった杏奈を回収すると、
克哉はそのまま”杏奈”を着るー。

「へへへー へへへーー
 すげぇーホントに乗っ取れたぜー」
杏奈となった克哉は、嬉しそうに自分の身体を見下ろしてから、
両手を広げて笑みを浮かべるー。

「ーこの声もー…俺のもんかぁ…
 ククーーふふふふふふ…」

邪悪な笑みを浮かべながら、杏奈は”この声”で
これから喋れることに喜びを覚えるー。

「ーってか、制服透けてるじゃねぇかー…
 ククー」

そう言葉を口にしながら、濡れた制服の上から
少しだけ胸を揉むとー、
「ーさーて…こいつの家はどこかなー?」と、
そう言葉を口にして、屋上の上に放置された
杏奈の荷物をしゃがみ込んで、漁り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーあ~~~あ…びしょ濡れだよー」
乗っ取られた杏奈は嬉しそうに
スカートをめくりながら、そう呟くー。

本当に、身体を乗っ取ることができたー。
そのことに感動と興奮を覚えながらもー
「スカート履いたまま濡れるのって落ち着かないなー」と、
”さっさとこいつの家に帰って風呂にでも入ろうー”と、
心の中で呟くー

「ーへへー風呂でも楽しませてもらうからなー」
先程までの、どこか感情表現の薄かった杏奈の”顔”は
別人のように表情豊かになりー、下品な笑みを浮かべているー。

そしてーー
ようやく”雨宮”と書かれた家の前に到着したー。

「ーーー」
インターホンを鳴らそうとする杏奈ー。

”ーー綺麗な指だなーへへ”
自分が、”この指を動かしている”と、思うだけで
さらに興奮するー。

杏奈の身体がゾクゾクとしているのを感じながら、
インターホンを鳴らそうと、指を近づけるー。

がーー

”「ーー”わたしの家族”ーー
 狂ってるからーーー…あなたも気を付けてーー ね?」”

皮になる直前、杏奈本人が言った言葉を思い出すー

「ーーー…死にたくなるほど、狂ってる家族ーか」
杏奈はそれだけ言葉を口にするー。

”杏奈を乗っ取った”克哉は
少しだけ複雑そうな表情を、杏奈の顔で浮かべると、
そのまま意を決して、インターホンを鳴らしたー。

家の中から出て来たのはーーー

「ーーー杏奈ーー!…よかったー
 どこに行ってたのー!?」

優しそうな雰囲気のお姉さんーー

「ーーあ…え、えっとー…ご、ごめんねー」
杏奈の身体で、そう言葉を口にする克哉ー

すると、その優しそうな雰囲気のお姉さんー
恐らくは、杏奈の姉だろうかー。

彼女は突然、杏奈をその場で抱きしめたー。

「ーむぐっ…」
一瞬、驚きながらも、
杏奈はすぐに”綺麗なお姉さん”に抱きしめられたことで
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

「ーーーーホントによかったー。
 どこに行っちゃったのかって、心配してたからー」

その言葉に、
杏奈は「うんー。大丈夫ー…ちょっと寄り道してたら
雨に降られて、雨宿りしてただけだからー」と、
そんな言葉を返したー。

”ーなんだよー。全然狂ってねぇじゃんー
 いやー……コイツじゃなくて、親がイカれてんのかー?”

そう思っていると、
家の中から別の声が聞こえたー。

「ーね~ね~!琴葉(ことは)お姉ちゃんー…
 ま~た、雅人(まさと)お兄ちゃんがーー」

「ーー」
杏奈は、そんな様子を見つめながら、
”優しそうな雰囲気のお姉さん”は、琴葉という名前であることを
悟るー。

”ーーあっちのゆるふわなツインテールの女もー、
 姉か妹だろうなー。
 それにー…雅人って兄貴もいるのかー

 結構人数多いんだなー”

杏奈を乗っ取っている克哉が、杏奈の中でそう呟くー。

「ーーー雅人ってばー……」
優しそうな雰囲気の姉・琴葉がうんざりした様子で
奥へと進んでいくー。

がー、途中で振り返った琴葉は
「あ!杏奈は、早くお風呂に入っちゃいなさいね~?
 風邪ひいちゃうよ~?」と、そう言葉を口にすると、
そのまま家の奥へと進んで行ったー。

「ーーー…さてーと…」
杏奈は、”お風呂に入る前にこの女の部屋を探すか”と、
そう考えながら家の中をうつろくー。

するとー、可愛らしい雰囲気の
さっきの女二人とはまた違う女と遭遇したー。

「ーーあ、杏奈!おかえり~!
 随分濡れてるね~?大丈夫?」
心配そうにしてくれる”別の姉”らしき人物ー。

「ーあ、うんー!だ、大丈夫ー!」
杏奈として、そう答えると、
おしゃれな雰囲気のその子は、「そっかー」と、
そのまま立ち去っていくー。

「ーーーー」
杏奈は、ふぅ、とため息を吐き出すと、
そのまま、ようやく”杏奈の部屋らしき場所”を見つけて
その中へと入ったー。

「ーーーーーこれが、コイツの部屋だなー

 ーーいや、これからは”俺の部屋”かー」

杏奈がニヤッと笑うー。

そしてーー
部屋の中を漁るー。

まずは、色々な情報を手に入れなくてはならないー。

そうこうしているうちに、”家族写真”を見つけた杏奈ー。

そこにはー
両親と、杏奈、さらには”4人の姉や兄らしき人物”が
写っていたー。

雨宮 樹里(じゅり)ー
雨宮 隆介(りゅうすけ)ー
母親と、父親の名前を確認するー。

雨宮 雅人
雨宮 優吾(ゆうご)
雨宮 琴葉
雨宮 姫香(ひめか)

そしてー、雨宮 杏奈ー。

杏奈のスマホの指紋認証を解除して、
家族とのやり取りなども確認していく克哉ー。

色々な情報を総合するとー、
この家は杏奈を含めて7人家族ー。
杏奈を含む5人の息子・娘たちが暮らしているようだったー。

さっきの、優しそうなお姉さんが長女の琴葉ー。
何か問題を起こしたっぽいのが琴葉の弟で長男の雅人ー、
ゆるふわツインテールは、次女の姫香ー。

乗っ取った”杏奈”は、どうやら一番下の妹、三女のようだー。

次男の優吾とやらは、まだ顔を合わせていないがー、
長男・雅人と、次女・姫香の間に生まれた次男のようだったー。

”ーーーん…?でも、女、三人いたよなー?”
首を傾げる杏奈を乗っ取っている克哉ー。

家に戻ってから、
長女・琴葉と次女・姫香ー、それ以外にもう一人、
廊下ですれ違ったおしゃれな女がいたー。

がー、あれは母親の樹里ではないー。
写真と違うし、年齢も高校生か、大学生ぐらいだったー。

「ーーー…あれはいったい誰だー?」

そんなことを思いつつもー、
「へへー…とにかくまずは、俺の”新しい身体”を
 じっくり洗ってやるとするかー」と、
濡れた制服を見つめながら、そのままゆっくりと
部屋の外に向かって歩き出すー。

杏奈を乗っ取った男はー、
杏奈の人生を奪い、この先ー、
新しい人生をー、欲望の人生を堪能するつもりだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」

”20:38 帰宅”
”20:45 部屋に入るー。

長女ー
雨宮 琴葉ー。

彼女は、家族を異様なまでに愛し、”束縛”しているー。
妹・杏奈のことを、ノートにそう記録して、微笑む琴葉ー。

ノートの他の箇所には、杏奈だけではなく、
他の家族の全ての行動が記録されているー。

「ーーー…みんな、大好きー」
そう呟く琴葉は、優しそうな笑顔を浮かべるー。

しかしー、その目には、底知れない不気味な闇が
映し出されていたー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーうるせー!馬鹿!」

長男・雨宮 雅人はー、
”夢の雨”というチャンネル名で配信を行っている配信者ー。

大学を中退し、迷惑系の動画配信を繰り返し、
家族にも迷惑をかけている厄介者ー。

先日も、路上で不審者を追及してみたー、という動画を
投稿して、炎上している最中だー。

「ーーあ~~~!くそっ!
 再生数が増えねぇ!」
雅人はそう声を張り上げると、
「もっと過激な動画が要るーー」と、歪んだ表情で言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーふふふふー」

部屋で、自分の髪を触りながら嬉しそうに微笑むのはー
次男の雨宮 優吾ーーー

彼はーーー
”男の娘”だったー。

しかも、女子顔負けの可愛さを誇る、おしゃれな男の娘ー。

杏奈を乗っ取った克哉が廊下ですれ違って会話をした女は、
この次男の優吾だー。

「ーーーふふふふー」
自分の指を見つめながら、可愛らしいネイルにうっとりとする
優吾ー。

「ーーーーーー」
がー、彼はふと真顔になると、
「ーー許さないー」と、静かに、誰かへの憎しみの言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ファンタジー世界に迷い込んだような
可愛らしい部屋に入ると、
満足そうに微笑む次女の雨宮 姫香ー。

自分のことを”姫”だと自称していてー、
天然な爆弾発言を繰り返したり、
突然意味不明な行動を繰り返す、
”天然の時限爆弾”ー。

乗っ取られた杏奈は、心の中で
姉の一人である姫香のことをそう呼んでいたー。

今日も、彼女は長女である琴葉の前で
爆弾発言を繰り返して、
琴葉を困惑させていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーふ~…」

お風呂で十分に欲望を堪能して、
ようやくリビングの方に戻ってきた杏奈はー、
笑みを浮かべるー。

「ーこの女、家族が狂ってるとか何とか言ってたけどー
 全然、悪い奴らじゃなさそうだよなー」
杏奈を乗っ取った克哉は、そんな言葉を口にするー。

克哉は、まだ知らないー。

家族の狂った姿をー。

完全に乗っ取るつもりだった相手の杏奈自身とーー
”身体を乗っ取ったまま”協力し合うことになるー…
そんな未来が待ち受けていることをー。

②へ続く

第2話「家族」

”人を皮にする注射器”を手に入れた男・克哉ー。

彼は、乗っ取る相手を物色している最中、
偶然出会った”命を絶とうとしていた”雨宮 杏奈と出会うー。

杏奈は”狂っている家族”に嫌気が差して、
自ら命を絶とうとしていて、
”人を皮にして乗っ取ろうとしている”という克哉の目的を聞いてもなお、
動じることなく”好きにすれば?”という態度を示したー。

そんな杏奈に興味を示し、杏奈を乗っ取った克哉は
そのまま”雨宮家”に杏奈として帰宅するー。

一見すると、”普通の家族”に感じた克哉ー。

しかし、”地獄”を知るのはこれからだったー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーククククーーー
 すっげぇ…」

杏奈はニヤニヤしながら、短いスカートを履いて、
自分の足を嬉しそうに触っていたー。

「ーーーふふ…ふふふふふふふ♡」
杏奈本人が、絶対に浮かべそうにない笑みを浮かべながら、
今の杏奈は、自分の足を夢中になって触っているー。

「ーはぁ~~~…こういう短いスカート履いてるだけで
 すっげぇゾクゾクするー」
杏奈は、チラッと鏡を見つめるー。

杏奈の顔は赤らんで、
明らかに興奮しているのが分かるー

そんな”顔”を見て、さらにゾクゾクしてしまう杏奈ー。

「ーーんふっ…♡ この身体が火照る感じーーーたまらないー」
杏奈は、はぁはぁ言いながら自分の指をペロリと舐めると、
「ー俺が”雨宮 杏奈”を興奮させてるんだー」と、
嬉しそうに笑うー。

杏奈を乗っ取った克哉はー、
嬉しそうに自分自身を抱きしめながら
「最高だー♡」と、言葉を吐き出すと、
「ーしかし、この女、こんなに恵まれた身体を持ってるのに
 自分で死のうとするなんてなー」と、そう言葉を口にしたー。

”雨宮 杏奈”は、自殺しようとしていたー。
そんな、杏奈の身体を乗っ取った克哉ー。

雨に濡れながら、杏奈と会話を交わしたさっきのことを思い出すー。

杏奈は言っていたー。
”家族が狂ってる”とー。

けれど、そんな様子は今のところはないー。
優しそうなお姉さんに、元気そうな子にー、おしゃれな子ー、
”お兄ちゃん”とやらは少し問題児なのかもしれないが、
自ら命を絶つほどの苦痛になる存在には思えなかったー。

「ーーーへへっーー
 しかし、こういうスカートで足を組むと、
 それだけでー見えちゃうしエロいよなぁーへへへへ」

杏奈が下品な笑みを浮かべていると、
ふと、玄関の扉が開く音が聞こえたー。

”ん?あぁ、そういや、こいつの両親とはまだ会ってなかったなー”

杏奈を乗っ取った克哉は、そんな風に思いながら、
立ち上がるー。

「ーーこれからは俺もそいつらの”娘”だからなー
 へへへー 顔を拝んでおくとするかー」
杏奈はそう呟くと、今一度胸を揉んでから、
「よしっ」と、言いながら部屋から出ていくー。

するとーー
帰って来たのは、少し派手な格好をしている
母親ー…雨宮 樹里(あめみや じゅり)だったー。

「ーーお母さんおかえり~~!」
ゆるふわな雰囲気のツインテールな次女・姫香が
母・樹里を出迎えるー。

がー、樹里は酒を飲んでいるのか、
ふらふらしながら家の中に入って来ると、
ちょうど階段から降りて来ていた杏奈の方を見つめたー。

「ーーー…!」
杏奈を乗っ取っている克哉は、酔っ払っている母・樹里を
見つめながら「あ、お帰りなさいー」とそう言葉を口にするー。

がー、樹里は何も答えず、水道水をコップに入れて
それを飲み始めるー

”チッーなんだよ、無視かよー”
杏奈は不満そうに表情を歪めるー。

すると、部屋から”おしゃれな姉らしき人物”が
外に出て来たー。

先程廊下ですれ違った女だー。
一番最初に会った長女の琴葉、
そして今、母を出迎えたゆるふわな次女・姫香とは
違う”女”ー。

がー、先ほど部屋で確認した限り、
姉は琴葉と姫香の二人しかいないはずでー、
杏奈を乗っ取った克哉からすれば”あの女は誰なんだ?”と、
そんな状態の相手だったー。

「ーーーあ、”優吾お兄ちゃん”ー」
次女のゆるふわツインテール・姫香が言うー。

「ーーえ?」
横にいた杏奈は思わず変な声を出してしまうー。

おしゃれな雰囲気の”姉らしき人物”のことを、
今、姫香は”優吾お兄ちゃん”を呼んだだろうかー。

「ーー…も~~~!お姉ちゃんって呼びなさい!」
”優吾お兄ちゃん”と呼ばれたおしゃれな女は、そう言うと、
「ーえ~~~だって、女装じゃ~ん!」とゆるふわ次女・姫香が言ったー

「ーじょ、じょ、じょ、女装ー?!」
杏奈は思わず小声で驚きながら
”優吾お兄ちゃん”と呼ばれた女の方を見るー。

”優吾”は、この家の次男だー。
あの女が”優吾”だと言うのだろうかー?

だが、それなら確かに人数は合うー。
この乗っ取った”杏奈”の上には姉が二人、兄が二人いるから、
あの女が”兄のひとり”なら、人数的にちょうどだー。

「ーーーーーー」
”女装じゃん”と妹にあたる姫香から言われた
優吾は、突然笑顔を消して舌打ちをするー。

「ーー!」
杏奈は、その様子を見てゾワッ、と少し恐怖を感じるー。

「ーーーーあら、雄吾ー
 まだそんな格好してたのー?
 ”ついてる”癖にー。」

母・樹里が水を飲みながらそう言うと、
優吾は不快そうに、「ついてて悪いかよー?」と、
今までとは違う、低い声でそう言葉を口にしたー。

「ーーーま、マジかー…」
杏奈は小声で呟くー。

次男・優吾は、”男の娘”だったのだー。
しかも、何だか闇が深そうに見えるー。

”ーやっぱ、この女が言ってた、家族が狂ってるって言葉はー
 本当なのかー?”
杏奈は表情を歪めながら、冷蔵庫からジュースを取り出すと
それをコップに注いで飲み始めるー。

”ーーーへへー…女の口で飲むジュースはうまいぜー”
杏奈を乗っ取っている克哉は、こんな状況でも、
せっかくの”女としての新たなライフ”を楽しんでいたー。

がー
そうこうしているうちにーー
インターホンが鳴るーー

帰って来たのはー、
父親の雨宮 隆介(あめみや りゅうすけ)ー。

真面目そうな雰囲気の眼鏡の男で、
帰宅すると「ただいま」と、出迎えた次女・姫香に向かって言うー。

「ーーおかえりなさいー」
”杏奈”として、克哉も適当に挨拶をすると、
「んー。ただいま」と、父・隆介はそう言い放ったー。

”母親”とは違ってまともそうだー。

「ーーー…ーー」
酔っ払っている”母”・樹里を見つめる父・隆介ー。

「ーー帰ってたのかー」
隆介がそう言うと、
突然、次女の姫香が笑いながら言ったー。

「ね~ね~!お父さんー
 今日も、お母さん、また男の人と浮気してきたみたいだよ!

 先週も別の男の人と寝てたからー、今月、もう2人目だね!」

姫香のそんな言葉に、
ちょうどジュースを飲んでいた杏奈が、ジュースを吹き出すー。

「ぶっー!」

”母”樹里は日常的に浮気をしているのだろうかー。
しかも、ゆるふわな次女・姫香がそれを笑いながら
平然と父親に伝えているー。

地獄のような光景だー。

がーー

「ーそうか」
父・隆介はそれだけ言うと、
自分が浮気されているにも関わらず、
ほぼノーリアクションだったー。

「ーーだって、あなたよりイケメンなんだもんー」
母・樹里が娘に浮気を暴露されても、
平然とした様子で言うと、
父・隆介は「はははー。それなら仕方ないなー」と、笑ったー。

”ーな、な、なんだこいつらー
 浮気公認なのかー?”

杏奈を乗っ取っている克哉はそう思いつつ、表情を歪めるー。

”まー、いいやーー…
 とにかく俺は部屋でこの女の身体を楽しむとするかなー”
杏奈を乗っ取っている克哉は、両親との顔合わせを済ませるとー、
そのまま自分の部屋に向かって歩き出したー。

ーーーガン!!!

がーーー

廊下を歩いていると、”長男”である雅人の部屋から
大きな音が聞こえたー。

”おいっ!このクソ野郎ー!”
”お前のこと、2度と配信できないようにしてやるからな!”
”ー俺の登録者数、何人だと思ってるんだ?この雑魚がー!”

何かを蹴りつけるような音と共に、長男・雅人の荒ぶる声が聞こえるー。

「ーーーヤバそうなやつだなー」
杏奈はそう呟くと、
「いやー、こいつの身体を乗っ取ってる時点で、俺が一番ヤバいやつか」と、
そう笑いながら、
そのまま自分の部屋に帰ろうとするー。

がーー
ちょうど、兄の雅人が部屋から出てきてしまったー

「お~~杏奈じゃんーちょうどいいや」
雅人はボサボサ頭のまま、そう言葉を口にすると、
スマホを手に笑みを浮かべたー。

「ーってか、今日の杏奈、エロくね?」

短いスカートのことを言っているのだろうかー。
雅人はそうニヤニヤしながら言うー。

「ーお…お兄ちゃんー」
杏奈は普段、”この兄”のことをどう呼んでいるのだろうかー。

そう思いつつ、そう言葉を口にすると、
雅人は特に気にする様子を見せないまま、
突然、杏奈のスカートをめくってきたー。

「ーー!?!?!?!??!」
杏奈は思わず、反射的に雅人を蹴りつけそうになるーー

がーー、杏奈を乗っ取っている克哉はそれをなんとか抑えると
「な、な、な、なにするんだーー… ーーいやーー するの!?」と、
そう声を発したー。

「ーへへへへー
 妹のスカートをめくったら怒られましたー
 な~んて、配信できねぇかなって思ってさー

 ってかさー、杏奈ーー
 俺のチャンネルに出ねぇ?

 杏奈がメイドコスとかで配信に出てくれりゃ~
 ”夢の雨”の登録者数も増えると思うんだけどなぁ」

雅人のその言葉に、
杏奈は「ご、ご、ごめんー。今、忙しいからー」と、
そう誤魔化して部屋へと駆け込んだー。

「ーーーー」
ゾワッとする杏奈ー。

”杏奈”の身体が反応しているのかー、
それとも、”女”として初めてスカートをめくられたことに
嫌悪感を感じているのかー。

答えは分からないまま、ため息をつく杏奈ー。

「ーチッー、やっぱ変な家族なのかもなー。
 まともそうなのはー
 一番上の優しそうなお姉ちゃんとー、
 あとは、あの父親ぐらいかー?
 
 あの、ゆるふわな姉は何言い出すか分かんなくて疲れそうだし」

杏奈はそう呟くと、
「ーーー…さて」と、周囲をキョロキョロ見回すー。

「ー女の身体でイってみるかー」
邪悪な笑みを浮かべる杏奈ー。

がーー
その時だったー。

コン コン、と部屋がノックされるー。

「ーーーーチッ」
杏奈は小さく舌打ちをするー。

家族の人数が多いと、それだけ邪魔が入るー。
どうにも、思ったように杏奈の身体を楽しむことができないー。

「ーーーー誰…?」
が、仕方がなくそう返事をすると、
”わたしー。ちょっと入っていいー?”と、
そう言葉が帰って来たー。

「ーー(この穏やかそうな感じの声は、確か一番上の姉のー…)」
そう思いつつ、「うんーいいよ」と、そう言葉を口にすると、
長女で女子大生の琴葉が部屋の中に入って来たー。

「ー邪魔してごめんねー」
穏やかに微笑む琴葉ー。

「ーーううんー…大丈夫ー」
杏奈は、そう返事を返すと、
琴葉は心配そうに杏奈の方を見つめたー。

「ーーそれで…あんなに濡れて帰ってくるなんてー…
 何かあったのー?

 いつもより帰りもすっごく遅かったしー」

心底心配そうにしている琴葉の言葉に、
杏奈は「えっ…あ、あぁーー…さ、さっきも
言ったけど、急に雨に降られて雨宿りしてただけだからー」と、
そんな言葉を口にするー。

がーー
琴葉は持っていたノートを見つめると少し表情を歪めたー。

「ー雨が降り出したのはー…
 18時過ぎだったはずだよー?

 いつも、杏奈、16時台か17時台には帰って来るよねー?」

琴葉の言葉に、杏奈は「えっ…あ…あははー」と、笑うー。

雨が降り出したのは18時過ぎー。
それは確かにそうだー。

がー、それだと”雨宿りで遅くなったー”というのは
”杏奈”がいつも16時~17時に帰宅しているなら
辻褄が合わなくなってしまうー。

しかし、杏奈を乗っ取っている克哉はすぐに口を開くー。

「ーそ、それはー、さっきも言ったけど、寄り道をー」
杏奈が言うと、
琴葉は「寄り道?どこに?」と、ニコニコしながら言葉を口にするー。

「ーー…えーー…あ~…と、友達と、ちょっと
 買い物にー…」
杏奈が気まずそうに言うー。

「友達?」
琴葉がさらに表情を歪めるー。

優しそうに微笑んでいるもののー…
”目”には狂気を感じたー。

「一緒に買い物に行く友達、いたっけー?」
琴葉はそこまで言うと、
「何組の、なんて子ー?フルネームで教えて?」と、
ノートを手にしたまま、ニコニコと微笑んだー

「ーーーそ…それはーー…」
杏奈は困惑するー

”チッー…な、なんなんだこいつー…”
杏奈を乗っ取っている克哉は、心の中で舌打ちするー。

「男子?女子?
 同級生?先輩?後輩?」
琴葉の表情から次第に笑顔が消えていくー。

「ーーー…そー…それはー…
 お、お、お姉ちゃんに言うようなことじゃなーーー

杏奈がそこまで言うと、琴葉は
「ーー悲しいなぁ」と、突然、言葉を口にするー。

「ーーー…”家族”に隠し事するんだー?
 お姉ちゃん悲しいなぁー…」

琴葉は、真顔になって、そうブツブツと呟くー。

「ーーえ…えっとーそ、そんなつもりじゃー」
”杏奈”のフリをしながら、克哉はそう声を発するー。

がーーー

「悲しいなぁー 悲しいなぁ
 悲しいなぁ 悲しいなぁ
 悲しいなぁ 悲しいなぁーーー
 悲しいなぁ 悲しいなぁー」

何度も何度も何度も、そう呟く琴葉ーー

「ーーご…ご、ご、ごめんってばー」
杏奈が慌ててそう言うと、
「ーー家族に”隠し事”はお姉ちゃん、許さないからねー」
と、微笑みながら呟くー。

「ーーう…うんーー…ご、ごめんー」
杏奈の身体が小刻みに震えているー

”ーーび、ビビってるのかー?俺がー?
 いやー…コイツの身体がー勝手に反応してるのかー?”

そう思いながら、
杏奈は琴葉を見つめるー。

「ーーーで…?誰?
 一緒に買い物に行った友達はー?」

琴葉は、握りこぶしを作りながら、
ニコニコと笑いながら、”また”聞いて来るー。

がーーー
その時だったーーー

「ーー琴葉お姉ちゃん~~~!!!助けて~~~!」
次女のゆるふわツインテール・姫香の声が
部屋の外から聞えて来るー。

「ーーー雅人お兄ちゃんがーーー!!!」
その言葉に、琴葉はため息をつくと、
ゆっくりと立ち上がるー。

「ーーー家族に”嘘”は、許さないー
 覚えておいてー」

琴葉は、真顔でそう言うと、
にこっと、微笑んで
「ー急に邪魔してごめんねー。それじゃー」と、
そのまま部屋の外に出ていくー。

一人残された杏奈は、呆然としながら
しばらく座り込んでいたもののー、
やがて笑みを浮かべるー

「クククククー…狂った家族にー
 他人の身体を乗っ取った俺かー」
杏奈はニヤニヤしながら、自分の太腿を触り始めるー。

「ーへへへへー…余計に興奮してきたぜー」
身体が火照るのを感じながら、杏奈は笑みを浮かべるー。

”家族が狂っている”から、何だと言うのだー。

雨宮 杏奈という子をー
他人の身体を乗っ取った自分こそが、一番狂っているではないかー。

杏奈を乗っ取っている克哉は、そう思いながら
杏奈の身体で邪悪な笑みを浮かべるー。

家族に執着して、束縛する長女の琴葉ー、
迷惑行為を繰り返す配信者のニート…、長男の雅人ー、
得体の知れない男の娘の次男・優吾ー、
平気で爆弾発言をするゆるふわ次女・姫香ー。

そして、浮気を繰り返す母・樹里に、
妻の浮気にすらリアクションの薄い不気味な父・隆介ー。

「ーーそして、こいつを乗っ取った俺かー」
杏奈はそう言葉を口にすると、
一人、部屋の中で笑い始めたー

乗っ取った相手の家族が狂っていても関係ないー。
俺はただ、欲望の限りを尽くすのみだー、とー。

③へ続く

第3話「狂気」

人を皮にする注射器を手に入れて、
雨宮 杏奈を皮にして乗っ取った克哉ー。

杏奈として、雨宮家の帰宅した彼は、
早速、その家族と対面することになるー。

乗っ取られる直前の杏奈は
”わたしの家族は狂ってるー”と、そう言っていたー。

しかし、実際に会ってみると案外普通に見えるーー…と、
最初はそう感じていた。

がー、初日にして家族の狂った一面を見せ付けられた克哉はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーふふふふ…♡ ふふふふふふふふ…♡」
一見すると、大人しそうな顔立ちの杏奈が、
表情を歪めながら、嬉しそうに自分の胸を揉んでいるー。

「ーーーーくくっ…くくくー
 こんな最高の身体を持ってるのに、死のうとするなんてー
 へへー…信じられねぇなー」
涎を垂らしながら、杏奈は夢中になって胸を揉むー。

杏奈を乗っ取った克哉はー、
自分の部屋で、夜な夜なお楽しみを続けていたー。

「ーあ~~~…揉んでも揉んでも飽きねぇ」
杏奈は足を広げて座りながら、無心になって、
両手で両胸を揉みながら、ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

足をさらに広げて、自分の生足を見つめたり、
「そういや、自分の履いてるスカートって、自分で覗けるのかな?」と、
首を下げて、自分のスカートを中を自分で覗こうとしたり、
杏奈の身体で存分に欲望の時間を楽しんでいくー。

”杏奈の家族”ーー
雨宮家は、確かにおかしな奴らが揃っているーー
それは、理解したー。

しかし、やはりー、
杏奈を乗っ取った克哉からすれば、
”死にたいと思えるほど、酷い家族には思えなかったけどなー”
と、笑みを浮かべるー

「ーーーーー」
胸を揉みながら、ふと、真剣な表情を浮かべる杏奈ー。

”ーーーごめんねーー…ごめんねーー”
”俺は、俺の好きなようにやらせてもらうぜー 人生一度きりなんだからよ”

そんな、”二人”の言葉を思い出すー。

「ーーーー」
杏奈を乗っ取った克哉は、杏奈の身体で複雑そうな
表情を浮かべると、
「ー”俺も”好きにやらせてもらったぜー」と、そう呟くと、
「さ~て…」と、再び自分の胸を揉み始めるー。

「ーーわたしのこと、何もかも好きにしていいからね?ふふっ♡」
杏奈のフリをして、杏奈がそう言っているかのように
そう言葉を口にすると、杏奈を乗っ取っている克哉は
再び嬉しそうに杏奈の身体を貪りつくし始めたー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー?」

深夜ーーー
杏奈はふと”気配”を感じて目を覚ましたー

”誰か、部屋に来たー?”
そんなことを思いつつも、杏奈は寝たふりをしながら
”誰が入って来たのか”を確認しようとするー。

「ーーーーーーふふーー」

ふと、女の笑い声が聞こえたー。

「ーーふふふふふーーふふふふふー
 杏奈ってばーーかわいいーー」

そう言葉を口にしながら、女はスマホのカメラで
杏奈の寝顔を撮影しているのか、
音が聞こえてくるー

「ーーーふふふふ…あ~~~~~~~~~」
うっとりとした声を出しながら、女は何かの
ニオイをかぐような、そんな音を立て始めるー

”だ…誰だよー…?何してやがるー?”
杏奈は寝たふりを続けながら、心の中でそう呟くー

やがて、その人物は満足そうに部屋の外へと向かって行くー。

杏奈は、小さく目を開いて、
その相手の姿を確認するとー、
そこにはー、優しそうな雰囲気の長女・琴葉の姿があったー。

昨夜、”どこに行っていたの?”と執拗に問い詰めてきた琴葉ー。

”ーーー…こいつは、やべぇやつだなー…”
杏奈はそう思いながらも、起きていることを悟られないように
そのまま目を閉じるー。

長女・琴葉は異様なまでに家族を束縛し、
家族を大切にしているー。
その”大切に思う気持ち”は、異様なレベルにまで膨れ上がっていて、
この家では、”裏切り”は絶対に許されないー。

「ーーーはぁー…毎晩、あんな感じなんだとすると
 こいつがストレス感じるのも分かる気はするなー」
杏奈は、鏡を見つめながらふと呟くー。

”死にたくなるほどおかしな家族”
そんなこと信じられないーー
そう思っていたものの、”雨宮 杏奈”の家族は
確かにイカれているー。

そう思わざるを得なかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おっはよ~~~!」
天然で、ゆるふわな雰囲気の次女、
ツインテールが特徴的な姫香が笑いながら
食卓へとやってくるー。

「ーーーーー」
にこにこしながら、長女の琴葉が座席に座っているー。

そこに、”男の娘”である次男・優吾もやってきて
「わぁ~おいしそう~!」などと、可愛らしい仕草と共に
リアクションを見せるーー

”ホントにこいつ、ついてるんだよなー?”
杏奈は”次男”であるはずの優吾を見つめながら、
少しだけ表情を歪めるー。

「ーーーーーーー」
穏やかな表情を浮かべながら父親である隆介もやってくると、
二日酔いオーラ丸出しの母・樹里も食卓にやって来たー。

「ーー…」
”そういや、こいつら、家族同士は仲良しなのか?それともー?”
そんなことを思いつつ杏奈は、食卓に並んだ
パンを口に運ぼうとするー。

がーーー

「ーーえ~~~杏奈ってば~~
 何フライングしちゃってるの~?」
ゆるふわツインテールの次女・姫香が少し
呆れ笑いを浮かべながら言うー。

「ーーあららー」
二日酔いの母・樹里が興味なさそうに呟くと、
父・隆介はニコニコしたまま、何も喋らないー。

「ーーーー…杏奈ー」
そんな、”フライング”した杏奈を前に、長女の琴葉が
穏やかに微笑みながら言うー。

「ー”朝ごはん”が終わったら、わたしの部屋に来なさい」
とー。

「ーえ…?あ、えー?お、お姉ちゃんー
 ど、どういうことー?」
杏奈を乗っ取っている克哉は”な、なんだよこの女ー”と
思いつつ、苦笑いするー。

「ーーあ、さ、先に食べちゃったこと、怒ってるのー?
 だ、だったら、ごめんねー」
杏奈は申し訳なさそうにそう言葉を口にするー。

しかしー

「わたしの部屋に来なさい」
琴葉は真顔でそう繰り返すと、
「あ~~…姉さんを怒らせちゃったね~」と、
次男の”男の娘”優吾が笑うー。

「ーーー…う…うんーーー」
杏奈は気まずそうにしながら、
”チッー…面倒くせぇ姉だぜー”と、内心で舌打ちする克哉ー。

いつか、”杏奈”の身体で、この女を屈服させてやるのも
面白いかもしれないー。
そんなことを思いつつ、杏奈はため息をつくー。

「ーーーー」
琴葉はふと、8時になったのを確認すると、
不満そうに「雅人は?」と、長男で配信者の雅人の名前を口にするー。

「あ~雅人お兄ちゃんは、部屋でリスナーさんと
 喧嘩しながら配信してたよ~」
と、ゆるふわツインテールの次女・姫香が笑うー。

「ーーーーー」
ギリッと歯軋りをする琴葉ー。

「ー家族みんなの朝ごはんに遅れるなんてー
 許せないー」
琴葉はそう言うと、机をバン!と叩いて立ち上がるー。

穏やかな雰囲気のお姉さんーーー
琴葉のことを最初に見た時に、杏奈を乗っ取った克哉は
そう思ったー

だがーー
違ったーーー

長男・雅人の部屋を思いっきり開けると、
「ー朝ごはんの時間よ!家族をないがしろにして何考えてるの!」と、
ヒステリックに叫ぶ長女・琴葉ー。

「ーんだよ!?うっせーな!
 こいつが、俺の動画にケチつけやがったから!」
パソコンを指差しながら反論する長男・雅人ー。

しかしーー

「ーーあはっ!うわっ!すごっ…!」
ゆるふわな次女・姫香が隣の席で笑いながらスマホを見ているー。

杏奈がそれを横目で見ると、
”兄・雅人”のライブ配信の映像が表示されていたもののー、
姉の琴葉に配信用の道具を次々と投げ飛ばされて、
映像が途切れる様子が見えたー。

引きずられるようにして、部屋から連れて来られる雅人ー。
雅人は「ーーくそっ…!ふざけんじゃねぇよ!」と、声を荒げるもー、
無言で姉・琴葉に睨まれて、急に黙り込んでしまうー。

”ーーー”
杏奈は、そんな様子を観察しながら、
”この家は、あの長女が仕切ってるわけかー”と、そう心の中で呟くー。

母親は酔っ払い浮気女だしー、
父親は昨日から苦言一つ言わない、よく分からないやつー。

「ーーーー」
杏奈は、長女である琴葉の方をチラッと見つめると、
”俺の欲望のライフの邪魔になりそうな女だなー”と、
心の中で改めて、そう呟いたー。

朝食後ー、琴葉から呼び出された杏奈は、
こっぴどく、朝食を先に食べ始めたことを叱られるー。

「ー”家族”は人生で何よりも優先するべきものなのー。
 分かるでしょ?」
琴葉はそこまで言うと、さらに、
「ーそうそう、昨日、どこに行ってたのー?」と、
昨日ー、杏奈が自ら命を絶とうと外出していた際のことを
再び聞き始めるー。

昨日は、次女の天然そうなゆるふわツインテール・姫香が
乱入したことで助かったものの、この調子だと
答えるまで永遠に問い詰められそうな気がするー。

がー、まさか”お前の妹は俺が乗っ取った”とは言えないー。
杏奈を乗っ取っている克哉から見ても、この姉は、ヤバいー。

「ーーそっかそっかー隠し事するんだねーわたしにー」
琴葉は、そう言いながら頷くと、
「ーー”家族のことー、杏奈は大切にしてくれないんだね」と、
ガッカリした様子で頷くー。

「ーーえ…あ、いやー」
杏奈が戸惑いながら言うと、琴葉は、
「ーいいよー。答えたくなければー」と、優しい笑顔を浮かべるー。

その上で、言葉を口にしたー。

「ーーーわたしがこれからちゃんと”教育”するからー。
 家族の大切さを、杏奈にも分かってもらえるようにー」

琴葉のその言葉に、杏奈はゾッとするー。

美人な”お姉ちゃん”の顔が間近にあるのに、
興奮してゾクッとするよりかは、
恐怖でゾクッと感じるー。

杏奈は、タラタラと汗を流しながら部屋の外に出て、
そのまま一旦部屋に戻ろうとするー。

がーーー

「ーおいっー」
背後から、長男で動画配信者の”ニート”・雅人に
声を掛けられてしまうー。

杏奈は”こいつはこいつで面倒臭そうな兄貴だよなー”と
思いながら振り返るとーー、
突然、雅人の拳が杏奈の腹部に直撃したー。

「ぐおっ!?」
女子っぽくない声を出してしまう杏奈ー。

雅人はいきなり、有無を言わさず、杏奈にさらに拳を
叩きつけると、そのまま蹴りも加えて来るー

”お、おいおいーな、なんだよコイツーー!”
杏奈が反撃を試みるもー、
今は”克哉”の身体ではなく、か弱い少女の身体ー。

あっという間に雅人に抑え込まれて、
さらに殴りつけられてしまうー。

「ーーは~~~~は~~~~~~…
 ふざけやがってーー
 あのクソ姉貴ー」

雅人はそう吐き捨てると、
ボロボロになった杏奈に唾を吐き捨てて
そのまま部屋に戻っていくー。

引き籠りで、時に暴力も振るう雅人ー。
が、自分よりも”強い”人間には手を出せず、
姉の琴葉に怒られるといつも、主に杏奈に八つ当たりをしているー。

「ーーーー……ぅー」
杏奈は、クソがー”と、思いながら起き上がろうとするー。

すると、今度は次男の”男の娘”優吾がやってきてー、
苦笑いしたー。

「ーーお兄ちゃんってば乱暴だよねー。
 大丈夫?」

優吾の言葉に、杏奈は少し安堵の表情を浮かべながら
男の娘・優吾の方を見つめるー。

「ーう、うんー…あ、ありがとうー」
杏奈が差し伸べられた手を握ると、優吾はにこっと微笑むー。

本当に、かわいいー。
杏奈を着ている克哉はそんな風に思うー。

がーーー

「ーーいいよねーー
 ”本物の女”はーー」
優吾が笑みを浮かべたまま、呟くー。

「ーそうやって、か弱い振る舞いをしてれば、
 みんな助けてくれるー。
 ずるいよねぇー」

優吾は、それだけ言うと
杏奈から手を放して、言葉を続けたー。

「ーーーーーーいいなぁーーー…
 どんなに、望んでも
 どんなに可愛くなってもー
 わたしには手に入らないもの、持っててー」

男の娘・優吾はそう言うと、
杏奈の方を撫でまわすように見つめるー。

「ーーーねぇ…杏奈の子宮ーちょうだいー?」
耳元で囁く優吾ー。

ゾワッ、と寒気を感じる杏奈ー。

「ーーーーーーー」
その目つきは”普通”ではなかったー。

優吾はニコニコしながら杏奈から離れると
「なんてねー。冗談に決まってるでしょ!」と、微笑むと、
そのまま部屋の中へと戻っていくー。

「ーーーーー」
呆然とする杏奈ー。

束縛姉に、暴力ニート兄ー、嫉妬+男の娘の兄ーー、
よく分からない父親に、浮気酒乱母親ー…

唯一、ゆるふわツインテールの天然そうな次女・姫香だけは
まともに見えるけれどー、
他の家族がーーヤバすぎるー。

”この女の言ってたことーー…
 嘘じゃなかったのかー”

杏奈は、そう思いながら部屋へと戻るー。

今日はちょうど日曜日ー。
極力、雨宮家と関わらないように部屋の中で過ごした杏奈を着た克哉ー。

がーーー
「ーーあぁ…くそっー…」
杏奈は、胸を揉みながらため息をつくと、
”こんな家じゃ、十分に好き放題できねぇじゃねぇか”と、
心の中で呟くー。

苛立った様子で、深夜にトイレに行こうとするとー、
ふと、次女・姫香が部屋から出ていくのが見えたーーー

「ーーーーー」
杏奈は、姫香がニヤニヤしながら出て行ったのが気になって、
部屋の方を見つめるー。

なんとなくーーーー
特に理由はなかったー。

が、姫香の部屋が空いたままになっていたのを見て、
杏奈を乗っ取っている克哉は、その部屋の中に入るー。

するとー、
その机の上にはーーー

”雨宮家絶滅計画”ー
と書かれたノートが置かれていたー。

そしてーー、
その横には”家族全員分の藁人形”が置かれていてー、
そのうちの一つには、姫香から見れば妹の”杏奈”の名前が
書かれていたー。

「~~~~~~~!!!!」
ビクッとして、慌てて部屋から出る杏奈ー。

やがて、部屋に戻ってきた姫香ー。
身を隠しながらその様子を見つめていた杏奈は、
姫香の部屋の前まで行き、
中の様子に聞き耳を立てるー。

”こ~んな、ゴミみたいな家族ー
 み~んな、死んじゃえばいいのにー”

ゆるふわツインテールな次女…姫香の”本性”ー

姫香は家族の破滅を望んでいるー。
この、狂っている雨宮家の破滅をー。

「ーーーーー~~~~~」
呆然としながら、杏奈はそのまま家を飛び出すー

「くそっ!ふざけやがって!
 こんな家族がいるんじゃ、この身体を楽しめねぇ!」
杏奈は家を飛び出すと同時に、怒りの形相で
そのまま人目につかないところに移動するー。

「ーーーーー」
チッ、と舌打ちをしながら杏奈は、自分の後頭部を触ると、
そのままービリッと、杏奈の頭をめくるようにしてー、
中から”克哉”が姿を現したー。

杏奈の皮を脱ぎ捨てて、
そのまま”人を皮にする注射器”を手に、脱ぎ捨てた杏奈に
それを突き刺すー。

「ーーーお前の身体なんて使ってられるかー」

最初は、甘く見ていた克哉ー。
しかし”雨宮家”は狂っているー。

わざわざこんな狂った家族を持つ女の身体を使う必要などないー。

そう思いつつ、杏奈を人の姿に戻すと、
そのまま足早に立ち去ろうとする克哉ー。

だがーーー

「ーーー逃げるんだ?」
背後から、意識を取り戻した杏奈の声がしたー。

「ーー!?」
克哉が振り返ると、よろよろと杏奈は立ち上がるー。

「ーーーー…わたしの家族、狂ってたでしょ?」
死んだ目で笑う杏奈ー。

「ーー……ーーあぁー想像以上だったよー。
 悪いが、お前の身体にはもう用はー」
克哉がそう言おうとすると、杏奈は呟いたー。

「ーーーーー臆病者ー」
とー。

「ーーあん?」
克哉が不満そうに言うと、杏奈は続けるー

「ーー…あんなに嬉しそうにわたしの身体を乗っ取った癖にー…」
杏奈はそう言うと、近くに落ちていた自分のスマホを確認しながら
思わず笑うー。

「ーまだ”1日”しか経ってないしー…
 ーーーもう、逃げ出すの?」

とー。

「ーーーあぁァ???」
克哉が不満そうに声を上げると、
杏奈は言ったー。

「ーーーもし、このまま逃げるなら、
 あなたのこと、警察に通報するー

 乗っ取るとか、よく分かんないけどー、
 とにかく通報するー
 名前は、昨日聞いたしー」

杏奈のその言葉に、克哉は怒りの形相を浮かべるー。

「ーーー…なっ…ふ、ふざけんじゃねぇ!」
克哉の言葉に、杏奈は「じゃあ、口封じでわたしを殺す?」と、
少しだけ笑みを浮かべながら言うー。

「いいよー別に。わたしは死のうとしてたんだしー。
 今もその気持ちに変わりないしー。
 でも、そうすればあなたは殺人犯ー」

杏奈の言葉に、克哉はさらにギリギリと歯軋りをするー。

そんな克哉を見て、杏奈は少しだけ微笑むと、
言葉を続けたー

「ーーねぇ…わたしと組んでみる気はないー?
 わたしが、色々アドバイスをしてあげるからー、
 あなたは、わたしの身体を使って、あの家族たちを
 どうにかするのー。

 もちろんーー
 わたしのことは、どんな風にしてもらっても構わないからー。

 どうせ、死のうとしてたんだしー」

杏奈がそこまで言うと、
克哉は少しだけ表情を歪めるー

”わたしがアドバイスしてあげるから、
 わたしの身体を使って、わたしの家族をどうにかして”と、
雨宮 杏奈はそう言ってるのだー。

「ーーー”雨宮家”はホント、イカれてるなー」
克哉はそう言いながら、杏奈を見つめると、
杏奈は「でしょ?だから、わたしは死にたいの」と、笑うー。

がー、克哉も笑みを浮かべると、
「ーーお前も含めて、イカれてやがるー」と、
そう言葉を口にするー。

そんな言葉を聞いた杏奈は、少しだけ笑うと、
「ーーわたしにアドバイスを聞きたいときは、
 こうやって、わたしを元に戻してくれればいいからー」と、
そう言葉を口にした上で、
克哉の前まで歩いて来たー。

「ーーさぁ、わたしをまた乗っ取って」
杏奈の言葉に、克哉は「ーーイカれた野郎だー」と、
そう言葉を口にすると、
再び、”杏奈”を皮にしたー。

この日からー、克哉は”杏奈”と共に
雨宮家に立ち向かっていくことになるのだったー

④へ続く

第4話「共闘」

人を皮にする力で、
他人を着て、新たな人生を堪能するはずだった男・克哉ー。

しかし、乗っ取った相手…杏奈の家族は、
両親から、兄・姉にいたるまでー、
”狂気”に染まった曲者揃いだったー。

最初は、そんな家族を前に余裕の表情を浮かべていた
杏奈を乗っ取った克哉だったものの、
2日目にして嫌気が差し、杏奈の身体を解放して
そのまま立ち去ろうとしたー。

がー、正気を取り戻した杏奈から
”わたしと組んでみる気はない?”と言われた克哉は
再び杏奈を乗っ取りー、”雨宮家”へと戻るのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…」
杏奈は、表情を歪めるー。

杏奈の身体を解放し、そのまま立ち去るつもりだった克哉は、
杏奈の身体で、深夜に雨宮家から飛び出してきてしまったー。

恐らく、あの束縛姉ー…
長女の雨宮 琴葉が今頃は怒り狂っていることだろうー。

「チッー…面倒くせぇなー」
杏奈はそう呟くと、髪を掻きむしりながらため息を吐き出すと、
杏奈を一旦脱いで、そのまま”人間”の状態に戻したー。

「ーーーー……え?」
正気に戻った杏奈が少しだけ表情を歪めるー。

「ーー………”あれから”何日ぐらい経ったのー?」
杏奈のその言葉に、
克哉は「いや、まだ1時間も経ってねぇ」と、そう言葉を口にすると、
杏奈は不満そうに「ーーー何?もう逃げ出すつもりなのー?」と、呟いたー。

「ーいや、そうじゃないー。
 ”手を組む”ってさっきお前の方から言ったんだろー?」
克哉がそう言うと、杏奈は「それは、そうだけどー」と、そう呟くー。

「ーーさっそく、力を借りたいー。
 あの一番上の姉ー…たしか、琴葉だったかー?
 夜中に飛び出して来ちまったからー、
 今、帰ったら絶対にあの女がブツブツ言いだすに決まってるー。

 ー何かいい対策はないか?」

克哉が言うと、杏奈は「琴葉お姉ちゃんねー…」と、そう頷くー。

「ーーまぁでも、琴葉お姉ちゃんは
 ”家族”の中でも”分かりやすい”からー
 比較的扱いやすいほうかなー」
杏奈はそう言いながら、
「ひたすら謝っておけば大丈夫ー。うるさいことは言われるケド、
 それ以上のことは琴葉お姉ちゃんは、してこないと思うからー」
と、そう付け加えたー。

「ー”あの人”、弟とか妹の涙に弱いからー
 とりあえず、泣いてみて。
 そうすれば、終わるー」

杏奈は少しだけ笑いながらそう言ったー。

「ーー…チッーー…ったく、お前の家族はどうなってやがるんだー」
克哉がそう言うと、杏奈は「そんなこと知らないしー。」と、
うんざりした様子で呟くー。

「ーーーーでも、わたしからすれば、人の身体を乗っ取るとかいう
 あなたも十分狂ってると思うけど」
そう言葉を付け加える杏奈に対して、
「ーへへーまぁ、それは違いないー」と、克哉は開き直った様子で頷くと、
杏奈は「ーわたしの身体を乗っ取ってる間、何をしてるの?」と、
少し興味深そうに言葉を口にしたー。

「ーーん?へへー
 決まってんじゃねぇかー
 胸を揉んだり、エロイことしたりー、色々となー
 
 ってか、お前、結構いい声出すよなー、
 気持ちよくなってる時とかー」

克哉がそう言うと、杏奈は「あっそー」と、それだけ言葉を口にしたー。

「ーリアクション薄いなオイー」
克哉が思わずツッコミを入れると、杏奈は
「ー死のうとしてたんでー、別にどうでもいいしー」と、それだけ呟くー。

「ーーま、まぁそりゃそうなのかー…?」
杏奈の気持ちが分からず、困惑する克哉ー。

「ーー…ーじゃ、話が終わったらさっさとわたしを皮にしてー?」
杏奈はそう言うと、自ら”皮”にされようと近付いて来るー。

「ーー…くくー…やっぱ”雨宮家”はイカれてるぜー。
 お前も含めて、なー」

克哉がそう言うと、杏奈は不気味な笑みを浮かべながら
「ーわたしは、雨宮家で唯一まともな子なんだけどー?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーへへーーーーやっぱやべぇ奴だぜー”お前も”ー」
克哉はそう言うと、杏奈の首筋に”人を皮にする注射器”を
打ち込んで、再び杏奈を皮にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーどこに行ってたのー?」
帰宅すると同時に、玄関前に腕組みしながら
待ち構えていた長女の琴葉ー。

優しそうな雰囲気のお姉ちゃんー…という見た目ではあるものの、
最近は”過保護すぎる雰囲気のお姉ちゃん”にも見えるような、
そんな気がしてきたー。

「ーーご、ごめんなさいー」
杏奈を再び着た克哉がそう言うと、
「ーーごめんなさいじゃなくて、どこに行ってたの?」と、
長女・琴葉はさらに言葉を口にするー。

「ー杏奈は、どうしてお姉ちゃんを困らせるのー?
 どうして、”家族”をないがしろにするのー?」
琴葉の怒りは止まらないー。

「この世に、家族以上に大切なものなんて存在しないー!
 杏奈は優先順位を間違ってるー」

琴葉の”言葉攻め”が続く中ー、
杏奈は、少しだけ表情を歪め、”反論”しようと口を開くー。

がーーー

「口応えしない!!
 悪いのは、杏奈なんだから!
 家族を大切にしないなんて、あり得ないし、
 おかしいよ!!」
と、琴葉は、さらに叱るような口調で言うー。

深夜だと言うのに、長女・琴葉の説教はひたすらに続くー。

がーーー

”ー泣けば、いんだよなー?”
杏奈を着ている克哉は、心の中でそう呟くと、
「ーーお姉ちゃんー…」と、心底悲しそうな表情を浮かべながら
目から涙をこぼし始めたー。

「ーーー!」
説教を続けていた長女・琴葉が、途端に言葉を止めると、
「ーーあ、杏奈ー…泣かないで?ごめんねー?」と、
申し訳なさそうにしながら近づいて来るー。

「お姉ちゃんも言いすぎちゃったー。ごめんー本当にごめんねー」
何度も何度も、謝罪の言葉を口にする琴葉ー。

”へへー…この女の言う通り、こいつは妹の涙に弱いみたいだなー”
ニヤッと心の中で笑う杏奈ー

琴葉の説教は終わりー、
”泣かせてごめんねー”と、今後は琴葉に抱きしめられる杏奈ー

”うへへへへへー”
女に抱き着かれて、思わずニヤニヤしてしまう杏奈ー。

がー、そんな杏奈のニヤニヤには気付かず、
琴葉はそのまま「ーー今日のことは、もういいからー」と、
そう言葉を口にすると、杏奈から離れるー。

「うんー心配かけてわたしこそごめんねー」
と、それだけ言葉を口にすると、
嘘泣きで琴葉の説教を乗り越えた杏奈は、
そのまま自分の部屋へと戻って行ったー。

「ーーーーーーーーーーーー」
が、一人残された姉・琴葉は
指についた”杏奈の涙”を見つめると、
それをペロリと舐めて、静かに呟いたー

「ーー”嘘泣きの味”ーーーー…」
涙を舐めた琴葉は、ギリッと歯軋りをすると、
「ーこの世界で何よりも大切なのは”家族”よー」と、
一人、不満そうにそう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーへへへへっ♡ ぁ…♡」
部屋に戻った杏奈は、一人、自分の身体で
お楽しみを繰り返していたー。

あまりの気持ち良さに、ビクンビクン震えながら
最後まで楽しむと、
そのまま、「やばすぎだろー…これー」と、
嬉しそうに呟くー。

口から洩れる甘い吐息ー
それを聞くだけで、さらにゾクゾクと興奮してしまうー。

それでも、身体はまだ”快感”を求めているー。
男の身体では、こんなことないのにー、と思いながら
杏奈を着ている克哉は、再び欲望に身を投じていくー

”ククククー
 この女ー…雨宮 杏奈の力を借りることができりゃー
 こんな家族なんて、大したことないぜー…”

杏奈の助言で、長女・琴葉の執拗な追及を逃れた克哉は、
表向きはー、杏奈と”手を組みながら”ー、
他の家族の弱点や対処法を把握ー、
最後にはこの狂った家族を逆に支配してやろうと、
そんな風に思い始めるー。

「ーークククククー見てろよイカれた家族どもー」
杏奈はそう呟くと、椅子に座って足を組みながら笑みを浮かべるー。

「ー雨宮家の支配者は、俺だー」
そう呟くと、杏奈は邪悪な笑みを浮かべーー
そして、欲望の時間を再開するーー

再度、最後まで楽しんだ杏奈は、
ふと”そういやー…”と、杏奈本人に確認しておきたいことを
思い出して、また”杏奈”を脱いで、そのまま杏奈を人間の姿に戻したー。

「ーーーーー」
正気に戻った杏奈は、少しだけ表情を歪めると、
「ーーー…わたしの身体で、何してたのー?」と、
自分の身体に違和感を覚えるー。

「ーーん?分かるのかー?へへー
 ちょっと一人で楽しんでたんだよー」
克哉が小声で言うと、杏奈は、
「ー…そんなに楽しいー?」と、不快そうに呟くー。

「ーー女の身体でそういうことしたいって気持ちー、
 わたしには理解できないんだけどー…
 別にーー気持ち良くもなんともないしーただ時間の無駄って感じだし」

杏奈はそう言葉を口にすると、
克哉は「男には、たまらねぇんだよ」と、そう呟くー。

「ーふぅんー。理解不能ー」
杏奈は、それだけ言葉を口にすると、
「っていうか、ここ、わたしの部屋だけどー…
 あなた、馬鹿なのー?」と、戸惑いの表情を浮かべるー。

「何がだよー?」
克哉が言うと、杏奈は「家族に見つかったらーーーー
終わりだよ?」と、そう言葉を口にするー。

「ーーー…誰か来たら、すぐにお前を着るから問題ねぇよ」
克哉のその言葉に、杏奈はため息をつくと、
「で、今度は何を聞きたいのー?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーー…」
克哉は、ニヤリと笑うと、長女・琴葉からの追求は
杏奈の助言で無事に退けたことを杏奈に報告するー。

「ー俺とお前が組めば、最強ってことだー」
克哉が得意気な表情で言うと、
杏奈は「ーーー単純な人ー」と、ボソッと呟いてから、
「ーわたしの家族は、そんな簡単じゃないからー」と、
言葉を口にするー。

「ーー…へへへー
 まぁいいー、で、俺はお前と組んでどうしたいんだー?」

克哉は改めて問うー。

杏奈を解放して、逃げようとした克哉を呼び止めー、
自分の身体を”これからも使っていい”と、言った上で
”わたしの家族をどうにかしてほしい”とお願いしてきた杏奈ー。

が、具体的に”どうしてほしい”のかはまだ聞いていないー。

「ーーーー別にー…
 わたしが死にたくなるぐらいにどうしようもないあの人たちを、
 困らせてやりたいだけー」
杏奈はそう言うと、
「ーあなたが、わたしの身体を使ってれば、
 何か、あの人たちが困ることがこの先、色々起きていくと思うしー」と、
そんな言葉を口にしたー。

「ーーへへー…そうかそうかー」
克哉は、杏奈の方を見ながら笑うー。

曖昧な返事で、杏奈の本心は分からないー。

がー、それでもこうして”手を組もう”と言って来ているのだから
しばらくは様子を見ようと思うー。

「ーー…お前の家族、破滅するかもしれねぇぞー?
 それでも構わないんだなー?」

克哉は今一度確認するー。
このまま、杏奈を乗っ取る日々が続けば、
最終的に、あの家族がどんな結果になるか、
克哉自身にも予測はつかないー。

「ーー何回も言わせないでー。
 わたしはどうせ死ぬつもりだから、好きにしてー
 最後に、あの人たちが困る姿を見れるなら、それで満足ー」

杏奈は迷い一つなく、即答するー。

「ーー万が一、お前の家族の誰かが死んでも、構わねぇんだなー?」
克哉が言うと、杏奈は「わたしの身体で、誰かを殺すってこと?」と、
そう確認してくるー。

克哉は”ま、さすがにこんなこと言えばビビるよな”と、思いつつも
「ーー可能性は0じゃない」と、そう言い放つー。

杏奈の人生を乗っ取るつもりなら、
”杏奈を殺人犯にしてしまう”ことは望ましいことではないー。

しかし、やむを得ない場合はーー…

「ーー別に構わないけど」
あっさり答える杏奈ー。

その目にはーー”輝き”はなかったー。
全てに絶望しているかのような、深い、深い闇を感じるー

ゾワッとする克哉ー。

「ーーやっぱ…お前”も”イカれてるぜー」
克哉はそう言うと、杏奈は少しだけ笑うー。

少し間を置いてから、克哉はため息をつくと、
「で、”家族”について、色々聞いておきたいんだー
 誰が危険で、誰が話が分かるやつなのかー。
 それとー、それぞれの対処方法」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーーーー…いいよ」
杏奈は少し考えてから頷くと、
家族について説明を始めるー。

杏奈によれば、長女の琴葉と、
長男の雅人は”危険”だけど”分かりやすい”とのことだったー。

束縛姉の琴葉と、配信者でこの前は暴力も振るってきた雅人ー。
確かに、どちらも危険だー。
が、琴葉は家族を大事にする素振りを見せたりすればご機嫌だし、
涙には弱いという決定的な弱点があるのだと言うー。
また、兄の雅人はひたすらおだてたり、配信に協力さえしていれば
絶対に暴力を振るっては来ないし、
機嫌の悪い時は、近寄らないようにすれば良いのだと、杏奈は説明したー。

一方、次男と次女は、一見フレンドリーだけど、危険なのだというー。
次男の”男の娘”優吾は、異様に嫉妬深く、特に琴葉・姫香・杏奈に
対しては度々敵意を見せるのだとかー。
また、”超”がつくほど陰険なのだとも、杏奈は言うー。

次女・姫香はゆるふわな感じがあるものの、
時折爆弾発言をしたり、平気で家族の輪を乱すことを言ったりするため
”悪意”はないけど、滅茶苦茶厄介で、”扱い”が難しいー

杏奈はそこまで言うと、
「ーー…でも、味方につけられるとすれば、姫香お姉ちゃんかなー」
と、そんなことを口にするー。

一番歳が近く、表立って敵意はないー。

杏奈のそんな説明に、
克哉は表情を歪めるー。

”雨宮家絶滅計画”ー

姫香の部屋に、そう書かれたノートと、
藁人形があったことを思い出す克哉ー。

藁人形は家族全員分用意されていて”杏奈”の分もあったー

”ーーこいつ、あの姫香とかいう子の、本性を知らねぇのかー?”
克哉が表情を歪めながら杏奈を見つめるー。

そしてー、口を開くー。

「ーーー…なぁ、その姫香ってやつー」

がーー

ガサッー…

部屋の外の階段の方で物音がしたー。

「ーー…!」
杏奈もそれに気づくと「早くわたしを乗っ取って」と、小声で呟くー。

克哉は「言われなくてもそうするさ」と、そう言い放つと
そのまま杏奈を皮にして、再び杏奈を着こむー。

「ーーー」
幸い、誰かがトイレにでも行っただけのようでー、
杏奈になった克哉はため息をつくー。

「ーーー……」
鏡の方を見つめる杏奈ー。

「ーー…この家族にやられっ放しってのもむかつくしー、
 こいつの身体はやっぱ俺好みだしーーーー
 必ず全部、俺の思い通りにしてやるぜー」

杏奈を再び乗っ取った克哉は、
少しだけ邪悪な笑みを浮かべるとー、
「ーこの身体も、この家も、俺のものだー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーー」
杏奈は、ふと、カレンダーを見つめるー。

”そういや、明日から学校行かないとだよなー?”
そう呟く杏奈ー。

”ま、この家にいるよりかはいいかー…
 学生生活をエンジョイするのも悪くねぇ”

そんなことを思いつつ、
杏奈として立ち上がるとー、
”さて、まずは家族の中から上手く手駒にできそうなやつを探すかー”と、
そう考えながら、笑みを浮かべたー…。

⑤へ続く

第5話「”雅人”」

一度は”雨宮家”から逃げ出そうとした克哉ー。

しかし、正気を取り戻した杏奈から
”共闘”を持ちかけられた克哉は、
本気で”雨宮家”の狂った家族たちに立ち向かいー、
その面々を屈服させてやろうと動き出すー。

”まずは、上手く手駒にできそうな家族がいればー”と
考える克哉が、起こした行動はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーまずは、兄貴を”攻略”するー」

朝ー。
克哉は”杏奈”を、元に戻した状態で、杏奈と作戦会議をしていたー。

杏奈によれば、深夜0時過ぎ~学校のない日は、朝の9時までは
まず、誰も部屋にはやってこないのだと聞き、
その時間帯を”作戦会議”の時間にすることに決めた克哉ー。

早速、杏奈の皮を脱いで、杏奈を正気に戻すと、
克哉はそう報告したー。

「ーーーーーどっちの?」
杏奈が、相変わらず愛想なくそう言葉を口にするー。

”杏奈の兄”は、二人いるー。
長男で現在は配信者とは名ばかりのほぼ”ニート”の雅人と、
次男で”男の娘”の優吾だー。

この”家”を支配するためには、まず”手駒として利用できるやつ”を
増やしていくー。
つまりは、一人一人攻略していく必要があると、そう考えたー。

その結果ー

「ー暴力ニート野郎のほうだー」
克哉がそう言うと、杏奈は「雅人お兄ちゃんねー」と、それだけ
言葉を口にしたー。

長男の雅人は、暴力的な一面もあり、大学中退後に
迷惑系の配信を行いながら、実質的にニートのような
状態で過ごしているー。

が、一方で、適当に煽てておけば、
基本的にご機嫌なのだと、杏奈から説明を受けているー。

「いいと思うよー。
 ”優吾”お兄ちゃんのほうは危険だからー、
 その選択は間違ってないと思うー。」
杏奈はそれだけ言うと、
「できれば、姫香お姉ちゃんのほうがいいとは思うけど」と、
最初に”攻略”するなら、次女のゆるふわ系ツインテールの
姫香が良いのではないかと、そう言葉を付け加えたー。

がー

家族全員分の藁人形に”雨宮家絶滅計画”と
書かれたノートが部屋に置かれていたのを見た克哉は、
”こいつはやべぇ”と、姫香は後回しにしていたー。

「いや、俺も男だからなー
 男の気持ちの方が分かりやすいってことだ」

克哉がそう言うと、杏奈は「ふぅん」と、言葉を口にするー。

杏奈はどうやら、次女・姫香の本性は知らないようだし、
”何かの切り札”にする意味でも、まだこのことは伝えなかったー。

「ーーで、どうやって、雅人お兄ちゃんを手駒にするの?」
杏奈が言うと、克哉は笑みを浮かべたー。

「ーまぁ見てろー
 ああいう奴は、”俺のずる賢さ”と、”女の身体”があれば、
 簡単に落とせるさー」

克哉の言葉に、杏奈は「わたしの身体で何するつもりー?」と、
表情を歪めるー。

「別にいいだろ?どうせ死ぬつもりなんだろ??」
克哉が言うと、杏奈は「イヤとは言ってない」と、それだけ呟くー。

「ーククー変な女だー。
 まぁいい、さぁそろそろその身体をよこせ」

克哉がそう言いながら”人を皮にする注射器”を手にすると、
杏奈は「どうぞー。っていうか、ずっと使っててもいいんだけど」と、
それだけ言葉を口にすると、
「ーへへー。”家族”を攻略したらそうするさ」と、笑みを浮かべるー。

「ーーふぅんー」
そんな杏奈の首筋に”注射器”を突き立てると、杏奈は再び”皮”に
なっていくー

「ーこの、”皮”になる時の感触ーーー けっこう きもいー」
杏奈は皮になりながらそう言葉を口にすると、
そのまま意識が消えて、喋らなくなったー。

克哉はそんな様子を確認すると、杏奈を着て、そのまま立ち上がるー。

「ーへへー今日もいい身体だぜー」
”朝の挨拶”と言わんばかりに胸を揉みー、
髪のニオイを嗅ぎ、指をペロッと舐めると、
「すべてを手に入れる日が楽しみだー」と、
乗っ取られた杏奈はそう言葉を口にしたー。

明日からは”学校”もあるー。
まずはその前に長男・雨宮 雅人を攻略したいー。

「ーーー」
早速部屋から出た杏奈は、兄・雅人の部屋へと向かうー。

”「ってかさー、杏奈ーー
 俺のチャンネルに出ねぇ?
 杏奈がメイドコスとかで配信に出てくれりゃ~
 ”夢の雨”の登録者数も増えると思うんだけどなぁ」”

初日に、雅人にはそう言われているー。

そのことを思い出しながら、杏奈は笑みを浮かべるー。

「お前は俺の欲望のための”補給要員”ー
 そして、忠実なしもべにしてやるー」

と、そう呟きながらーー。

「ーーへへへへ!お前らの批判なんて
 痛くもかゆくもないね!」

「ーーお~~お~~!また炎上してらぁ!
 ほらほらもっと燃えろ燃えろ燃えろ!
 燃えれば燃えるほど、再生数が増えるぜ!!」

兄・雅人の声が部屋の中から聞えて来るー。

”こいつ、絶対女だったら、
 自分でコスプレしたり、エロい方向に走って
 再生数稼ぎそうだよなー”

杏奈を乗っ取っている克哉は、兄・雅人のことを
そんな風に思いながら、笑みを浮かべるー。

そしてー、部屋をノックしたー。

「雅人お兄ちゃんー。ちょっといい?」
杏奈がそう言葉を口にすると、
雅人は「ん?その声は杏奈かー?へへへへーいいぜ!」と、
嬉しそうに声を発したー。

「ーーー」
杏奈は”あえて”兄の雅人が好きそうな
短いスカート姿で、部屋に入ると、
雅人は嬉しそうに笑みを浮かべるー。

「ーーへへー杏奈から俺の部屋に来るなんて珍しいなぁ
 何の用だよ?」

パソコンが並ぶ机を前にして設置された
高そうなゲーミングチェアに座っていた雅人が、
ヘッドセットを机に置きながら微笑むー。

「ーーーーー」
杏奈はニヤッと笑うと、
「ー”メイド服”買ってくれるー?」と、そう言葉を口にするー。

「ーえっ!?」
雅人は少し驚いたような様子を浮かべながら、
顔を赤らめるー。

”ククーこいつ、かわいいもんなー
 こいつのメイド服姿を想像して、赤くなる気持ちは分かるぜー”

杏奈の中にいる克哉は邪悪な笑みを浮かべながら
そう呟くと、言葉を続けるー。

「ーーーーこの前、言ってたよねー?
 わたしがメイド服着て、お兄ちゃんのチャンネルー…
 ”夢の雨”だっけ?
 それに出れば再生回数伸びるかもってー」

杏奈がそう言うと、雅人は子供のように嬉しそうな表情を
浮かべると、
「えっ!?えっ!?!?マジ!?着てくれるのか!?」と、
そう叫ぶー。

「ーーうんー」
にこっと笑いながらも、悪女のような表情を浮かべる杏奈ー。

「ーーその代わりー、お願いがあるのー」
杏奈の言葉に、雅人は「へへー何でも聞いてやるぜ!」と、
高らかに宣言するー。

「ーメイド服だけじゃなくて、わたし、色々買って欲しい服があるのー
 わたしがお願いしたもの、何でも買ってくれる?」

杏奈が顔を赤らめながら、邪悪な笑みを浮かべるー

”ククーーー
 この馬鹿な兄貴がいれば、俺はコスプレし放題ってわけだー”

杏奈がそう思っていると、
雅人は「ーーほ、他にもー!?」と、ドキドキした様子で
顔を真っ赤にするー。

”お前みたいなバカー、俺は好きだぜー?
 単純で扱いやすいし、俺の手駒にふさわしいー”

杏奈の邪悪過ぎる表情にも気付かぬまま、
雅人は「何がいい!?バニーガールか!?チャイナドレスか!?」と、
ネットショップを開きながら叫ぶー。

「ーーーー」
杏奈は、そんな雅人にわざと近付くと、
耳元で囁くー。

「ーーバニーガールも、チャイナドレスも全部着てみたいなー
 それと、巫女服ーーあと、ラバースーツもいい?」

とー。

「ーーー~~~~!も、もちろんー
 へへへー杏奈ーー…今日は妙に積極的だなー」
雅人がそう言うと、
杏奈は「お兄ちゃんの配信見て、わたしも力になりたいって、
そう思ってー」と、可愛らしく微笑むー。

「ーみ、み、み、み、見てくれたのか!?」
心底嬉しそうな雅人ー。

「うん!さすが雅人お兄ちゃんって感じー!
杏奈がニコニコしながら言うー

”ーーって、さすがに今のは棒読みすぎたかー?”
ニコニコしている”表”の顔とは裏腹に、
心の中ではそんな言葉を口にする杏奈ー。

”クソつまんねぇお前の動画を可愛い妹が褒めてやってるんだー
 ククーもっと喜べよー”

杏奈の中にいる克哉はそんな言葉を口にするー

その言葉に、雅人は
「へへへへーやっぱ杏奈は可愛いなぁー」と、
嬉しそうに笑いながら、杏奈の頭を撫でるー

ーゾワッとする杏奈ーー

”ーーっ…
 気色悪い奴に触られるのって思ったよりきついんだなー
 自分の身体の時よりもキモさ倍増だぜー

 いやーー…それともこの女の身体が勝手に反応してるのかー?”

そう思いつつも、
”このバカ兄貴を手駒にするためだー。我慢しろ、俺ー”と
心の中で自分に言い聞かせるー。

「あ、あとそうだー
 もう一つのお願いなんだけどー」
杏奈がそう言うと、雅人はすっかりご機嫌な様子で
「へへー何でも言ってくれよ」と、そう呟くー

「ーーー”他のみんな”から、わたしのこと守ってくれるー?」
杏奈が、わざと弱弱しい仕草をしながらそう言うと、
雅人は少しだけ戸惑いの表情を浮かべながらも、
「ーへへー当たり前だー。」と、そう呟くー。

がー、杏奈は少しだけ表情を歪めるー。

雅人よりも”年上”の子供たちは長女の琴葉だけだー。
家族を異様に束縛する琴葉からも、ちゃんと守ってくれなければ
”手駒”として役に立たないー。

「琴葉お姉ちゃんからも、守ってくれるー?」
杏奈がそう確認すると、
雅人の顔色が途端に悪くなるー

「ーーーそ、そりゃ、もちろんー」
やりたい放題の長男・雅人ー。
しかし、姉・琴葉のことだけは何故か恐れていて、
服従しているー。

「チッー」
杏奈もそれを読み取ると、雅人には聞こえないように舌打ちをするー。

がーーーー
”まぁ、これでも上出来かー”と、心の中で呟くと、
ひとまず、”雅人”は利用できそうだと、そう確信して笑みを浮かべるー

「じゃあお兄ちゃんー、さっきお願いした服、
 買ってねー!楽しみにしてる!」
杏奈のその言葉に、雅人は「ホントに、俺の前で着てくれるんだよな!?」と
嬉しそうに再確認してくるー。

”あぁー、着てやるぜー
 俺もエロいのは、どんどん着てみたいからなーーククー”

杏奈の中にいる克哉は、そう思いつつ、
”こいつは、俺のコスプレを買ってもらうための財布ー
 そして長女以外からの盾だー”と、そう考えながら
邪悪な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「♪~~~~」

兄・雅人の部屋から出た杏奈ー。

そこに、偶然”次男”である男の娘・優吾が
やってくるー。

「ーーあーーおはようー」
杏奈がそう言葉を口にすると、
優吾はにこっと微笑みながら「おはよー杏奈」と、笑うー

”あぁ、くそっー
 こいつ見てると頭がバグりそうになるー
 マジでこいつ、ついてるんだもんなー”

杏奈はそう考えながら、そのまま1階に向かおうとすると、
”男の娘”優吾が背後から言葉を発したー

「ーー杏奈、足、綺麗だねー」
とー。

「ーーえ?あぁ、うんー。まぁねー」
つい、杏奈らしからぬ自信に満ちた発言をしてしまうー。

がー、優吾は言ったー。

「ーそうやって、短いスカートを履いて
 ”わたしの前”で女子アピールするなんてー
 それは、わたしへの当てつけかなー?」

とー。

「ーーえっ…えぇ!?そ、そんなつもりじゃー」
優吾の突然の言葉に戸惑う杏奈ー。

優吾は「ーーいいよねー”本物”の女子はー」と、
不満そうに呟くと、そのまま自分の部屋へと入って行くー。

「ーーーチッー」
杏奈は舌打ちをすると「面倒くせぇ男の娘だなー」と
思いつつも、
「ーーーアイツも、”俺みたいに”人を皮にする力を手に入れればーー
 ”女”そのものになれるんだけどなー」
と、杏奈は冗談めいた口調で言いながら、
自分の”美脚”をイヤらしい手つきで触り始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

「ーーーいただきます」
家族全員が揃っているからか、長女の琴葉は
ご機嫌だー。

どうして、彼女がそこまで”家族”に固執するのかは分からないー。
だが、”何か”あるのだろうー。

「ーーーー」
杏奈は、”家族”の様子を伺いながら、黙々と食事を続けるー。

「ーーそういえば、”浮気相手”とは、どうしてるのー?」
次女のゆるふわツインテール・姫香が笑いながら、
母・樹里に聞くー。

「ーーーそんなこと聞いちゃだめでしょ?」
長女の琴葉が諭すようにして言うー。

「そうだよ~!お母さん、困ってるしー」
次男の”男の娘”・優吾もそう言葉を口にするも、
姫香は止まらないー。

姫香は”天然”なのか、それともー…。

「ーーええ、順調よー。
 明日も一緒にホテルに行くことになってるしー」
母・樹里が”当然”と言わんばかり言うー。

「ーーーーー」
家族に固執する長女・琴葉は不満そうだー。

「ーーー母さん、マジでヤベェよなー。
 母さんをネタに配信したら、登録者数増えたりしてなー」
長男・雅人が笑いながらそう言うと、
長女の琴葉が「こら。雅人ー」と、笑顔のまま怒りを露わにするー。

「ーーーーー悪かったよー」
雅人は、琴葉に指摘されるとすぐに大人しくなってしまうー。

「ーーーー」
そんな会話を聞きながら、父・隆介は穏やかな表情で
ご飯を口に運ぶー。

杏奈を乗っ取っている克哉は、
”この親父ー、なんか不気味なんだよなー”と、そう思いつつ、
”あえて”口を開くー。

「ねぇ、お父さんー」
杏奈の言葉に、長男・雅人と、長女の琴葉が杏奈に視線を向けるー。

「ーーお母さんが”浮気”してるの気にならないのー?」
杏奈がそう問うと、
父・隆介は茶碗を机の上に置いてから、ふっ、と笑ったー。

「ーー何も気にならないよー。
 母さんが、幸せなら俺はそれでいいー」
隆介は、穏やかにそう呟くー。

その感情からは怒りも、何も感じられないー

「ーーーーーー」
「ーーーーーーーーー」

杏奈は、隆介の目をじっと見つめるー。
隆介は、それでも穏やかな笑みを崩さないー。

「ーーー」
杏奈は、それ以上聞くことはできなかったー。

やがてーー
食事は終わり、杏奈は自分の部屋に向かって歩き出すー。

”あの親父は、底知れないなー…
 ”攻略”するのはーーもう少し様子見だなー”

そう思いつつ、部屋に向かって歩いていると、
兄の雅人が「杏奈ー。さっき頼まれてたやつ、注文しといた」と、
そう言葉を口にするー。

メイド服や、チャイナドレスのことだろうー。

「ーふふー
 ありがと♡」
わざと甘い声を出して、部屋に戻っていく杏奈ー。

”ーーーこれで、長男は攻略だなー”
部屋に戻ると、杏奈はニヤッと笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」
自分の部屋に戻った雅人は、配信の準備を始めるー。

「ーーーー」
家族の写真を見つめる雅人ー。

”姉”の琴葉は、ひたすら”優秀”だったー。
小さい頃から頭も良くて、何でもできた姉・琴葉ー。
そんな琴葉に劣等感を抱きながらも、
雅人は”俺じゃかなわない”と、小さい頃から、
早々に姉・琴葉を越えられないことを理解し、
諦めていたー。

両親も、琴葉のことばかり見てー、
自分の後に生まれた弟である次男・優吾のことを可愛がるようになりー、
”2番目の子供”であった彼は、何かと放置されがちだったー。

やがてー、雅人は”周囲の気を引く”ことに執着するように
なり始めるー。
目立つことをすると”周囲”に注目されるー。
学校でもそんな行動がエスカレートして、
問題ばかり起こすようになったー。

そしてー、大学でトラブルを起こして中退してからは
配信活動にのめり込むようになり、
配信する動画の内容もエスカレートするようになっていったー。

とにかく、”俺のことを見てほしい”ー
姉・琴葉や、自分自身に対する劣等感からかー、
今の彼には”再生回数”や”チャンネル登録者数”ーー
そんな、数字しか目に入らなくなりー、
まずます、その活動はエスカレートしていたー。

「ーーへへ……
 それにしてもー杏奈のやつ、俺のことを認めてくれるなんてー」
ニヤニヤと笑みを浮かべる雅人ーー

雅人がーー
杏奈を乗っ取っている克哉が思うように
”簡単に攻略”できる存在ではない、ということを
克哉が思い知るのは、まだ先の話ー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーへへへへ♡」
ニヤニヤしながら、制服に着替えた杏奈ー。

「ー今日から俺もJKデビューだぜ」
杏奈は髪を触りながら、鏡の前で嬉しそうに微笑むと、
今朝、杏奈本人の意識に確認した情報を元に
学校へと向かうー。

「ーーーーーここかー」
学校の正門前に到着した杏奈は笑みを浮かべると、
「ーーへへー楽しませてもらうとするかー」
と、そう言葉を口にしながら、校舎内に向かって歩き始めたー。

「ーーーーーーー」

がーー
そんな杏奈の様子を、生徒会室の窓から見つめている
クラスメイトの姿があったー

「ーーーーーーーー」
眼鏡とリボンがトレードマークのその女子生徒は
不満そうな表情を浮かべると、
小さく舌打ちするのだったー…

⑥へ続く

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コメント

皮モノの長編を描くのは今回が2回目デス~!

前回の皮モノとはかなり違うスタイルの作品ですが、
じっくりと狂った家族と欲望の日々を描いていけるように、
執筆を進めています~!!

試し読みをご覧下さり、ありがとうございました~!!

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★FANBOX関係

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