高校生活三年間を”憑依”されていたことによって
失ってしまった彼女ー。
戸惑いの中、彼女はひとつひとつ、
問題を解決していこうとするもー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーえぇ…???
ど、どういうことー?」
母親に”記憶がない”ことを打ち明けた希海ー。
”さっきまで入学式だったはずなのに、
気付いたら卒業式になっていたー”
そんな状況ー。
しかし、母親はそれを簡単には信じてくれなかったー。
「ーーー…ーーお願い…信じて」
希海が困惑した様子でそう言い放つと、
母親は戸惑いながら「じゃあ…高校の入学式の日までの
記憶はあるけど、それ以降の記憶がないってこと?」と、
再度、希海から言われた言葉を確認するかのように口にしたー。
「ーーーうんー」
希海が頷くー。
一瞬、友達だった”紅葉”のように、
記憶がない三年間の間に、両親とも何かトラブルを抱えたり
していないかどうか心配したけれど、それはなかった様子で、
一安心する希海ー。
それからも、二人で色々話をするー。
結局、春休みの間に”病院”で診察を受けてみよう、という話になるー。
確かに、いきなり記憶を失うなんて普通ではないー。
希海自身も、病院で診察を受けることには賛成だったー。
”ーーまぁ、何も出やしないけどなー”
霊体の状態で希海の様子を観察している男が呟くー。
男は、もう希海に憑依するつもりはないー。
しかし、いつも入学式の日に憑依した身体で三年間過ごし、
”卒業”を迎えると、
”次”の入学式までの間ー
3月から4月は霊体のまま、誰にも見られずにのんびりと過ごしー、
ついでに三年間使い続けた身体がどうなるのかを観察しているー。
”病院行っても、何も出ないぜー?
お前は記憶喪失じゃなくて、俺に三年間憑依されてたんだからー”
男は、希海の方を見つめながらそう呟くー。
しかし、霊体の男の声が希海には響かないー。
そんなことを呟いていると、希海の母親が
ふと、言葉を口にしたー。
「ーでも、何だか安心したー」
とー。
「え?」
希海が不思議そうに母親の方を振り返ると、
「高校に入ってからの希海、なんだか別人みたいだったからー…
なんか、今日の希海と話してて、安心したー」と、
そう母親が言葉を口にしたー
「ーーーー」
まるで自分のことをアイドルのように思って振る舞ったり、
友達だった紅葉をイジメたりー、
そんな”自分じゃない自分”ー
きっと、母親にも心配をかけていたのだろうー、
「ーーー心配かけてごめんなさいー」
希海がそう言葉を口にすると、
母親は優しく微笑みながら、
”記憶のこと”は慌てないでいいからー、と、そう言葉を口にしてくれたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今の状況は分からないことだらけー。
それでも、1個1個、問題を解決していくほか、ないー。
希海はスマホの暗証番号を母親に協力して貰いながら
なんとか解除することに成功すると、
その中に残されていた写真の数々を見つめるー。
ツインテールの、”わたしはかわいいの!”と、言わんばかりの
写真の数々に、嫌悪感を感じる希海ー。
LINEやメールの履歴を見ても
”自惚れているわたし”のやり取りが残されていて、
”こんなこと…”と、思ってしまうー。
”失われた三年間の自分”の残した記録を見つめながら、
希海はため息をつくー。
親友の紅葉ー。
希海は高校時代、その紅葉に嫌がらせを繰り返していたのだと言うー。
「ーーー」
そんな紅葉に勇気を振り絞って電話をかけて見るー。
するとー、
紅葉は少し間を置いてから電話に出たー。
”急に電話をかけて来るなんて、何のつもりー?”
紅葉の敵意に溢れた口調に、希海は心を痛めるー。
「ーその…わたしー…
たくさん酷いことをしちゃって、ごめんなさいー」
希海は、謝罪の言葉から入ったー。
彼氏の紀之によれば、希海は、紅葉に嫌がらせをしていたのだと言うー。
どうして”わたし”がそんなことをしたのかは分からない。
けれどー、”記憶を失っちゃって”なんて、
最初に言うのは”言い訳にしかならない”ということを
希海は理解しているー。
まずは、ゴタゴタ言う前に謝ろうー、そう思ったー。
”ーーーーーーーー”
希海からの突然の謝罪に紅葉は沈黙するー。
”ーーーー…許さない”
やがて、紅葉から吐き出された言葉はそれだったー。
”ーーー絶対に、許さないからー”
紅葉の言葉には、強い憎しみを感じたー。
希海は目に涙を浮かべながら
「許してもらえなくてもー、それでも、ごめんなさいー」と
ひたすらに謝罪の言葉を口にしたー。
”ーー今さら気付いても遅いよー。
ーー希海…急に調子に乗っておかしくなってー…
ーーもう、わたしと希海は元通りには戻れないよー。
絶対にー。”
紅葉は淡々とそう言葉を口にするー。
「ーーーー…うん…」
希海は、紅葉の言葉を一言一言、しっかりと噛みしめながら
受け止めるー。
”もう、連絡してこないでー。
さよなら”
紅葉はそれだけ言うと、そのまま電話を切ってしまったー。
「ーーーー」
こうなることは、何となく想像がついていたー。
きっと、自分はとても酷いことをしたのだからー。
でも、それでも謝りたかったー。
”ーーー…まぁ、そうなるよなー”
希海に憑依していた男は、そんな様子を見つめながら呟くー。
希海に憑依した男が”紅葉”をいじめた理由は単純だったー。
唯一、希海の中学時代を知っている子が紅葉で、
憑依されたことによって性格が変わった希海のことを
色々心配して、目障りだったからだー。
それで、嫌がらせをして
”希海”との距離が開くように仕向けた。
紅葉は、希海のことを良く知っていたー。
だから、あまり近くにいられると、最悪の場合”憑依”を悟られる可能性もあった。
そのため、嫌がらせを繰り返して関係性を断ち切ったのだー。
「ーーー…」
希海は、悲しそうな表情を浮かべながら”次”のやることをし始めるー
今度は彼氏だと言う、紀之にLINEでメッセージを送るー。
”あのー…わたしの進路、知ってたりするー?”
そう確認する希海ー。
親に聞いても良かったが、親もいきなりの出来事で
混乱しているー。
あまり、一人に負担を集中させたくなかったー。
しばらくすると、紀之から連絡が戻って来るー
”ー希海の進路ー?
たしかー”
その言葉と共に、希海が合格したという
大学の名前が送られて来たー
「えっ…これって…」
驚く希海ー。
希海が合格している大学はー
”希海の夢”に関係するものー。
希海が、いつか行きたいと思っていた大学ー。
「ーーわたし…ちゃんと…やりたいことは忘れてなかったんだー…」
希海は少しだけ嬉しそうに微笑むー
”ーーーーーー”
希海に憑依していた男は、その様子を見つめながら呟くー。
”俺は、高校三年間を奪うが、未来までは奪わないー”
そう呟く男ー。
男はいつも、入学式の日にお気に入りの子を見つけて憑依、
その後、卒業式まで3年間、身体を支配し続けてから
解放するもののー、
必ず、あることを自分の中で決めているー。
ひとつは、
”犯罪などは犯さないこと”
そして、もうひとつは
”乗っ取った身体の夢は壊さない”
ことー。
希海を支配したあと、希海の将来の夢を
記憶や、周囲との会話から読み取り、
その夢に向けた勉強・準備だけはしっかりしてきたのだー。
他人の身体を勝手に3年も使う時点で、
自分は極悪人ー。
男は、それを理解しているー。
しかし、”せめてもの礼”として、
男はその身体が、高校卒業後にちゃんと生活できるようー、
本人が望む道へと進めるように、就職・進学の活動だけはしっかりとやっているー。
”俺なりの、極悪人の美学だからなー”
そう呟きながら、男は希海を見つめるー。
希海は、自分の進路が思った通りの進路で心底安堵の表情を浮かべると、
そのまま少しだけ明るい表情で、母親のいる1階に向かって歩き始めた。
後日ー
希海は病院で診察を受けたものの”記憶喪失”の原因は不明ー、
記憶が戻ることもないまま、大学へと進学したー。
4月に入り、希海に憑依していた男は”また”入学式の日に
別の子に憑依ー、
新たな3年間を始めたー。
「ーふふー 今度は活発そうな女で、スポーツに明け暮れる日々を送るかなー」
ショートヘアーの活発そうな女子に憑依した男は、
その身体でそう呟くと、新しい身体を乗っ取り、
また、新しい高校生活3年間を始めるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高校生活3年間の記憶は戻らなかったー。
けれどー、希海は周囲の協力を得ながら
何とか立ち直っていきー、
元々行きたいと思っていた大学に、”憑依されている間”に
合格していたこともあって、
そのままその大学に進学したー。
結局ー、”自分が憑依されていた”という真実にも気付けないまま
希海は”高校生の時のわたしはどうかしてた”と、割り切って
そのまま、日常へと戻って行ったー。
”どうして”高校3年間の記憶がなくなったのか、
どうして、”わたしがわたしじゃないみたいな行動”をしていたのかー、
希海には、それは分からないままだったけれど、
もう気にしないことにしたー。
高校時代の”彼氏”だという紀之とは、
その後、改めて親しくなって、
今度は”本当に付き合う”ことにして、
通う大学は別々ながら、度々会ったりを続けたー。
やがてー、希海は大学を卒業、
就職にも成功し、大学時代から改めて交際を始めた
紀之と結婚ー、
子供も授かり、幸せな日々を送るのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は流れー、
希海と紀之の娘・紗季(さき)も、春から高校生ー。
「ーーーそれにしてもー、
俺と希海が初めて出会ったのも、
高校の時だったよな~」
夫となった紀之が笑いながら言うー。
「ーーふふーそうだったねー。
でも、わたしからすると”大学生”になる直前に
出会った感じかなぁ」
希海が笑いながら言うと、
紀之は「確かにー。高校生の時の記憶はなくなっちゃったんだもんなー」と、
そんな言葉を口にするー。
「まぁでも、あの時の希海は、希海とは別人みたいな感じだったしー、
今の希海とは、大学に入る前に出会ったようなもんだな」
そんな会話をしていると、
娘の紗季が、高校の入学式に向かう準備を終えて、
「ーそろそろ行くね!」と、笑顔を浮かべるー。
「うん!気を付けてー!
わたしたちも後から行くからね」
希海がそう言うと、娘の紗季は嬉しそうに頷いてから、
そのまま一足先に出かけたー。
中学時代から一緒の友達と高校に向かうらしくー、
母親である希海、そして父親である紀之とは別々に
学校に向かうことにしているー。
「ーーー俺たちもそろそろ準備しないとな」
紀之がそう言いながら、準備を始めると、
希海は少しだけ、自分の高校時代のことを思い出しながら、
「ーあの時は、色々親切にしてくれてありがとうー」と、
そんな言葉を口にしたー。
紀之は、高校の卒業式の日に、
いきなり”記憶を無くした”なんて言いだした希海のことを
あれ以降もしっかりサポートしてくれたー。
紀之からすれば、”彼女だった人がいきなり記憶喪失になった”という
とんでもない状況だったはずー。
しかも、”都合よく高校時代の記憶だけ失う”なんて、普通じゃ
なかなか信じてくれないだろうー。
しかし、紀之は大学に入ってからも、希海のことを気にかけて
希海が高校時代のことを疑問に思うことがあれば、
分かる範囲で何でも教えてくれたー。
そしてー、
改めて付き合いだす時には、
こう言ってくれたー。
”高校の時の希海より、俺は”今の希海”の方が好きだよー”
とー。
「ーーははー…どういたしましてー」
希海からのお礼の言葉に、紀之は照れくさそうにそう言うと、
「ーよし、じゃあ、紗季の入学式に向かおうー」と、
そんな言葉を口にしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”今年はーー
誰にするかなー”
希海に憑依して、希海として高校生活三年間を過ごした男ー。
彼は、あれから約20年が経過した今でも、
”入学式の日”に誰かに憑依し、”卒業までの3年間”を過ごしー、
また、次の子に憑依するー
そんな行為を繰り返していたー。
そしてーーー
”お、この子とか、良さそうだなー
今回はこの子の身体で3年間、過ごすとするかー”
「ーーー…うっ…」
ビクッと震える入学式に参加していた女子高生ー。
「ーーーふふ…」
男に憑依されてしまった彼女ー
希海の娘・紗季は少しだけ笑みを浮かべると、
「ー今回は不真面目に3年間楽しむとするかなー」と、
静かにそう呟いたー。
かつて、自分が憑依した相手の”娘”だとは知らないまま、
男は、紗季の身体を乗っ取って
高校生活を始めるのだったー…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
卒業式シーズンなので、
卒業が関係する憑依モノでした~!★
今年卒業の皆様はおめでとうございます~!★★!
とっくに卒業している皆様も、おめでとうございました~(?)☆!

コメント
人生を壊すという程ではないものの、高校生活を丸ごと奪われるのは酷いですよね。
紗季は母娘二代続けて憑依されてしまって気の毒に。
それにしても、この後、もしかしたら希海が憑依された娘の様子から、憑依の真実にたどり着く可能性もあり得そうな気がしますよね。
まあ、気付いたとしても、どうこうすることは難しいでしょうけど。
コメントありがとうございます~!
憑依された経験があるからこそ、
娘の異変に気付く可能性はありそうですネ~!
気付いた時にどうなるのかは…
描くのも面白そうデス~!
ちょっと思ったんですけど、この話、入学式とか卒業式じゃなくて、結婚式版でやっても面白くなりそうな気がしませんか?
結婚式当日に花嫁が憑依されて、数十年間乗っ取られ続け、結婚生活全部奪われて、成長した娘の結婚式で開放するとか。
自分が主役の結婚式だったはずなのに、いきなり老けて、知らない自分の娘が主役の結婚式になってるとか、当人からしたら凄い衝撃ですよね。
さらに、混乱してる元花嫁を尻目に娘に憑依してまた同じことを繰り返すとか面白そうです。
この話より憑依期間が比べ物にならないくらい長いだけでも既にダークですが、幸せな結婚生活や母親になる喜びとかを奪われることになるのでヤバイくらいダークになりそうですよね☆
ありがとうございます~~!★
結婚式系の話もいくつか書きましたが
そのパターンは書いたことがないような気がします~!★
(以前、結婚後に夫が”妻はずっと憑依されていて、本当の彼女は自分と面識すらない”と
知るようなお話は書いた気がします~笑)
「え!?どうして娘が成人してるの?」みたいな
タイトルで書きたいところデス~笑