入学式当日に憑依され、
卒業式当日に解放された彼女…。
3年分、丸ごと記憶がない状態で戸惑う彼女の運命は…?
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3年前ー
「ーーでも、紅葉がいてくれてよかった~…」
高校の入学式当日ー。
入学式が行われる体育館に移動する前に、
自分たちのクラスとなる教室に移動した希海は、
中学時代からの親友である紅葉に対して、
そんな言葉を口にしたー。
「ーうん。わたしもー。
希海がいなかったら、誰も知らないクラスだしー」
そう言いながら微笑む紅葉ー。
がー、
その時だったー
「ーーうっ…」
ビクッと震えて、うめき声をあげる希海ー。
「ーーえ…?ど、どうしたの?」
紅葉が心配そうに希海の方を見つめるー。
「ーーーー」
しばらくの間、放心状態のような表情を浮かべている希海を見て、
心配になった紅葉が
「…ね、ねぇ…大丈夫?」と、今一度言葉を口にすると、
突然、希海はニヤッと笑ったー。
「ーーうん。大丈夫大丈夫ー」
希海のそんな言葉に、紅葉は安堵した表情を浮かべると、
希海は小声で「この子、髪伸ばした方が可愛いよなー」と、
ボソッと、そう呟くー。
その言葉が聞き取れなかった紅葉は「え?」と聞き返すと、
希海は「ううんー。なんでもな~い!こっちの話!」と、
なんだかいつもとは少し違うような雰囲気で、
そんな言葉を口にしたー。
3年前の入学式ー…。
希海は、男に憑依されてしまい、
それから3年間ずっと支配されたまま、
”俺色の女子高生”に染められー、
そして、今日ー
卒業式の当日にようやく”解放”されたのだー。
希海本人からすれば、
”今日はまだ入学式”で、一瞬のうちに卒業式に
ワープしたような状態ー。
けれども、時は既に3年が経過し、
自分自身も、周囲の状況も大きく変わっていたー。
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卒業式当日ー。
「ーーーは…はぁ…?記憶喪失ー?」
希海の彼氏だと言う男子生徒・丹波は戸惑いの言葉を口にすると、
「ーここじゃなんだから、ちょっと場所を変えて話そう」と、
騒がしい廊下を見渡しながら言うー。
「ーーう、うんー」
戸惑いながらも、”悪い人じゃなさそう”と、希海は
彼のあとについて、校舎裏の庭のような場所までやってくるー。
すると、彼氏だと言う男子生徒・丹波は
「ー俺のことも、覚えてない?」と、そう確認してきたー。
「ーう、うんー。ごめんなさい」
希海がそう言うと、「そっかー」と、彼は寂しそうな表情を浮かべたー。
が、すぐに気を取り直した様子で、
「ーあ、俺は丹波 紀之(たんば のりゆき)でー、
一応、去年から希海と付き合ってたんだけどー…」
と、そう自己紹介をするー。
「ーあ…は、はじめましてー」
希海が、思わずそう挨拶をすると、紀之は心底寂しそうな表情を浮かべたー。
確かに、相手からすれば今まで恋人だと思ってた相手から
急に”はじめまして”何て言われたら戸惑うかもしれないー。
そう思いつつ、希海は「ーーあの…わたし、どんな感じだったの…かな?」と、
遠慮がちにそう言葉を口にするー。
3年間の記憶が消えているー。
その理由は、希海には分からないー。
しかし、こうして事実3年が経過しているということは、
記憶にない三年間もちゃんと”何か”はしていたはずだー。
「ーー…あ~~~…え~っと」
紀之はそう呟くと、スマホを手に、
色々な写真を見せてくれたー
紀之と希海のデートの際に撮影したという写真が、
そこにはたくさん保存されていたー。
とてもおしゃれでー、とても明るそうな雰囲気の希海の
写真がそこにはあるー。
ほとんどの写真がツインテールで、とても可愛い服装のものが多いー。
希海が絶対にしないようなあざといポーズをしているような写真まであったー。
「ーーー…」
希海は、”知らないわたし”の写真を見て、恥ずかしそうにしながら
思い出したかのようにして髪を触るー。
高校に入学するまでの希海は、元々は
髪は短めなことが多く、ツインテールにしたこともなかったー。
それが、今の自分はツインテールだし、
紀之が見せてくれた写真の中の希海も、
ほとんどがツインテールだったー
「わ、わたしっていつもこの髪型…?」
希海が不安そうにそう呟くと、
紀之は「ん?あぁ~…そうだなぁ…いつもほぼそんな感じ」と、
写真を見つめながら言葉を口にしたー。
「ーーーーそ…そ、そうなんだー…」
希海は戸惑いながら言うと、
紀之は「ーー去年の文化祭の時に、希海から告白されてさー」と、
そんな思い出話を始めるー。
聞けば、紀之は希海と付き合い始めるまでは彼女がいたことがなかったようで、
希海が初めての彼女だったのだと言うー。
「急に告白されたときはホントにびっくりしたよー
”雲の上の存在”っていうかー…
俺とは縁のない感じの世界の人だったからさー」
紀之がそう言うと、
希海は「わ、わたしってどんな子だったのー?」と、
困惑しながら尋ねるー。
「ーーーーあ…こ、こんなことわたしが自分で聞くのも
変だって言うのは分かってるんだけどー」
希海がそう付け加えると、
紀之は「とにかく明るくてー、アイドルみたいな感じだな」と、
笑いながらそう言葉を口にしたー。
「ー自分に対していつも自信満々で、積極的で明るくてー
友達も多い感じー。
…だから、そんな希海に告白された時は
最初、俺、罰ゲームか何かだと思っちゃってー」
紀之がそう言葉を口にすると、
希海は”わたしと全然真逆じゃんー…”と、心の中でツッコミを入れたー。
希海自身も、いじめを受けたりしているようなタイプではなかったものの、
クラスの中心的存在というわけでもなく、
交友関係もそこまで幅広いタイプではなかったー。
自分に自信もないし、どちらかというと、控えめな性格ー。
「ほ、他にもーその…丹波くんが知ってることあったら
教えてほしいんだけどー…」
希海が気まずそうにそう言葉を発すると、
紀之も少し気まずそうにするー。
「ーーいつも、ノリくんって呼ばれてたからー
”丹波くん”って呼ばれると違和感が凄いなぁー」
そう言いながらも、
「ーーあ、そうだー」と、
”俺は普段あまり見ないんだけど、SNSもやっててー”と、
そう言いながら、希海のものだというSNSを見せてくれたー。
「希海、コスプレ好きだっただろ?
それをSNSにも載せてたみたいでー。
ほら、これー」
その言葉に、希海は「こ…コスプレ…?」と
顔を真っ赤にしながら、
SNS上にUPされている、希海のコスプレ姿を見つめるー。
「ーーー…こ、これ…わたしなの…?」
顔は隠れている写真がほとんどー。
希海は、恥ずかしそうに”自分だとは信じられない”と
言わんばかりにそう言葉を口にするー。
「ーーた、確か顔が映ってる写真もあったようなー」と、
そう言葉を口にする紀之ー。
写真の確認を更に進めるとー、
確かに、”希海”のアカウントであることが確信できたー
「な…なにこれ…
わ、わたし、こんな格好ー」
メイド服を着て、ドヤ顔をしている希海やー、
巫女服を着て、あざといポーズをしている希海ー
そんな、写真の数々が載せられているー
「ーーーーー」
顔を真っ赤にしている希海を見て、
紀之は少し申し訳なさそうに、
「こ、これも記憶がない感じ?」と、そう確認してくるー。
「う、うんー全然ー。
そもそもわたし、コスプレなんかしないしー…」
希海はそう呟くー
そしてー、”強い違和感”を抱き始めるー。
高校生活3年間の記憶が失われたー…
希海はそう思っているー。
がー、何故”高校生活三年間だけの記憶”が飛んでいるのだろうかー。
記憶喪失になったのだとすれば、
なぜ、都合よく高校生活だけー?
それに、何故、”わたしが絶対にしないようなこと”を、
高校生の”わたし”はしているのかー。
分からないことだらけー。
「ーーー…そ、そうだー
紅葉ー…
紅葉とわたし、何があったか、知ってる?」
希海が思い出したかのようにそう言い放つー。
”親友”の紅葉から
”わたしたち、”とっくに友達じゃない”でしょー。
あんたのこと、わたし、許さないからー”
と、そう言われたことが気になっていたー。
「ーーーあぁーーー…それはー…」
紀之は、少し躊躇いがちにしながら、
少し間を置いてから、口を開くー。
「ーー希海さー…好き嫌い…激しい感じだったからー…
あの子のこと、嫌いでさー…
その…」
紀之は戸惑いがちにそう言葉を口にすると、
少しだけ間を置いてから、そのまま言葉を続けたー
「ーー嫌がらせ…してたみたいでー」
紀之の言葉に、希海は「えっ……」と、青ざめるー。
「わ、わたしが、紅葉ちゃんに…嫌がらせをー…?」
呆然としながら、悲しそうな表情を浮かべる希海ー
紀之によれば、”クラスの人気者”である希海が
紅葉のことを嫌っていたことで、紅葉は孤立ー、
一部の生徒からはいじめも受けていたのだと言うー。
「ーお、俺も前に希海にやめた方がいいって言ったんだけどー…
その時に、希海に滅茶苦茶怒られてーそれっきりー…」
紀之はそこまで言うと、
「あぁ、ごめんー。希海を責めるつもりはないんだー。
止められなかったのは俺の責任だから」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーーーー」
三年間”知らないわたし”になっていたー。
そんな事実に驚愕する希海ー。
”本当に、記憶喪失なのー?”と、
そんな疑問が浮かび上がるー。
”失った三年間”の間の自分の行動が”あまりにも”自分と
かけ離れているからだー。
単に高校生活三年間の記憶を失っただけなら
まるで別人のような振る舞いをしていることに説明がつかないー。
そもそも、都合よく高校生活の部分だけ記憶を失っているというのも
おかしいー
「ーーーあ…俺のことは気にしなくていいからー
本当に記憶を失ったならー…
俺のこと、彼氏なんて思えないだろ?」
紀之がそう呟くー。
希海は「ごめんなさいー」とだけ、そう返すと、
「でもーーー…あなたはいい人だと思いますー」と、それだけ呟くー。
「ーーはは…そうそうー。俺はいい人だよ」
紀之が冗談っぽく言うと、
恋人関係は一旦保留にして、何か知りたいことがあったら
いつでも教えるよ、と、改めて連絡先を教えようとしたー。
がー
「ーーご、ごめんー。スマホー…暗証番号が分からないー」
希海がそう言うと、紀之は「あ…あぁ…」と、戸惑いの表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した希海は、自分の部屋を見て驚くー。
まるでお姫様のような、あまりにもメルヘンな
部屋になっていたのだー
「な…な…なにこれ…?」
元々の希海の部屋は、落ち着いた感じのあまり派手ではない部屋ー。
が、それがまるで別人のように変化しているー。
しかもー
自分の自撮りの写真が飾られていて、
まるで自分に酔っているアイドルかのようー。
”ーククククー
どうだ?俺が作り上げたお姫様の部屋はー”
希海に憑依していた男が霊体の状態のまま笑うー。
希海に憑依したあと、
”今回の三年間は自分の可愛さに酔いしれてるアイドル気取りのお姫様”として
過ごそうと考えた男は、
希海の部屋を”自分色”に模様替えしたー。
「ーーー……」
希海は、可愛らしいポーズでアイドルのような衣装を着た
ドヤ顔の自分の写真を見て悪寒を覚えるー。
”こんなこと、わたしにはとてもできない”
とー。
希海は、激しい混乱の中、
親にこの状況をどうやって打ち明けるか考え始めるー。
それに、自分が嫌がらせをしてしまっていたという
友達の紅葉にも何とか謝らないといけないー。
そもそも、高校を卒業しているということは
既に”進路”も決まっているはずー
いったい自分は、どんな進路を選んだというのかー。
頭の中が混乱して張り裂けそうになる中、
希海は深呼吸をすると、
ひとつひとつ問題を対処していくことを決意するー
「まずは、お母さんに相談しなくちゃー」
そう思いながら、鏡でツインテールな自分の姿を見つめると
「これ苦手…」と、ボソッと呟きながら髪型を元に戻すと、
そのまま、母親にいる1階に向かって歩き出したー。
③へ続く
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コメント
高校生活三年間を憑依で失った彼女の運命は…?
バッドエンドか、ハッピーエンドか、
どっちなのかも含めて、
明日の最終回も見届けて下さいネ~!
今日もありがとうございました~!☆
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