<憑依>アプリ連携①~恐るべき要求~

ツイッターのアプリ連携ー

”このアプリケーションは次のことができます”と
書かれている欄に
”身体を自由に操る”と書かれていることに
彼女は気づかないまま、アプリを連携してしまうー…

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彼はー
”何事も相手の同意を取ること”が、とても大事だと考えて来たー

保険会社の営業マンとして働いていた彼は
小さい頃から”相手の同意”を大切にしてきたー。

両親は、教育熱心で
彼に対し、”人が嫌がることはするな”と、
そう言い続けて来たー。

彼は、それを守り、
”相手の嫌がることはしない”ということを、守ってきたー。

相手が”いいよ”と言わないことは、絶対にしないー。

そんな教えを、彼は守り続けて来たー。

だがー
いつからだっただろうかー。

彼は”人が嫌がることをしてはいけない”という教えを
湾曲して解釈するようになってしまったー

”相手の同意さえ得ていれば何をしてもいい”
”相手が”いいよ”と言えば何をしてもいい”

そんな風に、彼の考えは変わって行ったー。

保険会社に就職してから、
彼は、他の同期をー、いや、先輩の営業マンも圧倒するほどの
成績をいきなり上げて見せたー。

周囲が驚く中、
彼は着々と”エリート”の階段を歩もうとしていたー。

だがー
彼は”保険の契約”を、
”相手を騙してでも同意を得て”結ばせていることが後に発覚しー、
会社内で大問題となり、やがて、解雇されたー。

「ーーー俺は…俺はちゃんと”同意”を取っていました!
 契約書にもサインがあります!

 それなのに今更文句を言うなんて!
 悪いのは、契約者の方だ!
 俺は被害者だ!」

彼は、解雇を告げられた日に、そう叫び続けたー。

しかしー…、
結果は覆ることなく、彼はそのまま解雇されたー。

”俺は同意を取っていたのにー”

解雇されてもなお、彼は己を見つめ返すこともせずー、
その性格はさらに歪んでいったー。

そしてー
保険会社をクビになってから数年が経過した現在ー。

彼はー
”憑依プログラム”を完成させたー。

数年間、引きこもり続けて完成させた
夢のプログラムだー。

「ーーー……さて、今日は誰で楽しむとするかー?

 みんな、俺に”身体を乗っ取られる”ことを
 受け入れてくれているからなー
 遠慮なく、好きにさせてもらうぜー」

元保険会社の営業マンー、
高田 敏行(たかだ としゆき)は、
そう呟くと静かに笑みを浮かべたー。

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「ーーただいま~!」
高校2年生の安本 里緒菜(やすもと りおな)が
いつものように学校から帰宅するー。

「ーお、おかえり~」
兄で、大学生の安本 幹夫(やすもと みきお)が、
そんな里緒菜に気付き、言葉を掛けると、
里緒菜は「なんかお兄ちゃんの方がいっつも早いなぁ」と
苦笑いしながら、手を洗い始めるー。

「ーーそういえばさ~里緒菜ってツイッターやってるんだったっけ?」
幹夫がそう言うと、
里緒菜は「あ、うん~ツイッターもやってるし、他も色々ー」と、答えるー。

「ーこの前さ~俺の友達がアカウント乗っ取られちゃってさ、
 ほら、何だっけ、アプリ連携だったっけー。
 やたらとアイツ、色々なアプリ連携させてたから、
 それでやられちゃったみたいで」

幹夫はそこまで言うと、
「里緒菜も、色々連携とかしてるなら、気をつけろよ」と、
穏やかな口調で付け加えたー

「大丈夫大丈夫!」
楽観的な里緒菜はそう返事をすると、
晩御飯を確認して「わぁ、美味しそうー」と、
目を輝かせてからそのまま2階へと向かうー。

「ーさて、と。俺も一回部屋に戻るか」
幹夫は母親と少し雑談をしてから、そう呟くと
そのまま自分の部屋へと向かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”キラキラ★可愛いフェイスメーカー”

部屋に戻ってスマホをいじっていた里緒菜は
そんなものを見つけたー

”ツイッター”で使うことができる
サービスの一つだ。

ツイッターでは外部のアプリと連携する機能が
存在しており、
それを使って、色々なことを楽しむこともできるー。

何かの診断をしたり、
質問を匿名で受け付けたり、
褒める言葉を貰ったり、

色々な、外部の会社や個人が作成したサービスが
世の中には溢れているー。

それらを使うためには
ツイッターと連携する必要があり、
”外部から、自分のアカウントへのアクセス”などを
許可する必要があるー。

当然、通常はそれを悪さに利用されることはないー。

外部のアプリを使うために、アプリ連携をしようとすると、
ツイッターには
”このアプリケーションは次のことができます”と、
連携した後に、外部から何ができるかが表示され、
そして、”許可”を出すことで、
そのアプリとの連携が完了する。

しかし、中には
”ツイートする”
”プロフィール情報を確認する”
”プロフィール情報を変更する”
”DM(ダイレクトメッセージを送る)”
など、相手(アプリの開発者や運営者)がその気になれば
アカウントを事実上、乗っ取ることができてしまうような
内容を含む権限を要求してくるアプリも存在する。

もちろん、システム上必要だから、という理由がほとんどであるものの、
中には”悪用”するために、権限の許可を求める者もいるー。

”外部からツイートできてしまう”ようになれば、
それを利用して、相手の思ってもいないことをツイートしたり、
プロフィール情報を確認できるのであれば個人情報を盗んだり、
変更できるのであればアカウント自体を乗っ取ることも、できてしまうー。

そしてー
里緒菜は今、その”アプリ連携”をしようとしていたー

「え~…可愛い顔に自動で加工してくれるアプリ~?
 面白そう~!」

里緒菜は既に十分可愛いのだが、何を思ったのか、
そう書かれていた
”キラキラ★可愛いフェイスメーカー”なるものを
自分のツイッターで使おうとするー。

ツイッターを使っている里緒菜からすればおなじみの
アプリ連携画面が表示され、
”このアプリケーションは次のことができます”という
画面が表示されているー。

そこには

”このアカウントのツイートを確認する”

や、

”フォロー、ミュート、ブロックしているアカウントを
 確認する”

など、基本的な権限が表示されているー

この程度の権限であれば、
アカウントが乗っ取られる心配はほとんどないと言えるー。

だがー
”散々色々なアプリ”を連携したことがある里緒菜にとって、
アプリ連携の前に表示される
”権限の確認画面”など、通過点でしかなかったー。

”いつものように”
表示されたことを全て”許可”するボタンである
”連携アプリを認証”ボタンを押そうと、そこに指を近づける里緒菜ー

里緒菜は気づいていなかったー

”このアプリケーションは次のことができます”の下にー

”このアカウントのツイートを確認する”

”フォロー、ミュート、ブロックしているアカウントを
 確認する”

定番のものが並ぶ中ー

こう書かれているのをー

”アカウント所有者の身体を自由に操ることができる”

”身体の所有権の取得”

そのまま連携アプリを認証してしまう里緒菜ー

「ーーひぅっ!?」
その瞬間、里緒菜はビクンと身体を震わせたー。

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「ーーお?」
パソコンの画面に、何かを知らせる光が表示されたのを見て
元保険会社の営業マン・高田敏行は笑みを浮かべたー

「また一人、身体の主有権を”許可”してくれたかー」

アプリ連携は、”同意”ー。

敏行が作った”キラキラ★可愛いフェイスメーカー”は、
”憑依する相手”を見つけ出すためのものー。

可愛いフェイスメーカーなどというものを使おうとするのは、
女子が多いー。

よって、そういうアプリで”美少女”を釣り、
そして、その身体に憑依するのだー

たまにおっさんや、おばさんがアプリを使うことももちろんあるが、
多少は仕方がないー。

「ーーーふ~ん…里緒菜ちゃんかー」
笑みを浮かべる敏行ー。

敏行は、自らの魂を分散させて相手に憑依させることができー、
”キラキラ★可愛いフェイスメーカー”のアプリを認証した人間は
全て”高田敏行”となるー。

そして、本体である彼と同じ思考に沿って行動しー、
本体である彼自身も、いつでも各地のアプリ連携者に憑依して、
好き放題することができるー。

現在ー、
敏行は”82”の身体にいつでも憑依できる状態になっていて、
憑依していない間も、アプリを連携してしまった82人は、
”敏行”として欲望の日々を送っているー。

時々、”ハズレ”を引いておっさんに憑依する羽目になった
敏行の分身は、よく文句を口にしているー。

が、それは仕方のないことだー。

若い子が好きそうな感じのアプリを作ったものの、
おっさんやおばさんが使う可能性だって当然あるー。

今、キラキラ★可愛いフェイスメーカーのアプリ連携をした人間
82人のうち、11人は敏行から見て”ハズレ”の人間だー。

「ーーーへへへ…いつでも俺自身も憑依できる
 俺の分身ーいや、俺そのものが82人いるのと同じだぜー」

敏行はそう呟きながら不気味な笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へへへへっ…最高にエロイ身体じゃんー」

敏行の魂に憑依されてしまった里緒菜もー
敏行そのものになってしまいー、
不気味な笑みを浮かべていたー。

身体は里緒菜だが、敏行の魂に憑依されて
思考は、敏行そのものになってしまっているー

「ーへへへへへ…アプリ連携の時に
 ちゃんと文章読まなくちゃだめだろ~
 里緒菜ちゃんー」

里緒菜の頬をイヤらしい笑みを浮かべながらつつくと、
「ーわたし、乗っ取られちゃった~♡」と、
嬉しそうに一人二役の言葉を口にさせるー。

「さ~てと、挨拶代わりに揉みまくってやるか」
里緒菜はそう呟くと、制服姿のまま
制服の上から自分の胸を嬉しそうに両手で揉み始めたー。

”ふふふ… ふっふふふふふふ♡”

「ーー?」
兄の幹夫は、妹の部屋から
変な声や音が聞こえるような気がして
首を傾げていたー

「なんか…さっきから一人で笑ってるような…?」
幹夫がそんな風に呟くー。

いや、別に一人で笑っていても良いのだが、
何となく部屋が騒がしいー

”へへへへへ…わたしは里緒菜… わたしは里緒菜…
 わたしはりおな…♡ えへっ…へへへへへ”

「ーーー????」
壁際で耳を澄ませていると、
そんな声が聞こえて来たー。

「ーーー……?????」
頭にハテナがたくさん浮かび上がる幹夫ー。

「ーー里緒菜?」
”普段はそんなことない”ため、少し心配になった幹夫は
部屋の扉をノックしてみるー。

”え… チッ”
里緒菜の舌打ちのような音が聞こえると、
すぐに”あ、ご、ごめんね!なんかうるさかったかな?”
と、返事が返ってきたー

「あ、いや、別にいいんだけどー
 な、何か問題でも起きてるのかなって?
 結構物音がすごかったから」

幹夫がそんな風に言うと、
里緒菜は「ううん!え、演劇の練習!」と、
部屋の中から返事を返してきたー。

「ーーあ、え、演劇ー
 そ、そっかー」

幹夫はそんな風に呟きながら、
何となく違和感を感じながらもそのまま自分の部屋へと
戻って行ったー

「ーーふ~~~ 隣の部屋に兄貴かー…それとも弟か知らねぇけど
 どっちかいるみたいだな」

里緒菜は乱れ切った髪を触りながら笑みを浮かべるー。

「ーー”まだ”おかしくなったことは悟られたくねぇからなー」

里緒菜はニヤニヤしながら
スマホを握りしめたー。

”こんなに可愛い子なら、友達にもかわいい子がいるに違いないー”

里緒菜は邪悪な笑みを浮かべるー。

「ー学校で、何人か”俺の身体”を増やさなくちゃな」
里緒菜は低い声でそう呟くと、ペロリと唇を舐めて、クスクスと笑い出したー

明日ー
”里緒菜”として学校で友達に
キラキラ★可愛いフェイスメーカーを紹介しー

”敏行”を増やしていくー

「ーー…ククククク」
数十分前まで”普通の女子高生”だった里緒菜はー
もう、”欲望の塊”になってしまったー

生物学的には生きていてもー
もう、それは、里緒菜とは言えない存在ー

なのかもしれないー。

②へ続く

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コメント

ツイッターのアプリ連携を題材とした
お話デス~!

ツイッターをやっていない方は、アプリ連携の部分は
全然意味が分からないと思いますが、ごめんなさい~!

そんな場合は、「ツイッター アプリ連携」と検索してみると、
分かりやすいと思います~!
(※多分、憑依空間が引っ掛かることはなく、普通の解説が出て来ると思います笑)

今日もとっても暑いので、
皆様も気を付けて下さいネ~!

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憑依<アプリ連携>

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