接客態度を逆怨みした男に
妹が狙われて”皮”にされてしまい、
乗っ取られてしまったー。
兄は何とか妹を助け出そうと、奔走するもののー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3か月後ー。
「ーーくそっ…」
昌平は、悔しそうに呟いていたー。
”結花から要求された100万円ー”
ようやく、それを揃えることができたー。
しかしー
3か月もの時間が経過してしまったー。
”乗っ取られた結花”からは定期的に連絡が来ていて
少なくとも”身体”は無事であることは確かなのだがー
あんな風にー
”着ぐるみのように”されてしまって、果たして今も
結花は本当に無事なのかー…
という点は、分からなかったー。
それにー…
”3か月”もの間、結花は時間を失ったー
結花を取り戻すことができてもー…
結花の失われた3か月を取り戻すことはできないー。
この3か月間ー
昌平は並々ならぬ努力をしたー。
なんとかして、結花を助けようとしたー。
お金をかき集めながら、
”他の方法”で結花を助け出す方法も必死に探ったし、
あらゆることを試したー
けれど、結局ー
こうして100万円が手元に集まるのが先になってしまいー、
結花を助けることができなかったのだー。
”ーお前は、自分一人の力で100万円集めるんだー
それしか妹を助ける方法はねぇー。
へへへー
誰かに相談した時点でー
妹はチョキチョキだー。わかるな?”
何度も何度も両親や、他の人間に相談しようとしたー。
けれどー
それは、できなかったー。
”あいつは、本気で結花を殺すー”
そう思ったし、”一か八かの賭け”に出るには
リスクが高すぎたー。
捜索願が出されて、警察による捜索もこの3か月行われていたしー
”昌平が何も言わずとも、結花が発見される可能性”にも賭けたー
昌平も遠回しに”変装してる可能性がある”
”イメージがガラリと変わっている可能性がある”など、
警察や家族に伝えていたが、結局、発見には至らなかったー。
”ーーもしもし?お兄ちゃんー”
妹・結花からの”定期的な”連絡が入ったー。
「ーー100万ー」
昌平は呟くー。
「ーー100万集めた。すぐに支払う用意もできているー」
昌平が言うと、
”わぁ…お兄ちゃん!うれしい~!”と、挑発的に結花が笑うー。
「ーー本当に、結花を開放するんだろうなー?」
昌平が言うと、結花は
”もちろん!”と、笑いながら答えるー。
「ーーーー先払いをするつもりはないー」
昌平が言うと、
結花は”ふ~~~ん…”と冷たい口調で呟くー。
「ーー俺の立場になって考えて見ればわかるだろ!
先払いだと、そのまま持ち逃げされる可能性もあるし、
俺からしたら怖くて払えるわけないってことぐらい!」
昌平が必死に叫ぶー。
だが、交渉は成立しなかったー。
”お兄ちゃんーつべこべ言ってないで払いなよー。
100万円ー
今から指定する駅のコインロッカーにそれを入れてー。
それが確認できたら、こいつを開放してあげるからさー”
結花はクスクス笑いながらそう呟くー。
「ーーー…ーーなら、結花の受け渡し場所はどこだー?
それぐらいは答えろ!」
昌平が怒りの形相で叫ぶー。
”ーーー…まぁ、いいだろうー。
あんまり目立つと困るからなー
コインロッカーで現金を確認したら、
妹は解放してやるー。
あー…
現金は俺の仲間が取りに行くからなー?
お前が俺を待ち伏せしても無駄だし、
そんなことしたら妹の解放は中止だー。
現金を明日の昼までに
指定した駅の指定した番号のコインロッカーに入れろー。
いいな?”
その言葉を、結花の口で伝えるとクレーマー男ー。
昌平は怒りの形相で、
「ーー二度と結花に手を出さないと約束しろ!」と叫ぶー。
”あぁ、分かったー
俺だって鬼じゃねぇ。金さえ手にはいりゃ、もう
テメェになんか用はねぇよ”
結花はそう言うとー
”じゃ、お兄ちゃんーわたしを助けてくれるの、待ってるよ!”と、
嬉しそうに笑ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
指定された場所に100万円を置くと、
1時間後には”クレーマー男”から連絡が入ったー
”テメェの妹は解放したぜー。
いやぁ…気持ちよかったなぁ…あの身体はー”
と、挑発的な言葉で昌平をあざ笑う男ー
「ーー…くそっ…ふざけやがって!場所はどこだー!」
昌平はそう叫ぶと、
”俺は約束を守る男だぜー”
と、男は笑いー、続けて
”データを転送するから、確認しろ”と、冷徹に告げたー。
妹の結花が解放された場所が送られてくるー。
近くの少し離れた場所の山林が示されているー。
”目立たない場所を選ばせてもらったー。”
男はそう言うと、
”3か月ぶりの再会ー、存分に満喫してくれやー”と、
昌平をあざ笑うように呟きー、
そして、電話は切れるのだったー。
昌平は走ったー。
ただ、ひたすらにー。
結花が解放された場所を目指してー。
「ーー結花、ごめんなー…俺のせいでー」
そんな風に何度呟いたか分からないー。
そしてー
太陽が傾き始めた頃ー
昌平は、ようやく結花が解放された場所へとたどり着いたー。
「ーーー…!!!!」
昌平の目に入ったのはーー
”変わり果てた結花”の姿だったー
白い服を着てー
生気のない目つきで座り込んだままー
ただただ虚空を見つめているー
元々長かった髪は、幽霊のように伸びきって
顔色は青ざめているー。
「ーーゆ…結花ー…」
その姿を見て、昌平は涙を流してしまったー
「ーーー…ーーーあ…」
結花は、生きていたー
しかし、生気のない目で、昌平を見てもー
ほとんど反応を示さなかったー。
「ーー結花…ごめんな…結花ー」
昌平は、まるで幽霊のようにボロボロな結花を
抱きしめるー。
結花はブツブツと何かを呟くだけでー、
まともに会話すらできない状態ー
やはりー
3か月間も、”皮”にされていた影響は、
大きいのだろうー。
「ーー結花…もう、もう大丈夫だからなー」
昌平が言うと、結花は突然震えながら
悲鳴を上げ始めたー。
「ーーやだ…やだ…やだやだやだやだやだやだやだ」
悲鳴を上げながら頭を抱えて、昌平から遠ざかろうとする結花ー
「ーーゆ…結花!」
昌平は、急に悲鳴を上げ始めた結花に、
何て言葉を掛けていいかもわからず、戸惑ってしまうー。
”お兄ちゃん、いつも頑張っててえらい!”
”お兄ちゃんより、わたしのほうがしっかりしてるもんね~!”
”もしお兄ちゃんに何かあったら、逆にわたしが守ってあげる!”
”普段の結花”を
思い出す昌平ー
「ーーあ…ぁ… あぁぁぁ… うぅぅぅぅぅぅ」
髪を揺らしながら、目に涙を浮かべて
只々、何かに怯えている結花に、
いつもの結花の面影などー
もはや、残されてはいなかったー。
「ー結花…結花…ごめんー」
昌平はそんな結花を抱きしめるー。
結花は泣きながら、何かを呻いているー。
「ーー……帰ろうー…結花ー」
昌平はそう呟くと、すぐに警察と救急車を呼ぶー。
昌平自身も、結花をひとまず山林から運び出そうと、
結花を背負って少しずつ歩くー
結花は急に笑い出したり、
急に悲鳴を上げたりー、
とても、”まともな状況”ではなかったー。
「ーー結花ー…」
昌平は、結花の”心の傷”が、想像以上であることを
嫌でも受け止めざるを得なかったし、
同時に、結花をこんな目に遭わせた、
あの悪魔のようなクレーマー男に対して、
この上ない怒りを燃やしたー。
やがてーーー
「ーーーこっちです!」
昌平が警察官や救急隊員の姿を少し離れた場所に
確認して叫ぶー。
「ーーい…いやあああああああああああ…」
たくさんの人に何かを思い出したのか、
結花が悲鳴を上げて泣き叫ぶー。
「ー大丈夫…大丈夫…」
昌平は何度も結花にそう語りかけながら、
救急隊員たちに結花の身柄を預けると、
すぐに”事情”を説明するー。
皮の件やー
現金の件ー、
今までこのことを言えなかった件ー
その全てを、警察に包み隠さず、説明したー。
だがー
人間が皮にされてしまうー
などという話は、警察としてもすぐに信用
できるものではなかったのだろうー。
捜査に関しては消極的な姿勢と言えたー。
「ーーーーーーー…」
入院することになった結花ー。
ボロボロだった髪は元々の結花の長さぐらいに
切りそろえられて、見た目はー
”元通りの結花”のような雰囲気にはなったー。
しかしー
「ーーーーーーーーーーー」
結花は病室の窓の外を虚ろな目で見つめたまま
ロクな反応も示さないー。
そんな状態になってしまっていたー
「ーー結花!結花ーー」
母親が悲しそうに涙を流すー
父親は、犯人に対して怒りを抱いている様子だー。
「ーーーー…」
昌平は拳を握りしめながら、
そんな結花の姿を見つめるー
「ーーーこわい…こわい…」
結花が突然、怯えた様子を見せながら家族のほうを見つめるー
「ーーこわい…こわいこわいこわいこわいこわい」
頭を抱えて目から涙を流す結花ー
「ーー大丈夫…大丈夫だからー」
昌平はそう言いながら結花の手を握るもー、
結花は終始怯えた状態のままー。
あれから3日が経過したが、
結花は未だに”まともに会話することもままならない”状態だったー。
「ーーーー先生…結花は、どうなるんですかー?」
病院の先生に呼び出された昌平たち三人ー。
父親が先生に確認すると、
「ーーー精神的にひどいショックを受けているようです」と、
病院の先生は首を横に振ったー。
まともな生活を送れるようになるまで、
どれほどの時間がかかるか分からないー、と。
3か月間、どのようなことをされていたのかもわからないし、
どんな状況だったのかもわからないー。
「ーーーそれとー」
病院の先生は気まずそうに口を開くー。
「ーー…何か、あるんですかー?」
父親が不安そうに言うと、
「ー娘さんは、妊娠されています」
医師は、そう答えたー
「に…に…に…妊娠ー…」
母親が失神しそうなぐらいにショックを受けてしまうー。
結花はまだ高校生だしー
自ら望んでそのような結果になったならまだしもー
明らかに、あのクレーマー男たちに皮にされて
乗っ取られている最中に、そのようなことになってしまったのは
明らかだったー。
「ーーー中絶という選択肢もありますが」
医師はそう呟いたうえで
「どのような選択肢にせよ、今の娘さんの状況を考えるとー
さらに精神的に負担をかけることには間違いはー」
と、言葉を続けたその時だったー。
「先生!」
病院のスタッフが駆け込んでくるー。
「ーー302号室の宮原さんが…!」
「ーーゆ、結花がどうかしたんですか!?」
昌平が思わず叫んでしまうー。
慌てて302号室に駆け付けるとー
そこには、泣き叫びながら病室で暴れる結花の姿があったー
泣きながら、支離滅裂な言葉を叫び、
暴れる結花ー。
病室の飾りや、花瓶、窓のカーテン、
あらゆるものを破壊して、結花は「たすけて!」と、叫んでいるー。
「結花…!」
昌平は涙ぐみながら、そんな結花を抱きしめたー。
奇声を上げながら、何かを言い放つ結花をー
昌平は優しくなでると、
「大丈夫ー…大丈夫ー」と、何度も何度も繰り返したー。
何が大丈夫なんだー、と
心の中で激しく怒りを燃やしながら、
昌平は、結花をこんな目に遭わせたクレーマー男たちへの
怒りを燃やすー。
”あいつら…あいつら絶対に許さないー”
昌平の中で、クレーマー男に対する怒りは、さらに大きく膨れ上がるのだったー。
③へ続く
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”皮”にされて遊ばれつくしたあとの部分も描くお話なので、
②はそんな部分も中心に描きました~!
次回が最終回デス~!
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